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上級冒険者

その先へ

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 「聞くところによると、くにどん君はSランク冒険者になるのが目標なのだろう?なるには王族か貴族の血が必要であると知っているな?」

 「王様……いきなりの事で……」

 「実は2人の姫には他国から見合いの話が何件もきてるのだ。しかし2人には、見合いをする気が全くない。理由は、そう君だ。私も君ならば婿として何の問題もない。」

 「いかがじゃ?くにどん君が2人に好意がないというなら、仕方があるまい。しかし2人のどちらかに好意があるならば、悪い話ではなかろう?」

 王様の猛プッシュが止まらない。

 「王様その事は2人と話をさせて頂けませんか?」

 「うーむ、そうじゃの!当事者同士が決める事が大事じゃの。」

 もしどちらかと結婚すれば、王族の血が得られる事になりSランク冒険者になるのではなかろうか?

 僕はハッと気付いた!

 「王様!今までに1人だけいたというSランク冒険者とは、どなたなんですか?」

 「現在は消息不明なのだ。私も会ったことはない。大昔に唯一のSランク冒険者が現れ、亡くなったとも存命とも分かっておらん。確か、その冒険者の冒険譚が資料室にあったのではないか?」

 資料室!?物語のようになっているという事か!?

 「おい!アンジェリカ!ジェシカ!入っておいで!」

 2人が心配そうに入ってきた。

 「2人の気持ちを私から、くにどん君に伝えておいたぞ!そんなに心配そうにするんじゃない!」

 「それでは、私は中座するぞ!くにどん君後は頼んだよ。」

 「王様。御多忙のところありがとうございました」

 僕とアンジェリカ、ジェシカの3人だけになった。

 上手く切り出せない…

 「くにどん様、私はくにどん様をお慕い申し上げております。是非お側に置いて下さいませんか?」

 「ちょっとちょっと!くにどん。私もよ。私だってくにどんと結婚したいんだから。」

 「僕は2人とも可愛いと思っているしこの先ずっと一緒に居られたら、幸せだと思います。しかし2人は王女様で、僕は平民なんだ。さらに王女様と結婚するって事は、次期王様に僕が選ばれる可能性があるんじゃない?」

 「そうかも知れないわ…お父様になにかあれば…くにどん様は、王様になる気はないの?くにどん様なら立派な王様になれると思うわ!」

 王様か……王様になって民を豊かに幸せにするのも立派な事だ。

 美人姉妹2人と結婚して王様になる。ドラゴン族の復興を手伝い、他種族と友好関係を構築する。

 ドラゴン族を惨殺した男の足取りも調べないといけない。

 冒険者として、好きな事だけをして生きたかったのに、次第にそれだけではいけなくなる。

 商会も背負い、さらにこの国も背負う事になるのか……うまい酒と食事には不自由しないだろうけどな……

 「僕のこと好きなのかい?」

 「ええ!」

 「めっちゃすきよー!」

 「僕のどんなとこが好きなのかい?」

 「創造力豊かな魔法とその活躍かしら!」

 「あたしは、冒険してるくにどんが頼もしくて好きになったわー、あーはずかし!」

 2人とも真剣に考えてくれてるようだ、、僕も真剣に向き合って返事をしなければいけない。

 うまい酒と美人妻(×2)+ Sランク冒険者
                               vs.
 自由な気ままなひとり旅(貧乏+風呂なし)

 これは、ドラゴンとの闘いにも匹敵する大勝負だ、異世界でのこれからを左右する選択だぞ……

 汗がでる、握りしめた拳に自然と力がはいる……

 「アンジェリカ、ジェシカ…僕は、僕の決断は……」

 ゴクンッ!

 3人とも生唾を呑む。

 「…僕は…僕は…

            好きな事をして生きる!」

 「ウィーヴィル!!!!!!」

 大声で黒竜を召喚した!

  王宮の空を真っ暗に染めるかと思うほどのドラゴンが舞い降り、小さな窓から顔を覗かせた。

 口には角ウサギの串焼きを頬張り、、やや酒臭い息をしている、、

 『なんじゃ、小僧!良い気分で呑んでおったのに!』

 こいつも僕の趣味に染まってきたなと、僕はにやけてしまった、これでますます決意がかたまった!

 ジェシカとアンジェリカは、初めて間近で黒竜をみて、ガクガクと震えている、真っ青だ。言葉が出ないようだ。

 窓を開け、僕は黒竜に乗り込み、

 「ごめん!僕はまだまだ冒険がしたい!色々な魔法を試したい!世界が僕を待ってるんだ!」

 「飛べ!ウィーヴィル!」

 ホロ酔いの黒竜は、何やらブツブツと文句を垂れ流していたが、グワァッと翼を広げ、飛び立った。

 「ちょちょちょっ、ちょっとちょっとーー!!くにどん!!」

 ジェシカは黒竜の尻尾に捕まろうと窓から身を乗り出しているが、届かない。

 「ちょっとちょっとーー!!連れてってよーあたしもいくわーー!」

 その声は、遠く上空まで飛び立ったくにどんにはやはり届かない。

 かつてのぽっちゃりおっさん時代には考えられない決断を僕はした。Sランクへの一番近道である王族との血縁をフイにしたのだ。

 世界は広い!
 僕は自由なのだ!
 商会のことなど気になることはあるが、今は考えるのはやめておこう。

 


 「ちょっとちょっと…あたしが置いてきぼりなんて、、絶対結婚するんだからね!!待ってなさーい!」



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