【完結済】VRMMORPGのNPCに転生したオレとプレイヤーのあいつの道は交わらない

豆の助

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「えっ、あなたたちまだ付き合ってなかったの?」

「我が家は朔ちゃんがお嫁に来る用意もうちゃんと出来てるわよ」



柊の誕生日パーティーのためにオレんちに集まってた親たちに、付き合い始めたことを報告しに言ったら、母さんたちにそう言われた。


えっ? この前の智の反応もだったけど、周りからは恋人同士に見えてたんだ。

嬉しくてすっげーだらしない顔になる。

でも待てよ、オレが嫁に行く方? オレが柊を嫁にもらうつもりだったのに! 身長か?身長なのか?

なんにせよ、親にも認めてもらえて、嬉しくて繋いだ手にぎゅっと力を入れる。

これからは、こうしてみんなの前で堂々と手を繋いでも大丈夫なんだ!



「いや、あなたたち小さい頃から手を繋いでないことの方が珍しいぐらいでしょ」

「あれっ?そうだったっけ?」

「……朔くん、おじさんは柊斗のお父さんなのに柊斗と手を繋いだ記憶がほとんど無いんだよ」



なんかおじさんがソファーの隅で落ち込んで、ブツブツ言ってるけどどうしたんだろう?



「翼も一君の部屋から出てこないし、おじさん悲しいよ」



師事したい監督を追いかけて地方の大学に進学校した一(はじめ)兄ちゃんが、この日に合わせて帰って来てて、遠距離恋愛中の柊の姉ちゃん翼さんは、我が家に来るなり兄ちゃんに部屋に連れ込まれたまま出てこない。

娘を持つ父親の気持ちってやつかな?
落ち込むのも無理ないよな~ うちは男2人だから、父さんにはその気持ちわからないんだろうな?



「いや、朔、父さんは今、娘が離れて行く気持ちをフツフツと感じているよ」



なんか父親同士、まだご飯じゃないのに酒を酌み交わしはじめたよ。



よくわからないけど、親同士が仲良いのって嬉しいよな。それにオレたちの付き合いって親の協力なしでは難しいんだよな。

家も離れてるし、オレも一人で公共交通機関使うのまだ難しいし。


ちょっと前に、電話でうっかり『最近柊に会えなくて寂しい』って言ったら、そこから柊が自転車で我が家まで来たことあって、めちゃ怒られた。



「何時でもいいから、会いに行くならちゃんと言いなさい、車出してあげるから」

って。



会いに来てくれたの嬉しいけど、さすがに自転車は危ないし、そうしてもらうことにした。

その日我が家に泊まった柊は、次の日の早朝に迎えに来たおばさんに自転車とともに回収されてそのまま学校の朝練に行った。



そうそう余談だけどダブルベッドに替えても、朝起きると柊に抱きかかえられてるんだよな広いのに。





◇ ◇ ◇





オレと柊が付き合いはじめて2年半がたってオレは高校3年生、柊が高校1年生になっていた。



オレは、ゲームの中のデザインコンテストに応募したことがきっかけで、声をかけてくれたデザイン事務所のアルバイトをしていて、高校卒業後もそこで働くことが決まっている。

柊はバスケ強豪校で有名な高校に進学して、そこでも1年生でエースになっていた。

『オレも早く16歳になって、朔と一緒にゲームしたい』

っていつも言うけど、実際バスケしてたらそんな暇ないだろ?

『そうしたら少しの間でもゲームの中で朔に毎日会えるし』

って、こっちが赤面するようなこと平気で言うし。



じゃあ、柊がゲーム始めたときに、レベル上げとかつきあえるように、オレが先に強くなってればよくない?


「それは、バスケ部なのに毎回レベル上げに付き合う時間がある俺への嫌味かな?」

隣で、オレンジのツンツン髪に格闘着を着たデカいやつがモンスターを素手で倒しながら答える。

「いや、『煩悩』はすっげー進学校のバスケ部じゃん、むしろあの学校行って部活しながらオレに付き合ってくれて感謝しかないよ!あっ、レアアイテムGET」

「…好き」

「プハッ、何言ってんだよ、お前本当褒められるの好きだな~」



オレンジヘアーをワシャワシャと撫でる。



「きもっ」

「うちのギルドのイメージ悪くなるから止めて欲しいよね~」



離れたところでコソコソとそんな声が聞こえる。



「まぁ確かに、2メートル超えのハートエプロンしたムキムキとごっつい格闘家がじゃれ合ってるのって気持ち悪いよな~」



周りから見た姿を想像して、なんとも言えない顔をするオレの隣で煩悩が険しい顔をするので、眉間のしわをモミモミしてやった。



「だいたいギルマスに向ける態度じゃないじゃない」

「オレ、ギルマスじゃないけどね」

「裏ギルマスね」



後ろからそう言いながらギルマスの『金欠男爵』が俺の肩を叩きながらあらわれた。



「おつかれー」

「桜、煩悩おはよう」



そう挨拶しながら、ギルマスと煩悩は何か目配せしながら頷きあっている、



「なんだよ、2人だけの秘密の挨拶みたいなのして~」



プクッと頬を膨らませたオレに対して、2人はなんとも言えない顔をしていた。



「その外見で頬を可愛く膨らませるな」



そう話すプレイヤーネーム金欠男爵は、オレが所属するギルド【スリーポイント】のギルマスで、その中身はゲーム内学校の仲間の三原 優弥である。

普通はギルドルームを持つ人がギルマスをすることが多いのだが、オレはキャンペーンで当たったギルドルームを持ちながらも、のんびりしたいからギルマスはしたくないな~場所は提携するから誰か代わりにしてくれないかな~と思って、優弥に声をかけてみた。



