悪役令嬢の番犬~かつて悪役令嬢の取り巻きだった私は敵になってでも彼女を救ってみせる~

うにたん

文字の大きさ
6 / 40
2章 5歳

第六話:・・・おや!? まるぐりっとのようすが・・・!

しおりを挟む

 どうも、ごきげんよう。状況把握能力ゼロ令嬢マルグリットです。

 フィルミーヌ様の夢を見て起きたと思ったら何故か自分の部屋にいるわたしにビビってます。

 わからない…… 一旦落ち着け、私!
 
 と、とりあえず水を飲もう。喉が渇いた……。
 
 とりあえずベッドから起き上がらないと……、なんか体重くてうまく起き上がれない……。
 
 ベッドから降りようとした私はバランスを崩してベッドから落ちてしまった。
 
「いったあああああああああああああああ」

 私の叫びが聞こえたのか、部屋の外からすごい勢いでこちらに向かってくる足音が聞こえる。
 
 勢いよくドアが開かれる。もう少し丁寧に空けてほしいんだけど、ドア壊れちゃうから。
 
「お嬢さまああああああああああああああああああああああああああ、目が覚められたのですねぇ、よかったああああああ」
 
 うるさっ! 声でかっ! 聞き覚えのあるバカ声の主、私が学園に入る前の私の専属メイドである『ナナ』の声
 
「高熱を出されて丸二日間ずっと寝込まれてたので心配だったのですよぉ。目が覚められてよかったですぅ」

 ナナは半泣き状態で私に飛びついてきた。おい、瀕死の人間に向かってダイブはやめたまえ!
 
 ナナによるダイブによってベッドに押し倒される形になってしまった。
 
 まあ、いいか。身体重いし、しばらくベッドで安静していよう。
 
 それにしても二日? そんなに寝てたんだ? 私…… ん? 違う違う。
 
 それどころじゃない。私は一旦死んだはずなんだ。高熱どころか生きてるのが不思議なくらいの重症だったはず。
 
「ねえ、ナナ。私の事、よく見つけられたわね。どうやってここまで運んできたの?」

 私は率直に疑問をナナに聞いてみる。
 
「どうやって? あの…… お嬢様が倒れられていたのを見つけたので運んできたのですけど……」
 
 え? 何であんな場所で発見できたんだろう…… 人が普段通らないような場所だよ? それに『赤狼の牙』がいたはず。ナナが見つけたときは既に立ち去った後ってこと?
 
「そもそも何であんな場所にいたの?」

 ナナは不思議そうな顔をしてこちらの顔を眺めている。不思議に思ってるのは私だっての!
 
「お嬢様のお姿が見えなかったのでたくさん探しちゃいましたよぉ」

 殿下の言う事が正しいと仮定するのであれば私の追放に関してはとっくにグラヴェロット家に伝わってたはず……。 でもそれを察知したナナが私を探しに来たってこと? 王都から隣国までの道のりを?
 
「そうなのね。助けてくれてありがとう」

「いえいえ、それが私のお仕事ですからぁ」

 ナナは照れつつも嬉しそうにガッツポーズしている。チワワ的可愛さを感じてしまう。
 
「それにしてもぉ、あの…… お嬢…… 様……? 」

 ナナが何か私の方を見て首をかしげている。どうも私に何か疑問を抱いているみたいだ。
 
「どうしたの? ナナ」

「……いえ、やっぱりなんでもありません」

 言い淀むなんてナナらしくないけど、言いたくないなら無理に聞き出そうとは思わないから一旦置いとくとしよう。
 
 それよりナナに確認したいことがあるんだ。
 
「でも勝手に連れて帰ってきてよかったの?あなた、お父様に怒られない?」

「えええええ? 逆ですよぉ、倒れているお嬢様をほったらかしにしようものなら私はクビになっちゃいますよぉ」

 ん? 追放に賛同しておいて? むしろほったらかしにするべきなんじゃないの? それとも表向きは従ってるフリをして実は私を助けてくれた? ということはイザベラとフィルミーヌ様も?

 フィルミーヌ様のあの時の声とイザベラの切り飛ばされた首を思い出して私はベッドの上で吐いてしまった。
 
「お、お嬢様!? すぐに桶と拭くものを持ってきますぅ!」

 私の突然のやらかしに驚いたナナは大きな足音を立てながら部屋から走って出て行った。
 
「情けない……。 守れなかった……。 私だけ……。 生き残ってしまうなんて……。……っ……!」

 私は我慢できずに泣いた。二人が死んでしまったこと、守れなかったこと、自分だけ生き残ってしまった情けなさに、悲しさに、悔しさに、惨めさに、あの時の様々な感情が全て纏めて襲い掛かってくるも、ぶつける先がなかった私はただただ泣くことしかできなかった。
 
「お嬢様……」

 桶と拭くものを持ってきたナナは何も聞かずに掃除をしてくれた。吐瀉物の片付けとシーツを取り替えてくれたナナは神妙な面持ちで私の目を見ながら両手を握り話しかけてくる。
 
「お嬢様が何に悲しんで苦しんでいるのか私にはわかってあげることはできません。世界広しと言えども、ただ一人お嬢様にしか理解できない感情だと思うんです。きっと私が無理に聞いて、話の内容が理解できたとしても当事者ではない私はその感情をわかってあげられないから…… だから私からは話は聞きません。その代わりにハイッ!」

 ナナはそう言うと慈愛の表情で両腕を広げている。

「ナナ?」
 
「そのやり場のない感情を私が受け止めることなら出来ますから! いつでも飛び込んできてください! どうぞ、お嬢様!」

「……っ……ナナァ!」

 その言葉を聞いて私はナナの胸元に飛び込んだ。
 
 私は世界で独りぼっちだと思っていた。追放され、実家に戻ることも許されず、フィルミーヌ様もイザベラも殺されてしまった私にはもう何もないと思っていた。けど、昔と変わらずナナがいてくれた。安心して泣いて、泣いて、散々泣いた後に眠ってしまった。
 
「おやすみなさい、お嬢様」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。

処理中です...