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Case.7 授業
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「今日から始まる『戦術』は文字通り戦闘を学ぶ。うちで習うのはあくまでも護身を目的だ」
運動場での授業。左門は授業について説明をする。
「いいか。あくまでも自分の身を守るための戦闘だ、決して攻撃のためじゃ……お前達」
左門の説明を聞いているジャージ姿の生徒達は嬉々とした表情を見せ、ワクワクしている。それは男子生徒も女子生徒も関係なく。竹葉も健之介も、もちろん津々浦も。
「ワクワクするな! 眼を輝かせるな!」
「だって今日からの『戦術』楽しみにしていたんですよ! それが他の学校にない要素でしょ」
津々浦が前に出る。
「やっぱりサイボーグ同士の戦いって男のロマンだと思います」
「そうそれそれ!!」
「お前達もそっちなのか」
健之介も兵鉢もうずうずしている。左門はちらりと竹葉のほうも見た。他の生徒達ほど目立たないが、静かな笑顔でワクワクしている。
みんな男の子だな……。左門は女子生徒達も見る。
「見学行った時、先輩達が体術をしているのかっこよかったんですの! それ以来楽しみでして!」
「誰が一番強いか決めるんでしょ?」
女子生徒の倉敷莉音と仲代アリサが発言する。
「そういう事するんじゃないわよ」
女の子もか……。女子も血の気が多いと左門は見た。
「機械化率の高いやつ、低いやつで別れて対戦してもらう。今日は武器は無しだ」
左門は説明する。
「コンバート率が近い奴同士で対戦してもらう。……竹葉未月と津々浦大翔」
左門は苦い顔を竹葉と津々浦に見せる。
「あ、やっぱりか」
「お前……」
津々浦に笑いかけられて、竹葉は睨み警戒の意思を見せた。左門が対戦相手を全て読み上げる。しかし生徒の人数は15人で一人、兵鉢が余った。
「え? 俺余ったんですけど……」
「お前がコンバート化しているのは眼だけだろ。生身部分が多い奴には対戦させられない」
「……」
左門は兵鉢だけが余った理由を説明する。説明を受け、兵鉢は下を向く。
「お前はみんなをその眼で『視ろ』」
「?」
「お前の義眼の録画機能で、動きの癖やどこに隙が出来るかを意識しながら視ろ」
「! はい!」
兵鉢は役目があるとわかり笑顔を見せた。
竹葉達は左門から配られた白いゼッケンを見に付ける。
「先に相手のゼッケンを取るか分間守り切ったほうが勝ちだ」
竹葉と津々浦は睨み合う。竹葉は津々浦を警戒し、津々浦は竹葉に興味と殺気を示す。
「始め!」
左門が合図を出すと、兵鉢以外の生徒達はそれぞれの相手との戦闘を開始する。ゼッケンを狙う事に集中するか、五分逃げ切るか、相手に打撃を加えるかでそれぞれ違った。
竹葉はゼッケンを狙う選択をし、津々浦はゼッケンを庇うように押さえて避ける。津々浦の動きはやはり無駄が無く素早い。
やっぱりダメージ与えて動きを止めゼッケン取ろう。竹葉は高くジャンプし、津々浦の顔を大きく蹴る。
しかし津々浦はそれを受け止めて、押す。
「わっ!」
竹葉はバランスを崩しフラフラになりながら着地する。そのまま、津々浦の胸を殴りに行く。津々浦の胸に拳を撃ちつければガコンと鋼の音がする。津々浦も機械の身体だ。
津々浦もつられるように竹葉を殴る。彼の身体もまた、皮膚越しに鋼の鈍い音がした。これがコンバータ同士の戦闘かと二人は自覚する。
「!」
「!」
竹葉は津々浦のゼッケンを取ろうとするが、津々浦は素早くしゃがんでそれを庇う。竹葉もゼッケンを奪われないように距離を取る。それを繰り返していく。
やっぱりデカいダメージを与えて動けなくして奪うか。竹葉はそう考え、津々浦に近付き彼の頭に向かって拳を向ける。津々浦は咄嗟に両腕で防ぐ。
ドグシャァ!!!
