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言葉足らずの愛撫に揺れる ※R18
エステルがラウルの胸に頭を預けたまま待っていると、ラウルは悩んだような素振りを見せてから、口を開いた。
「陛下から、夜会に貴女を連れて来るように言われている。他の茶会や夜会に出すわけにはいかないが……その時だけは、共に行こう」
「……いいんですか?」
ぱっと顔をあげたエステルの顔に、喜びの色が浮かんで、明るい声が出る。
(陛下のお誘いは侯爵様といえどもお断りできないのね!)
喜んでいるエステルに対し、ラウルは眉間に皺を寄せた。その表情にはっとして、エステルはきゅっとラウルの袖をつかんだ。
「いえ! 行きたくないのではありません! 行きます」
「……ああ。それ以外の夜会も茶会も、出させない。いいな?」
「わかりました」
(社交界に少しでも顔を出せるのなら、そこから知り合いを作ることはできるはずだわ。デビュタントの時は消極的だったから知り合いを増やせなかったけれど……頑張ればどうとでもなるもの。そうなれば、侯爵様宛てではなく私宛てに招待状も来るだろうし、私宛てに来た招待状を侯爵様が断るなんてこともできないはず)
そう考えて、エステルは夜会を成功させようと心に決める。決意に満ちたエステルをラウルはどう思ったのか分からないが、エステルの腰にそっと手を回すと、額に口づけた。
「話がついたなら、もうベッドに行こう」
「あ……はい」
触れられた額が暖かくて、エステルは身体を強張らせる。ラウルに連れられてベッドに横たわると、ラウルも続いてベッドに乗り上げた。そして横になると、布団を被る。
いつもならお決まりのように「触れていいか」と聞かれて情事が始まるところだが、今日はそうではなかった。
「……ゆっくり休め」
「はい……おやすみなさい」
エステルは答えながら、布団をぐっと引き上げて顔を隠す。
(誘われなかった……ということは、もう、終わりなの?)
今日の寝間着は、ラウルが発注をかけた色気のないものである。毎夜脱がされていたにも関わらず、昨日初めて身体を繋げて、良すぎるタイミングで届いた寝間着を着た途端に身体に触れられなくなる。
これではまるで、ダミアンのように、ヤってしまえばそれで終わりだというかのようだ。つい先ほど、ラウルはエステルに愛を囁いたばかりだというのに。
(あの言葉を、信じたわけじゃないもの)
エステルは、ラウルに背を向けてより深く布団にもぐりこむ。いつもよりも生地の厚い寝間着なのに、何だか寒かった。
(いいのよこれで。婚前交渉なんて、元から許されることじゃないもの。婚約者として適切な距離だわ。限定的だとは言っても、社交にも参加できるのだもの。貴族としての務めは果たせるわ。問題ない)
目を閉じながら、言い聞かせるように彼女は心の中で思う。わざわざ言い訳がましくそんなことを考えるのは、きっと、ラウルが言った『一緒にいたい』と告げたのを半分以上信じていたからだ。
ラウルに社交界に出さないと言われて、失望したのは変わらない。嘘をつこうとしないだけマシだが、社交界に出てはいけない理由を教えてくれないのだって腹立たしい。お飾りの婚約者ではないと否定されただけでは、嘘に思えてしまう。けれど、ベッドの上で愛を囁く時にしか名前を呼ばないラウルが、縋るように名前を呼び『愛している』という言葉が頭から離れなかった。何を言われようと部屋から出て行ってやろうと思っていたのに、同じベッドに戻ろうと思えるくらいには、心が揺らいだ。なのに。
(……やっぱり、リップサービスだったのよ。そう。女の扱いに慣れてらっしゃる方だもの。私はダミアンの時みたいに、また騙されたというわけね。ジルー家との縁が結べれば、それで……いいんだわ)
思った途端にじわりと涙が浮かぶ。
(やだ……)
ぐ、と泣くのをこらえようと、唇を噛む。けれど、我慢しようとすればするほど、涙が溢れてくる。
