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【番外編】
【番外編2】悪戯好きの夫に振り回されて ※
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「おい、今日こそはお前を潰してやるからな」
そう声をかけてきたのは、ニヤニヤ笑いを浮かべた先輩騎士だった。それは晩餐で厳しい訓練の合間にひとときの息抜きを許されたときのことである。何度もジェイミーを組み敷こうと企んでは返り討ちにあう先輩騎士の中には、酒で飲み比べを挑んできて、『俺が勝てば言うことを聞いてもらう』だなんてことを言い出す不届き者がいたりもした。だが、そんな先輩騎士に対して、ジェイミーはただ笑って応じるのだ。
「いいですよ。奢ってくださるなら」
澄ました顔でそう請負い、次々と酒の注がれる酒杯をジェイミーはどんどん空にしていく。そうして、一時間後には先輩騎士が『参った』というハメになるのだ。その日も先輩騎士を一人沈没させて、ジェイミーは飲み比べ勝負に勝利した。
ある時は三人まとめて飲み勝ったこともある。
つまり、ジェイミーはうわばみのように酒に強かったわけだ。だがそれは、残念ながら男の身体のときの話に限ったことであったらしい。
*
「お前、この酒が好きだったろう」
結婚してからしばらく経ったある日の夕暮れに、夕飯よりも少し前の時間になってクリフォードがジェイミーの部屋を訪ねて来た。近頃のジェイミーは執務室を与えられて、このウィルズ男爵家の女主人としての執務を行うようになってきた。この日もジェイミーは、帳簿を睨んでどうすべきかと頭を悩ませていたところだ。
ちなみに悩ませている理由は、クリフォードが結婚直前にジェイミーの身の回りの品を散々に買いまくったせいで無駄遣いが多かったことの補填をどうすべきかというものだ。そんな中で酒を持ち込まれたものだから、ジェイミーはいささかげんなりとした顔でクリフォードを見やる。
「その酒の値段、ちゃんと覚えているか?」
好きだったといっても、それは先輩騎士の財布で呑むことが前提である。クリフォードが用意したとなれば、それはすなわちジェイミーの財布と同義だ。高いとわかっている酒を祝いごとでもない日にほいほいと差し出されても、複雑な気持ちになってしまう。
「高いってことを言いたいなら、これはずっと保管してたものだからな。値段は関係ない」
「……そうだとしたら、余計に値が張るものじゃないか」
年数が経っているのであれば、作られた年代にもよるだろうが、価値が高くなっている可能性もある。だとすれば、なおさらなんでもない日に呑むべきではないだろう。
だがクリフォードはジェイミーの呆れの目も気にせずに、もう栓を開けている。ご丁寧に酒杯も二つ持ってきているから、ジェイミーが何を言おうとここで一緒に呑むつもりだったらしい。
「いやか?」
「……せめて食事のときに一緒に出せばいいものを」
文句を言いながらも、差し出された酒杯を受け取り、ジェイミーは酒を注がれるのを受け入れる。だが、手元に開いた帳簿は閉じないままだ。
「一杯だけだぞ」
「ああ」
満足そうにクリフォードは言って、酒杯を掲げて乾杯の合図を送る。そうしてジェイミーもそれに倣って酒に口をつけた。この酒がいつごろ作られたものなのかジェイミーにはわからないが、この身体になって初めて飲むはずのそれは、飲み慣れた味がする。
「同じ味だな。懐かしい」
先輩騎士たちが飲み比べをするときに、こぞってジェイミーに勧めていた酒だった。飲み口が辛く、そしてアルコール度数が高い。効率よく人を酔い潰させるために作られたとしか思えない酒である。
「何かつまめるものでも用意したほうがよかったか?」
「いや。じきに夕食だろう? 一杯だけだし、いらない」
クリフォードの問いにそう答えてジェイミーはまた一口煽る。昔はさほど感じなかったのに、喉と腹を焼くようなアルコールの強さを覚えて、ジェイミーは眉間に皺を寄せた。
「大丈夫か?」
「ああ……」
ひとまず酒杯を置いて、ジェイミーは再び帳簿に目を落とす。その彼女の背後に回ったクリフォードが机を覗き込んだ。
「何を見てるんだ?」
これはおそらくクリフォードが傍にいるのにどうして仕事をしている、という意味だろう。もう少し言えば、酒を飲んでいるときくらい手を休めろという意味でもある。だが、ジェイミーは半眼になってクリフォードを振り仰いだ。
「お前の無駄遣いを検めているんだ」
「無駄遣い?」
「……私のために、色々と買いすぎだろう」
「ああ」
そのことか、と息を吐いたクリフォードは酒杯をデスクに置くとジェイミーの頬に口づけた。
「真面目な話をしているんだが」
ぐいっと顔を押しのけたジェイミーをものともせずに、クリフォードは彼女の華奢な身体を抱え上げて、あろうことか膝に乗せて自分が執務椅子に納まる。
「真面目な話を、しているんだが?」
むっとしたジェイミーはクリフォードの膝の上でもう一度くりかえす。だが、彼女が暴れずに彼の腕の中に納まっている状態なのがそもそもおかしいことに気づいていないあたり、ずいぶんとスキンシップに慣らされてしまっているようだ。
「ん。無駄なんかじゃない」
片手でジェイミーを後ろから抱き込みながら、クリフォードは彼女の肩越しに帳簿を見る。指でいくつかの出費を辿って確認して、クリフォードはしっかりと頷いた。
「無駄だろう、どう考えても。服なんか、いくらでもあったのに……」
「令嬢が身に着けるドレスと男爵婦人が身に着けるべきドレスでは型が違うからな。手直しして着ようにも、生地の種類そのものが違うから使いまわしをするのは良くないそうだ。仕立て屋にはそう聞いた」
「……そう、なのか?」
