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2章 5歳
第八話:現状確認
しおりを挟むどうも、ごきげんよう。逆年齢詐称疑惑令嬢マルグリットです。
いや、だってしょうがないじゃないですか! ついこの間まで十八歳だと思ってたのに今は五歳ですよ。
夢ならすぐ覚めるでしょと思ってたのに夢の中で夢なんて普通見ませんよね?
よって私はここが現実であると認識せざるを得ない状況になっています。
でも……あの十八歳までの出来事もすべて夢だったというの? あんなハッキリとした夢がある? わからない。
それと夢に出てきたフィルミーヌ様の仰っていた内容はなんだったんろう。あれもただの夢とは思えない。
わたしたちの敵か…… うー、考えれば考えるほど頭がこんがらがってくる~、胃の中も空っぽになってるし頭が働かない。
こういう時は!
「ナナ!」
「はい、お嬢様」
「お腹が空いちゃったわ、食事を用意してもらえるかしら?」
「かしこまりました。そろそろお夕飯ですので急ぐ様にお願いしていますねぇ」
「うん、お願い」
「旦那様も奥様もクリストフ様もお嬢様を心配されておりましたよぉ」
家族三人の事を言われたときに私の心臓は一気に高鳴っていた。お父さま、お母さま、お兄さま……
十八歳になった私の追放に賛同していたとはいえ、夢(疑惑)の中なんだから落ち着け、わたし!
「準備が出来ましたらお呼びしますねぇ」
ナナはそう言うと足早に部屋から出て行った。私は夕飯が出来上がるまで少々今後の事について考えおこうと思い、ベッドに大の字に倒れて天井を見上げていた。
あの内容が夢でなくてこれから起こる現実だとするのであれば、たしか私が八歳の時にグラヴェロット領に『赤狼の牙』が現れるはず。
あの赤服が目と鼻の先いるかもしれないと考えるだけで私は自分を止める自信がない。 奴だけは私が仕留める! 絶対にだ!
最短だと三年か…… あまり時間がないなぁ、夢(まだ疑ってる)の私は十五歳から訓練を初めて十八歳までの三年間でようやく一人前とされるDランク冒険者だったから今から約三年か…… 同じ時間でどれだけ効率よく訓練が出来るかがカギになるかな。
訓練方法は熟知してるから十五歳で訓練始めた当初の私よりかは全然効率は出るとは思う。だけど体の作りが五歳と十五歳と比べちゃうと全然違うから同じ様に三年間訓練してもあの時の私を超えられるのか不安だなあ。
はぁ~、せめて今の身体にあの時の魔力があればなぁ…… そう、あの時はこんな感じで魔力を身体全身に……
ん……? うそ、魔力を感じる? 夢(じゃない説)だった時の五歳の私は身体すら鍛えてないどころか魔力操作なんてもってのほか。自分の魔力を感じることすらできなかったはず。私が魔力の感じ方、操作方法を学んだのは学園に入ってからだし、五歳の私が知っているはずがない。
うん、わかる。魔力の操作が、制御ができる。身体というより魂が覚えている感じ。
ドキドキしてきた。私は沸きあがる衝動を抑えられずに急いでベッドから飛び降りた。そして記憶の通りに身体全身に魔力を流す。あの時と同じように。あの時と同じ感覚で。
『魔力展開』
私は身体全身に魔力を纏ったまま、体を動かしを始めた。
~五分後~
つ、疲れた……。私は再度ベッドに倒れこむと今分かったことを頭の中で整理し始めた。
まず身体能力は当時の五歳のままだ。本の虫で引きこもり続けたあの時と同じ。
次に魔力。こっちは十八歳の時の私そのものだった。操作に関しても問題ない。魔力量もあの三年間で鍛えた分そのままという感じだ。
気になるのが十八歳の感覚で魔力展開してたら五歳の私の身体能力の方が耐え切れずにひどい筋肉痛に襲われるはず…と思っていた。 なのに平気だった。
でも考え方を変えればこれは大きなアドバンテージだ。身体能力を鍛えるだけで今以上に魔力を注いでも問題ないんだから……
あの戦いで身体をズタズタにしたときと同様の魔力量に耐えることだって…… ううん、それ以上だって可能になる。
でもこれでハッキリとしたことがある。
あの時の十八歳の私は夢なんじゃなかったってこと。
そして今の私は『十八歳の記憶を持った五歳児』ではなく『十八歳だった私が五歳児になった』という方が納得いく。
とは言え、全てその言葉で片がつけられるかというとそうでもないんだよね。
もし、さっきの言葉通りだったら体はズタズタになってるはずだし、身体能力が当時のままというのも引っかかる。この辺はまだ謎がありそう……。
うー、わからないことは今考えてもしょうがない! まずはご飯をしっかり食べて、よく寝て、明日から身体を鍛えないと! 十三年後に備えて!
十三年後…… またあの婚約破棄という名の断罪の場が引き起こされる…… か……。
殿下、赤狼の牙、近衛騎士、未来のグラヴェロット子爵家、未来のコンパネーズ伯爵家、未来のメデリック公爵家。
そして…… 他にもいるであろう『わたしたちの敵』か……
敵は大勢、他にもどれだけの敵がいるか今はわからない。
だけど、あんな未来再び起こさせてなるものか!
フィルミーヌ様もイザベラも私が絶対に救って見せる!
よーし、やったるどー!
私は明日以降からの目標に備えて不謹慎ながらもワクワクしていた。枕を抱えてベッドでゴロゴロしてたら、アホみたいな足音を立てて部屋に向かってくる約一名。一人しか該当しない。そして有無を言わさず開けられたドア。
「お嬢様! お夕飯の準備ができましたぁ」
「ナナ、せめてノックくらいしてほしいのだけど」
「あっ、失礼しましたぁ」
そんな『はわわ、やっちゃった!』みたいな顔してもダメだよ、ナナ。でも可愛いから許しちゃう。
チョロイな私。どうも、チョロ令嬢マルグリットです。
「お嬢様? 何をブツブツ言われてるのですか?」
「ごめんね、何でもないわ。行きましょう」
危ない、危ない。こんな内容ナナに聞かれでもしたら、もう立ち直れない。
それにしても家族か…… 学園に入ってから三年間会ってなかったから、どうにも久しぶり過ぎて緊張しちