オオカミ女の激変

やの有麻

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発情期は恐ろしいです!

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「はっ、はっ、…………うぅぅ………」


つ、辛い………

夕方になり自分の部屋でゴロゴロしていたら急に体が熱くなりだした。
呼吸が荒くなり動悸が激しくなり手足が痺れたようにプルプル震えだし耳は頭の上でペタンと伏せられ尻尾は太股の内股の方に丸まってしまい、なんともいえない状態になった。
え、なに、これが発情期ヒートですか!?すっごく、なんか、辛いんですけど。辛いの一言しか思い浮かびません。そして信じられない事に下半身がお漏らししたように濡れてる感じがするんですけどっ!

少し経ったのち、お母さんがお盆に水の入ったコップと昼間見せてくれた錠剤の入った小瓶を乗せて中に入ってきた。


「お、母さ………」
「大丈夫よ美桜ちゃん。さぁ、これを一錠、お水と一緒に飲みなさい。」


お盆を机の上に置き上半身を起こしてもらい背もたれにとクッションを背中に置いてくれた。そして手に力があまり入らなかったのを察してくれて薬と水を飲ませてくれた。
どんな薬も時間を置かないと効き目が全身に行き渡らないから、もう少し我慢しなさいと言って横に寝かせてもらい出ていった。うぅぅ………この辛さ、まだ続くの?


_________




「落ち着いたか?」
「あ、お父さん。…うん、大分楽にはなったよ。」
「そうか。あの薬は幸恵が10年以上かけて開発した薬だからな。効くか確証がなかったが…少しでも楽になったのなら良い。」
「お父さん…このヒートってどうやって治めるの?…やっぱり、相手が必要なの?」
「大事な事だから包み隠さず言うぞ───…。」


お父さんが様子見にきて、そのまま発情期ヒートの事を話してくれた。

…うん、大体想像はしていたよ。やっぱ発情といえばセックスだよねー。発情っていわゆる野生本能であって遺伝子を残すための現象であって…やっぱ、そうなるよね。

オオカミ男であるお父さんも、一人で発散するだけじゃ発情期ヒートは収まらないらしく、やはり女性と交えないと収まらないらしい。つまり粘膜接触?しないと本能が収まってくれないらしい。
じゃあオオカミ女の場合はどうなのかというと…子種を中に受け入れないと収まらないらしい。…え?中だし?避妊NG?え、私20歳で子持ちにならなきゃならないの?

…えぇぇぇぇ~………

あ、でもその点に対してお母さんが解決してくれたみたい。なんとこのお母さんが開発した発情期抑制剤にはピルのような避妊薬の効果もあるようだ。
ただ、何度も言うが薬を作ったはいいが使う人、つまり被検体がいないので実際効くのか、副作用や症状などわからないことだらけなので、アフターピルもそうだが100%避妊できるとは限らない。そして発情期ヒートも完璧に抑え込めれるのかもわからない。…私は初めての患者?なわけで、薬を飲んだからと言って何も安心できない状態だった。


「この発情期ヒートは月の欠け具合で変わる。…今でいうと、あと2日経てば満月になる。今は少し欠けてる状態だな。」
「月と発情と何が関係あるの?」
「…月の光には妖力がある。…よく言うだろう、満月の夜には犯罪者が増えるとか。」
「…あーね。人によって満月に向かって財布をかざすと金持ちになるとか、満月の日は最も太りやすい時期だとか、なんか言い伝えみたいなの聞くなぁ~。」
「そうだ。それは俺たち狼族にも恩恵がある。身体能力が上昇したり…繁殖しやすくなったり、な。そして本来の姿にも戻れる。」
「狼の姿になれるの!?あの四足歩行の?」
「ああ。だが今はならないぞ?真っ先に幸恵を襲ってしまうからな。夕食どころではなくなってしまう。」
「あ、はい。」
「…で、その満月に近い時期になるとこうして本来の姿に戻ってしまうんだ。雪夜も美桜もハーフだから満月の夜の時期に半獣化するだけで他は普通に人として生活ができる。ただ満月に近い時期、大体一週間は耳と尻尾はでたままになる。だから雪夜も一週間家に引きこもってるはずだ。」
「そーなんだ。…ん?ハーフだから満月の時期に半獣化するって事は、お父さんは?」
「俺は純血ではないが狼族の血が濃い為、耳と尻尾は出したり隠したりできる。ハーフは月の妖力を浴びて強制的に半獣化する。」
「へぇ~…」


なんか狼族って大変だなぁ~。なんか、自分の事なのに実感が湧かないというか、まだ他人事の様に思えるんだよねぇ~…

…でも、お父さんの次の一言で硬直する事になった。


「…今後、できれば満月の時期には家に帰って来てほしい。」
「え、なんで?お父さんが買ってくれたマンションはセキュリティ万全じゃん。…なんか心配事があるの?」
「…オオカミ女は希少なんだ。」
「うん。」
「…つまり、お前は他の奴に狙われやすいんだ。」
「え、なんで?」
「狼族同士の子孫は強いからだ。…まだ番が見つかってないオオカミ男が近くにいれば、お前は間違いなく捕まって強制的に番にされ無理矢理身籠らせられるぞ。」
「………は?」


え、なにそれ?オオカミ男も稀の存在なのにオオカミ女は更に稀なの?更にオオカミ男に見つかれば強制結婚、強制子作りですか?