ラウルは、いつも話せばわかってくれた。初めて会った時も、エステルを尊重してくれたし、肌を初めて暴いたあの日だって、エステルに優しく触れてくれていた。内政のことだって、権利を主張すれば認めてくれた。
初めて肌に触れられた日から、ラウルが告げる愛の言葉はリップサービスなのだと疑い続けている。でも、そう思うには優しすぎるラウルの態度に、エステルは揺らがざるを得なかった。言葉が足りないことが多々あるように思えるのに、ぶっきらぼうに優しい。否定しても否定しても、ラウルはもう彼女の心の柔らかいところにすっかり居座ってしまっていた。
(……私は、侯爵様を、ラウル様を……いいえ。気持ちなんて、いらないわ。これは政略結婚なんだから)
気持ちに抗えば、余計に胸の痛みが強くなる。唇を噛む力を強くして涙をこらえようとしたが、その分だけ肩が震えてしまう。
「どうした?」
震えているのに気付いたのだろう、静かな声が問いかけてくる。寝ているふりでやり過ごそうとしたが、ラウルの手がエステルの肩に触れて、彼女の身体を仰向けにさせる。
「……泣いているのか?」
口を開けば、嗚咽が漏れそうでエステルは答えられなかった。もう、涙は目から溢れてしまっている。
「社交界のことが、そんなに嫌だったか?」
ラウルが眉間に皺を寄せて、静かに問いかける。それに対して喋る代わりに、エステルはわずかに首を振った。すると考えこむような素振りを見せたラウルは、更に眉間に皺を寄せて、苦虫を潰したような顔になる。
「では……俺と同じベッドに入るのは、泣くほど嫌だったのか?」
この問いに、エステルはすぐに答えられなかった。
「……そうか。そうだな、昨日の俺は、嫉妬にかられてあまりに貴女に無理を強いた。だから貴女も、その寝間着を着たんだろう。……すまなかった。もう、貴女に触れることはしない」
ラウルはそう謝罪すると、ベッドからするりと抜け出す。
「まるで私のせいみたいに言うんですね」
ラウルの背中に、つい恨みがましい声をかけてしまう。
嬌声を抑えることに関して、暴走して彼女の中を肉棒で貫いたのは確かにラウルだ。いつもの優しい触れ方からしたら強引にすぎるやり方は、確かによくなかったのかもしれないが、まるでエステルがそれで怒ってラウルを拒絶しているかのような言い草である。
ラウルがこの寝間着を送って、もう伽は必要ないと態度で示したのではないか。
「どういうことだ?」
振り返ったラウルが、怪訝そうな顔をする。身体を起こして涙を拭ったエステルは溜め息を吐いた。
「この寝間着を注文したのは、ラウル様じゃないですか」
「ああ。貴女は寝るのに適した寝間着を持っていないようだったからな」
苛立っていたエステルの言葉に、ラウルは当然というように頷いた。全く悪びれない調子で言うラウルに、エステルが止まる。
「……どういうことです?」
「そのままだろう。……いつもの寝間着の貴女は煽情的で美しいが、あれは寝るのには寒い。だから寝る時に着るための寝間着を注文したんだ」
「待ってください、今まであの……あのいやらしい寝間着は、ラウル様が命じて着させていらしたのでは?」
「何のことだ? 貴女の身の回りの品は相応しいものを用意するようメイドたちに命じていたが、毎日着る服まで命じたことはないが」
つまりは、あの煽情的な寝間着を用意されていたのは、最初からずっとメイドたちの趣味ということだ。ついでに言えば、ラウルの趣味で用意していた訳ではないとなれば、エステルが自主的にラウルを誘うような格好をしていると彼には思われていたのかもしれない。その事実にようやく気付いて、エステルの顔は真っ赤になる。
「その寝間着は寝るためのものだ。……今夜は最初から着ているのだから、抱かれたくないという意思表示だろう?」
「違います!」
言下に否定の声をあげてしまい、エステルはぱっと口を押さえた。
(今の言い方、まるで私がラウル様に抱いて欲しいみたいじゃない……!)