装飾品類に興味のないジェイミーは、そう説明されれば納得せざるを得ない。本当は、令嬢時代のドレスを手直しして着ても問題ないし、室内ドレスにいたっては以前と同じものを身に着けているのだから、クリフォードがいくつも注文する必要はなかったのだが、うまく丸めこまれてしまっている。
「で、でも家具を買いそろえる必要はなかっただろう!」
「この屋敷の家具は、兄たちが最低限のものを残して処分していたからな。そのあと俺も買い足していなかったから、お前が使うチェストとかがなかった。だから買いそろえるのは当然だろう」
人一人分の家具が足りなかったから買い足したのは当然だというわけである。
「……だとしても、高級品を買う必要は……」
「どうせ買うのは一度きりなんだ。ならいいものを準備しておいたほうがいいに決まってる。間違ってるか?」
「……違わない……けど……」
家具なんてものは、良いものであれば代々受け継いでいくもので、そうそう買い替えるものではない。とはいえ、やはり男爵家の普段の出費から考えたらずいぶんと高い出費に思えて、ジェイミーは口を尖らせて黙り、帳簿の次のページをめくってもう一度酒杯を煽った。やはりアルコールが腹を焼く。
「はぁ……」
「なんだ、疲れたのか? 根を詰め過ぎだろう」
「誰のせいだ」
息を吐いたジェイミーに、くつくつと笑いながらクリフォードが声をかける。相変わらず後ろから抱き込まれたままの姿勢にも関わらず、ジェイミーは違和感を覚えていないのがおかしな状況である。さらに一口酒を飲んで、ジェイミーは帳簿に目を落とした。
「なあ」
「ん?」
ジェイミーが帳簿を指さして、クリフォードを振りむこうと首を動かす。
(近いな)
存外顔がそばにあったのに驚きながらも、ジェイミーは話を続ける。そうしようとしたのだが。
「む」
唇が柔らかに重なって、軽くついばまれてリップ音を立てられる。
「何をするんだ」
文句を言って顔を背けようとしたところで、クリフォードが片手で顔を引き寄せて唇をまた重ねる。
「なんだ、こうしたいんじゃなかったのか?」
至近距離で笑んだクリフォードが言うが、明らかにからかっているに違いない。
「違う」
ぐっと顔を押しのけて、前を向き直ると、ジェイミーはこくこくと酒を煽って帳簿に目を落とした。
「ここの出費履歴についてなんだが……」
「うん?」
肩にクリフォードの顎が乗る。それがくすぐったくて、ジェイミーは身震いしたが、反応していては彼の思うつぼだ。無視することにして、話を続ける。
「これは定常て、きに……こうにゅう……っクリフォード!」
喋り続けようとしたが、どうにも声が震えて難しい。というのも、クリフォードの手がジェイミーの身体をまさぐり始めたからだ。最初は腰をがっちりと捕まえていたのが、腹をさすりやがて手が上のほうに伸びて、胸をふにふにと揉み始める。厄介なことに、ジェイミーはいつものごとくコルセットのいらない室内ドレスを着ていたから、彼の手の感触がほぼダイレクトに伝わってしまう。胸の尖りを直接つままれるほどではないにしろ、布越しに彼女の敏感なところがぷっくりと固くなってしまっているのは、クリフォードにすでに伝わっているだろう。
抗議の声をあげたにも関わらず、まだ彼はジェイミーの胸を弄んでいる。
「なんだ?」
彼女の肩に顎を乗せたまま、クリフォードは笑いを含んだ声で尋ね返す。
「真面目な話をしてる最中に、……んんっ悪戯をするな!」
クリフォードの手をおさえつけたが、構わず彼の指はふにふにとジェイミーの胸を揉んでいる。それが腹立たしいが、今クリフォードと目を合わせて文句を言おうとすれば、きっとまた唇を重ねられて、今度は深く吸われるだろう。
「俺はもう仕事は終わりの時間なんだ。それに付き合ってやるんだから、お前だって俺に譲歩するべきだろう? ほら、聞いてやるから言え。ちゃんと答えてやるし、お前が喋れるように口は塞がないでやるから」
「……く……ぅう……」
すでに日は傾いている。酒を持ってきたところあたり、クリフォードの今日の執務はもう終わっているからこそ、ジェイミーにちょっかいをかけにきているのだろう。ジェイミーだってすでに今日やるべきことは終わっていて、その上で過去の帳簿を見ているのだから、いわばこれは趣味のようなものなのだ。それにクリフォードを付き合わせているのだと思えば、文句も言えなくなるジェイミーである。もちろん、本当ならばこんなふうに膝に乗せて悪戯をしていること自体、褒められたことではないのだが。
「わ、かった……ん。ぅ……」
服を脱がされたり、股を愛撫されないだけマシだろう。そう考えてジェイミーはクリフォードの手を抑えていたのを離して、再び帳簿を指さす。
「これ……だけど……ふ、定常的に……」
「ああ、それか。それは……」
ジェイミーの尋ねに対し、クリフォードは真面目に答えてくれている。だが、先ほどからクリフォードの顎が肩に乗っているせいで、囁くような低い声がどうにも耳に直接響いてくすぐったい。しかも、相変わらずクリフォードの手は胸を弄っていて、服越しではあるものの胸の尖りを指先でくにくにと押してくるものだから、だんだんとジェイミーの身体が火照ってくる。この時点で、ジェイミーは自身の身体に起きている異変について、気がついていなかった。
いくつかの質問をしながら、酒を口に運び、胸を弄られることで息を漏らしつつもジェイミーは帳簿で気になったことを一つ一つ確認を進めていく。だが、酒杯が空になるころになって、頬が焼けるように熱く、ジェイミーは段々と言葉が怪しくなってくる。
「くりふぉ……ど、いいかげん……あぅ……やめ……ん、ふ……ぅっ」
「どうしてだ?」
「は、ぁ……ぅう……これ、じゃ……は、喋れ、な……ぁ、あ」
ジェイミーの身体は脱力していて、ほとんどクリフォードに寄りかかって全身を預けているような状態だ。意識もふわふわとしていて、いつの間にか一杯だけと告げていたはずの酒杯に二杯目以降の酒が注がれていたことにもジェイミーは気づいていない。
