人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

文字の大きさ
21 / 200

21、9ヶ月前

しおりを挟む
 いつもの様に太公様のお部屋に行く。
 近頃の太公様は出会った頃と比べると少しずつ弱ってらっしゃる様に見えた。
 激昂するとお身体に障るので、あまり陛下の話はしない様にしていた。

 太公様のお話は本当に面白い。
 この国の風習の話やそれを儀式化した事、
 他国のとの交渉や外交、
 海賊から王国へと本格的に変革した手腕をその国のおびとだった方から直接聞くのは臨場感のある、史書を読むのとは全く違う、生きた熱を感じられた。

 そうなると史書を読むのも面白くなって、
 仰っていた事と整合が取れてスルスルと頭に入った。

 でも、最近はお話しするのもしんどそうな時があって、心配でお止めするけど、
 太公様はそれを遮って、急く様にお話を続けられる。

 今日もたくさんお話しをして下さって、
 息をついた時に太公様に訊ねられた。

「……姫」
「はい、なんでしょうか?」
「お主、故郷くにに帰りたくはないか?」

 ビックリした。
 でも、本当の事を言うとほんの少しだけ、マグダラスに帰りたいという気持ちも無かった訳じゃなかったから、私は狡いのを承知で、答えをはぐらかす。
「……何故ですか?」

「余がお主にしてやれる唯一の事がある。余と白い婚姻を結ばぬか?」

 太公様の言葉にびっくりする。
 あまりに予想してなかった発言に言葉が出て来ない。

「余はもう長くないだろう。お主は権威も何も失った余を気にかけた唯一の存在だ。そのお主の願いを叶えてやりたい」

「太公様……、そんな事は仰らないで下さい……。それに陛下だって本当は太公様の事を……」

「姫よ。仮にそうだとしても、もう遅いのだ。余もアレもそこは同じ想いだろう。アレの事はいい。それよりも今、余と白い婚姻を結べばアレの妾になる事から逃れられる。流石に父親の後添いを妾には出来んからな。そして余の亡き後遺産を持って故郷くにに帰れ」

 私は太公様をじっと見つめる。

「……余はお主を心底可愛いと思っておる」

「……」
 私は何も言えない。
 太公様の優しさに何を言えばいいのかわからなくなった。

「レイティア姫よ。お主には幸せになってもらいたい。人質として連れて来られてアレの妾になって、その人生を食い潰される事などない」

 太公様の手が私の手にそっと触れた。

「……太公様……」

 その思いやりに胸が一杯になった。
 私は何もしていない。
 ただ、ここに来て、お話し相手になっているだけで、寧ろたくさんのものを与えて貰えたのに……

 でも、

 ……私の心はもう決まっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

イケメンとテンネン

流月るる
恋愛
ある事情から、イケメンと天然女子を毛嫌いする咲希。彼らを避けて生活していた、ある日のこと。ずっと思い続けてきた男友達が、天然女子と結婚することに! しかもその直後、彼氏に別れを告げられてしまった。思わぬダブルショックに落ち込む咲希。そんな彼女に、犬猿の仲である同僚の朝陽が声をかけてきた。イケメンは嫌い! と思いつつ、気晴らしのため飲みに行くと、なぜかホテルに連れ込まれてしまい――!? 天邪鬼なOLとイケメン同僚の、恋の攻防戦勃発!

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響
恋愛
平和だったカヴァニス王国が、隣国イザイアの突然の侵攻により一夜にして滅亡した。 カヴァニスの王女アリーチェは、逃げ遅れたところを何者かに助けられるが、意識を失ってしまう。 目覚めたアリーチェの前に現れたのは、祖国を滅ぼしたイザイアの『隻眼の騎士王』ルドヴィクだった。 憎しみと侮蔑を感情のままにルドヴィクを罵倒するが、ルドヴィクは何も言わずにアリーチェに治療を施し、傷が癒えた後も城に留まらせる。 ルドヴィクに対して憎しみを募らせるアリーチェだが、時折彼の見せる悲しげな表情に別の感情が芽生え始めるのに気がついたアリーチェの心は揺れるが………。 ※内容の一部に残酷描写が含まれます。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...