「ラウル様が選ばれたと聞いたので、すぐに着るべきだと思って着ただけです! それに昨日までの寝間着も、私が選んでたのではありませんから!」
言い訳をすればするほど、今抱いて欲しいのだと告げているようにしか思えなくて、エステルはますます恥ずかしくなってしまう。
「……つまり、俺を拒絶したのではないと?」
一歩、ラウルがベッドに近づいて問いかけた。それはエステルが言いたい台詞だったが、逆に問われてしまうとはっきりと答えるには、エステルの心はまだ揺れている。けれど、ラウルの顔は困ったようにしながらも既に笑んでいて、彼女の答えを確信しているかのように、またもう一歩近づいてくる。
「俺は今日も、貴女に触れてもいいのか?」
更に一歩進んでベッドの前まで戻った彼は、エステルの頬の近くに腕を伸ばす。けれど、エステルの許しがないからか、触れてはこなかった。その触れそうで触れない距離が、もどかしい。
(……もう飽きた、っていう合図では、なかったのね)
その事実に、安堵してしまっている自分に気付いて、エステルは驚く。もう、彼女の中で答えは出てしまっているのだろう。エステルが答えあぐねて黙っている間も、ラウルの赤い瞳がまっすぐにエステルを見つめている。
(この手を信じてしまうのは、きっと私が後で傷つくだけなのに)
「……はい」
目を閉じながら、エステルは彼の手に頬を擦り寄せる。彼女の顔は今羞恥で火照っているはずだが、彼の手も、負けないくらいに熱い。
「誤解して、すまない」
言葉と共に、柔らかく唇が落とされる。そうしてベッドに乗り上げてきたラウルは、布団を剥ぎとりながら口づけを繰り返す。
「ん……」
頬を撫でていたラウルの手は、首をなぞり胸のラインを確認して、更に腰へと伸びていく。その指先にエステルがぞくぞくと身体を震わせるのを気にも留めずに、ラウルの手はすぐに寝間着の裾に到達してずりずりとたくし上げてくる。いつも焦らすように服の上から愛撫を始めて、いつの間にか脱がされているが、その性急な脱がし方にエステルの頬が更に羞恥で熱くなる。
「ま、待ってくだ……んぅ」
口を離されたかと思えば、ねちねちと舌を丹念に舐られる。次に唇を離された時には、寝間着はすっかりたくしあげられて、胸が露わになっていた。
「腕をあげて」
そう声を掛けられたかと思えば、すぽんと寝間着を頭から脱がされ、ベッドに押し倒されて、今度はためらうことなくドロワーズに手をかけられる。肌を見られるのは初めてではないのに、身体が火照りきらないうちに裸に剥かれてしまうのは、どうにも恥ずかしかった。
「ら、ラウル様……!」
ドロワーズをずりおろそうとするラウルの手を阻んで、エステルが声をあげると、ラウルは穏やかに微笑んだ。
「汚してしまうからな」
「あっ」
ずるりと下に下ろされて、はぎ取られてしまった。そうして生まれたままの姿にされたエステルの股をラウルの足が割ると、にちゃ、と湿った音が響く。
「……口づけだけで、感じてしまったのか?」
「ちが……っ」
否定しようとしたが、ラウルの指が割れ目に這って、それがすぐに嘘だと知れる。湿りはまだわずかだが、確かに期待のうるみが彼女の蜜壺から少しずつ溢れていた。
「んっ」
「俺の星は、本当に可愛いな」
囁いたラウルはそのまま割れ目を前後させて愛液で指を湿らせると、くりゅくりゅと肉の芽を捏ねて愛撫を始める。
「いきなり、そんなところ……あっ」
「すまないが、早く貴女のなかに入りたい」
その言葉とは裏腹に、ラウルは密着していた身体を離して上体を起こす。かと思えばすぐにエステルの股に顔を寄せて、敏感なところを舌で愛撫しはじめた。
「ひぁっそ、れだめ、って……!」