「なんでだ、ちゃんと口は塞がないでいてやっているし、触るのは胸だけにしてやってるだろう?」
「あぅ……っ」
確かに手で触っているのは胸だけだ。だが、時折耳を甘噛みされて、クリフォードの唇がジェイミーの耳を弄ぶ。ついでに言えば、最初は脱がしていなかったドレスのボタンがいくつか外されて、今は下着越しに胸を愛撫されているせいで、刺激もより直接的になっている。
「だ、って……ぁ、ああ……っや、だぁ……かたい、の……当たって……んんぅ……っ」
耳から受ける刺激を避けようと身体を捩れば、腰にクリフォードのものが当たる。それは熱を孕んで欲を訴えていて、胸や耳への愛撫ですっかり火の灯ったジェイミーを刺激した。もうこうなってくると、彼女の理性はぐずぐずである。
「いじわる……するなぁ……!」
さらに身をよじったジェイミーは、すがるようにクリフォードの首に腕を回してぴったりとしがみつく。どうやらそれで彼女はクリフォードの愛撫を阻止したつもりらしい。
「これはまた……ずいぶん可愛らしい酔っ払い方をするもんだな?」
「……? 酔って、ない」
クリフォードの肩近くに頭を預けながら、ジェイミーはぽやんとした声で答える。どうやらこの期に及んで自分が酔っぱらってないと思っているらしい。うまくいいくるめられて、身体をとろとろにされ、意識だってふわふわとしている癖に、である。
そんな彼女の様子にくつくつと笑いながら、クリフォードはジェイミーの背中に腕を回してするりと腰のあたりを撫でまわす。
「あっ……や……ぁう、さ、わるの……胸、だけってぇ……」
たださするだけでも敏感になった今のジェイミーには愛撫に等しい。彼女の秘所はとろとろに愛液を零していて、すでに中を穿つものを求めている疼いている彼女は文句を言いながら腰を揺らしている。
「もう質問は終わったんだろう?」
「うぅ……?」
「なら触ってもいいんじゃないのか?」
まだ質問は残っていたはずなのだが、たかだか二杯ほど酒を煽っただけで酔っぱらってしまったジェイミーはもうその内容を思い出せない。むうっと唇を尖らせて、無言でクリフォードの背中をぽかぽかと叩いた。
「なんだなんだ」
「くりふぉーどのせい、だ……!」
変わらず腰を撫でまわしていたことへの抗議のつもりだったらしい。
「わかったわかった。触らなきゃいいんだな?」
くつくつと笑いながら、ぱっとクリフォードは両腕をあげてジェイミーに触れるのをやめる。
「え……っ?」
「お前は触って欲しくないみたいだからな。俺はそろそろ行くとする」
膝に乗せていたジェイミーをもう一度抱えて、クリフォードはさっと立ち上がると彼女を元通りに椅子に戻して、酒瓶を取り上げた。
「真面目にやってるのに邪魔して悪かったな?」
「あ……え、くりふぉー……」
「また後でな」
クリフォードは彼女のつむじに軽くキスを落として、そのまま踵を返す。しかし、その足は踏み出されなかった。
「……俺のせいで作業が進まないんじゃないのか?」
「うぅ……」
クリフォードの服をつまんで彼を引き留めたジェイミーが、真っ赤な顔で呻く。それを面白そうに振り返ると、クリフォードは酒瓶をもう一度デスクの上に置いて彼女の顔を覗き込んだ。
「ん?」
薄く笑みを浮かべたままクリフォードが見るのに、ジェイミーはまた「うぅ」と小さく声を漏らした。思わず引き留めてしまったのが恥ずかしいのだろう。だが、もう我慢が効かなかったらしい彼女は、眉間に深く皺を刻みながらも夫の服をつん、とさらに引っ張る。
「……最後まで」
「うん?」
「最後まで、してくれないと、いやだ……」
そこで俯いてしまう。この悪戯は、完全なるクリフォードの勝利だろう。くつくつと笑いを漏らした彼は、ジェイミーの顎に手を添えて顔を上向かせると、軽く口づけた。
「触って欲しいところを見せてみろ」
「そんな……!」
「して欲しいんだろう?」
この年上の夫は存外に意地悪である。焦らされ待たされた期間が長いせいなのか、たまにこうしてジェイミーの行動で愛を示させたがる。
「でも……ど、うすれば、いいか……わからない」
ぽつりと呟いた二回りも年下の妻に、クリフォードはすぅっと腕を伸ばして椅子を動かしジェイミーの身体を自分の方に向けると、そっと彼女の太ももに触れる。
「簡単だろ? 股を開いて、スカートを持ち上げるんだ」
ひそ、と小さな声で囁いてやれば、酒で赤かったジェイミーの頬が、更に熱くなる。耳まで真っ赤にした彼女はもはや涙目だが、「どうする? やめるか?」と低く甘く囁かれて、やがておずおずと椅子に腰掛けたままで、股を開き始める。
「いい子だ。だがな、ジェイ。スカートを持ち上げただけじゃあ、見えないよな?」
「……っ」
つまりドロワーズも脱いで、秘所を丸見えにしろと言っているのだ。頭が回らなくなっているくせに、そんな卑猥なことばかりすぐに気がついて、ジェイミーは震える。いやだと突っぱねてしまいたいのに、彼女の身体はもう我慢が利かないので仕方ない。
「うぅ……」
自身の足首に手を添えると、ジェイミーはするすると足を辿って、スカートの中へと手を進め、やがて腰でとまっているドロワーズに行きあたる。紐を解いて、腰の布に手をかけて、ドロワーズをずらすために腰を浮かしたその瞬間である。
くちゅ、と水音が鳴った。すでに蜜壺からあふれ出た愛液がドロワーズに張りついていて、それが剥がれた音だった。
「……クリフォード……!」
助けを求めるようにジェイミーは夫を見るが、彼はまだ太ももに手を添えているだけで見守る姿勢だ。
「まだ見えてないぞ?」
「……意地悪だ……」
「そうでもない。お前がやりたいように任せているだけだぞ?」
