30 / 207
ツギノ町編 第三章 勇者の目覚め
エピローグ1
しおりを挟む
(……というわけなんですよ)
(なるほどな、大体わかった)
ティナが消えて行った通路の前からは少し離れた、別の通路の前にて。
胡坐をかいて座る俺の前には、巣の中にいるほぼ全てのゴブリンが集まって正座をしている。
ティナが奥で戦っている間、テレパシーでいつもの様にゴブリンたちと親交を深めた俺は、「ティナの可愛いところ講座」を開く事にした。
今はその前に、今回の件のあらましを確認しているところだ。
ゴブリンたちの方を見ながら心の声で語りかけた。
(つまりはこういう事か。最近急にみかんにはまりだしたゴブリンリーダーにみかんを採って来いと命令されたものの、お前らじゃ身長が足りなくて採れなかった)
うんうん、と頷くゴブリンたち。
道具とかを使わないって事は足りてないのは身長だけじゃないと思うけど、もちろんここでそんな事は言わない。
(それで途方に暮れていたところに、人間の姉妹を見付けた。だからみかんを持っていた姉をさらってそれをゲットするだけでなく、あわよくば今後、自分たち用に採ってもらおうと思った、と)
うんうん、と頷くゴブリンたち。
確認を終えると、俺はどいつともなく語りかけた。
(お前らの事情はわかったけどよ、言葉が通じねえんだからいたずらに怖がらせるだけだろ。いきなりさらうのはやめてやれ)
(申し訳ないです……)
(しかしまあ、リーダーも自分で採りに行けよとは思うけどな)
すると群れの中から1匹のゴブリンが勢いよく立ち上がって叫んだ。
(そうだそうだ! あいつ、いつもこき使いやがって……! 俺たちだって他のゴブリンみたいに、もっと自由に生きたいんだ!)
(そうだそうだ!)
(このままずっとこき使われるくらいなら、人間に倒された方がましだ!)
(ゴブリンも大変なんだなあ)
どうやらこの巣のリーダーは恐怖と暴力でこいつらを支配していたらしい。
見返りも特に与えなかったせいで、ゴブリンたちは随分と不満を抱えている様子だ。
また別のゴブリンが俺に語りかけて来た。
(でもジンさんのお仲間が今日、あいつを倒してくださるんですよね?)
(ああ。ティナは絶対に勝つ!)
(それなら安心だ!)(やった!)
(今日から自由になれるぞ!)
(ジーン! ジーン! ジーン!)
(いや、倒すのは俺じゃねえから)
何故かちらほらと沸き起こるジンコール。
ゴブリンたちが無駄に盛り上がって来たところで、本題に入ることにした。
(よし。それじゃあこれから、いかにティナが可愛いかをこの俺が教えてやろう)
すると、立ち上がり拳を突き上げてるやつまで出現し始めていたゴブリンたちはいきなり普通のテンションに戻ってざわめき出した。
(ティナ……?)(誰だそれ?)
(ジンさんがさっきからちらほら口にしてる様な)
(私かな?)(お前はモルガーナだろ)
そういえばこいつらにティナを紹介してないのを忘れてた。
(さっきもちょっと名前出したけど、今お前らのボスと戦ってる俺の仲間で、人間の女の子だよ)
(えっ、人間のメスと一緒にいるんですか?)
(まあその辺はいいじゃねえか)
(それで、そのお仲間がどうかしたんですか?)
(めっちゃ可愛いだろって話だ)
(はあ)
めちゃめちゃ反応が薄い。何なんだこいつら。
思わず心の声量をあげてしまいながら続けた。
(いやいやちょっと待てよ。せめてオスはもうちょっと盛り上がれって)
(そう言われましても)
(お前ら、可愛いメスの話とかで盛り上がったりしねえのかよ)
(しますけど……)
(するんかい。いや聞いたのは俺だけど。じゃあ何でだよ、ティナ可愛いだろ?)
(いえ、正直僕ら人間の可愛い可愛くないってよくわからないんですよね)
(ティナの可愛さって種族なんか超越するんじゃないのか?)
(ないのか? とか言われても)
(ちょっと何言ってるかわかんないです)
(現にしてませんよね?)