ぴちゃぴちゃと音をたてて、舌先が肉の芽を捏ねる。同時に、指がいきなり二本もなかに入ってきて、入り口すぐの壁をこすりはじめた。舌と指で同時に責められるのは今まで何度も受けているが、水音の激しいこの愛撫は、いつも羞恥を余計にあおってエステルはよけいに乱れてしまうから苦手だった。
「気持ちいいの間違いだろう?」
「あっだ、め、だめぇ……んんぅ……っ」
ぬるぬると動いていた指が、溢れた蜜ですぐにじゅぷじゅぷと音を立てるようになる。初めから激しい愛撫をされて、すぐにエステルの身体は上り詰めそうになった。しかし、その直前で舌と指は離れてしまう。
「もういいだろう?」
ずりおろしたズボンから、ぶるりと猛った肉棒が現れる。
「いいか?」
ずるりと熱源を押し当てながら、ラウルは挿入してもいいかを尋ねる。
「……ラウル様の、望むように……してください……」
「貴女は素直じゃないな」
言いながら、ラウルは彼女の腰を掴んで挿入をはじめる。
「は、ぁあ……んん……っ!」
昨日のはじめの荒々しい挿入と違って、入り口を過ぎたらすぐにそこでちゅくちゅくとこすりはじめ、少しずつなかに入ってくる。それがいつも指で弄られると乱れる場所を擦っているのは、きっと意図的なのだろう。
ここのところの癖で、エステルは声を頑張って抑えようとしている。部屋の前にメイドが立っていないと判っていても、いつ来るか分からないのだ。
「今日はもう中が柔らかいな」
何度か入り口を前後した後に、ラウルはぐっと腰を落とし込むと、最奥をぐわんと揺らして根本まで一気に挿入した。
「あっあああああ……っ!」
絶頂直前だったエステルは、その強い衝撃で、彼の肉棒をきゅうきゅうと締め付け始める。
「ああ、少し乱暴だったか? でも、まださせてくれ」
「え、らう、るさま、待っ……」
まだ痙攣が納まっていない彼女の胎を、ラウルの肉杭が責めはじめた。
「陛下から、夜会に貴女を連れて来るように言われている。他の茶会や夜会に出すわけにはいかないが……その時だけは、共に行こう」
「……いいんですか?」
ぱっと顔をあげたエステルの顔に、喜びの色が浮かんで、明るい声が出る。
(陛下のお誘いは侯爵様といえどもお断りできないのね!)
喜んでいるエステルに対し、ラウルは眉間に皺を寄せた。その表情にはっとして、エステルはきゅっとラウルの袖をつかんだ。
「いえ! 行きたくないのではありません! 行きます」
「……ああ。それ以外の夜会も茶会も、出させない。いいな?」
「わかりました」
(社交界に少しでも顔を出せるのなら、そこから知り合いを作ることはできるはずだわ。デビュタントの時は消極的だったから知り合いを増やせなかったけれど……頑張ればどうとでもなるもの。そうなれば、侯爵様宛てではなく私宛てに招待状も来るだろうし、私宛てに来た招待状を侯爵様が断るなんてこともできないはず)
そう考えて、エステルは夜会を成功させようと心に決める。決意に満ちたエステルをラウルはどう思ったのか分からないが、エステルの腰にそっと手を回すと、額に口づけた。
「話がついたなら、もうベッドに行こう」
「あ……はい」
触れられた額が暖かくて、エステルは身体を強張らせる。ラウルに連れられてベッドに横たわると、ラウルも続いてベッドに乗り上げた。そして横になると、布団を被る。
いつもならお決まりのように「触れていいか」と聞かれて情事が始まるところだが、今日はそうではなかった。
「……ゆっくり休め」
「はい……おやすみなさい」
エステルは答えながら、布団をぐっと引き上げて顔を隠す。
(誘われなかった……ということは、もう、終わりなの?)