ジェイミーが最後までシたいというから、クリフォードはここに残って、待ってくれている。そう言われて、ジェイミーはまたも黙り込む。愛液で濡れたドロワーズをさらにずりおろせば、濡れた生地が太ももに当たって、余計に卑猥に感じる。つま先まで下ろしきりドロワーズをほおると、震える手でスカートの裾に手を伸ばした。そうして、ゆっくりと股を開きながら、スカートを持ち上げる。
「……こ、れで……いいか?」
椅子にもたれかかりながら、両手でスカートを持ち上げて、秘部だけを晒す。胸元のボタンは外されているものの、肌は露わになっていないにも関わらず、性交渉をするための一番大事な場所だけを見せびらかしている。白い足は羞恥で薄桃に染まって、その奥の濡れそぼった愛液が、太ももまで汚しているのがよく見えた。夕暮れから始めたせいで灯りもないすでに薄暗くなった部屋の中でなお、彼女のいやらしい部分が浮かび上がっているかのようだ。赤らんだ顔を隠すかのようにスカートを引きあげて口元を隠したジェイミーは、それがより股を見せつけているのに気づいていないのだろう。
「ああ、上出来だ」
震える声で尋ねたジェイミーを褒めてクリフォードは微笑んで、椅子の前に跪いた。そして彼女の太ももに添えていた手でぐっと足を持ち上げると、より大きく彼女の足を開かせる。おかげでジェイミーの秘所がぱっくりと開いて、ぬらぬらと密を垂らしてヒクついた入り口が丸見えだ。
「やっ」
「今悦くしてやる」
羞恥にジェイミーが声を上げた次の瞬間、彼女の声は嬌声にとって変わる。股に顔を寄せたクリフォードが、舌で彼女の密を舐めとって吸い上げた。
「ひぁあああ……っくり、ふぉー……ぁあっそんな、あっんんんっ」
じゅるじゅると音をたてて蜜を吸いながら、クリフォードは指で肉の芽をにゅくにゅくとこする。先ほどまで胸しか愛撫されていなかったにもかかわらず、もう蜜壺はとろとろになっていた。早く奥を触れとヒクついて新しい密を次々と零している。
「や、ぁあぅ……なめ、るなぁ……っ」
「触って欲しいところなんだろうが、ここが」
「ひゃうっ」
ぴん、と肉芽を弾いてやれば文句の声はたちまちよがり声になる。指をまとめて二本潜り込ませたが、ジェイミーの熱く熟れたそこは簡単に指を受け入れて、奥へ奥へと誘おうとする。
「や、ぁ、あ、あ……そ、こぉ……押しちゃ、ぁっぁんんっ」
「一回イけよ、ほら」
ぐぐっと指で内壁を圧された途端に、ジェイミーの腰がびくんと跳ねる。
「ふ、ぅううう……っ」
絶頂に至ったジェイミーは、ぎゅうっとスカートを握りこみ、椅子の背もたれに強く背中を預けた。かくかくと揺れる蜜壺は、クリフォードの指を咥え込んで締めつけているが、その痙攣が終わらないうちに、彼は指を引き抜いてしまう。
「あ……っ?」
中を埋めるものが消えた違和感に声を上げたジェイミーの前に立ち上がり、クリフォードは彼女の唇に指を触れさせた。ジェイミーの蜜でどろどろになっているそれを口の中に突っ込むと、ジェイミーは抵抗なくちゅぷちゅぷと音を立ててそれを舐め始めた。
「ん、んぅ……っ」
ジェイミーに愛液を掃除させているクリフォードは、一方の手ではいつの間にかズボンを寛げて、凶悪に猛ったものを露わにしている。
「くりふぉー、ど……」
口から指を抜くと、とろん、とした彼女が甘えるような声を出した。それに薄く笑みを浮かべたクリフォードは、片膝を椅子に乗せて彼女の身体に身を寄せながら、柔らかに口づけを落とす。
「今挿れてやるから、そう慌てるな」
両手でジェイミーの腰をつかむと、軽く浮かせて椅子の際に引き寄せる。そうして屹立した肉棒をあてがった。
「は、やく……」
彼女が縋るようにクリフォードの首に腕を回したのと、彼の肉棒がジェイミーの蜜壺を割って入っていったのはほとんど同時だった。
「んぁぁあああああ……っ!」
痙攣が納まったばかりの蜜壺が太いものを迎えて歓喜にうねる。熱く潤った蜜壺はぎゅうぎゅうにクリフォードの竿を締めつけながら、最奥まで入るのを許した。
「動くぞ」
「ひぁ……っぁ、ぁあっ、ん、はっぁぅうう……っ」
返事も聞かずに始まったピストン運動に、ジェイミーはただよがる。奥を叩く肉棒に快楽を覚え、酒に酔ってただただクリフォードが与える熱に夢中になった。そうして溢れた蜜と子種がドレスを濡らし、執務椅子さえも汚して汗だくになるまで、情事にふけるのだった。
彼女が正気に戻ったのは、二度ほど子種を胎に受け、あまりの気持ち良さに気絶し、一刻ほど寝入って目覚めた後のことである。そのときには、なぜかジェイミーの身体は清められて夫婦のベッドに横たわっていた。時刻はもはやベッドに潜って寝るべき時間である。つまりジェイミーたちは夕飯の時間を夫婦そろってすっぽかしていたうえ、恐らく情事にふける嬌声のせいで、メイドたちには全てが筒抜けだ。
彼女が時間を気にせず快楽に溺れたのも、最後に気絶してしまったのも、恐らくジェイミーが酔っぱらっていたせいだろう。前世は一人で何本でも酒瓶を空けられたというのに、ずいぶんと酒の弱い身体になったものである。
酷いことに、妻の顔を飽きることなく眺めていたクリフォードは、目覚めて全てを察し、羞恥に震えるジェイミーの様子までをもつぶさに観察している。
「……もう……もうお前の持ってきた酒なんか飲まない!」
布団の中で叫んだジェイミーに、くつくつと喉を鳴らして笑う。
「ああ。俺以外が持ってきた酒も飲むなよ」
「誰が飲むか!」
あんな醜態を晒してしまって、とジェイミーが布団を被って顔を隠した隣で、なおもクリフォードは笑っている。悪戯は大成功だったが、クリフォードは一方でこうも考える。
「……本当に、前世が酒に強くて、酒に弱いのが今でよかった。おかげで可愛いお前を俺だけが一人占めできる」
布団越しにつむじのあたりに口づけを落とせば、クリフォードの小声のせりふをジェイミーはしっかり聞き取っていたのだろう。びくんと震えて一言「変態!」と叫ぶ。残念ながら、これからもジェイミーは夫の悪戯に振り回されることになりそうだ。
