女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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世界の真実編 前編 世界の真実とそれぞれの「これから」

不死鳥の謎と残る疑念

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 俺たちが新鮮果汁の飲み物を飲んでいる間にソフィア様もテーブルについた。席順はベッドに近いところからソフィア様、ノエル、俺、セイラだ。
 鼻血やその他の汚れを神聖魔法で落とした女神様は、今日一番の真剣な顔で姿勢を正してから口を開いた。

「私に聞きたいことがあるということですが」
「はい。あの、不死鳥って一体何なんですか?」

 俺がそう尋ねるとソフィア様もこてんと首を傾げてしまった。

「一体なに……とは?」
「えっと、ソフィア様は不死鳥のことはどれくらい知ってるんですか」
「存在だけなら。恐らくは精霊の皆さんと同程度の知識しか持ち合わせていないと思います。試練の迷宮でのお仕事は、ほとんど用意された台詞を読み上げただけのようなものでしたから」

 セイラとノエルは俺とソフィア様のやり取りを静かに見守っている。
 まあたしかに、この世界を担当していないソフィア様がシナリオ関連のことを詳しく知っているはずもないか。
 けど魔法については参考になる話が聞けるかもしれない。俺は質問を吟味するための時間を経てからゆっくりと口を開く。

「不死鳥は神聖魔法としか思えない魔法を使っていました」

 ソフィア様はそこで驚いたように目を大きく見開いた。

「草花の生命力を促進したり、透明になったりって具合です。例えばですけど、そういう魔法が使える生物を神聖魔法で作ったりってことは出来るんですか? もしくは生物に神聖魔法を付与する、とか」

 俺の質問を受けたソフィア様は険しい顔で俯き、何事かを思い悩んでいる。
 その様子を全員で黙って眺めていると、やがて意を決したように顔をあげて説明を始めてくれた。

「結論から言えば出来ます。ですが、そういった生命を生み出したり、生命に何らかの形で直接干渉するような神聖魔法は原則として使用を禁止されています」
「神々の間での取り決めってことですか?」

 凛とした表情でうなずき、ソフィア様は返事をする。

「禁じられた系統の神聖魔法を使う場合、まずは神々の主要な意思決定機関である『幹部会』に相談しなければなりません。万が一、それが出来ない程の緊急を要する事態だった場合には事後報告をしたのち、『幹部会』が調査と審議をすることになっています。当然それは幹部会の代表、最高神ゼウスであっても例外ではありません」
「ってことは、もしゼウスがフェニックスを神聖魔法で作る、もしくは神聖魔法を使えるようにした場合、必ずその『幹部会』ってとこに報告があるはずってことですよね」

 ここで一つ気付いたことがある。
 ゼウスは人に直接干渉するような、それこそ精霊を消したり人の記憶を奪ったりといった魔法を使いたがらない。
 それで見所のあるやつだなと今まで思っていたけど、単に神々の間での取り決めがあったから使えないだけだったんだな。
 ゼウスのいいところがまた一つ減ったぜ。

「そういうことです。そして、そのような報告は『幹部会』には届いていないはずです。一応確認はしますが、これは私が動く必要のある案件になるでしょう」
「ソフィア様がですか?」

 別に他の神様でもいいのでは、という意図の発言だ。
 それに対してソフィア様は一つうなずく。さっきまでのセイラにでれでれなあの女神様はどこへ行ったのやら。

「もしゼウスが禁忌を犯しているのであれば、裁くのは私の役目ですから」

 ソフィア様は神々の中で二番目に強い力と権限を持っているという話は聞いたことがあるけど、それに関係する話なんだろうか。
 そこでノエルが恐る恐るといった感じで会話に入ってきた。

「あの、ソフィア様。そんなに神々の間の話を俺らにしちまっていいんですか?」

 ソフィア様はその問いに優しく微笑んで答える。

「ええ。たしかに下界の者に神々に関する事柄を話してはならないという取り決めはあります。暗黙の了解というやつですが。でもあなたたちは下界の者ではありませんし、ゼウスの元に仕えているのですから、すでにある程度神や世界に関する知識は持っているでしょう?」
「まあ、そうですね」

 そりゃそうか、とばかりに頬を人差し指でかきながらノエルはそう言った。それからソフィア様は真面目な表情に戻って語り始める。

「とにかく、私はまず神界に戻って幹部会にゼウスから何か報告がないか一応確認を取ってきます。そしてそれがない場合……創世の神殿フォークロアー支部に乗り込む必要があると思っています」

 思いの外重くなっていた事態に、俺たちは固唾を呑んだ。
 その心中を察したのかソフィア様は補足を入れる。

「セイラちゃんとノエル君のおかげで、ほぼ確実にゼウスが何か私に見られたくないものを隠しているということはわかりましたから、恐らくゼウスは幹部会にも何も報告はしていないでしょう。だから直接ゼウスのところに乗り込む、ということです。ただその不死鳥の件以外にも、もっと大きな何かが動いているようなそんな嫌な予感もしますが……シナリオに拘る理由もまだ判明していないですしね」