今日の寝間着は、ラウルが発注をかけた色気のないものである。毎夜脱がされていたにも関わらず、昨日初めて身体を繋げて、良すぎるタイミングで届いた寝間着を着た途端に身体に触れられなくなる。
これではまるで、ダミアンのように、ヤってしまえばそれで終わりだというかのようだ。つい先ほど、ラウルはエステルに愛を囁いたばかりだというのに。
(あの言葉を、信じたわけじゃないもの)
エステルは、ラウルに背を向けてより深く布団にもぐりこむ。いつもよりも生地の厚い寝間着なのに、何だか寒かった。
(いいのよこれで。婚前交渉なんて、元から許されることじゃないもの。婚約者として適切な距離だわ。限定的だとは言っても、社交にも参加できるのだもの。貴族としての務めは果たせるわ。問題ない)
目を閉じながら、言い聞かせるように彼女は心の中で思う。わざわざ言い訳がましくそんなことを考えるのは、きっと、ラウルが言った『一緒にいたい』と告げたのを半分以上信じていたからだ。
ラウルに社交界に出さないと言われて、失望したのは変わらない。嘘をつこうとしないだけマシだが、社交界に出てはいけない理由を教えてくれないのだって腹立たしい。お飾りの婚約者ではないと否定されただけでは、嘘に思えてしまう。けれど、ベッドの上で愛を囁く時にしか名前を呼ばないラウルが、縋るように名前を呼び『愛している』という言葉が頭から離れなかった。何を言われようと部屋から出て行ってやろうと思っていたのに、同じベッドに戻ろうと思えるくらいには、心が揺らいだ。なのに。
(……やっぱり、リップサービスだったのよ。そう。女の扱いに慣れてらっしゃる方だもの。私はダミアンの時みたいに、また騙されたというわけね。ジルー家との縁が結べれば、それで……いいんだわ)
思った途端にじわりと涙が浮かぶ。
(やだ……)
ぐ、と泣くのをこらえようと、唇を噛む。けれど、我慢しようとすればするほど、涙が溢れてくる。
ラウルは、いつも話せばわかってくれた。初めて会った時も、エステルを尊重してくれたし、肌を初めて暴いたあの日だって、エステルに優しく触れてくれていた。内政のことだって、権利を主張すれば認めてくれた。
初めて肌に触れられた日から、ラウルが告げる愛の言葉はリップサービスなのだと疑い続けている。でも、そう思うには優しすぎるラウルの態度に、エステルは揺らがざるを得なかった。言葉が足りないことが多々あるように思えるのに、ぶっきらぼうに優しい。否定しても否定しても、ラウルはもう彼女の心の柔らかいところにすっかり居座ってしまっていた。
(……私は、侯爵様を、ラウル様を……いいえ。気持ちなんて、いらないわ。これは政略結婚なんだから)
気持ちに抗えば、余計に胸の痛みが強くなる。唇を噛む力を強くして涙をこらえようとしたが、その分だけ肩が震えてしまう。
「どうした?」
震えているのに気付いたのだろう、静かな声が問いかけてくる。寝ているふりでやり過ごそうとしたが、ラウルの手がエステルの肩に触れて、彼女の身体を仰向けにさせる。
「……泣いているのか?」
口を開けば、嗚咽が漏れそうでエステルは答えられなかった。もう、涙は目から溢れてしまっている。
「社交界のことが、そんなに嫌だったか?」
ラウルが眉間に皺を寄せて、静かに問いかける。それに対して喋る代わりに、エステルはわずかに首を振った。すると考えこむような素振りを見せたラウルは、更に眉間に皺を寄せて、苦虫を潰したような顔になる。
「では……俺と同じベッドに入るのは、泣くほど嫌だったのか?」
この問いに、エステルはすぐに答えられなかった。
「……そうか。そうだな、昨日の俺は、嫉妬にかられてあまりに貴女に無理を強いた。だから貴女も、その寝間着を着たんだろう。……すまなかった。もう、貴女に触れることはしない」
ラウルはそう謝罪すると、ベッドからするりと抜け出す。