段々とゴブリンに論破され始めたし、さすがにこれはまずい。
そう思った俺は攻める角度を変える事にした。
(わかったわかった。じゃあさ、この中で一番魅力的なメスが誰かを教えてくれ)
すると再びざわつき始めるゴブリンたち。
(一番魅力的……誰だろ)(ジョゼフィーヌじゃないか)
(キャロラインに一票)(私がモルガーナよ)
(ブスは引っ込んでろ)(は? 何それ自己紹介?)
(喧嘩すんな)
女の戦いってゴブリンにもあるんだな……。
いや人間でもここまで表立って争う事はそんなにないけど。
各地で勃発する戦いを仲裁しながら見守っていると、やがて結論が出たらしい。
一匹のゴブリンが恥ずかしそうに立ち上がった。
(ジンさん、こいつが僕らの中で一番魅力的なメスです)
(恥ずかしがってないで、早くジンさんに自己紹介しろよ)
(ばっか、恥ずかしがる姿がまたいいんじゃねえか)
(あの……初めましてジンさん。キャロラインと言います)
(お、おう)
オスたちからの拍手喝采。指笛を鳴らすやつもいる。
俺はじっくりとキャロラインを観察した。
正直他のゴブリンとの違いが全然わからん。
もういいよありがとな、と合図を出すとキャロラインは座った。
(う~ん……)
(どうですかジンさん?)
(いや、まあ、何だ。人間もゴブリンも見た目だけじゃねえって事だな)
(おお。さすがジンさん、よくわかっていらっしゃる。キャロラインはあっちの方もすごいんですよ)
(あっちの方って何だよ)
(またまたぁ。ジンさんもお仲間のメスとやってらっしゃるんでしょう?)
(だから何をだよ)
そこで今の会話の相手らしきゴブリンが前に出て来て俺に耳打ちをした。
心の声で会話をしてるんだからこの動作に意味は無い。気持ちの問題だ。
(だから、ゴニョゴニョ……ですよ)
「あっちの方」の詳細を聞いた瞬間に顔が熱くなるのを感じた。
動揺して思わず心の声のボリュームをあげてしまう。
(ば、ばっきゃろぉ! ティナとそんな事出来るわけねえだろぉ!)
(えっ、じゃあ何の為に人間のメスと一緒にいるんですか?)
(そっ、そんな事恥ずかしくて言えるわけねえだろぉ!)
耳打ちをして来たゴブリンは少しだけ間を空けた。
(もしかしてジンさんってそういうの、した事ないんですか?)
(……まあ、そうだな)
俺は恥ずかしさと悔しさで心の声のトーンをやや落とす。
するとゴブリンたちは互いに顔を見合わせて談議を始めた。
(やだ、ジンさん可愛い……)(守ってあげたい)
(夜もモンスターテイマーズだって聞いてたのにな……)
(何だよ夜もモンスターテイマーズって)
(夜の爆裂剣はかなり強烈だとも聞いてました)
(何でもかんでも「夜」をつけんな)
そんな感じでまた妙な盛り上がりを見せ始めていた時だった。
ティナが入って行った通路の前に置いた見張りが心の声を張り上げた。
(ジンさん! 人間のメスたちが戻って来ました!)
(よし、お前ら急いで奥に隠れろ! 絶対に出て来るんじゃねえぞ!)
