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グレーゲルが私に背を向けて、軍人の振り上げた剣を受け止めた。
カキンと甲高い剣の擦れ合う音が鳴り響く。
他の軍人がグレーゲルの横から切りかかって来たので、私は魔法の炎を練り上げて、軍人にぶつけた。
炎はびっくりする位大きく、激しい。いつもの感じなら、手の平よりも少し大きい位の大きさの炎が出来上がるはずなのに、その3倍以上はあった。
そんな大きな炎をいきなり喰らった軍人の一人は火だるまになってしまう。
軍人は突然現れた炎に灼かれて熱さと混乱と恐怖で叫び声を上げる。
「うわあぁぁぁ~~~~~!!!!」
こんな大きな炎、私に作れる筈ないのに。どうして?
私は慌てて同じ位の勢いで魔法の水球を練り上げて、火だるまの軍人に浴びせた。
さっきの炎の時と同じ様に自分では思いもしない様な大きさの水球が出来てしまった。
軍人を包んでいた炎は消えていた。倒れこんで唸り声を上げているけど、パッと見た感じ大きな火傷は負っていない様で、私は心の中で安堵の溜息を吐いた。
「純血の使う奇怪な技か。ただ悪女なだけでなく、妖女だな」
指令を出している軍服の男は私をまるで汚い物を見るような目で見つめて言った。
「なんだ、嫁さん、俺達の時は手加減してくれてたのかよ」
グレーゲルは他の軍人達が切りかかって来るのを受け流しながら、私に問いかける。
「違うの、私、こんな大きな魔力、無い筈なの」
私は戸惑いながら答えた。
「何でもいい!! こいつら何とかしてくれ!!」
3人を相手に善戦してるグレーゲルが私に助けを求めた。
私はグレーゲルの背後を剣を振り上げ迫った軍人の足元に土の魔法で地面を隆起させた。
足元のバランスを失った軍人は転んでしまう。
得意な地の魔法なら何とか制御が効くみたい。
グレーゲルが二人を切り伏せて、後一人となった所で、指令を出している軍服の男が他の男達に命令を下す。
「ここは一旦引くぞ!」
軍服の男達は火だるまになって蹲っていた男を抱えてマイヤールの集落の方へ入っていった。
「……このまま諦めてくれるといいけど」
私がそう呟くとグレーゲルがそれに答えた。
「どうだろうな。なんせ奴さん、叛逆者だ。その汚名を着てまで嫁さんを追い出そうってんだ。まぁ追ってくるだろうな」
「……そうよね、諦めてくれないわよね……。じゃあ、尚更急がなくちゃ」
私がそう言うと、グレーゲルは納刀しながら溜息を吐く。
「はぁ。楽して儲けられると思ったがそう美味い話は無いみたいだな」
私はにっこりと笑うとグレーゲルの背中を叩いた。
「残念だけど、楽させてあげられないみたい。悪いけどお願いするわ」
「付けてくれるっていう色、期待してるぜ?」
私は胸を叩いてそれに答える。
「任せておいて。無事送り届けてくれたら、前回の報酬の倍出すわ」
グレーゲルは歩き出しながらそれに笑った。
「そりゃ俄然やる気が沸いたな。さ、行こうぜ」
私もグレーゲルの後を追って歩き出す。
今回は何故か叛逆軍に情報が流れてるから、本当に楽させてあげられないかもしれない。
マイヤール領の領軍の中に同じ様に内通者がいなければいいけど……。
陛下はご無事だろうか?
勿論、宰相様や法相様、妾妃様方、侍女達の事もとても心配だ。
特に王城は今一部を占拠されているから、何をされるかわからない。
宰相様も法相様もお強いから、きっと大丈夫。
「……ねえ? グレーゲル? 私の捕縛依頼って、誰が出したのかわかる?」
私は歩みを進めながら、グレーゲルに問うた。
「ああ、依頼元はカルステニウス商会ってトコだな」
「……初めて聞く商会だわ。信用ある商会なの?」
「カルステニウス商会自体は無名で小さいがな、取引先がデカい」
「どこと取引してるの?」
「アルバニウス商会だ」
「……アルバニウス商会?」
「ヴェルウェルトやキヴィレフトほどの規模はねえが、領城に出入りしてる位にはデカいぜ?」
私の取引してる商会はそもそも陛下が紹介して下さったキヴィレフトだけだ。
いきなり大きくて優秀な商会と取引出来たので、他の商会と関わる事もなかった。
「どういう内容の依頼だったの?」
「王城に口入れしてた地の民の下働きの女が借金残して消えた、捕まえて欲しいってな依頼だ。だがな、その割には注文が多い。女には手出しするな、無傷で捕らえろ、捕まえたら港酒場の『かもめ屋』に連れて来いってな。サントニア通りのアルバニウスの商館でなく、だ。まあ、依頼自体は簡単だと俺らみたいな稼業の奴らは思うだろうな。だが、俺はあんただとピンと来た。おかしな依頼内容もあんただってんなら、なんかあるだろ?」
「なるほどね」
「まあ俺ゃツイてるわな。あんたを直接知ってなきゃ俺も飛びついてたかもしれん」
「そうかしら? 貴方ならこんな怪しげな依頼、関わらなかったんじゃないの?」
「そうかもしれんが、懐具合にもよるな。だがあんたの旦那に目を付けられんのはごめんだ」
「カルステニウスについては何か知ってる事、ある?」
「アルバニウスの荷運びの下請けなんかをやってるらしいって城下の連中は言ってたな。ロカモアが多いって聞いたぞ」
アルバニウスとカルステニウス……この商会の事も陛下にお伝えしなくちゃ。
カキンと甲高い剣の擦れ合う音が鳴り響く。
他の軍人がグレーゲルの横から切りかかって来たので、私は魔法の炎を練り上げて、軍人にぶつけた。
炎はびっくりする位大きく、激しい。いつもの感じなら、手の平よりも少し大きい位の大きさの炎が出来上がるはずなのに、その3倍以上はあった。
そんな大きな炎をいきなり喰らった軍人の一人は火だるまになってしまう。
軍人は突然現れた炎に灼かれて熱さと混乱と恐怖で叫び声を上げる。
「うわあぁぁぁ~~~~~!!!!」
こんな大きな炎、私に作れる筈ないのに。どうして?
