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湯浴みはやめて、とりあえず酷い顔を冷たい水で洗う。
気合を入れるために両手で自分の頬を叩く。
今の時間なら、朝議の時間に間に合う筈だ。
とにかく急がなければ。
私は朝議の行われている玉座の間に殆ど走る様に急いだ。
心臓がドキドキと煩く鳴る。
とても怖い。
痛いくらい弾む心臓に、怯みそうなその心に、檄を飛ばして、私は衛兵の遮るのも無視して大きな声で、陛下に届く様叫んだ。
「陛下、火急申し上げたい事が御座います!」
陛下に届いたのか、衛兵に声がかけられ、
通して貰えた。
頭を下げ、陛下のお声を待つ。
「面を上げよ」
玉座に頬杖をつき、足を組んで座してる陛下はいつも二人でいる時とは打って変わって、仮面王の名に相応しい仮面の様な無表情だった。
……これが王としてのお顔なのね……
「火急、とは何だ。マグダラスの王女よ」
いつもの優しいお声とは違う。
無機質で情感の籠らない声。
「太公様薨去の折、お側に仕え、最期を看取らせて頂きました。最期の御意向をお伝えしたいのです」
「申してみよ」
「太公様は葬儀に関し、簡素にと仰いました。
葬儀に際し、どうか追従をお付けするのはおやめ下さい」
いつも優しく笑って話をしてくれる宰相様も、軍師様も、法相様も、貼り付けた様に無表情だ。
……多分私は、この場にいる全員を納得させるしか、意思を貫けない。
「儀式に関しては、我が国の伝統。他国の姫の口出す事ではない!」
諸侯の一人から声が上がる。
「他国の者だからこそ、この伝統が如何に無意味で野蛮であるかわかります。太公様は生前、仰っておられました。他国に対しこの国の主権を認めさせる事に尽力したと。この様な無意味な犠牲を出していてはグリムヒルト王国の名折れです。太公様のご意志に反します」
「我らの伝統を愚弄するか! 追従には黄泉に兵士を連れて行く大事な役割がある! それを無意味な犠牲とは、何という言種か!」
他の諸侯から官吏からも声が上がる。
口々に否定の声が上がった。
……もう、これしかない。
「お黙りなさい!」
私は大きな声で一喝する。
すると玉座の間は静まり返る。
「そんなにこの追従は必要なのですね。ならば、私が追従致します」
場内はどよめく。
「これでも私はマグダラス王国の第一王女です。太公様の覚えもめでたく、これ以上の追従はないでしょう。私一人で充分な筈です」
更にどよめく場内。
そこに静かな陛下の声が落ちる。
「マグダラスの王女よ。太公の意向はわかった。しかしグリムヒルトの朝を騒がせる権はお前には無い。よって、自室にて謹慎を申し渡す。沙汰があるまで待て。もう下がれ」
私は握る拳に力を込めた。
「…………はい……。」
気合を入れるために両手で自分の頬を叩く。
今の時間なら、朝議の時間に間に合う筈だ。
とにかく急がなければ。
私は朝議の行われている玉座の間に殆ど走る様に急いだ。
心臓がドキドキと煩く鳴る。
とても怖い。
痛いくらい弾む心臓に、怯みそうなその心に、檄を飛ばして、私は衛兵の遮るのも無視して大きな声で、陛下に届く様叫んだ。
「陛下、火急申し上げたい事が御座います!」
陛下に届いたのか、衛兵に声がかけられ、
通して貰えた。
頭を下げ、陛下のお声を待つ。
「面を上げよ」
玉座に頬杖をつき、足を組んで座してる陛下はいつも二人でいる時とは打って変わって、仮面王の名に相応しい仮面の様な無表情だった。
……これが王としてのお顔なのね……
「火急、とは何だ。マグダラスの王女よ」
いつもの優しいお声とは違う。
無機質で情感の籠らない声。
「太公様薨去の折、お側に仕え、最期を看取らせて頂きました。最期の御意向をお伝えしたいのです」
「申してみよ」
「太公様は葬儀に関し、簡素にと仰いました。
葬儀に際し、どうか追従をお付けするのはおやめ下さい」
いつも優しく笑って話をしてくれる宰相様も、軍師様も、法相様も、貼り付けた様に無表情だ。
……多分私は、この場にいる全員を納得させるしか、意思を貫けない。
「儀式に関しては、我が国の伝統。他国の姫の口出す事ではない!」
諸侯の一人から声が上がる。
「他国の者だからこそ、この伝統が如何に無意味で野蛮であるかわかります。太公様は生前、仰っておられました。他国に対しこの国の主権を認めさせる事に尽力したと。この様な無意味な犠牲を出していてはグリムヒルト王国の名折れです。太公様のご意志に反します」
「我らの伝統を愚弄するか! 追従には黄泉に兵士を連れて行く大事な役割がある! それを無意味な犠牲とは、何という言種か!」
他の諸侯から官吏からも声が上がる。
口々に否定の声が上がった。
……もう、これしかない。
「お黙りなさい!」
私は大きな声で一喝する。
すると玉座の間は静まり返る。
「そんなにこの追従は必要なのですね。ならば、私が追従致します」
場内はどよめく。
「これでも私はマグダラス王国の第一王女です。太公様の覚えもめでたく、これ以上の追従はないでしょう。私一人で充分な筈です」
更にどよめく場内。
そこに静かな陛下の声が落ちる。
「マグダラスの王女よ。太公の意向はわかった。しかしグリムヒルトの朝を騒がせる権はお前には無い。よって、自室にて謹慎を申し渡す。沙汰があるまで待て。もう下がれ」
私は握る拳に力を込めた。
「…………はい……。」
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