「まるで私のせいみたいに言うんですね」
ラウルの背中に、つい恨みがましい声をかけてしまう。
嬌声を抑えることに関して、暴走して彼女の中を肉棒で貫いたのは確かにラウルだ。いつもの優しい触れ方からしたら強引にすぎるやり方は、確かによくなかったのかもしれないが、まるでエステルがそれで怒ってラウルを拒絶しているかのような言い草である。
ラウルがこの寝間着を送って、もう伽は必要ないと態度で示したのではないか。
「どういうことだ?」
振り返ったラウルが、怪訝そうな顔をする。身体を起こして涙を拭ったエステルは溜め息を吐いた。
「この寝間着を注文したのは、ラウル様じゃないですか」
「ああ。貴女は寝るのに適した寝間着を持っていないようだったからな」
苛立っていたエステルの言葉に、ラウルは当然というように頷いた。全く悪びれない調子で言うラウルに、エステルが止まる。
「……どういうことです?」
「そのままだろう。……いつもの寝間着の貴女は煽情的で美しいが、あれは寝るのには寒い。だから寝る時に着るための寝間着を注文したんだ」
「待ってください、今まであの……あのいやらしい寝間着は、ラウル様が命じて着させていらしたのでは?」
「何のことだ? 貴女の身の回りの品は相応しいものを用意するようメイドたちに命じていたが、毎日着る服まで命じたことはないが」
つまりは、あの煽情的な寝間着を用意されていたのは、最初からずっとメイドたちの趣味ということだ。ついでに言えば、ラウルの趣味で用意していた訳ではないとなれば、エステルが自主的にラウルを誘うような格好をしていると彼には思われていたのかもしれない。その事実にようやく気付いて、エステルの顔は真っ赤になる。
「その寝間着は寝るためのものだ。……今夜は最初から着ているのだから、抱かれたくないという意思表示だろう?」
「違います!」
言下に否定の声をあげてしまい、エステルはぱっと口を押さえた。
(今の言い方、まるで私がラウル様に抱いて欲しいみたいじゃない……!)
「ラウル様が選ばれたと聞いたので、すぐに着るべきだと思って着ただけです! それに昨日までの寝間着も、私が選んでたのではありませんから!」
言い訳をすればするほど、今抱いて欲しいのだと告げているようにしか思えなくて、エステルはますます恥ずかしくなってしまう。
「……つまり、俺を拒絶したのではないと?」
一歩、ラウルがベッドに近づいて問いかけた。それはエステルが言いたい台詞だったが、逆に問われてしまうとはっきりと答えるには、エステルの心はまだ揺れている。けれど、ラウルの顔は困ったようにしながらも既に笑んでいて、彼女の答えを確信しているかのように、またもう一歩近づいてくる。
「俺は今日も、貴女に触れてもいいのか?」
更に一歩進んでベッドの前まで戻った彼は、エステルの頬の近くに腕を伸ばす。けれど、エステルの許しがないからか、触れてはこなかった。その触れそうで触れない距離が、もどかしい。
(……もう飽きた、っていう合図では、なかったのね)
その事実に、安堵してしまっている自分に気付いて、エステルは驚く。もう、彼女の中で答えは出てしまっているのだろう。エステルが答えあぐねて黙っている間も、ラウルの赤い瞳がまっすぐにエステルを見つめている。
(この手を信じてしまうのは、きっと私が後で傷つくだけなのに)
「……はい」
目を閉じながら、エステルは彼の手に頬を擦り寄せる。彼女の顔は今羞恥で火照っているはずだが、彼の手も、負けないくらいに熱い。
「誤解して、すまない」
言葉と共に、柔らかく唇が落とされる。そうしてベッドに乗り上げてきたラウルは、布団を剥ぎとりながら口づけを繰り返す。
「ん……」