 再び場が静寂に包まれる。
 酔っぱらった金持ちの楽しそうな叫び声が外から窓を通じて部屋に届き、すでに
夜の帳が下りそうな時間だってことを全員に予感させた。
 途端にティナたちの顔が脳裏に浮かび、自然に椅子から立ち上がる。

「結構時間経っちまったな。悪い、俺はもう戻るわ。ソフィア様、ありがとうございました」
「いえ、私も楽しかったです。何かあればまた聞いてくださいね」

 そう言って、人間姿ながら本当に女神に見えるほどの柔らかく美しい笑みを浮かべるソフィア様。
 ティナがいなければ好きになっていたかもしれない。
 そこでこれから利用させてもらうであろうもののことを思い出したので、先にお礼を言っておくことにした。

「そういえばソフィア様、セイラ用の汚い金、使わせてもらうことになると思うんで……何て言うかその、すいません」
「ちょっと、汚い金とか言わないでよ」

 久々にセイラが会話に入ってきた。不満げに唇を尖らせながら抗議の声をあげている。
 それに加担するようにソフィア様も口を開く。

「そうですよ、あれはセイラちゃんのためのと~っても綺麗なお金ですから。ね、セイラちゃん」

 そう言ってソフィア様がセイラの方を見ながら首を傾げると、セイラも「ね~」と言いながら首を傾げた。
 「ゴッドテイマー」……セイラのことを、これからはそう呼ぼうと思う。

「いやまあ、別にどっちでもいいですけど。とにかく俺は行くんで」
「じゃ私も行くわ。まだ店開いてるからスロット打ちたいし」
「では、私もお供します!」
「暇だから俺も行くわ」

 カジノに向かおうと俺が踵を返すと、セイラ、ソフィア様、ノエルと次々に立ち上がる。

「お前らどんだけスロット好きなんだよ」
「は? 何言ってんの、暇だから行くだけよ」

 心外だとばかりに眉根を寄せてそう言うセイラを、ノエルが呆れた顔をしながら親指で示した。

「スロットが好きなのはこいつだけだ」
「暇つぶしだって言ってんでしょ」
「何でそこは頑なに認めようとしねえんだよ」
「まあまあ。二人とも喧嘩はいけませんよ」

 二人の言い合いをなだめるソフィア様の声を背後に聞きながら、長くなりそうだと思った俺はさっさと部屋を出た。



 後からついて来た二人と一柱を連れてカジノに戻って来た。
 ティナたちを探してうろうろしていると、やがてスロットコーナーに人だかりが出来ているのを発見。
 まさかと思って見に行ってみると、その中心にいたのはやはりティナだった。

 スロット台に向かって座り、店で配られているメダル用ケースを満杯にしたものを横に大量に積んでいる。少し後ろからはラッドと、おねむになったエリスを抱きかかえたロザリアがその様子を見守っていた。
 人をかきわけて中心に入り、後ろから話しかける。

「何だこれ。ティナが打ってんのか?」
「ああ、軽い気持ちで打ち始めたら面白いように絵柄を揃えてしまってね。気づけばもうこんな感じさ」

 ラッドがメダル用ケースを指差しながらそう答えた。
 ロザリアが気品のある微笑みを口元に湛えてのほほんと言う。

「この調子なら、エリスちゃんの力を借りなくても魔王城の地図を入手できそうですわね」
「ティナすげえな」

 まあ本当は必要ないらしいけど今更そんなことは言えない。
 俺の言葉に反応してくれたのか、こちらを振り返ったティナは苦笑していた。

「あはは、ルールが簡単そうだからちょっとやってみただけなのに、何だか大変なことになっちゃった」

 するとセイラが俺のよこからずいっと出て来てティナに声をかける。

「え~! なになに、ティナすごいじゃない! よ~し、私も負けてらんないわ」
「おい、待てセイラ」

 ノエルの制止などまるで意に介さず、セイラは意気揚々と腕をまくりながらティナの横に陣取った。
 それを見て、今度はソフィア様がセイラの横に座る。

「では私もここで打っちゃいます!」
「ちょ、ちょっとソフィア様まで何やってんですか」

 俺が顔を近付けて出来るだけ小さい声で言うと、ソフィア様はこちらを振り返って楽しさ満点といった感じの笑顔で言う。

「あっ、皆さんが混乱するといけないので、今はフィオーレでお願いします」
「いやいやそう言う問題じゃなくて」

 ま、ティナのゲームが終わったらこいつらは放って帰ればいいか。
 そう思いながら、俺もティナ、セイラ、ソフィア様のスロット道を見守ることにした。
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