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5、新たな日常、新たな騎士
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リリエは本日より自身の護衛騎士となったレクスを伴って自らの居室に入った。そしてレクスにも自室の応接室に入る様に促す。
そして二人きりになった応接室のソファに座り、レクスにも座るよう言った。
レクスが腰かけたのを見届けて、リリエは謝意を述べる。
「まずは、ありがとうと言うわ。私の事知らないふりをしてくれて」
「いえ、礼には及びません」
人懐こい笑顔をリリエに向けたレクスは、でもどこか揶揄う様な色が見て取れる。
「……二人きりの時はかしこまらなくてもいいわ。初めて会った時の様に接して」
「ではお言葉に甘えまして。……リリエ嬢はどうしてあんな所にいたの?」
「城を抜け出していたの。でもそれもやめるわ。だってあなたが護衛につくなら、もう出歩けないもの」
「どうして?」
「……どうしてって、だって、あなた護衛騎士なんでしょ? つきっきりになるのなら……」
「俺と一緒に行けば問題ないんじゃない?」
やっぱりどこか少し揶揄う様な色が見え隠れするレクスの表情にリリエは少しむっとしてしまう。
「ダメよ。……皆には内緒の抜け道を使ってるから」
「俺も一緒にその抜け道から行けば問題ないよ。口外しないって約束するよ?」
「……抜け道を教えてくれた人達に迷惑がかかっちゃうかもしれないわ」
「そっか。じゃあ、俺と最初に出会ったあの巡礼の林で待ち合わせしよう。なら街に行けるよ?」
その提案はとても心が躍る。
本当は城下に降りる事を諦めるのは残念だった。
でも、レクスにとってそれは面倒な仕事が増えてしまうだけだ。
「……どうして、そこまでしてくれるの?」
純粋に疑問と、そしてほんの少しの警戒を込めて訊ねた。
レクスはその言葉にその人懐こい笑顔で答える。
「だって、リリーにまた会いたいから」
予想しなかった意外な言葉はリリエの胸の奥に何故か深く響いた。
完全に虚を突かれてその笑顔を見つめていると、レクスはその人懐こい笑顔を更に綻ばせた。
「お礼まだもらってないからね」
その言葉はしっかりして見えるレクスが覗かせた年相応の男の子の小さな可愛い欲みたいなものが見えて、可笑しくなった。
でも、それ以上に嬉しくなって、思わずクスクスと笑ってしまう。
自分の正体を知ってなお、距離を置かずに同い年の普通の女の子として扱ってくれた事にくすぐったい感情が沸き起こった。
(レクスは不思議な男の子ね……。こんな風に笑っちゃいけないのに)
「そうね、約束だものね。レクスに付いてきてもらうわ」
「俺がここに来たからってリリエ嬢が大切にしてるものを諦める事なんてないよ」
レクスはこだわりなくそう言ってくれた。
そんなレクスはあっという間に領城内の皆と関係を構築して、仲良くなっていった。
使用人の女の子達の間で人気になり彼の噂をしている所をよく見かけ、それでも気さくな性格のせいか男性の使用人達からも気安く接せられ、領軍の兵士達にもその剣の腕前から一目置かれるようになっていく。
幼い時からこの城に住んでいるリリエよりも、馴染んでいるかもしれなかった。
中でも、庭師のチェスラフとよく話している所を見る。
チェスラフは元々ヴァルタリア領の騎士だった。
前当主に仕え輝かしい戦歴を残したが、負傷により斧を振るえなくなって引退。
その後は庭師となりこの城に今まで仕えている。
そんな彼はなかなか気難しく寡黙な人物で黙々と仕事をこなし、誰かと話し込んでいる所を見ない。
リリエはこのチェスラフに可愛がられてはいるが、それでも話し込むような事はなく、一言二言、ぶっきらぼうだが優しさに満ちた言葉をかけてくれる程度。
彼はリリエの抜け道の秘密を共有する一人。
そんな彼がレクスと打ち解けているのは、リリエも密かに驚いた。
そしてもう一人、イグナツとも懇意にしているという。
彼もまた古くからこの城に仕える爺やで昔はヴァルタリアの財務官を務めていた。しかし年のせいか目が見え辛くなり、財務官を引退。今は管理業務の顧問の様な立場で倉庫番だ。
そして彼もまたリリエの抜け道の秘密を共有する一人。
リリエに抜け道を教えた張本人だ。
