求婚してくれたのは、最愛の人の弟でした~兄の執着、弟の純情~

かべうち右近

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12.終わらない契りの果てに ※

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「あ、ぅう……」

 じんわりと奥に熱く広がる熱に愕然としながらも、長い絶頂の波にアンナはただ喘ぎ声を漏らすしかできない。

「あはっイっちゃったね」

 ロメオの言葉に、ジェレミオは深いため息をつく。怒鳴るのを我慢しているのか、それとも何か別のことを呑み込んだのかはわからなかった。

「僕じゃなくても、ちゃんとアンナは気持ちよくなれるんだよ。よかったね?」

 アンナの耳もとに口を寄せて、ロメオはそんなことを言う。

「……アンナを辱めて、楽しいか?」

 それはアンナが聞きたいことだった。さっきからずっと、ロメオはわざといやな態度をとっているようにしか思えない。契る相手がジェレミオなのをわかっていて、あえて核心に迫ることを言わずにだまし討ちでさっきアンナを抱いたのも、わざとアンナの感情を揺さぶるためなのだとしか思えない。アンナが、そう思いたいだけなのかもしれないが。

「なーに? 事実を言ってるだけだよ」

 ぱっと顔を上げたロメオは、肩をすくめて見せる。そんな彼に、またもジェレミオはため息を吐いた。

「そうだな。アンナは、これからずっと、俺だけで気持ちよくなるんだ」

「んぁ……っ!?」

 アンナに挿入されたままだった男根が、ぐぐっと硬くなった。まだわずかにうねっていた蜜壺にしごかれたせいもあるだろうが、それとは別に怒りにも似た熱情を募らせたのかもしれない。

「アンナ、よく見てもらえ」

「なにを……あんっ」

 声かけと同時に、身体を繋いだまま、アンナの上半身が起こされた。後ろから貫かれたアンナの身体が、ロメオに見せつけるように晒される。体勢を変えられて竿の位置が動いたのさえ、今のアンナには快感を募らせた。

「は……ぁ、ジェレミオ、もう、終わったでしょ……? ねえ……」

「まだだ」

 アンナの身体が倒れ込まないように、ジェレミオはアンナの肩をつかんだ。そうして言下に腰を振り始める。

「あっああっやだぁ……っ!」

 先ほど流し込まれたばかりの白濁が、ぱんぱんと腰を打ちつけられるたびにごぶごぶといやらしい音を立ててかき混ぜられる。愛液と混ざった子種は股からぽたぽたとこぼれてシーツを汚し、その量の多さを見せつける。

「はは、ほんと……やだやだ言いながらよだれ零して。アンナはジェレミオが気に入ったみたいだね?」

「ちが……ふぁっああっだめぇ……っ」

 後ろから突き上げられるたびに、ぶるん、と胸が大きく震える。口から拒絶の台詞を漏らしているが、声になるのはほとんど嬌声だ。そのせいで、口の端からはよだれがこぼれ、もはや目に伝うのは悲しいからなのか、快楽に耐えかねての涙なのかわからない。

「だって、僕とするときも、気持ちよすぎてだめって言うもんね?」

「んぁああ……っ!?」

 ジェレミオは容赦なくアンナに快楽を植えつける。硬い肉杭でアンナのよがるところを抉って、ひっきりなしに喘がせられている。そしてそれを、ロメオはさも愉しそうに言うのだ。

(もう、だめ)

 ぷつん、と何かがアンナの中で途切れたような気がした。強く打ちつけられた腰に胎を揺らされて、何度目かの絶頂を迎える。途端にぷしゃっとアンナは潮を吹いた。

「あっあああっふぁっあんんっ」

 シーツが汚れていく。自身の絶頂の証でびしょびしょに濡れているのがわかっても、アンナはもうよがるのを抑えられない。

「あはっすごいイってる」

 ロメオは手を叩いてからかっている。

(……私って、ロメオにとって、ただのおもちゃだったんだ……)

