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学童期

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 「今のが[ライトボール]ね。リリー腕を出して!」

 リリーは言われた通り、右腕を僕の方に差し出した。

 「今から腕がじんわり暖かくなるよ。」

 リリーの腕にかざした、僕のてのひらから、柔らかい光が、リリーの腕に放射されている。

 「ポカポカ暖かいよ!?」

 「リリーの腕は怪我していないから、気持ちいいだけだけど、怪我していたら、光によって怪我がじんわりと治癒していくんだ。深い傷や、内臓の傷なんかだと、しばらく光を照射しないといけない。光を照射する間ずっと魔力が減っていくから気を付けないといけないよ。」

 リリーもミアも真剣な表情で、僕の言葉を聞き逃さない様に聞いていた。

 「じゃあ2人とも、レベルを上げるには地道に魔法を使用していくしかないからね。明日実技テストがあるみたいだから、今日はほどほどにしないと、魔力の回復が間に合わず、明日の実技テストの時に、魔力枯渇していたとかない様にね。」

 要件が終わり、僕は訓練場から帰ろうとしていた。が、僕の袖を引っ張る手がある。

 「ノア君、私も……」

 上目遣いで、物欲しそうにクラウディアが見つめてくる。

 「今日のお願いは、の練習を見て欲しいって聞いていたけど?」

 「もう、ノア君の意地悪!」

 クラウディアは頬をプクっと膨らませている。

 「クラウディアは[風][光][治癒]だっけ?光はリリーの時に見てただろ?それにクラウディアは、もう色々出来るんだろ?」

 「ある程度は出来るけど、やっぱり上達したいじゃない。」

 「クラウディアには、今から面白い所に連れて行ってあげるよ。」

 「本当!?じゃあ魔法を教えてくれるのは、また今度でもいいわ!どこに連れて行ってくれるの?」

 まだ練習していくと言うミアとリリーとは別れ、僕とクラウディアは学校から出た。

 校舎裏の人気の少ない方に、クラウディアの手を引き連れて行く。

 「ノア君、どこに連れて行くの?私まだそういう事の経験ないのよ。私達まだ子供なのよ。」

 周りに誰の目もない事を、確認すると僕はクラウディアの両手を強く握った。

 クラウディアは目をつむっている。

 「瞬間移動テレポート!」

 次の瞬間、僕とクラウディアは、[オッフェンベルグ]の街にいた。

 目を瞑って、何かを期待していた様子のクラウディアは目を開けると、

 「なんなの?ノア君。私はてっきり……ってここどこ?」

 「いつかクラウディア言ってただろう?ここは[オッフェンベルグ]の街さ。ウチの果物飴を買いに行こう。」
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