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21、9ヶ月前
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いつもの様に太公様のお部屋に行く。
近頃の太公様は出会った頃と比べると少しずつ弱ってらっしゃる様に見えた。
激昂するとお身体に障るので、あまり陛下の話はしない様にしていた。
太公様のお話は本当に面白い。
この国の風習の話やそれを儀式化した事、
他国のとの交渉や外交、
海賊から王国へと本格的に変革した手腕をその国の首だった方から直接聞くのは臨場感のある、史書を読むのとは全く違う、生きた熱を感じられた。
そうなると史書を読むのも面白くなって、
仰っていた事と整合が取れてスルスルと頭に入った。
でも、最近はお話しするのもしんどそうな時があって、心配でお止めするけど、
太公様はそれを遮って、急く様にお話を続けられる。
今日もたくさんお話しをして下さって、
息をついた時に太公様に訊ねられた。
「……姫」
「はい、なんでしょうか?」
「お主、故郷に帰りたくはないか?」
ビックリした。
でも、本当の事を言うとほんの少しだけ、マグダラスに帰りたいという気持ちも無かった訳じゃなかったから、私は狡いのを承知で、答えをはぐらかす。
「……何故ですか?」
「余がお主にしてやれる唯一の事がある。余と白い婚姻を結ばぬか?」
太公様の言葉にびっくりする。
あまりに予想してなかった発言に言葉が出て来ない。
「余はもう長くないだろう。お主は権威も何も失った余を気にかけた唯一の存在だ。そのお主の願いを叶えてやりたい」
「太公様……、そんな事は仰らないで下さい……。それに陛下だって本当は太公様の事を……」
「姫よ。仮にそうだとしても、もう遅いのだ。余もアレもそこは同じ想いだろう。アレの事はいい。それよりも今、余と白い婚姻を結べばアレの妾になる事から逃れられる。流石に父親の後添いを妾には出来んからな。そして余の亡き後遺産を持って故郷に帰れ」
私は太公様をじっと見つめる。
「……余はお主を心底可愛いと思っておる」
「……」
私は何も言えない。
太公様の優しさに何を言えばいいのかわからなくなった。
「レイティア姫よ。お主には幸せになってもらいたい。人質として連れて来られてアレの妾になって、その人生を食い潰される事などない」
太公様の手が私の手にそっと触れた。
「……太公様……」
その思いやりに胸が一杯になった。
私は何もしていない。
ただ、ここに来て、お話し相手になっているだけで、寧ろたくさんのものを与えて貰えたのに……
でも、
……私の心はもう決まっている。
近頃の太公様は出会った頃と比べると少しずつ弱ってらっしゃる様に見えた。
激昂するとお身体に障るので、あまり陛下の話はしない様にしていた。
太公様のお話は本当に面白い。
この国の風習の話やそれを儀式化した事、
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そうなると史書を読むのも面白くなって、
仰っていた事と整合が取れてスルスルと頭に入った。
でも、最近はお話しするのもしんどそうな時があって、心配でお止めするけど、
太公様はそれを遮って、急く様にお話を続けられる。
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「……姫」
「はい、なんでしょうか?」
「お主、故郷に帰りたくはないか?」
ビックリした。
でも、本当の事を言うとほんの少しだけ、マグダラスに帰りたいという気持ちも無かった訳じゃなかったから、私は狡いのを承知で、答えをはぐらかす。
「……何故ですか?」
「余がお主にしてやれる唯一の事がある。余と白い婚姻を結ばぬか?」
太公様の言葉にびっくりする。
あまりに予想してなかった発言に言葉が出て来ない。
「余はもう長くないだろう。お主は権威も何も失った余を気にかけた唯一の存在だ。そのお主の願いを叶えてやりたい」
「太公様……、そんな事は仰らないで下さい……。それに陛下だって本当は太公様の事を……」
「姫よ。仮にそうだとしても、もう遅いのだ。余もアレもそこは同じ想いだろう。アレの事はいい。それよりも今、余と白い婚姻を結べばアレの妾になる事から逃れられる。流石に父親の後添いを妾には出来んからな。そして余の亡き後遺産を持って故郷に帰れ」
私は太公様をじっと見つめる。
「……余はお主を心底可愛いと思っておる」
「……」
私は何も言えない。
太公様の優しさに何を言えばいいのかわからなくなった。
「レイティア姫よ。お主には幸せになってもらいたい。人質として連れて来られてアレの妾になって、その人生を食い潰される事などない」
太公様の手が私の手にそっと触れた。
「……太公様……」
その思いやりに胸が一杯になった。
私は何もしていない。
ただ、ここに来て、お話し相手になっているだけで、寧ろたくさんのものを与えて貰えたのに……
でも、
……私の心はもう決まっている。
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