女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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王都ミツメ編 前編 新たな出会いたち

みんなでクエスト 前編

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 怒涛の出会いラッシュがあったあの日から数日が経ったある日。
 ラッドたちと交わしていた約束を果たすことになった。
 勇者選定までに一緒にクエストに行こうというアレだ。

 約束の日の朝、朝食を摂りながらティナと本日の予定について相談した。

「今日はあいつらとクエストに行く日だっけか」
「初めての合同パーティー? って何だか楽しみだね」

 ティナはミツメに来てからいつも楽しそうにしている。
 憧れの都会に新しい出会いと、視界に入るもの全てが輝いているに違いない。
 俺もそんなティナを見てほっこりする毎日を送っていた。

「ティナはどんなクエストが受けたい、みたいなのはあるか?」
「う~ん、特には?」

 スプーンを口に当て、小首を傾げながら返事をするティナ。
 かくいう俺も特にはない。
 強いて言うならティナのやりたいクエストがやりたいくらいだ。

「じゃああいつらに任せればいいか」
「そうだねっ」

 ティナの元気な返事を聞きつつさっさと飯を片付けていった。
 一度互いに部屋に戻って支度を済ませてから合流。
 宿屋を出て、ラッドたちとの待ち合わせ場所になっているギルドへ向かう。

 朝の喧騒の中を歩きながらティナが話しかけてくれた。

「ねえねえ、ジン君はおやつ持って来た?」
「おやつ?」

 どんだけ浮かれてんだよ。
 完全に遠足気分なティナ……いいな。
 
 俺の言い方に少し棘があったのか、ティナはおずおずとこちらの顔色を窺いながら返事をした。

「えっ、皆で食べたら美味しいかなあって。だめかな?」
「いや、めちゃくちゃいいと思う。それでどんなおやつを持って来たんだ?」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました!」

 おっ、何だ? 突然可愛いぞ。
 ティナは急にドヤ顔になって鞄から何かを取り出した。

「じゃじゃーん! スコーンです!」
「おおっ」

 何の変哲もなく普通にスコーンだ。
 ただのスコーンを俺の眼前に掲げたままティナは続ける。

「これを皆で食べるとものすごく美味しいのです!」
「な、なんだって。そうだったのか……」

 うなだれてその場に膝から崩れ落ちてみる。
 するとティナが慌ててこちらに歩み寄って来た。

「ちょ、ちょっとジン君。そんなに驚かなくても」

 ティナを盛り上げる為の演技がどうやら裏目に出たらしい。
 気付けば道行く人たちが俺とティナを奇異なものを見る目で見つめていた。

「ほら。早く行こ」

 服の袖を引っ張られるというちょっとしたイベントが発生。
 顔が熱くなるのを感じながらティナについていった。

 ギルドに到着すると、ラッドとロザリアが入り口で待ってくれていた。
 今の時間だと中は人でごった返しているからという配慮だろう。
 二人を見付けるなりティナが走り寄って挨拶をしに行った。

「おはよう。二人共今日はよろしくね」
「よろしくな」
「おはよう! まあ僕がいればどんなクエストでも安心さ! 大船に乗ったつもりでいたまえ!」
「まあ、いけませんわラッド様! そんなに見栄を張ってしまって、ドラゴン百体を討伐なんてクエストを受けてしまったらどうするのですか?」

 相変わらず困った表情でツッコミを入れるロザリア。
 ラッドはそれに対して焦った表情で返していく。

「ドラゴンが百体も現れたらいちいちギルドを通してる余裕なんてないんじゃないのかい!?」

 最早お馴染みになりつつある夫婦漫才を聞きながら中へ。
 入り口で皆の方を振り返った。

「おい、早く行こうぜ。いいクエストを取られちまう」
「ふっ、わかっているさ」

 人混みをかき分けるようにして進んで行き、クエストが貼られている壁の前へ。
 四人並んでどんなクエストがあるのかと眺めた。
 その内の一つを指差しながらラッドに聞いてみる。

「この『アルミラージの角採取』ってクエストとか結構いいんじゃないのか?」
「だめだね。簡単過ぎて戦いながら寝てしまいそうだ」
「先日キラービーに対して怯えていたではありませんか」