「「!?」」
鉄屑が砕けるような音が響く。津々浦と竹葉、それぞれの義手は防御と攻撃の勢いでお互いに激しく砕けた。
津々浦の両腕はボロボロになり鉄の装甲が見え、竹葉の右腕の人工皮膚が破け、半分以上鉄の装甲が見えていた。彼の腕からは管や金属やチューブで出来た筋肉と骨が見える。それらを左門や健之介達は見ていた。
「……」
生身の人間とは違う自分のそれを竹葉は見る。自分が普通の人間ではない事実を久々に突き付けられた。
『気持ち悪い』『オバケみたい』『近寄らないで』
ずっと昔に言われた言葉を思い出し、胸が痛くなる。全身を機械化している自分は異質なんだとかつて言われた事を。周りの人間は自分より機械化していない、また拒否されるのでは?
そう考えていると……
「おい大丈夫か!?」
健之介が叫び、竹葉に近寄る。
「竹葉、腕痛くない!?」
一緒に傍に来たのは弓彦だった。
「津々浦くんも大丈夫?」
津々浦に駆け寄る兵鉢。
「あぁうん。痛覚の装置切り忘れたからちょっと痛いかも」
津々浦は兵鉢に笑う。
「あちゃぁ、あるのよねぇ。やりすぎて皮膚が飛ぶの」
左門も当たり前の光景のように見ていた。
「……お前達、驚かないの?」
「何がだ?」
「皮膚の下、こんなだよ?」
竹葉は想定していなかった健之介達の反応に戸惑う。
「これくらい見慣れているよ! ていうか、ここはこういう身体した子達が来る学校でしょ!」
弓彦は竹葉の義手に触れる。
「そ、そっか……」
健之介と弓彦に真っ直ぐに心配され、竹葉は少し安心した。
(竹葉未月。あの感じは相当皮膚の下を見られるのが嫌みたいね。いや見られる事より、それを見た人の反応に怯えているわね)
竹葉が一瞬怯えているように見えたのを左門は見逃さなかった。
「なぁ! ちょっといいか?」
「ボク達に見せて!」
二人の生徒が竹葉に駆け寄った。男子生徒の槙野省吾と女子生徒の仲代アリサだ。
「うぉ! すげぇ義手! パーツ全部最新!?」
「これは傷付いてるところだけ直して皮膚貼り替えればいいかも」
槙野とアリサが竹葉の義手を見て感心しながら直し方を模索する。
「……」
穏やかな空気に触れ、竹葉は安心を覚えるのであった。
運動場での授業。左門は授業について説明をする。
「いいか。あくまでも自分の身を守るための戦闘だ、決して攻撃のためじゃ……お前達」
左門の説明を聞いているジャージ姿の生徒達は嬉々とした表情を見せ、ワクワクしている。それは男子生徒も女子生徒も関係なく。竹葉も健之介も、もちろん津々浦も。
「ワクワクするな! 眼を輝かせるな!」
「だって今日からの『戦術』楽しみにしていたんですよ! それが他の学校にない要素でしょ」
津々浦が前に出る。
「やっぱりサイボーグ同士の戦いって男のロマンだと思います」
「そうそれそれ!!」
「お前達もそっちなのか」
健之介も兵鉢もうずうずしている。左門はちらりと竹葉のほうも見た。他の生徒達ほど目立たないが、静かな笑顔でワクワクしている。
みんな男の子だな……。左門は女子生徒達も見る。
「見学行った時、先輩達が体術をしているのかっこよかったんですの! それ以来楽しみでして!」
「誰が一番強いか決めるんでしょ?」
女子生徒の倉敷莉音と仲代アリサが発言する。
「そういう事するんじゃないわよ」
女の子もか……。女子も血の気が多いと左門は見た。
「機械化率の高いやつ、低いやつで別れて対戦してもらう。今日は武器は無しだ」
左門は説明する。
「コンバート率が近い奴同士で対戦してもらう。……竹葉未月と津々浦大翔」
左門は苦い顔を竹葉と津々浦に見せる。
「あ、やっぱりか」
「お前……」
津々浦に笑いかけられて、竹葉は睨み警戒の意思を見せた。左門が対戦相手を全て読み上げる。しかし生徒の人数は15人で一人、兵鉢が余った。
「え? 俺余ったんですけど……」
「お前がコンバート化しているのは眼だけだろ。生身部分が多い奴には対戦させられない」
「……」
左門は兵鉢だけが余った理由を説明する。説明を受け、兵鉢は下を向く。