 ようやくそれを受け入れたら、アンナの顔がくしゃっと崩れた。

「もう名実ともにジェレミオのだね。僕の手伝いはもう必要ないかな」

「んぁっ……あ、ろめ、お……?」

 アンナがロメオに何かを言おうと目を向けたときには、彼はひらりとかわしてベッドから降りている。

「じゃあ僕は立会人らしく、正面の部屋で一晩待機してるよ。二人とも、お幸せに。初夜を楽しんで?」

「ぁ……っ」

「アンナ」

 引き留めの声を上げようとしたときには、ずんっと腰が打ちつけられる。先ほど熱を放ったばかりのはずの肉杭は、まだまだ満足しないらしい。

「ひぁん……っ! ひぁ……っあんんっおかし、くなっちゃ……んぅ……っ」

 まだ痙攣の収まりきっていない中を、ジェレミオがさらに攻め立てる。そのよがる彼女の声が響く中、ロメオはうっすらと微笑んで寝室から出て行ってしまった。

 もう、部屋の中には婚約者同士の二人しかいない。

「アンナ……」

 ロメオの目がなくなった途端に、ジェレミオはアンナの背に身体をぴったりとつけて、慈しむようにうなじに口づけた。ぞわりと鳥肌が立ち、それは胎の奥に響く快楽に変わる。

「アンナ、すまない。今まで、兄さんが嘘をついてたなんて知らなくて。ずっと好きだった。傷つけてすまない。好きだ……好きなんだ。もうお前に悲しい思いなんてさせないから……俺を受け入れてくれ」

 さっきまで激しかったくせに、唐突に甘い突きあげになってジェレミオは耳元で囁く。まるでふたりきりになったからそれを口にするのを許されたと言わんばかりの態度だ。

「あ、ああ……っ!」

「アンナが気持ちいいことが好きなら、俺が満たす。アンナがいいようになんでもやる。だから……」

 ちゅう、と執着を籠めたリップ音を響かせながら、ぐりぐりと奥にこすりつけられる。

「だ、めぇ……」

 ずるずると腰が砕けたアンナの身体をうつ伏せにしたまま、なおもジェレミオは腰を止めない。

「アンナ。お前は……俺のことが嫌いか?」

「ちが……あっあう……」

 言下に口をついたのは否定だ。彼を嫌いなわけがない。

「はっぁんんっ」

「なら、思っていることを、教えてくれ」

 どちゅどちゅと攻め立てられながら、ジェレミオは尋ねてくる。おかしくなりそうなほどの快楽のるつぼの中で、もう考えられるのは一つだけだ。

「き、もちいい……っきもちいい! ふぁああっ気持ちい、い!」

 ロメオの言った通りだった。もう、アンナはジェレミオで気持ちよくなってしまっている。

 彼のことが好きだったし、初めてを捧げたのもロメオだ。けれど、婚約者はジェレミオで、今彼女を抱いているのもジェレミオなのだ。裏切ったのはロメオのほうで、アンナは一つも悪いことをしていない。

『何がだめなの?』

 耳の奥に響いたのは、ロメオの問いかけだった。けれど、彼の言うとおり、だめなことなど、何一つないのだろう。

「そうか……奥が好きか?」

 低い声が耳元で尋ねてくるのでさえ、気持ちがいい。

「んぁっすき、やだぁ……これ……っふあっ好きぃ……っ」

「ああ、アンナ。俺も、好きだ」

 好きの意味が違う。でももう、それでいいのかもしれない。

 叩きつけられる快楽の中で散々に喘ぎ、アンナは結局、一晩中ジェレミオに抱き潰されたのだった。


***


「おめでとう」

「アンナ、ジェレミオ、おめでとう!」

 花の咲く季節に、アンナとジェレミオの結婚式は執り行われた。彼女の胎には、すでにジェレミオの子が育ち始めている。あの契りの夜から、たがが外れたようにジェレミオは好意を口にし、アンナの身体を求めるようになった。

 それを、アンナも受け入れたから迎えた今日だった。

「二人とも、おめでとう」

 祝いの席でそう声をかけたのは、一足先に結婚したロメオだった。夫婦で列席しているから、彼の隣には美しく着飾ったピアッツィ元侯爵令嬢がいる。

「ありがとう。ロメオのおかげで、私、幸せだわ」

 アンナはとろりと笑み崩れて、隣に立つジェレミオにもたれかかった。けれど彼女の目にはロメオなんか映っていない。そんなアンナの姿にも、ロメオはいつも通りの笑顔のままだ。けれど彼の視線は、アンナの腰に添えられたジェレミオの手に注がれている。

「そう」

「兄さんも、幸せに」

「もちろん幸せだよ、ね?」

 静かな声で言ったジェレミオに、いつもと変わらない笑顔でロメオは隣の妻に話しかける。彼女はさも満足そうに頷いた。

 そんなカタラーニ夫妻を見ても、アンナの幸せそうな笑みはいっさい崩れなかった。嘘などつけないアンナのことだ。心からの笑顔なのだろう。

 ほんのりとロメオの目が細められる。けれど、その一瞬だけだった。

「本当に、お幸せにね」

 そう言って会話を終わらせると、新郎新婦とカタラーニ夫妻は離れていった。
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