 二秒で入ったロザリアのツッコミ。
 キラービーというのはアルミラージよりもちょっとだけ強いモンスターだ。
 しかし慣れているラッドは動揺を見せずに返した。

「違うよロザリア。あれは君を失うかもしれないという恐怖に怯えていたのさ」
「ラ、ラッド様……こんなに人がいるところでそんな」

 ロザリアは頬を赤く染めてうっとりとラッドを見つめている。
 厳しいように見えてどうやらかなりチョロイらしい。
 
 ていうかそれは結局キラービーに怯えてたって事じゃねえか。
 キラービーくらいからは守ってやれよな。
 横をちらと見ると、ティナが二人のやり取りを聞いて照れていた。

 収拾がつかなくなりそうなので「アルミラージの角採取クエスト」の紙を剥がして受付へ向かう。

「じゃあこれでいいな。受けて来るぞ」
「あっ、わ、私も一緒に行くよ」

 別に一緒に行く必要はないのにティナがついて来てくれた。
 突然の幸福感に動揺しながら受付を済ませた。

 全員でギルドを出て街の出入り口へと向かう。
 アルミラージが生息しているのはツギノ町方面の南口だ。
 
 だから南口方面に行くと全体的に低価格な宿屋や低レベル帯の装備を揃えた武具屋が多く見受けられる様になる。
 道を行き交うのも比較的に低レベル帯の装備をした冒険者が多いみたいだ。

 世界で最も幅広い層の冒険者が集うミツメならではの光景かもしれない。
 そんな街並みを眺めながら歩いていると、横でティナがロザリアに話しかけた。

 ちなみに今は横一列に並んで歩いていて、左からラッド、俺、ティナ、ロザリアという順番だ。

「ねえねえ、ロザリアちゃんはどんなおやつを持って来たの?」
「私はアップルパイよ」

 持って来とるんかい。
 どうやら二人の間ではクエストにおやつを持っていくのは常識らしい。

「え~っ私アップルパイ好きなんだ。後でスコーンと交換しない?」
「ふふっ、いいわよ」

 何とも微笑ましい会話だ。
 ティナも女の子の友達が出来て嬉しくてしょうがないのだろう。
 ロザリアと話す時はいつも楽しそうだ。

 いつも……そう、俺と話している時よりも。くっ。
 そろそろティナにかっこいいところを見せておかないとだめだな。

 雑談をしながら歩いていると、やがて街を出てモンスターの生息する範囲までやって来た。
 だけど街道付近だと人が多くてモンスターの奪い合いになったりするので、街道から少し離れたところまで進む。

 そこそこの距離を進んだところでラッドが俺たちの方を振り返って言った。

「この辺でいいかな。今回は採取クエストだし、全員で散らばってがんがん倒していこう」
「おう」「「はいっ」」

 かくして全員散り散りになってアルミラージ討伐を始めた。
 もちろん辺り一帯をうろついているのはアルミラージだけじゃない。
 時にはゴブリンを倒すという手間も必要なのだ。

 だけど俺には秘策があった。
 みんなから充分に離れたのを確認してから「レーダー」を発動。
 近くにいるモンスターに歩み寄って姿を確認する。

 おっ、いるいる。
 そこには茂みをうろうろするゴブリンの姿があった。
 近くの茂みに隠れ、「テレパシー」を発動する。

(おいそこのお前)
(はっ!? この声はジンさんですか。今日はどんな御用で?)

 俺の居場所がわからずゴブリンはきょろきょろしている。
 どうやら一度は話した事があるやつみたいだ。なら話が早い。

(アルミラージの角を持ってないか?)
(アルミラージの角、ですか)

 少しの間が空いた。
 見るとゴブリンは何やらごそごそとやっている。
 どうやら持ち物を確認してくれている様だ。

(ありました。二本だけですが)
(よし、やくそうと交換でどうだ?)
(えっいいんですか? やった)

 話がついたので茂みの中にゴブリンを呼んで物々交換をした。
 ゴブリンは特に意味もなくその辺に落ちている物を拾って集める習性がある。
 その中で例え使いようのない物でも何となく持っていたりするのだ。

 人間にとってどういう価値になっているのかはよくわからないけど、このアルミラージの角はドロップしても割と放置され気味らしい。
 だからゴブリンが拾って持っていたりする事が多いというわけ。

 こうやって素早くたくさんの角を集めればティナの好感度もアップするはず。
 だからクエストが終わった際には、

(ジン君すごい! 結婚しよっ)

 とか言われるに違いない。
 そしてギルドからの帰り道に一緒に式場を下見して回るという算段だ。
 その後も同じ要領で次々にアルミラージの角を獲得。

 気付けば持ちきれない程の量になっていた。
 まあこんだけありゃ充分ティナと結婚出来るだろ。
 そう思い、ひとまずクエスト開始地点に戻る事にした。
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