イグナツは基本的に人当たりはいいがどこか人を煙に巻く様なおどけた所のある皮肉屋で誰ともそこそこの関わりしか持たない。
そんな彼ともレクスは打ち解けたらしい。
レクスが皆と馴染むのに2週間もかからなかった。
護衛騎士としての仕事もしっかりとこなす。護衛対象であるリリエに何があってもすぐに対応出来る距離にいながら、何かあればさりげなく手を差し伸べてくれる。
若いながらその仕事ぶりはかなり板についていた。
また、応接室で二人きりになった時に色々と聞いてみる。
「レクスは若いのに立派に護衛騎士の仕事が身についているのね」
「ああ……。護衛される対象の立場に立って考えるのが得意なんだ。護衛対象が何を求めているのか、どの位の距離感が欲しいのか場面によって違うでしょ? なんとなくわかるんだよね」
「確かにレクスはとてもそういう距離感を測るのが上手だと思うわ」
レクスが来てから、あの気詰まりする毎日の食事の負担が少しだけ減った。さり気なく早く切り上げるように手を差し伸べてくれるからだ。
「それに優秀な護衛騎士をたくさん見てきたからね。参考にしてるんだ」
「そうなの? レクスはどういうお家柄なの?」
「ボスハルトは王家の遠縁にあたる家系だよ。と言っても本当に遠いし、もちろん王位継承権に絡むような事も無い。ずっと騎士ばかり輩出してるけど目立った功績は無いかな」
「じゃあ、レクスはボスハルト家の期待の星なのね」
「……そんな風に考えた事なかった。確かにそんな風に見られててもおかしくないね」
どこか他人事の様なその言葉にリリエは強い違和感を覚えた。もしかしたら彼はあまり身内と上手くいってないのかもしれない。
なんとなく共感出来るからわかる。
これ以上は踏み込んではいけない気がして話を逸らす。
「ねえ? 明日は午後の授業はお休みなの。城下に行きたいわ」
「そうなんだね。俺も楽しみだ」
「レクスはヴァルタリアの街を歩いた事はある?」
「ううん。初日、リリーに会った日は少し知り合いに挨拶回りした位でじっくり歩いてないよ」
「じゃあ、案内するわ。その時にお礼も一緒にするわね」
「うん、楽しみにしてるよ」
「さ、今日はこの後エリザ先生の道徳の授業があるの。エリザ先生はレクスの入室は許可してくれないのよね」
「そうだね。でも仕方がないよ。先生方にも色々考えがおありだろうし」
レクスが来た事によって護衛騎士である彼の教師達による扱いは様々だった。
入室を許可し、一緒に授業を聞くように促す者、入室を許可するだけに留まる者、入室すら許可しない者、色々だが、科目によって男性の護衛騎士が聞いてはいけない様な授業もあるので仕方がない。
ただ、リリエにとって意外だったのは、戦略の授業を受け持つヘルムート先生がレクスの入室を許可しなかった事だ。
彼の明るく軽快で柔軟な思考ならレクスが戦略をリリエと一緒に学ぶ事を許可すると思い込んでいた。
リリエの受ける王妃教育の科目は全部で8つ。
政治、歴史・文化、外交、礼儀・行儀作法、文学・芸術、財務、道徳、戦略となる。
そして教師は全員で11人。
政治担当のクラメツ・ラジスラフ・ベネシュ。
歴史・文化担当のラドムス・ヴィーツェルラフ・ホレスキー。
外交担当のルートヴィヒ・カレル・スコウラ。
礼儀・行儀作法担当のアルブレヒト・ルーカス・クライネルとマリナ・リュドミラ・クレコヴァ。
文学・芸術担当のグレゴール・ボフスラフ・リフナール。
財務担当のレオポルト・ラドミール・ヴラスタ。
道徳担当のエリザ・ヴィエラ・ホラーク。
戦略担当のヘルムート・イジドール・ノヴァークとカスパル・オタカル・ヴラーニー。
そして総括、報告担当のヴィッルート・ズデネク・ハラシュ。
個性様々な教師陣の中でも今から受ける授業の道徳を受け持つエリザ先生は女性の自立を強く訴える思想を持った女性教師で人徳と品格の育成、王としての夫との関係、家庭と宮廷の調和、 国民に対する姿勢、政治と道徳、宮廷の陰謀と道徳、恩赦・寛大さの道徳、こういった事を主に教えてくれるのだが、彼女の授業を聞いていると王妃が出来る事は少ないんだと少し落ち込んでしまう。
だけど、今は扉の向こうでレクスが控えてくれているのだと思うと、少しだけ心の靄が晴れた。
「じゃあ、授業を受けに行きましょう」
レクスはすくっと立ち上がり、リリエに手を差し伸べてエスコートする。