そう声をかけてきたのは、ニヤニヤ笑いを浮かべた先輩騎士だった。それは晩餐で厳しい訓練の合間にひとときの息抜きを許されたときのことである。何度もジェイミーを組み敷こうと企んでは返り討ちにあう先輩騎士の中には、酒で飲み比べを挑んできて、『俺が勝てば言うことを聞いてもらう』だなんてことを言い出す不届き者がいたりもした。だが、そんな先輩騎士に対して、ジェイミーはただ笑って応じるのだ。
「いいですよ。奢ってくださるなら」
澄ました顔でそう請負い、次々と酒の注がれる酒杯をジェイミーはどんどん空にしていく。そうして、一時間後には先輩騎士が『参った』というハメになるのだ。その日も先輩騎士を一人沈没させて、ジェイミーは飲み比べ勝負に勝利した。
ある時は三人まとめて飲み勝ったこともある。
つまり、ジェイミーはうわばみのように酒に強かったわけだ。だがそれは、残念ながら男の身体のときの話に限ったことであったらしい。
*
「お前、この酒が好きだったろう」
結婚してからしばらく経ったある日の夕暮れに、夕飯よりも少し前の時間になってクリフォードがジェイミーの部屋を訪ねて来た。近頃のジェイミーは執務室を与えられて、このウィルズ男爵家の女主人としての執務を行うようになってきた。この日もジェイミーは、帳簿を睨んでどうすべきかと頭を悩ませていたところだ。
ちなみに悩ませている理由は、クリフォードが結婚直前にジェイミーの身の回りの品を散々に買いまくったせいで無駄遣いが多かったことの補填をどうすべきかというものだ。そんな中で酒を持ち込まれたものだから、ジェイミーはいささかげんなりとした顔でクリフォードを見やる。
「その酒の値段、ちゃんと覚えているか?」
好きだったといっても、それは先輩騎士の財布で呑むことが前提である。クリフォードが用意したとなれば、それはすなわちジェイミーの財布と同義だ。高いとわかっている酒を祝いごとでもない日にほいほいと差し出されても、複雑な気持ちになってしまう。
「高いってことを言いたいなら、これはずっと保管してたものだからな。値段は関係ない」
「……そうだとしたら、余計に値が張るものじゃないか」
年数が経っているのであれば、作られた年代にもよるだろうが、価値が高くなっている可能性もある。だとすれば、なおさらなんでもない日に呑むべきではないだろう。
だがクリフォードはジェイミーの呆れの目も気にせずに、もう栓を開けている。ご丁寧に酒杯も二つ持ってきているから、ジェイミーが何を言おうとここで一緒に呑むつもりだったらしい。
「いやか?」
「……せめて食事のときに一緒に出せばいいものを」
文句を言いながらも、差し出された酒杯を受け取り、ジェイミーは酒を注がれるのを受け入れる。だが、手元に開いた帳簿は閉じないままだ。
「一杯だけだぞ」
「ああ」
満足そうにクリフォードは言って、酒杯を掲げて乾杯の合図を送る。そうしてジェイミーもそれに倣って酒に口をつけた。この酒がいつごろ作られたものなのかジェイミーにはわからないが、この身体になって初めて飲むはずのそれは、飲み慣れた味がする。
「同じ味だな。懐かしい」
先輩騎士たちが飲み比べをするときに、こぞってジェイミーに勧めていた酒だった。飲み口が辛く、そしてアルコール度数が高い。効率よく人を酔い潰させるために作られたとしか思えない酒である。
「何かつまめるものでも用意したほうがよかったか?」
「いや。じきに夕食だろう? 一杯だけだし、いらない」
クリフォードの問いにそう答えてジェイミーはまた一口煽る。昔はさほど感じなかったのに、喉と腹を焼くようなアルコールの強さを覚えて、ジェイミーは眉間に皺を寄せた。
「大丈夫か?」
「ああ……」
ひとまず酒杯を置いて、ジェイミーは再び帳簿に目を落とす。その彼女の背後に回ったクリフォードが机を覗き込んだ。
「何を見てるんだ?」
これはおそらくクリフォードが傍にいるのにどうして仕事をしている、という意味だろう。もう少し言えば、酒を飲んでいるときくらい手を休めろという意味でもある。だが、ジェイミーは半眼になってクリフォードを振り仰いだ。
「お前の無駄遣いを検めているんだ」
「無駄遣い?」
「……私のために、色々と買いすぎだろう」
「ああ」
そのことか、と息を吐いたクリフォードは酒杯をデスクに置くとジェイミーの頬に口づけた。
「真面目な話をしているんだが」
ぐいっと顔を押しのけたジェイミーをものともせずに、クリフォードは彼女の華奢な身体を抱え上げて、あろうことか膝に乗せて自分が執務椅子に納まる。
「真面目な話を、しているんだが?」
むっとしたジェイミーはクリフォードの膝の上でもう一度くりかえす。だが、彼女が暴れずに彼の腕の中に納まっている状態なのがそもそもおかしいことに気づいていないあたり、ずいぶんとスキンシップに慣らされてしまっているようだ。
「ん。無駄なんかじゃない」
片手でジェイミーを後ろから抱き込みながら、クリフォードは彼女の肩越しに帳簿を見る。指でいくつかの出費を辿って確認して、クリフォードはしっかりと頷いた。
「無駄だろう、どう考えても。服なんか、いくらでもあったのに……」
「令嬢が身に着けるドレスと男爵婦人が身に着けるべきドレスでは型が違うからな。手直しして着ようにも、生地の種類そのものが違うから使いまわしをするのは良くないそうだ。仕立て屋にはそう聞いた」
「……そう、なのか?」
装飾品類に興味のないジェイミーは、そう説明されれば納得せざるを得ない。本当は、令嬢時代のドレスを手直しして着ても問題ないし、室内ドレスにいたっては以前と同じものを身に着けているのだから、クリフォードがいくつも注文する必要はなかったのだが、うまく丸めこまれてしまっている。