「更に、な…お前には悪い情報だろうが………オオカミ女の発情期ヒートはな、フェロモンが凄まじいんだ。それはオオカミ男だけでなく人間の男にも影響が及ぶ。つまり、お前がその場にいるだけで生き物は発情を促されてしまうわけだ。」
「………え」


なにそれ?私が発情すればフェロモンを振り撒いちゃうって事?そしてそれは誰構わずそのフェロモンに反応しちゃうって事?

………うわぁ~…なんか、私、性犯罪者を作っちゃいそうじゃん。ヤバイよそれ。想像したくない。

と、いうわけで満月が近付いたら実家に避難する事になった。

ところで…


「あのさ、お父さんは私の傍にいて反応しないの?」
「ああ、俺には番がいるからな。番が見つかればある程度発情を抑えられるんだ。…だが雪夜はダメだ。あいつはまだ番を見つけてないからな。今ここにいたら美桜に襲いかかっているだろうな。…ちなみに近親相姦は狼族からしたら問題ない。子孫をより多く作る必要があるって事で問題視されない。」
「いやいやいや!日本では問題ですよ!?」


お父さんにいろいろと爆弾を投げつけられて、私、死にそうなんですけど…

とにかくお母さんが作ってくれた薬を服用して、尚且つ発情期ヒートは実家に引きこもるのがまず一番安全という事で話しは一旦お開きになった。


_____



…大分落ち着きを取り戻したので、まずはお風呂に入った。…だって、下着がびっしょりなんだもん。ヒートのせいだとしてもこれは大人として恥ずかしい他ない。
お母さんが予めお風呂を沸かしてくれてたので有り難く使わせてもらった。

それから夕食をご馳走になった。その時お母さんに薬について軽く話した。
まず薬を飲んでどれくらいで熱が下がったか。吐き気とか具合が悪くなったりしてないか。どれくらい効き目があるのか等できるだけ詳しく教えてほしいと言われた。
…そうだね。この薬は私を守るために大事な薬だから協力は惜しまないわ!それに自分のお母さんが作ってくれたんだから当たり前ね。

あ、ちなみにうちのお母さんは薬剤師、お父さんはスポーツトレーナーを仕事としている。…二人とも重役を担ってるらしく忙しそうで、その為か兄と私に高級マンション一室をポイッと買ってくれる程金持ちだ。家は普通の一戸建てなんだけどね。
…なんとなく、両親は私と兄さんが苦労しない為に贅沢をせず貯めてくれたんだと思う。お父さんの教訓なんだろうと勝手に納得した。…若い頃大変な目にあったんじゃないかなぁって。お陰でなに不自由せず好きな仕事に就いて充実した生活を送らせてもらっております。はい。

でも今日から…ちょっと仕事場の店長と出勤の事について話さなきゃならないなぁ~。いっそのこと今の現状を全て話して協力者になってもらいたいわぁ。でもオオカミ女だって知られたらクビにされかねないから様子見なきゃね~…病気?家の事情?うーん、なんて話そう?
まず週休2日なのを1日に減らして…代わりに満月の時期を調べて休みを貰って…
はぁ~………先が思いやられる。


「夜、部屋から出るな。」
「あ、はい。」
「美桜ちゃ~ん、寝る前にお薬飲んでねぇ~?夜中にヒート起こして寝付けなくなりたくないでしょ~?」
「わかったぁ。ありがとう。」


二人に見送られ部屋に入った。
うーん…今日一日いろいろあったけど、ほとんどベッドでゴロゴロしてたからあんまり眠くないんだよね~…
とりあえず眠くなるまでゲームでもしてようかな。


______



…うーん…トイレ行きたくなってきたなぁ…
お父さんに部屋から出るなって言われたけど…整理現象なんだから仕方ないよね?

部屋から出てそそくさトイレへと駆け込み用を足した。
…別に問題なくね?薬のお陰か少し体が熱い程度で普通に歩けるし。

…ん?なんか甘い匂いが奥の部屋から漂ってくるんだけど?なんかこう…チョコレートのようなお菓子の甘さではなく、なんか引き寄せられる感じの、蜂が花の香りに吸い寄せられるような?そんな本能が揺さぶられるような甘い匂いっていうのかな…

あの部屋ってなんだったっけ…?ちょっと行ってみようかな

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