手を取り合う事の多いヴィッルート先生やアルブレヒト先生とはどこか違うその感覚にリリエは戸惑いながらも、少しだけ浮足立つ心を王妃の微笑みの仮面で誤魔化した。
そして二人きりになった応接室のソファに座り、レクスにも座るよう言った。
レクスが腰かけたのを見届けて、リリエは謝意を述べる。
「まずは、ありがとうと言うわ。私の事知らないふりをしてくれて」
「いえ、礼には及びません」
人懐こい笑顔をリリエに向けたレクスは、でもどこか揶揄う様な色が見て取れる。
「……二人きりの時はかしこまらなくてもいいわ。初めて会った時の様に接して」
「ではお言葉に甘えまして。……リリエ嬢はどうしてあんな所にいたの?」
「城を抜け出していたの。でもそれもやめるわ。だってあなたが護衛につくなら、もう出歩けないもの」
「どうして?」
「……どうしてって、だって、あなた護衛騎士なんでしょ? つきっきりになるのなら……」
「俺と一緒に行けば問題ないんじゃない?」
やっぱりどこか少し揶揄う様な色が見え隠れするレクスの表情にリリエは少しむっとしてしまう。
「ダメよ。……皆には内緒の抜け道を使ってるから」
「俺も一緒にその抜け道から行けば問題ないよ。口外しないって約束するよ?」
「……抜け道を教えてくれた人達に迷惑がかかっちゃうかもしれないわ」
「そっか。じゃあ、俺と最初に出会ったあの巡礼の林で待ち合わせしよう。なら街に行けるよ?」
その提案はとても心が躍る。
本当は城下に降りる事を諦めるのは残念だった。
でも、レクスにとってそれは面倒な仕事が増えてしまうだけだ。
「……どうして、そこまでしてくれるの?」
純粋に疑問と、そしてほんの少しの警戒を込めて訊ねた。
レクスはその言葉にその人懐こい笑顔で答える。
「だって、リリーにまた会いたいから」
予想しなかった意外な言葉はリリエの胸の奥に何故か深く響いた。
完全に虚を突かれてその笑顔を見つめていると、レクスはその人懐こい笑顔を更に綻ばせた。
「お礼まだもらってないからね」
その言葉はしっかりして見えるレクスが覗かせた年相応の男の子の小さな可愛い欲みたいなものが見えて、可笑しくなった。
でも、それ以上に嬉しくなって、思わずクスクスと笑ってしまう。
自分の正体を知ってなお、距離を置かずに同い年の普通の女の子として扱ってくれた事にくすぐったい感情が沸き起こった。
(レクスは不思議な男の子ね……。こんな風に笑っちゃいけないのに)
「そうね、約束だものね。レクスに付いてきてもらうわ」
「俺がここに来たからってリリエ嬢が大切にしてるものを諦める事なんてないよ」
レクスはこだわりなくそう言ってくれた。
そんなレクスはあっという間に領城内の皆と関係を構築して、仲良くなっていった。
使用人の女の子達の間で人気になり彼の噂をしている所をよく見かけ、それでも気さくな性格のせいか男性の使用人達からも気安く接せられ、領軍の兵士達にもその剣の腕前から一目置かれるようになっていく。
幼い時からこの城に住んでいるリリエよりも、馴染んでいるかもしれなかった。
中でも、庭師のチェスラフとよく話している所を見る。
チェスラフは元々ヴァルタリア領の騎士だった。
前当主に仕え輝かしい戦歴を残したが、負傷により斧を振るえなくなって引退。
その後は庭師となりこの城に今まで仕えている。
そんな彼はなかなか気難しく寡黙な人物で黙々と仕事をこなし、誰かと話し込んでいる所を見ない。
リリエはこのチェスラフに可愛がられてはいるが、それでも話し込むような事はなく、一言二言、ぶっきらぼうだが優しさに満ちた言葉をかけてくれる程度。
彼はリリエの抜け道の秘密を共有する一人。
そんな彼がレクスと打ち解けているのは、リリエも密かに驚いた。
そしてもう一人、イグナツとも懇意にしているという。
彼もまた古くからこの城に仕える爺やで昔はヴァルタリアの財務官を務めていた。しかし年のせいか目が見え辛くなり、財務官を引退。今は管理業務の顧問の様な立場で倉庫番だ。
そして彼もまたリリエの抜け道の秘密を共有する一人。
リリエに抜け道を教えた張本人だ。
イグナツは基本的に人当たりはいいがどこか人を煙に巻く様なおどけた所のある皮肉屋で誰ともそこそこの関わりしか持たない。
そんな彼ともレクスは打ち解けたらしい。
レクスが皆と馴染むのに2週間もかからなかった。
