女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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世界の真実編 前編 世界の真実とそれぞれの「これから」

スケベジジイ vs おっさん女神 中編

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「ところで、さっきから気になっておったのじゃが」

 力のこもったソフィアの言葉を受けたゼウスは、冷や汗もひいて真顔に戻った状態で彼女の左腕に抱えられたミザリーを指差した。

「お主は何故ミザリーちゃんを抱えておるのじゃ?」
「執務室で警備代わりに配置されていたこの子を眠らせたまではよかったのですが……かなり可愛かったので、この後宿屋にでも連れ込もうかと思いまして」
「連れ込もうかと思いまして、ではなかろう」

 真剣な表情のまま鼻血を垂らすソフィアを見て頭を抱えるゼウスは、一つため息をついて顔をあげると、身体を反転させて大時計を見上げた。

「で、これが何か……とかわしが何をしようとしておるのか、とかそういう質問じゃったの」
「ええ」
「その前にソフィア、お主は先程他にもまだ聞きたいことがあると言っておったじゃろ、それもまとめて今聞かせてくれんか」

 焦らされたのか何なのか、ゼウスの意図が読めずにソフィアは顔をしかめる。それから鼻血を拭う。
 そのわずかな沈黙をソフィアの怒りと捉えたゼウスは顔だけで背後を振り返って補足をする。

「安心せい、この期に及んで逃げたり言い訳をしようなどとは思っておらん。ただ単純に、それを聞いてからの方が説明がしやすくなると言うだけじゃ」
「ということは、私があなたがしようとしていることの他に何を聞きたいかはもうわかっているのですね」

 ゼウスはソフィアの方を振り向くと、一つうなずいてから言った。

「宿屋のお姉さんのことじゃろ? 一体何人姉妹なのかと。たしかに質問としてはいい線を」
「いえ、全然違います」
「…………」
「…………」
「…………」
「不死鳥のことです」
「不死鳥? 何じゃったかのそれ」

 埒が明かないと踏んでソフィア自ら話題を切り出したにも関わらず、ゼウスは首を傾げてしまう。
 呆れ顔でため息をついてから、ソフィアは語り始めた。

「魔王城に行くためにティナちゃんたちがムコウノ山まで行って契約をした生物です。ジン君の話だと神聖魔法としか思えない魔法を使うと」

 ゼウスはあご髭を触りながら、難しい顔で唸り声をあげつつ思案した。
 しばらくして何かを閃いたような笑顔を浮かべ、手のひらを拳でぽんと叩く。

「おお、思い出したわい! 勇者を魔王城まで乗せていくかっちょいい乗り物、とわしがシナリオに書き込んだやつか!」

 その言葉に疑念を覚えたソフィアは眉根を寄せた。
 ゼウスはそれには構わず視線を女神から外して宙をさまよわせわせながら、また一人で何事かを考えて納得したようにうなずく。

「そうかそうか。そういえばジンたちは今トオクノ島におるんじゃったの。そこでセイラとノエルを探し当てたお主と鉢合わせたか」
「そうです。それで私が聞きたいことを察したのかと思っていたのですが」
「いや、最近クエストがちゃんと遂行出来ておるかどうかの確認はオブザーバーズに任せきりだったからの」
「だと言うのに勇者パーティーの所在地は把握しているのですね」

 そこでゼウスは露骨に顔を背けて表情を隠そうとした。

「べっ、別にジンのやつが気になるとかじゃないんじゃからなっ」
「あ、はい」

 気持ち悪いですね……と、ソフィアは心の中で独白する。
 ゼウスはせき払いをしてから再び大時計の方に身体を向けると、後ろ手を組んで語り始めた。

「それで、これが何かとか、不死鳥とは何かといった疑問に今からまとめて答えるからよう聞きんさい」
「はい」

 ようやく本題かと、ソフィアは固唾を呑む。
 と同時に、よう聞きんさいじゃねえよさっさと言え、とか次に茶化すような真似をすればもうここで裁いてやろう、とかそういうことを考えていた。
 ゼウスは首をもたげて巨大な大時計を見上げながら、ゆっくりと口を開く。

「これはの、『シナリオ遂行装置アカシックレコードというものじゃ』」
「アカシック、レコード……」
「うむ」

 その名前には聞き覚えがあった。別の平行世界で全宇宙の記録とか呼ばれているものだったか。そう当たりをつけながら沈黙を保つことで、ソフィアはゼウスに言葉の続きを促していく。