「お前はみんなをその眼で『視ろ』」
「?」
「お前の義眼の録画機能で、動きの癖やどこに隙が出来るかを意識しながら視ろ」
「! はい!」
兵鉢は役目があるとわかり笑顔を見せた。
竹葉達は左門から配られた白いゼッケンを見に付ける。
「先に相手のゼッケンを取るか分間守り切ったほうが勝ちだ」
竹葉と津々浦は睨み合う。竹葉は津々浦を警戒し、津々浦は竹葉に興味と殺気を示す。
「始め!」
左門が合図を出すと、兵鉢以外の生徒達はそれぞれの相手との戦闘を開始する。ゼッケンを狙う事に集中するか、五分逃げ切るか、相手に打撃を加えるかでそれぞれ違った。
竹葉はゼッケンを狙う選択をし、津々浦はゼッケンを庇うように押さえて避ける。津々浦の動きはやはり無駄が無く素早い。
やっぱりダメージ与えて動きを止めゼッケン取ろう。竹葉は高くジャンプし、津々浦の顔を大きく蹴る。
しかし津々浦はそれを受け止めて、押す。
「わっ!」
竹葉はバランスを崩しフラフラになりながら着地する。そのまま、津々浦の胸を殴りに行く。津々浦の胸に拳を撃ちつければガコンと鋼の音がする。津々浦も機械の身体だ。
津々浦もつられるように竹葉を殴る。彼の身体もまた、皮膚越しに鋼の鈍い音がした。これがコンバータ同士の戦闘かと二人は自覚する。
「!」
「!」
竹葉は津々浦のゼッケンを取ろうとするが、津々浦は素早くしゃがんでそれを庇う。竹葉もゼッケンを奪われないように距離を取る。それを繰り返していく。
やっぱりデカいダメージを与えて動けなくして奪うか。竹葉はそう考え、津々浦に近付き彼の頭に向かって拳を向ける。津々浦は咄嗟に両腕で防ぐ。
ドグシャァ!!!
「「!?」」
鉄屑が砕けるような音が響く。津々浦と竹葉、それぞれの義手は防御と攻撃の勢いでお互いに激しく砕けた。
津々浦の両腕はボロボロになり鉄の装甲が見え、竹葉の右腕の人工皮膚が破け、半分以上鉄の装甲が見えていた。彼の腕からは管や金属やチューブで出来た筋肉と骨が見える。それらを左門や健之介達は見ていた。
「……」
生身の人間とは違う自分のそれを竹葉は見る。自分が普通の人間ではない事実を久々に突き付けられた。
『気持ち悪い』『オバケみたい』『近寄らないで』
ずっと昔に言われた言葉を思い出し、胸が痛くなる。全身を機械化している自分は異質なんだとかつて言われた事を。周りの人間は自分より機械化していない、また拒否されるのでは?
そう考えていると……
「おい大丈夫か!?」
健之介が叫び、竹葉に近寄る。
「竹葉、腕痛くない!?」
一緒に傍に来たのは弓彦だった。
「津々浦くんも大丈夫?」
津々浦に駆け寄る兵鉢。
「あぁうん。痛覚の装置切り忘れたからちょっと痛いかも」
津々浦は兵鉢に笑う。
「あちゃぁ、あるのよねぇ。やりすぎて皮膚が飛ぶの」
左門も当たり前の光景のように見ていた。
「……お前達、驚かないの?」
「何がだ?」
「皮膚の下、こんなだよ?」
竹葉は想定していなかった健之介達の反応に戸惑う。
「これくらい見慣れているよ! ていうか、ここはこういう身体した子達が来る学校でしょ!」
弓彦は竹葉の義手に触れる。
「そ、そっか……」
健之介と弓彦に真っ直ぐに心配され、竹葉は少し安心した。
(竹葉未月。あの感じは相当皮膚の下を見られるのが嫌みたいね。いや見られる事より、それを見た人の反応に怯えているわね)
竹葉が一瞬怯えているように見えたのを左門は見逃さなかった。
「なぁ! ちょっといいか?」
「ボク達に見せて!」
二人の生徒が竹葉に駆け寄った。男子生徒の槙野省吾と女子生徒の仲代アリサだ。
「うぉ! すげぇ義手! パーツ全部最新!?」
「これは傷付いてるところだけ直して皮膚貼り替えればいいかも」
槙野とアリサが竹葉の義手を見て感心しながら直し方を模索する。
「……」
穏やかな空気に触れ、竹葉は安心を覚えるのであった。
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