頬を撫でていたラウルの手は、首をなぞり胸のラインを確認して、更に腰へと伸びていく。その指先にエステルがぞくぞくと身体を震わせるのを気にも留めずに、ラウルの手はすぐに寝間着の裾に到達してずりずりとたくし上げてくる。いつも焦らすように服の上から愛撫を始めて、いつの間にか脱がされているが、その性急な脱がし方にエステルの頬が更に羞恥で熱くなる。
「ま、待ってくだ……んぅ」
口を離されたかと思えば、ねちねちと舌を丹念に舐られる。次に唇を離された時には、寝間着はすっかりたくしあげられて、胸が露わになっていた。
「腕をあげて」
そう声を掛けられたかと思えば、すぽんと寝間着を頭から脱がされ、ベッドに押し倒されて、今度はためらうことなくドロワーズに手をかけられる。肌を見られるのは初めてではないのに、身体が火照りきらないうちに裸に剥かれてしまうのは、どうにも恥ずかしかった。
「ら、ラウル様……!」
ドロワーズをずりおろそうとするラウルの手を阻んで、エステルが声をあげると、ラウルは穏やかに微笑んだ。
「汚してしまうからな」
「あっ」
ずるりと下に下ろされて、はぎ取られてしまった。そうして生まれたままの姿にされたエステルの股をラウルの足が割ると、にちゃ、と湿った音が響く。
「……口づけだけで、感じてしまったのか?」
「ちが……っ」
否定しようとしたが、ラウルの指が割れ目に這って、それがすぐに嘘だと知れる。湿りはまだわずかだが、確かに期待のうるみが彼女の蜜壺から少しずつ溢れていた。
「んっ」
「俺の星は、本当に可愛いな」
囁いたラウルはそのまま割れ目を前後させて愛液で指を湿らせると、くりゅくりゅと肉の芽を捏ねて愛撫を始める。
「いきなり、そんなところ……あっ」
「すまないが、早く貴女のなかに入りたい」
その言葉とは裏腹に、ラウルは密着していた身体を離して上体を起こす。かと思えばすぐにエステルの股に顔を寄せて、敏感なところを舌で愛撫しはじめた。
「ひぁっそ、れだめ、って……!」
ぴちゃぴちゃと音をたてて、舌先が肉の芽を捏ねる。同時に、指がいきなり二本もなかに入ってきて、入り口すぐの壁をこすりはじめた。舌と指で同時に責められるのは今まで何度も受けているが、水音の激しいこの愛撫は、いつも羞恥を余計にあおってエステルはよけいに乱れてしまうから苦手だった。
「気持ちいいの間違いだろう?」
「あっだ、め、だめぇ……んんぅ……っ」
ぬるぬると動いていた指が、溢れた蜜ですぐにじゅぷじゅぷと音を立てるようになる。初めから激しい愛撫をされて、すぐにエステルの身体は上り詰めそうになった。しかし、その直前で舌と指は離れてしまう。
「もういいだろう?」
ずりおろしたズボンから、ぶるりと猛った肉棒が現れる。
「いいか?」
ずるりと熱源を押し当てながら、ラウルは挿入してもいいかを尋ねる。
「……ラウル様の、望むように……してください……」
「貴女は素直じゃないな」
言いながら、ラウルは彼女の腰を掴んで挿入をはじめる。
「は、ぁあ……んん……っ!」
昨日のはじめの荒々しい挿入と違って、入り口を過ぎたらすぐにそこでちゅくちゅくとこすりはじめ、少しずつなかに入ってくる。それがいつも指で弄られると乱れる場所を擦っているのは、きっと意図的なのだろう。
ここのところの癖で、エステルは声を頑張って抑えようとしている。部屋の前にメイドが立っていないと判っていても、いつ来るか分からないのだ。
「今日はもう中が柔らかいな」
何度か入り口を前後した後に、ラウルはぐっと腰を落とし込むと、最奥をぐわんと揺らして根本まで一気に挿入した。
「あっあああああ……っ!」
絶頂直前だったエステルは、その強い衝撃で、彼の肉棒をきゅうきゅうと締め付け始める。
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「え、らう、るさま、待っ……」
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