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第一章
第十四話 襲撃者
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アリ系モンスターの巣の探索を開始してから1時間が経った頃。
徐々に出現数が増えてきたアリ系モンスターを倒し続けていると、妙な気配を感じ取っていた。
「……やはり尾けられているよな」
そう呟くと、元の短刀サイズに戻した〈八咫烏の三翅刀〉でアリ系モンスターを解体しながら、俺の後方の気配を探る。
索敵系スキルを持っていないので分かりにくいが、俺を監視する人の気配が複数感じられた。
数は3人か4人ってところだと思われる。
偶々進む道が同じだっただけならば気付かなかっただろうが、この追跡者からは悪意が感じられた。
自分に向けられた悪意に気付けないようでは長生きできない前世だったからな……。
さて、どうしたものか。
解体の終わったアリ系モンスターの素材を〈宝納の指環〉に収納し終えて立ち上がると、こちらに近付いてくる足音が聞こえてきた。
どうやらこれ以上後を尾けるのは止めたらしい。
「そこのキミ。1人でこんな辺鄙な場所にいたら危ないぞ」
声を掛けてきたのは顎ひげを生やした30代ほどの戦士風の男だった。
その背後には男と同年代か少し下ぐらいの外見の3人の男女の姿が見える。
剣と盾を持つリーダーらしき戦士風の男以外は、大剣を持つ男、長杖を持つ女、無手の女といった陣容だ。
剣士系、魔法使い系、最後もたぶん魔法使い系ってところだろう。
鑑定系アーティファクトである〈月神の賢眼〉を使えば4人のステータスも分かるだろうが、目の前で使用したら魔力の動きでバレる可能性がある。
攻撃を仕掛けるにしても、こちらからは動きたくないからな。
「お気遣いどうも。ですが、慣れてるから大丈夫ですよ。そちらこそ気を付けた方がいいですよ。こんな辺鄙な場所では、モンスターだけでなく同じ人間にも気を付けなくてはなりませんからね」
「は、はは。そうだな。確かに気を付けないといけないな……」
予想外の返しだったからか、目の前の4人の肩が僅かに跳ねたのが見えた。
やはり俺を襲撃するのが目的だったか。
勘違いの可能性も考えたが、どうやら勘違いではないらしいな。
「おや、どうかしましたか? 周りに気を付けているから気配を隠しながら移動してきたのでしょう? まぁ、その気を付ける対象が人かモンスターかは知りませんけどね」
「……気付いていたのか」
俺が言いたいことが分かったのか、4人の気配が一変する。
気付かれていたならば、これ以上は時間の無駄だと思ったのだろう。
その意見には俺も同意見だ。
「まぁ、あんなに欲塗れな視線を向けられたら流石にね。俺ってこう見えて経験豊富だからな」
「経験豊富なわりには状況が分かっていないみたいだな。同じ中級なら人数が多い方が有利なんだよ」
感知系スキルが無くても、慣れれば相手が無意識に発する魔力を感じ取るぐらいはできる。
その魔力を含めた気配を正確に感知できれば、相手の大体の力量を推測することが可能だ。
勿論、気配を隠されたり偽られたりしたら分からなくなるのだが、そういった能力はレアなので普通は考えなくていいだろう。
目の前の4人にそんな知識があるかは知らないが、俺が発する気配から同じ中級覚醒者だと判断したのだろう。
「一言に中級だと言ってもピンキリだろうに、凄い自信だな。一応聞いておくが目的は?」
「今から死ぬお前に教えてやる義理はない」
「ほう。他人のモノを奪うことを意気揚々と語るのを恥じるぐらいの羞恥心はあったのか。いや、悪いな。野暮なことを聞いてしまったよ」
「ッ! やっちまえッ!!」
怒りか羞恥かで顔を真っ赤にしたリーダーが叫ぶと、仲間の魔法使い風の女が風の刃を発してきた。
その不可視の刃を同化させた〈月神の賢眼〉で可視化してから躱わすと、目の前に〈システム〉のウィンドウが出現した。
クエストが出るかと期待して時間を稼いでいたが、やっと出してくれたか。
○クエスト『強盗覚醒者達を倒せ』
悪意を以て攻撃を仕掛けてきた4人の覚醒者を全て討伐してください。
戦闘時間が長引くと周囲のモンスターが寄ってくるでしょう。
⚫︎全て討伐
→倒した対象が持つ力の一部が異能所持者に変換されます。
・スキル【鉄身】
・スキル【剛撃】
・スキル【風塵魔法】
・スキル【植物支配】
・各種能力値ポイント+3
基本的には以前チンピラ三人衆を倒した時と同じみたいだな。
ただ、全て討伐前提な上に時間制限付きなので、人数的にも難易度が上がっている。
その代わり成功報酬が美味しいので、これはヤル気がでるな。
「うおおぉぉっ!!」
「あんたは後回しだ」
「ガッ!?」
リーダーが盾を構えたまま突進してきたので、異能【万物変換】の第4層能力【肉体変換】で素早さを上げてから、彼を踏み台にして敵の後衛へと向かう。
大剣の男が空中にいる俺を斬り捨てようとしていたので、彼に向かって先ほどの解体中にこっそり収納しておいた土をばら撒いてやった。
「く、くそっ!?」
目に土が入って視界を潰された大剣の男は無視して、攻撃魔法を放とうとしている魔法使いの女に向けて短刀を投げた。
魔法の発動を中断して魔法使いの女が慌てて回避する。
その回避先へと向かうように、投げた短刀に向けて複合系アーティファクト〈支配の王環〉の物体操作能力を発動させた。
簡単に言えば〈念動力〉であるこの力を使って短刀を空中で動かし、魔法使いの女の背中へと短刀を突き刺した。
位置関係的に仲間に攻撃がヒットしたのに気付いていない無手の女が、周囲の木の枝を操作しているのが見える。
木を操って空中の俺を叩き落とそうとしているようだが時間をかけ過ぎだな。
収納空間から取り出したアリ系モンスターの甲殻を足元に取り出すと、その甲殻を蹴って地上へと一気に加速する。
背後で木が動いた気配を感じながら、地面に着地すると同時に無手の女の首を刎ねた。
そのまま痛みに踠いている魔法使いの女に素早く近付くと、同じように首を刎ねておいた。
「き、きさま、よくもッ!?」
まだ視界が回復していない大剣の男はまだ気付いていないが、俺が踏み台にしたリーダーは後衛の女2人が死んだのに気付いた。
そんなリーダーを挑発するように手招きすると、激昂したリーダーが先ほど以上に猪突猛進してくる。
我を失った敵の相手をするのは楽なものだ。
魔法使いの女の死体に突き刺さっている短刀を引き抜いて再び両手に構えると、遠くから走ってくるリーダーを無視して、近くにいる視界が回復しかけな大剣の男に向かって襲い掛かっていった。
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