指令を出すと、ゴブリンたちは一斉に散開していった。
それを確認した俺は部屋の中央辺りで横になる。
名付けて「傷ついて横たわってたら膝枕とかしてもらえるんじゃね?」作戦だ。
ゴブリンたちの協力で、あらかじめ服も適度に汚してある。
こうしておけば誰がどう見ても死闘を演じた後の感じが出ているはず。
心を躍らせながら目を瞑っていると、心の声が聞こえて来た。
(さすがジンさん、策士だぜ)
(全く敵には回したくねえお方だな……)
(お前らどこでそういうの覚えるんだよ)
それにしても随分と時間がかかったな。
戦闘をするだけならここまでかからないはずだけど、何かあったんだろうか。
そう考えていると、やや離れた場所から足音が聞こえて来た。
ざっ…ざっ…ざっ…ざっ。……。
ざっざっざっざっ。
足音は通路の出口と思われる位置で一旦止まると、音の間隔を狭めて一気にこちらに近付いて来た。
ティナがこちらを発見して駆け寄って来てくれたのだろう。
足音が二人分なのが気がかりではあるけど……。
ていうかそうだよ、何で今まで気付かなかったんだ。
よく考えたら救出した女の子をそのまま連れ帰るに決まってるだろ。
くっ、これはどうなるか予想がつかないな。
やがてティナと思われる腕が俺の身体を揺らしながら叫んだ。
「ジン君? ジン君!」
ゆさゆさと身体が揺れる。
それが止んだ頃に、ゆっくりと目を開けてみた。
「……ティナか?」
俺の視界の中でティナは涙を流していた。
膝枕をして欲しいが為に演技をしたやつなんかの為に。
「よかった……!」
涙を拭いながらそう言うと、ティナは笑う。
やべえ罪悪感半端ねえ……やるんじゃなかった。
身体を起こして、服についた土を払いながら口を開く。
「いや、みっともないとこ見せちまったな」
「ううん、そんな事ない。いつもありがとう」
何かお礼まで言われてしまった……。
ふと、ティナの後ろで立ち尽くし、こちらを見つめる女の子に気が付いた。
俺はゆっくりとティナに語りかける。
「女の子、助ける事が出来たんだな」
「うん……怪我も何もないみたい」
「あの、あの……この度は本当にありがとうございました!」
大袈裟に礼をする女の子に思わず苦笑しながら答えた。
「俺もティナもやりたくてやった事だ。それより、早く帰って家族に顔を見せてあげた方がいいんじゃないか?」
「は、はいっ」
「それじゃ町に帰ろっか」
俺もティナも立ち上がり、女の子と一緒に出口に向かって歩き出した。
女の子二人が先行して俺が後ろをついていく形だ。
すると心の声が響き渡る。
(さすがジンさん! 女の子を泣かせちまったぜ!)
(最後もいい感じに締めていらっしゃる!)
(やっぱりジンさんは最高だぜ!)(夜の爆裂剣期待してます!)
(ジーン! ジーン! ジーン!)
(ジーン! ジーン! ジーン!)
洞窟のあちこちから盛大なジンコールが響き渡る中。
俺は右の拳を高く突き上げながら洞窟を後にしたのであった――――。
(なるほどな、大体わかった)
ティナが消えて行った通路の前からは少し離れた、別の通路の前にて。
胡坐をかいて座る俺の前には、巣の中にいるほぼ全てのゴブリンが集まって正座をしている。
ティナが奥で戦っている間、テレパシーでいつもの様にゴブリンたちと親交を深めた俺は、「ティナの可愛いところ講座」を開く事にした。
今はその前に、今回の件のあらましを確認しているところだ。
ゴブリンたちの方を見ながら心の声で語りかけた。
(つまりはこういう事か。最近急にみかんにはまりだしたゴブリンリーダーにみかんを採って来いと命令されたものの、お前らじゃ身長が足りなくて採れなかった)
うんうん、と頷くゴブリンたち。
道具とかを使わないって事は足りてないのは身長だけじゃないと思うけど、もちろんここでそんな事は言わない。
(それで途方に暮れていたところに、人間の姉妹を見付けた。だからみかんを持っていた姉をさらってそれをゲットするだけでなく、あわよくば今後、自分たち用に採ってもらおうと思った、と)
うんうん、と頷くゴブリンたち。
確認を終えると、俺はどいつともなく語りかけた。
(お前らの事情はわかったけどよ、言葉が通じねえんだからいたずらに怖がらせるだけだろ。いきなりさらうのはやめてやれ)
(申し訳ないです……)
(しかしまあ、リーダーも自分で採りに行けよとは思うけどな)
すると群れの中から1匹のゴブリンが勢いよく立ち上がって叫んだ。
(そうだそうだ! あいつ、いつもこき使いやがって……! 俺たちだって他のゴブリンみたいに、もっと自由に生きたいんだ!)
(そうだそうだ!)
(このままずっとこき使われるくらいなら、人間に倒された方がましだ!)
(ゴブリンも大変なんだなあ)
どうやらこの巣のリーダーは恐怖と暴力でこいつらを支配していたらしい。
見返りも特に与えなかったせいで、ゴブリンたちは随分と不満を抱えている様子だ。
また別のゴブリンが俺に語りかけて来た。
(でもジンさんのお仲間が今日、あいつを倒してくださるんですよね?)