「で、でも家具を買いそろえる必要はなかっただろう!」
「この屋敷の家具は、兄たちが最低限のものを残して処分していたからな。そのあと俺も買い足していなかったから、お前が使うチェストとかがなかった。だから買いそろえるのは当然だろう」
人一人分の家具が足りなかったから買い足したのは当然だというわけである。
「……だとしても、高級品を買う必要は……」
「どうせ買うのは一度きりなんだ。ならいいものを準備しておいたほうがいいに決まってる。間違ってるか?」
「……違わない……けど……」
家具なんてものは、良いものであれば代々受け継いでいくもので、そうそう買い替えるものではない。とはいえ、やはり男爵家の普段の出費から考えたらずいぶんと高い出費に思えて、ジェイミーは口を尖らせて黙り、帳簿の次のページをめくってもう一度酒杯を煽った。やはりアルコールが腹を焼く。
「はぁ……」
「なんだ、疲れたのか? 根を詰め過ぎだろう」
「誰のせいだ」
息を吐いたジェイミーに、くつくつと笑いながらクリフォードが声をかける。相変わらず後ろから抱き込まれたままの姿勢にも関わらず、ジェイミーは違和感を覚えていないのがおかしな状況である。さらに一口酒を飲んで、ジェイミーは帳簿に目を落とした。
「なあ」
「ん?」
ジェイミーが帳簿を指さして、クリフォードを振りむこうと首を動かす。
(近いな)
存外顔がそばにあったのに驚きながらも、ジェイミーは話を続ける。そうしようとしたのだが。
「む」
唇が柔らかに重なって、軽くついばまれてリップ音を立てられる。
「何をするんだ」
文句を言って顔を背けようとしたところで、クリフォードが片手で顔を引き寄せて唇をまた重ねる。
「なんだ、こうしたいんじゃなかったのか?」
至近距離で笑んだクリフォードが言うが、明らかにからかっているに違いない。
「違う」
ぐっと顔を押しのけて、前を向き直ると、ジェイミーはこくこくと酒を煽って帳簿に目を落とした。
「ここの出費履歴についてなんだが……」
「うん?」
肩にクリフォードの顎が乗る。それがくすぐったくて、ジェイミーは身震いしたが、反応していては彼の思うつぼだ。無視することにして、話を続ける。
「これは定常て、きに……こうにゅう……っクリフォード!」
喋り続けようとしたが、どうにも声が震えて難しい。というのも、クリフォードの手がジェイミーの身体をまさぐり始めたからだ。最初は腰をがっちりと捕まえていたのが、腹をさすりやがて手が上のほうに伸びて、胸をふにふにと揉み始める。厄介なことに、ジェイミーはいつものごとくコルセットのいらない室内ドレスを着ていたから、彼の手の感触がほぼダイレクトに伝わってしまう。胸の尖りを直接つままれるほどではないにしろ、布越しに彼女の敏感なところがぷっくりと固くなってしまっているのは、クリフォードにすでに伝わっているだろう。
抗議の声をあげたにも関わらず、まだ彼はジェイミーの胸を弄んでいる。
「なんだ?」
彼女の肩に顎を乗せたまま、クリフォードは笑いを含んだ声で尋ね返す。
「真面目な話をしてる最中に、……んんっ悪戯をするな!」
クリフォードの手をおさえつけたが、構わず彼の指はふにふにとジェイミーの胸を揉んでいる。それが腹立たしいが、今クリフォードと目を合わせて文句を言おうとすれば、きっとまた唇を重ねられて、今度は深く吸われるだろう。
「俺はもう仕事は終わりの時間なんだ。それに付き合ってやるんだから、お前だって俺に譲歩するべきだろう? ほら、聞いてやるから言え。ちゃんと答えてやるし、お前が喋れるように口は塞がないでやるから」
「……く……ぅう……」
すでに日は傾いている。酒を持ってきたところあたり、クリフォードの今日の執務はもう終わっているからこそ、ジェイミーにちょっかいをかけにきているのだろう。ジェイミーだってすでに今日やるべきことは終わっていて、その上で過去の帳簿を見ているのだから、いわばこれは趣味のようなものなのだ。それにクリフォードを付き合わせているのだと思えば、文句も言えなくなるジェイミーである。もちろん、本当ならばこんなふうに膝に乗せて悪戯をしていること自体、褒められたことではないのだが。
「わ、かった……ん。ぅ……」
服を脱がされたり、股を愛撫されないだけマシだろう。そう考えてジェイミーはクリフォードの手を抑えていたのを離して、再び帳簿を指さす。
「これ……だけど……ふ、定常的に……」
「ああ、それか。それは……」
ジェイミーの尋ねに対し、クリフォードは真面目に答えてくれている。だが、先ほどからクリフォードの顎が肩に乗っているせいで、囁くような低い声がどうにも耳に直接響いてくすぐったい。しかも、相変わらずクリフォードの手は胸を弄っていて、服越しではあるものの胸の尖りを指先でくにくにと押してくるものだから、だんだんとジェイミーの身体が火照ってくる。この時点で、ジェイミーは自身の身体に起きている異変について、気がついていなかった。
いくつかの質問をしながら、酒を口に運び、胸を弄られることで息を漏らしつつもジェイミーは帳簿で気になったことを一つ一つ確認を進めていく。だが、酒杯が空になるころになって、頬が焼けるように熱く、ジェイミーは段々と言葉が怪しくなってくる。
「くりふぉ……ど、いいかげん……あぅ……やめ……ん、ふ……ぅっ」
「どうしてだ?」
「は、ぁ……ぅう……これ、じゃ……は、喋れ、な……ぁ、あ」
ジェイミーの身体は脱力していて、ほとんどクリフォードに寄りかかって全身を預けているような状態だ。意識もふわふわとしていて、いつの間にか一杯だけと告げていたはずの酒杯に二杯目以降の酒が注がれていたことにもジェイミーは気づいていない。
「なんでだ、ちゃんと口は塞がないでいてやっているし、触るのは胸だけにしてやってるだろう?」
「あぅ……っ」