優弥も優弥で、学校にいる時に、このゲームの運営会社に声をかけられて、将来的には就職決まってるんだけど、運営にまわるとゲームを純粋に楽しめなくなるから、就職まではただのプレイヤーとしてゲームを楽しんで欲しい、あと高校卒業後は専門の学校できちんと学んで欲しいと言われて、期間限定でゲームしたいし、ゲーム内でやれることはなんでもしたいというお互いの利害が一致したのでギルマスを任せている。

ちなみに【スリーポイント】は、鍛えた腕の力だけでスリーポイントシュートを決められた記念にオレがつけた名前だ。


んで、さっきからオレのレベリングに付き合ってくれてるのが、プレイヤーネーム『煩悩退散』、通称煩悩、中身は幼なじみの智である。
ギルドメンバーはリアルの友達や、ゲーム内学校の仲間中心で始めたんだけど、なんせ、一番デカい城下町にギルドルームを持つのがちょっとしたステータスなもんで、加入申請がけっこう多い(らしい)

発売当初から稼働している古参ギルドは、トッププレイヤーが多いから、敷居が高くて新人が加入したくても難しいらしくて、その点うちのギルドはオレがゲームの本筋に参加したタイミングで立ち上げたから、まだまだギルドの歴史も浅くて申請しやすいみたいだね。



オレがこのゲームで居場所見つけて助かったみたいに、このゲームした人に楽しんでもらいたいってのもあるから、出来るだけ申請許可してあげてってギルマスには伝えてあるけど、上限もあるし、その辺は優弥が上手いことやってくれてる。
あいつ、中学生になるまでゲームしたことないってのが嘘じゃねっ?そう水を得た魚のようにゲームの世界にどっぷりつかってる。学校でも、新しいイベント考えようとか、新しいモンスター考えようの課題の出来が凄くて、優弥のアイデアがいくつか実装されてるんだ、そんなやつがギルマスだから、新しいギルドの割に【スリーポイント】は一目置かれてたりするんだ。



んで、今日は大きめのイベントにギルドとして参加してたんだけど、普段あまりギルドのチャットとかに参加してないから、オレの筋肉ムキムキエプロンおっさん『桜』を知らないプレイヤー多くて、噂されてるみたいだな。まぁ実害ないならいいんだけど。



それより、イベントが終わったので智に相談があるんだけど、



「なんだよ、惚気なら聞かないぞ、独り身の俺に配慮しろ」



「惚気じゃない、真剣にな相談なんだ」



オレの真剣な態度に、智…今は煩悩だけど、は姿勢を正す。



「実は柊とセックスしたいんだけど、どうやって『わ~ワーわ~』」



ちょっ、話途中で口塞ぐなよ、割り込むなよ。



「惚気より聞きたくないやつだった!」



さっきボス倒した時より疲れてるじゃんどうした?



「ライフ0だわ、何?付き合って2年半たってるのに、まだ清いお付き合いって、普段2人っきりで何してるの?」



「柊も忙しいから、そもそも1日会える日も少ないんだけど、だいたいオレの部屋で、近況喋ったり、泊まりにくる時はそのまま気がついたら寝てること多いんだけど」



「柊斗の忍耐力すげー」



今ボソッと何言った?



「いや、こっちの話、キスぐらいはしてるんだろ?」



「おー、そりゃ、毎回、最近じゃ大人のキッスってやつもしてるぜ、1時間くらい」



「柊斗の忍耐力どうなってるんだ?オレはじめてあいつのこと見直したわ」



だから、ボソッと喋るなよ、聞き取りにくいじゃん!



「わー、遠くの音まで聞こえるレア装備、うさ耳カチューシャを出すんじゃない、その姿で被るな!」



「近くで怒鳴るなよ、煩いなー」



「カチューシャはずせ」



もう、はずせばいいんだろ。



「そんなキスしてるんだったら、柊斗のあそこはどうなってるんだよ? 反応してるんだったらそのまま押し倒したらいいじゃん」



「いつも、オレがとろっとろにとかされて頭ボーッてなって、よくわかんなくなるんだよな~」



「柊斗~(以下同文)もう、幼なじみのそんな下事情聞きたくなかったよ」



もう、本当ボソッと喋…「だから、うさ耳カチューシャかぶるなって!!」


結局、ウヤムヤにされた俺の悩みはその後柊の18歳の誕生日までお預けとなったのだ。





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