(ああ。ティナは絶対に勝つ!)
(それなら安心だ!)(やった!)
(今日から自由になれるぞ!)
(ジーン! ジーン! ジーン!)
(いや、倒すのは俺じゃねえから)
何故かちらほらと沸き起こるジンコール。
ゴブリンたちが無駄に盛り上がって来たところで、本題に入ることにした。
(よし。それじゃあこれから、いかにティナが可愛いかをこの俺が教えてやろう)
すると、立ち上がり拳を突き上げてるやつまで出現し始めていたゴブリンたちはいきなり普通のテンションに戻ってざわめき出した。
(ティナ……?)(誰だそれ?)
(ジンさんがさっきからちらほら口にしてる様な)
(私かな?)(お前はモルガーナだろ)
そういえばこいつらにティナを紹介してないのを忘れてた。
(さっきもちょっと名前出したけど、今お前らのボスと戦ってる俺の仲間で、人間の女の子だよ)
(えっ、人間のメスと一緒にいるんですか?)
(まあその辺はいいじゃねえか)
(それで、そのお仲間がどうかしたんですか?)
(めっちゃ可愛いだろって話だ)
(はあ)
めちゃめちゃ反応が薄い。何なんだこいつら。
思わず心の声量をあげてしまいながら続けた。
(いやいやちょっと待てよ。せめてオスはもうちょっと盛り上がれって)
(そう言われましても)
(お前ら、可愛いメスの話とかで盛り上がったりしねえのかよ)
(しますけど……)
(するんかい。いや聞いたのは俺だけど。じゃあ何でだよ、ティナ可愛いだろ?)
(いえ、正直僕ら人間の可愛い可愛くないってよくわからないんですよね)
(ティナの可愛さって種族なんか超越するんじゃないのか?)
(ないのか? とか言われても)
(ちょっと何言ってるかわかんないです)
(現にしてませんよね?)
段々とゴブリンに論破され始めたし、さすがにこれはまずい。
そう思った俺は攻める角度を変える事にした。
(わかったわかった。じゃあさ、この中で一番魅力的なメスが誰かを教えてくれ)
すると再びざわつき始めるゴブリンたち。
(一番魅力的……誰だろ)(ジョゼフィーヌじゃないか)
(キャロラインに一票)(私がモルガーナよ)
(ブスは引っ込んでろ)(は? 何それ自己紹介?)
(喧嘩すんな)
女の戦いってゴブリンにもあるんだな……。
いや人間でもここまで表立って争う事はそんなにないけど。
各地で勃発する戦いを仲裁しながら見守っていると、やがて結論が出たらしい。
一匹のゴブリンが恥ずかしそうに立ち上がった。
(ジンさん、こいつが僕らの中で一番魅力的なメスです)
(恥ずかしがってないで、早くジンさんに自己紹介しろよ)
(ばっか、恥ずかしがる姿がまたいいんじゃねえか)
(あの……初めましてジンさん。キャロラインと言います)
(お、おう)
オスたちからの拍手喝采。指笛を鳴らすやつもいる。
俺はじっくりとキャロラインを観察した。
正直他のゴブリンとの違いが全然わからん。
もういいよありがとな、と合図を出すとキャロラインは座った。
(う~ん……)
(どうですかジンさん?)
(いや、まあ、何だ。人間もゴブリンも見た目だけじゃねえって事だな)
(おお。さすがジンさん、よくわかっていらっしゃる。キャロラインはあっちの方もすごいんですよ)
(あっちの方って何だよ)
(またまたぁ。ジンさんもお仲間のメスとやってらっしゃるんでしょう?)
(だから何をだよ)
そこで今の会話の相手らしきゴブリンが前に出て来て俺に耳打ちをした。
心の声で会話をしてるんだからこの動作に意味は無い。気持ちの問題だ。
(だから、ゴニョゴニョ……ですよ)
「あっちの方」の詳細を聞いた瞬間に顔が熱くなるのを感じた。
動揺して思わず心の声のボリュームをあげてしまう。
(ば、ばっきゃろぉ! ティナとそんな事出来るわけねえだろぉ!)
(えっ、じゃあ何の為に人間のメスと一緒にいるんですか?)