確かに手で触っているのは胸だけだ。だが、時折耳を甘噛みされて、クリフォードの唇がジェイミーの耳を弄ぶ。ついでに言えば、最初は脱がしていなかったドレスのボタンがいくつか外されて、今は下着越しに胸を愛撫されているせいで、刺激もより直接的になっている。
「だ、って……ぁ、ああ……っや、だぁ……かたい、の……当たって……んんぅ……っ」
耳から受ける刺激を避けようと身体を捩れば、腰にクリフォードのものが当たる。それは熱を孕んで欲を訴えていて、胸や耳への愛撫ですっかり火の灯ったジェイミーを刺激した。もうこうなってくると、彼女の理性はぐずぐずである。
「いじわる……するなぁ……!」
さらに身をよじったジェイミーは、すがるようにクリフォードの首に腕を回してぴったりとしがみつく。どうやらそれで彼女はクリフォードの愛撫を阻止したつもりらしい。
「これはまた……ずいぶん可愛らしい酔っ払い方をするもんだな?」
「……? 酔って、ない」
クリフォードの肩近くに頭を預けながら、ジェイミーはぽやんとした声で答える。どうやらこの期に及んで自分が酔っぱらってないと思っているらしい。うまくいいくるめられて、身体をとろとろにされ、意識だってふわふわとしている癖に、である。
そんな彼女の様子にくつくつと笑いながら、クリフォードはジェイミーの背中に腕を回してするりと腰のあたりを撫でまわす。
「あっ……や……ぁう、さ、わるの……胸、だけってぇ……」
たださするだけでも敏感になった今のジェイミーには愛撫に等しい。彼女の秘所はとろとろに愛液を零していて、すでに中を穿つものを求めている疼いている彼女は文句を言いながら腰を揺らしている。
「もう質問は終わったんだろう?」
「うぅ……?」
「なら触ってもいいんじゃないのか?」
まだ質問は残っていたはずなのだが、たかだか二杯ほど酒を煽っただけで酔っぱらってしまったジェイミーはもうその内容を思い出せない。むうっと唇を尖らせて、無言でクリフォードの背中をぽかぽかと叩いた。
「なんだなんだ」
「くりふぉーどのせい、だ……!」
変わらず腰を撫でまわしていたことへの抗議のつもりだったらしい。
「わかったわかった。触らなきゃいいんだな?」
くつくつと笑いながら、ぱっとクリフォードは両腕をあげてジェイミーに触れるのをやめる。
「え……っ?」
「お前は触って欲しくないみたいだからな。俺はそろそろ行くとする」
膝に乗せていたジェイミーをもう一度抱えて、クリフォードはさっと立ち上がると彼女を元通りに椅子に戻して、酒瓶を取り上げた。
「真面目にやってるのに邪魔して悪かったな?」
「あ……え、くりふぉー……」
「また後でな」
クリフォードは彼女のつむじに軽くキスを落として、そのまま踵を返す。しかし、その足は踏み出されなかった。
「……俺のせいで作業が進まないんじゃないのか?」
「うぅ……」
クリフォードの服をつまんで彼を引き留めたジェイミーが、真っ赤な顔で呻く。それを面白そうに振り返ると、クリフォードは酒瓶をもう一度デスクの上に置いて彼女の顔を覗き込んだ。
「ん?」
薄く笑みを浮かべたままクリフォードが見るのに、ジェイミーはまた「うぅ」と小さく声を漏らした。思わず引き留めてしまったのが恥ずかしいのだろう。だが、もう我慢が効かなかったらしい彼女は、眉間に深く皺を刻みながらも夫の服をつん、とさらに引っ張る。
「……最後まで」
「うん?」
「最後まで、してくれないと、いやだ……」
そこで俯いてしまう。この悪戯は、完全なるクリフォードの勝利だろう。くつくつと笑いを漏らした彼は、ジェイミーの顎に手を添えて顔を上向かせると、軽く口づけた。
「触って欲しいところを見せてみろ」
「そんな……!」
「して欲しいんだろう?」
この年上の夫は存外に意地悪である。焦らされ待たされた期間が長いせいなのか、たまにこうしてジェイミーの行動で愛を示させたがる。
「でも……ど、うすれば、いいか……わからない」
ぽつりと呟いた二回りも年下の妻に、クリフォードはすぅっと腕を伸ばして椅子を動かしジェイミーの身体を自分の方に向けると、そっと彼女の太ももに触れる。
「簡単だろ? 股を開いて、スカートを持ち上げるんだ」
ひそ、と小さな声で囁いてやれば、酒で赤かったジェイミーの頬が、更に熱くなる。耳まで真っ赤にした彼女はもはや涙目だが、「どうする? やめるか?」と低く甘く囁かれて、やがておずおずと椅子に腰掛けたままで、股を開き始める。
「いい子だ。だがな、ジェイ。スカートを持ち上げただけじゃあ、見えないよな?」
「……っ」
つまりドロワーズも脱いで、秘所を丸見えにしろと言っているのだ。頭が回らなくなっているくせに、そんな卑猥なことばかりすぐに気がついて、ジェイミーは震える。いやだと突っぱねてしまいたいのに、彼女の身体はもう我慢が利かないので仕方ない。
「うぅ……」
自身の足首に手を添えると、ジェイミーはするすると足を辿って、スカートの中へと手を進め、やがて腰でとまっているドロワーズに行きあたる。紐を解いて、腰の布に手をかけて、ドロワーズをずらすために腰を浮かしたその瞬間である。
くちゅ、と水音が鳴った。すでに蜜壺からあふれ出た愛液がドロワーズに張りついていて、それが剥がれた音だった。
「……クリフォード……!」
助けを求めるようにジェイミーは夫を見るが、彼はまだ太ももに手を添えているだけで見守る姿勢だ。
「まだ見えてないぞ?」
「……意地悪だ……」
「そうでもない。お前がやりたいように任せているだけだぞ?」
ジェイミーが最後までシたいというから、クリフォードはここに残って、待ってくれている。そう言われて、ジェイミーはまたも黙り込む。愛液で濡れたドロワーズをさらにずりおろせば、濡れた生地が太ももに当たって、余計に卑猥に感じる。つま先まで下ろしきりドロワーズをほおると、震える手でスカートの裾に手を伸ばした。そうして、ゆっくりと股を開きながら、スカートを持ち上げる。