私は慌てて同じ位の勢いで魔法の水球を練り上げて、火だるまの軍人に浴びせた。
さっきの炎の時と同じ様に自分では思いもしない様な大きさの水球が出来てしまった。
軍人を包んでいた炎は消えていた。倒れこんで唸り声を上げているけど、パッと見た感じ大きな火傷は負っていない様で、私は心の中で安堵の溜息を吐いた。
「純血の使う奇怪な技か。ただ悪女なだけでなく、妖女だな」
指令を出している軍服の男は私をまるで汚い物を見るような目で見つめて言った。
「なんだ、嫁さん、俺達の時は手加減してくれてたのかよ」
グレーゲルは他の軍人達が切りかかって来るのを受け流しながら、私に問いかける。
「違うの、私、こんな大きな魔力、無い筈なの」
私は戸惑いながら答えた。
「何でもいい!! こいつら何とかしてくれ!!」
3人を相手に善戦してるグレーゲルが私に助けを求めた。
私はグレーゲルの背後を剣を振り上げ迫った軍人の足元に土の魔法で地面を隆起させた。
足元のバランスを失った軍人は転んでしまう。
得意な地の魔法なら何とか制御が効くみたい。
グレーゲルが二人を切り伏せて、後一人となった所で、指令を出している軍服の男が他の男達に命令を下す。
「ここは一旦引くぞ!」
軍服の男達は火だるまになって蹲っていた男を抱えてマイヤールの集落の方へ入っていった。
「……このまま諦めてくれるといいけど」
私がそう呟くとグレーゲルがそれに答えた。
「どうだろうな。なんせ奴さん、叛逆者だ。その汚名を着てまで嫁さんを追い出そうってんだ。まぁ追ってくるだろうな」
「……そうよね、諦めてくれないわよね……。じゃあ、尚更急がなくちゃ」
私がそう言うと、グレーゲルは納刀しながら溜息を吐く。
「はぁ。楽して儲けられると思ったがそう美味い話は無いみたいだな」
私はにっこりと笑うとグレーゲルの背中を叩いた。
「残念だけど、楽させてあげられないみたい。悪いけどお願いするわ」
「付けてくれるっていう色、期待してるぜ?」
私は胸を叩いてそれに答える。
「任せておいて。無事送り届けてくれたら、前回の報酬の倍出すわ」
グレーゲルは歩き出しながらそれに笑った。
「そりゃ俄然やる気が沸いたな。さ、行こうぜ」
私もグレーゲルの後を追って歩き出す。
今回は何故か叛逆軍に情報が流れてるから、本当に楽させてあげられないかもしれない。
マイヤール領の領軍の中に同じ様に内通者がいなければいいけど……。
陛下はご無事だろうか?
勿論、宰相様や法相様、妾妃様方、侍女達の事もとても心配だ。
特に王城は今一部を占拠されているから、何をされるかわからない。
宰相様も法相様もお強いから、きっと大丈夫。
「……ねえ? グレーゲル? 私の捕縛依頼って、誰が出したのかわかる?」
私は歩みを進めながら、グレーゲルに問うた。
「ああ、依頼元はカルステニウス商会ってトコだな」
「……初めて聞く商会だわ。信用ある商会なの?」
「カルステニウス商会自体は無名で小さいがな、取引先がデカい」
「どこと取引してるの?」
「アルバニウス商会だ」
「……アルバニウス商会?」
「ヴェルウェルトやキヴィレフトほどの規模はねえが、領城に出入りしてる位にはデカいぜ?」
私の取引してる商会はそもそも陛下が紹介して下さったキヴィレフトだけだ。
いきなり大きくて優秀な商会と取引出来たので、他の商会と関わる事もなかった。
「どういう内容の依頼だったの?」
「王城に口入れしてた地の民の下働きの女が借金残して消えた、捕まえて欲しいってな依頼だ。だがな、その割には注文が多い。女には手出しするな、無傷で捕らえろ、捕まえたら港酒場の『かもめ屋』に連れて来いってな。サントニア通りのアルバニウスの商館でなく、だ。まあ、依頼自体は簡単だと俺らみたいな稼業の奴らは思うだろうな。だが、俺はあんただとピンと来た。おかしな依頼内容もあんただってんなら、なんかあるだろ?」
「なるほどね」
「まあ俺ゃツイてるわな。あんたを直接知ってなきゃ俺も飛びついてたかもしれん」
「そうかしら? 貴方ならこんな怪しげな依頼、関わらなかったんじゃないの?」
「そうかもしれんが、懐具合にもよるな。だがあんたの旦那に目を付けられんのはごめんだ」
「カルステニウスについては何か知ってる事、ある?」
「アルバニウスの荷運びの下請けなんかをやってるらしいって城下の連中は言ってたな。ロカモアが多いって聞いたぞ」
アルバニウスとカルステニウス……この商会の事も陛下にお伝えしなくちゃ。
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