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第二章
第九十一話 謎の襲撃
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「──ふぅ。少しは落ち着いてきたか?」
俺達3人がいる場所へと向かってきた分の天使系モンスターの群れの処理が一段落し、絶え間無く続いていたモンスターからの攻撃が一旦途絶えていた。
本隊とも言うべきゲートがある浮島へと向かうモンスターはまだ残っているが、戦っている探索者の数も多いので、あちらの方もじきに落ち着くだろう。
「リーダー、次のが来たみたいですよ。ほら」
マリヤに促された方向へ視線を向けると、そこには確かにこちらに向かってくる新手のモンスターの姿が確認できた。
たった今まで戦っていた天使と同じ種もいれば、情報を知っているだけで実際に見るのは初めての天使系モンスターもいる。
前者は主に下位の天使で、後者に関しては記憶が正しければ、あれらは全て中位の天使系モンスターだったはずだ。
新手の群れの中には既に戦ったことのある中位天使の姿もあるものの、どちらかというと初見の中位天使の割合の方が大きいように見える。
初見の中位天使の情報を記憶から引っ張り出すと、リリアとマリヤの2人に共有していく。
しっかりと情報共有する時間があるかと思ったのだが、先ほどの群れの時とは違って、こちらから誘導せずとも異常暴走の群れが二手に分かれ、その一方が俺達がいる場所へと向かってきた。
今度の群れは中位天使が主体になっているから索敵範囲が広いのだろうか?
「さっきの群れよりも遠距離攻撃の射程は長いから、今のうちに支援魔法を張り直し──」
リリアに対して指示を出している最中、視界の中を一筋の光が通過する。
その閃光が通り過ぎていったのは前方にいるマリヤの頭部。
一目で致命的だと分かる一撃を受けたマリヤの身体が、ゆっくりと倒れていく。
直感的に肩越しに後方を振り返ると、リリアもマリヤと同様に頭部への一撃を喰らったところだった。
無意識に発動していた【思考乖離】のスキルによって引き伸ばされた思考時間の中、2発の閃光の射線から射出地点を導き出すと、すぐさま両手の魔銃を振るう。
バヂィッと凄まじい音を立てて、魔銃の銃身の下部に備え付けられたナイフが何かを弾く。
砕け散った破片から2人を射抜いた閃光の正体が明らかになる。
「矢かッ!」
射出地点を注視すると、そこには弓矢を構えている仮面の人物がいた。
かなり遠くにいる上、何らかの偽装か隠蔽系の能力が発動しているようなので断定はできないが、たぶん男だ。
その仮面の男の手元が光を放った瞬間には、既に目の前にまで迫っていた矢を打ち砕く。
上級、いや、おそらくは王級覚醒者による一撃だと思われるが、今の俺ならば対処できるみたいだ。
最初の奇襲から数秒ほどの間に行われた攻防で仮面の男のステータスを予想していると、視界の端でリリアとマリヤが僅かに動くのが見えた。
どうやら、自壊することで1度だけ致死ダメージを無効化してくれる〈戦天使の護環〉が、その効力を発揮してくれたようだ。
念のため作っておいて良かったと胸を撫で下ろしつつも、2人が無事なのが仮面の男に気付かれると今度は助からないかもしれない。
なので、その前に次の行動に移ることにした。
次々と放たれてくる閃光を弾き、距離的に届かないと分かっている魔弾を乱射して注意を引きながら、魔銃の片方を背後のホルスターに納める。
その体勢のまま、〈宝納の指環〉から〈八咫烏の三翅刀〉を2本取り出し、2本の短刀の内部魔力の属性を爆発属性へと変換する。
更に魔力を追加で充填して起爆寸前状態にすると、異能の第7層能力【座標変換】の転移を使って仮面の男の背後へと送り込んだ。
この状態の短刀を爆発させるには最低限の衝撃を与える必要があるが、都合よく仮面の男が突然出現した短刀を弾いてくれるとは限らない。
加えて、空間転移という現象で移動した物体は、転移する直前まで物体が持っていた運動エネルギーがゼロになってしまうという特徴があった。
そのため、短刀の1本は切先を下にした状態で転移させ、その落下先にもう1本を一瞬後に転移させることで衝突させ、2本共に爆発させることにした。
更なる矢を放とうとした仮面の男が、背後からの大爆発を受けて吹き飛ばされる。
その隙に、俺達に向けて遠距離攻撃を開始し出していた新手の天使系モンスターの群れに向かって、闇属性上級魔法『極闇の爆発』を解き放った。
仮面の男と天使達からの攻撃が途絶えているうちにリリアとマリヤへと駆け寄る。
「2人共生きてるな?」
「どうにか……」
「頭がクラクラします」
致死ダメージは無効化できているみたいだが、頭部に受けた衝撃までは完全に無効化されていないらしく、2人共に顔を顰めていた。
2人に自分が持っている予備の〈戦天使の護環〉を装着させ、新たに生み出した猟獣達を天使達に差し向けて時間を稼ぐと、爆発を喰らった仮面の男の姿を探す。
目視出来なかったため、〈広域マップ〉を開いて確認したところ、先ほどまで仮面の男がいた浮島のあたりから覚醒者を示す光点が1つ、ゲートがある浮島に向かっているのが確認できた。
「やはり生きているか……」
爆発で浮島から突き落とせればよかったが、仮面の男がいる浮島はその程度で空に放り出されるほど小さくない。
まぁ、仮面の男には空中を移動する手段があることも〈広域マップ〉の動きから判明しているため、どのみち突き落とすことは出来なかったようだが。
「クロヤさん、先ほどのはモンスターからの攻撃でしょうか?」
「いや、人間だよ。俺達を殺すのが目的かと思ったけど、反撃したらあっさり退いていったから違うみたいだ」
まるで、何かのオマケで攻撃を仕掛けられたような感覚だな。
この直感が正しければ本命は何だったのか……状況的に異常暴走か?
となると、今回の異常暴走は人為的なものになるが、人為的な異常暴走と言えば確か──。
「リーダーが作ってくれたアイテムが無かったら死んでたかもしれませんね。上級覚醒者の私達が攻撃に気付けないことから、私達よりも格上の覚醒者ですよね」
「そうだな。能力次第では同じ上級覚醒者でもやれるだろうが、たぶん格上の王級だろうな」
鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉が手元にあったら正体が分かったかもしれないのに、タイミングが悪かったな。
爆発で失った2本の短刀を、短刀が持つ【二損一存】の能力で復活させながらマリヤと話している間に、リリアが俺達全員に支援魔法を掛け直し終えた。
もう奇襲は無いと思うが、万が一に備えて〈広域マップ〉は開いたままにしておく。
目の前の浮かぶウィンドウは正直言って邪魔だが、仮面の男のような予想外の敵に備えて、この異常暴走が終わるまでは表示しておくとしよう。
謎の仮面の男からの襲撃から持ち直すと、俺達は新手の天使系モンスター達との戦闘を開始した。
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