「……こ、れで……いいか?」
椅子にもたれかかりながら、両手でスカートを持ち上げて、秘部だけを晒す。胸元のボタンは外されているものの、肌は露わになっていないにも関わらず、性交渉をするための一番大事な場所だけを見せびらかしている。白い足は羞恥で薄桃に染まって、その奥の濡れそぼった愛液が、太ももまで汚しているのがよく見えた。夕暮れから始めたせいで灯りもないすでに薄暗くなった部屋の中でなお、彼女のいやらしい部分が浮かび上がっているかのようだ。赤らんだ顔を隠すかのようにスカートを引きあげて口元を隠したジェイミーは、それがより股を見せつけているのに気づいていないのだろう。
「ああ、上出来だ」
震える声で尋ねたジェイミーを褒めてクリフォードは微笑んで、椅子の前に跪いた。そして彼女の太ももに添えていた手でぐっと足を持ち上げると、より大きく彼女の足を開かせる。おかげでジェイミーの秘所がぱっくりと開いて、ぬらぬらと密を垂らしてヒクついた入り口が丸見えだ。
「やっ」
「今悦くしてやる」
羞恥にジェイミーが声を上げた次の瞬間、彼女の声は嬌声にとって変わる。股に顔を寄せたクリフォードが、舌で彼女の密を舐めとって吸い上げた。
「ひぁあああ……っくり、ふぉー……ぁあっそんな、あっんんんっ」
じゅるじゅると音をたてて蜜を吸いながら、クリフォードは指で肉の芽をにゅくにゅくとこする。先ほどまで胸しか愛撫されていなかったにもかかわらず、もう蜜壺はとろとろになっていた。早く奥を触れとヒクついて新しい密を次々と零している。
「や、ぁあぅ……なめ、るなぁ……っ」
「触って欲しいところなんだろうが、ここが」
「ひゃうっ」
ぴん、と肉芽を弾いてやれば文句の声はたちまちよがり声になる。指をまとめて二本潜り込ませたが、ジェイミーの熱く熟れたそこは簡単に指を受け入れて、奥へ奥へと誘おうとする。
「や、ぁ、あ、あ……そ、こぉ……押しちゃ、ぁっぁんんっ」
「一回イけよ、ほら」
ぐぐっと指で内壁を圧された途端に、ジェイミーの腰がびくんと跳ねる。
「ふ、ぅううう……っ」
絶頂に至ったジェイミーは、ぎゅうっとスカートを握りこみ、椅子の背もたれに強く背中を預けた。かくかくと揺れる蜜壺は、クリフォードの指を咥え込んで締めつけているが、その痙攣が終わらないうちに、彼は指を引き抜いてしまう。
「あ……っ?」
中を埋めるものが消えた違和感に声を上げたジェイミーの前に立ち上がり、クリフォードは彼女の唇に指を触れさせた。ジェイミーの蜜でどろどろになっているそれを口の中に突っ込むと、ジェイミーは抵抗なくちゅぷちゅぷと音を立ててそれを舐め始めた。
「ん、んぅ……っ」
ジェイミーに愛液を掃除させているクリフォードは、一方の手ではいつの間にかズボンを寛げて、凶悪に猛ったものを露わにしている。
「くりふぉー、ど……」
口から指を抜くと、とろん、とした彼女が甘えるような声を出した。それに薄く笑みを浮かべたクリフォードは、片膝を椅子に乗せて彼女の身体に身を寄せながら、柔らかに口づけを落とす。
「今挿れてやるから、そう慌てるな」
両手でジェイミーの腰をつかむと、軽く浮かせて椅子の際に引き寄せる。そうして屹立した肉棒をあてがった。
「は、やく……」
彼女が縋るようにクリフォードの首に腕を回したのと、彼の肉棒がジェイミーの蜜壺を割って入っていったのはほとんど同時だった。
「んぁぁあああああ……っ!」
痙攣が納まったばかりの蜜壺が太いものを迎えて歓喜にうねる。熱く潤った蜜壺はぎゅうぎゅうにクリフォードの竿を締めつけながら、最奥まで入るのを許した。
「動くぞ」
「ひぁ……っぁ、ぁあっ、ん、はっぁぅうう……っ」
返事も聞かずに始まったピストン運動に、ジェイミーはただよがる。奥を叩く肉棒に快楽を覚え、酒に酔ってただただクリフォードが与える熱に夢中になった。そうして溢れた蜜と子種がドレスを濡らし、執務椅子さえも汚して汗だくになるまで、情事にふけるのだった。
彼女が正気に戻ったのは、二度ほど子種を胎に受け、あまりの気持ち良さに気絶し、一刻ほど寝入って目覚めた後のことである。そのときには、なぜかジェイミーの身体は清められて夫婦のベッドに横たわっていた。時刻はもはやベッドに潜って寝るべき時間である。つまりジェイミーたちは夕飯の時間を夫婦そろってすっぽかしていたうえ、恐らく情事にふける嬌声のせいで、メイドたちには全てが筒抜けだ。
彼女が時間を気にせず快楽に溺れたのも、最後に気絶してしまったのも、恐らくジェイミーが酔っぱらっていたせいだろう。前世は一人で何本でも酒瓶を空けられたというのに、ずいぶんと酒の弱い身体になったものである。
酷いことに、妻の顔を飽きることなく眺めていたクリフォードは、目覚めて全てを察し、羞恥に震えるジェイミーの様子までをもつぶさに観察している。
「……もう……もうお前の持ってきた酒なんか飲まない!」
布団の中で叫んだジェイミーに、くつくつと喉を鳴らして笑う。
「ああ。俺以外が持ってきた酒も飲むなよ」
「誰が飲むか!」
あんな醜態を晒してしまって、とジェイミーが布団を被って顔を隠した隣で、なおもクリフォードは笑っている。悪戯は大成功だったが、クリフォードは一方でこうも考える。
「……本当に、前世が酒に強くて、酒に弱いのが今でよかった。おかげで可愛いお前を俺だけが一人占めできる」
布団越しにつむじのあたりに口づけを落とせば、クリフォードの小声のせりふをジェイミーはしっかり聞き取っていたのだろう。びくんと震えて一言「変態!」と叫ぶ。残念ながら、これからもジェイミーは夫の悪戯に振り回されることになりそうだ。
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