「シナリオ遂行装置、とも言うての。ほれ、ここに引き出しみたいなものがあるじゃろ」

 背後を振り返ってソフィアの方を見ながら、ゼウスはアカシックレコードの足下にある直方体の正面の一点を人差し指で示した。
 そこには金属製の取っ手のようなものがあり、それを中心に長方形の溝がある。
なるほど確かに引き出しのようだ。

 ソフィアはずっと、わずかばかりに険のある表情を崩さない。
 そんな女神の様子を見て話に耳を傾けていることを確認しつつ、ゼウスは説明を続ける。

「ここにシナリオを書いて入れると、その遂行に必要なものが生成されるのじゃが……その対象は物だけではない。生命、ひいては人でさえも。さらには、時に記憶や運命までも、じゃ」

 ソフィアは大きく目を見開き、わずかに身体を後ろに引いた。
 さらりと流れる細い金の髪が揺れて、宝石のように美しく輝く。

「生命を創り出すだけでなく記憶や、そして因果律までも操作出来ると。ゼウス、あなたはそんなことが許されるとでも思っているのですか?」
「思ってないから今まで隠しておったのじゃろう」

 何の躊躇もなくそう言い放つゼウスに、ソフィアの表情はより一層険しいものになっていく。
 ゼウスを強く睨みつけながら詰問をした。

「何故このようなものの存在を『幹部会』に報告しなかったのですか?」
「だって……独り占めしたかったんじゃもん」
「子供ですか。しかしなるほど、それなら不死鳥はこれによって生み出されたということなのですね。全く、いつの間にこんなものを作って……」

 ソフィアはアカシックレコードに触れようと一歩を踏み出す。
 しかし、ゼウスはいつになく真面目な表情で言葉を発してそれを遮った。

「話はまだ終わっておらんぞ。むしろここからが本題じゃ」

 ソフィアが足を止めて、ゼウスの方を振り返る。
 視線を受け止めながらゼウスはゆっくりと口を開いた。

「まだわしはお主の質問に全部は答えておらんじゃろう」
「……あなたが何を隠しているのか、そしてこの世界で何をしようとしているのか……ですか」

 ゼウスはうなずくことで返事の代わりとする。

「リッジの一件以来、わしがシナリオの進行に拘る理由を気にしておったようじゃからの。もうじきその辺りを聞きにここへ乗り込んで来るであろうことは予想しておった」

 ゼウスはそう言って口の端をわずかに吊り上げた。もじゃもじゃの髭がもさっと動く。
 心中を言い当てられたのが癪で、ソフィアは少しだけ奥歯に力を込めた。

「……答えを、聞かせていただけますか」

 静かに首を縦に振ってから、ゼウスは語り始める。

「わしは先程こう言うたな。引き出しのようなところにシナリオを書いていれたらその遂行に必要なものが生成されると」
「ええ」
「では、シナリオが完遂されたらどうなると思う?」

 どうなるのだろうか。幹部会の中で特に切れ者であるとされるソフィアを以てしても、いかんせん情報が少なすぎて答えを絞り込めない。
 あり得るのはシナリオを書いたゼウスに何かしらの報酬を与えるというパターンだが、神聖魔法で何でも出来てしまうゼウスがそこまでしてわざわざ欲するものがあるのだろうか。

 というかそもそも、このアカシックレコードをゼウスが作ったのならば、ゼウスが出来ないことをこの装置が出来るはずもない。
 神聖魔法は端的に言えば「何でもあり」だが、一応制限というか、出来ないことは存在する。ならばそれはアカシックレコードも同様のはずであり、やはりゼウスがこの装置に何かを願うことなど……。

 そこまで考えて、ソフィアはある一つの可能性に思い至った。

「まさか……これを作ったのが、あなたではない、ということですか」

 ソフィアは自分でその言葉を口にしておきながら、信じられないといった表情をしている。
 ゼウスはどこか嬉しそうにうなずいてその結論を肯定した。

「さすがじゃの。そうじゃその通りじゃ」

 そう言ってゼウスが何度もうなずくのを、ソフィアは黙って眺めている。
 やがて気が済むと、ゼウスは衝撃的な事実を口にした。

「これを作ったのはわしが生まれるよりも前に存在し、今よりも優れた神聖魔法を使うとされた、遥か太古の神。恐らくは……先代のゼウスじゃ」
「先代のゼウス……」

 ソフィアは開いた口を塞ぐことが出来ない。
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