マジカルテキスト

カプ

文字の大きさ
11 / 15

マジカルテキスト11

しおりを挟む
学長室は、外界の喧騒から切り離されたように静まり返っていた。

 集められたのは、ヒューリーワールドでも指折りの実力者たち。
 特級魔法使いと呼ばれる生徒だけだ。

 学長は無言のまま、ひとつの箱を机の上に置いた。

「……見せよう」

 封印術式が解かれる。

 次の瞬間、
 空気が、重く沈んだ。

「……これは」

 誰かが息を呑む。

 箱の中に収められていたのは、
 古びた一冊の魔法書。

 表紙には、かつて読めたであろう文字が、今は焼け焦げたように残っている。

 ただ一言だけ——
 はっきりと刻まれていた。

 【禁断の書】

「……学長、それは」

 学長は頷いた。

「先ほど話題に出た、例の生徒が所持していたものだ」
「現在は、学園の重要危険指定テキストとして保管している」

 特級生徒たちの間に、緊張が走る。

「もし、これを使えば——」

 学長の声は、低く、確信に満ちていた。

「ルシファードラゴンの討伐は、ほぼ確実だ」

 沈黙。

 希望の言葉のはずだった。
 だが、誰一人として安堵しない。

「……ですが」

 その沈黙を破ったのは、
 鋭い眼差しの青年だった。

 カツラギ。

 特級の中でも、冷静さと理論を重んじる魔法使い。

「その書は、“使えれば”の話でしょう」

 学長は否定しない。

「禁断の書は、莫大な魔力を要求します」
「【特級】であろうと、人が扱える領域を超えている」

 カツラギは、一歩前に出た。

「……正直に言います」
「俺たちには撃てない」

 空気が、さらに重くなる。

「仮に発動できたとしても、代償が大きすぎる」
「命、精神、あるいは——存在そのもの」

 彼は、禁断の書から目を逸らさなかった。

「そんなものを使って討伐するなら」
「それは勝利じゃない」

 きっぱりと、言い切る。

「俺は、禁断の書を使うことを拒否します」

 他の特級生徒たちも、沈黙のまま頷いた。

 誰もが理解している。
 これは“切り札”であると同時に——
 越えてはいけない一線だということを。

 学長は、深く息を吐いた。

「……そうだろうな」

 怒りも失望もない。
 むしろ、どこか納得したような声音だった。

「だからこそ、この書は“禁断”なのだ」

 学長は禁断の書を再び箱へ戻す。

 封印が閉じられる音が、やけに大きく響いた。

「ルシファードラゴン討伐は——」
「別の方法を探る」

 だが、その言葉の裏にある現実を、
 この場の全員が理解していた。

 時間は、ない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...