護衛騎士としての仕事もしっかりとこなす。護衛対象であるリリエに何があってもすぐに対応出来る距離にいながら、何かあればさりげなく手を差し伸べてくれる。
若いながらその仕事ぶりはかなり板についていた。
また、応接室で二人きりになった時に色々と聞いてみる。
「レクスは若いのに立派に護衛騎士の仕事が身についているのね」
「ああ……。護衛される対象の立場に立って考えるのが得意なんだ。護衛対象が何を求めているのか、どの位の距離感が欲しいのか場面によって違うでしょ? なんとなくわかるんだよね」
「確かにレクスはとてもそういう距離感を測るのが上手だと思うわ」
レクスが来てから、あの気詰まりする毎日の食事の負担が少しだけ減った。さり気なく早く切り上げるように手を差し伸べてくれるからだ。
「それに優秀な護衛騎士をたくさん見てきたからね。参考にしてるんだ」
「そうなの? レクスはどういうお家柄なの?」
「ボスハルトは王家の遠縁にあたる家系だよ。と言っても本当に遠いし、もちろん王位継承権に絡むような事も無い。ずっと騎士ばかり輩出してるけど目立った功績は無いかな」
「じゃあ、レクスはボスハルト家の期待の星なのね」
「……そんな風に考えた事なかった。確かにそんな風に見られててもおかしくないね」
どこか他人事の様なその言葉にリリエは強い違和感を覚えた。もしかしたら彼はあまり身内と上手くいってないのかもしれない。
なんとなく共感出来るからわかる。
これ以上は踏み込んではいけない気がして話を逸らす。
「ねえ? 明日は午後の授業はお休みなの。城下に行きたいわ」
「そうなんだね。俺も楽しみだ」
「レクスはヴァルタリアの街を歩いた事はある?」
「ううん。初日、リリーに会った日は少し知り合いに挨拶回りした位でじっくり歩いてないよ」
「じゃあ、案内するわ。その時にお礼も一緒にするわね」
「うん、楽しみにしてるよ」
「さ、今日はこの後エリザ先生の道徳の授業があるの。エリザ先生はレクスの入室は許可してくれないのよね」
「そうだね。でも仕方がないよ。先生方にも色々考えがおありだろうし」
レクスが来た事によって護衛騎士である彼の教師達による扱いは様々だった。
入室を許可し、一緒に授業を聞くように促す者、入室を許可するだけに留まる者、入室すら許可しない者、色々だが、科目によって男性の護衛騎士が聞いてはいけない様な授業もあるので仕方がない。
ただ、リリエにとって意外だったのは、戦略の授業を受け持つヘルムート先生がレクスの入室を許可しなかった事だ。
彼の明るく軽快で柔軟な思考ならレクスが戦略をリリエと一緒に学ぶ事を許可すると思い込んでいた。
リリエの受ける王妃教育の科目は全部で8つ。
政治、歴史・文化、外交、礼儀・行儀作法、文学・芸術、財務、道徳、戦略となる。
そして教師は全員で11人。
政治担当のクラメツ・ラジスラフ・ベネシュ。
歴史・文化担当のラドムス・ヴィーツェルラフ・ホレスキー。
外交担当のルートヴィヒ・カレル・スコウラ。
礼儀・行儀作法担当のアルブレヒト・ルーカス・クライネルとマリナ・リュドミラ・クレコヴァ。
文学・芸術担当のグレゴール・ボフスラフ・リフナール。
財務担当のレオポルト・ラドミール・ヴラスタ。
道徳担当のエリザ・ヴィエラ・ホラーク。
戦略担当のヘルムート・イジドール・ノヴァークとカスパル・オタカル・ヴラーニー。
そして総括、報告担当のヴィッルート・ズデネク・ハラシュ。
個性様々な教師陣の中でも今から受ける授業の道徳を受け持つエリザ先生は女性の自立を強く訴える思想を持った女性教師で人徳と品格の育成、王としての夫との関係、家庭と宮廷の調和、 国民に対する姿勢、政治と道徳、宮廷の陰謀と道徳、恩赦・寛大さの道徳、こういった事を主に教えてくれるのだが、彼女の授業を聞いていると王妃が出来る事は少ないんだと少し落ち込んでしまう。
だけど、今は扉の向こうでレクスが控えてくれているのだと思うと、少しだけ心の靄が晴れた。
「じゃあ、授業を受けに行きましょう」
レクスはすくっと立ち上がり、リリエに手を差し伸べてエスコートする。
手を取り合う事の多いヴィッルート先生やアルブレヒト先生とはどこか違うその感覚にリリエは戸惑いながらも、少しだけ浮足立つ心を王妃の微笑みの仮面で誤魔化した。
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