(そっ、そんな事恥ずかしくて言えるわけねえだろぉ!)
耳打ちをして来たゴブリンは少しだけ間を空けた。
(もしかしてジンさんってそういうの、した事ないんですか?)
(……まあ、そうだな)
俺は恥ずかしさと悔しさで心の声のトーンをやや落とす。
するとゴブリンたちは互いに顔を見合わせて談議を始めた。
(やだ、ジンさん可愛い……)(守ってあげたい)
(夜もモンスターテイマーズだって聞いてたのにな……)
(何だよ夜もモンスターテイマーズって)
(夜の爆裂剣はかなり強烈だとも聞いてました)
(何でもかんでも「夜」をつけんな)
そんな感じでまた妙な盛り上がりを見せ始めていた時だった。
ティナが入って行った通路の前に置いた見張りが心の声を張り上げた。
(ジンさん! 人間のメスたちが戻って来ました!)
(よし、お前ら急いで奥に隠れろ! 絶対に出て来るんじゃねえぞ!)
指令を出すと、ゴブリンたちは一斉に散開していった。
それを確認した俺は部屋の中央辺りで横になる。
名付けて「傷ついて横たわってたら膝枕とかしてもらえるんじゃね?」作戦だ。
ゴブリンたちの協力で、あらかじめ服も適度に汚してある。
こうしておけば誰がどう見ても死闘を演じた後の感じが出ているはず。
心を躍らせながら目を瞑っていると、心の声が聞こえて来た。
(さすがジンさん、策士だぜ)
(全く敵には回したくねえお方だな……)
(お前らどこでそういうの覚えるんだよ)
それにしても随分と時間がかかったな。
戦闘をするだけならここまでかからないはずだけど、何かあったんだろうか。
そう考えていると、やや離れた場所から足音が聞こえて来た。
ざっ…ざっ…ざっ…ざっ。……。
ざっざっざっざっ。
足音は通路の出口と思われる位置で一旦止まると、音の間隔を狭めて一気にこちらに近付いて来た。
ティナがこちらを発見して駆け寄って来てくれたのだろう。
足音が二人分なのが気がかりではあるけど……。
ていうかそうだよ、何で今まで気付かなかったんだ。
よく考えたら救出した女の子をそのまま連れ帰るに決まってるだろ。
くっ、これはどうなるか予想がつかないな。
やがてティナと思われる腕が俺の身体を揺らしながら叫んだ。
「ジン君? ジン君!」
ゆさゆさと身体が揺れる。
それが止んだ頃に、ゆっくりと目を開けてみた。
「……ティナか?」
俺の視界の中でティナは涙を流していた。
膝枕をして欲しいが為に演技をしたやつなんかの為に。
「よかった……!」
涙を拭いながらそう言うと、ティナは笑う。
やべえ罪悪感半端ねえ……やるんじゃなかった。
身体を起こして、服についた土を払いながら口を開く。
「いや、みっともないとこ見せちまったな」
「ううん、そんな事ない。いつもありがとう」
何かお礼まで言われてしまった……。
ふと、ティナの後ろで立ち尽くし、こちらを見つめる女の子に気が付いた。
俺はゆっくりとティナに語りかける。
「女の子、助ける事が出来たんだな」
「うん……怪我も何もないみたい」
「あの、あの……この度は本当にありがとうございました!」
大袈裟に礼をする女の子に思わず苦笑しながら答えた。
「俺もティナもやりたくてやった事だ。それより、早く帰って家族に顔を見せてあげた方がいいんじゃないか?」
「は、はいっ」
「それじゃ町に帰ろっか」
俺もティナも立ち上がり、女の子と一緒に出口に向かって歩き出した。
女の子二人が先行して俺が後ろをついていく形だ。
すると心の声が響き渡る。
(さすがジンさん! 女の子を泣かせちまったぜ!)
(最後もいい感じに締めていらっしゃる!)
(やっぱりジンさんは最高だぜ!)(夜の爆裂剣期待してます!)
(ジーン! ジーン! ジーン!)
(ジーン! ジーン! ジーン!)
洞窟のあちこちから盛大なジンコールが響き渡る中。
俺は右の拳を高く突き上げながら洞窟を後にしたのであった――――。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる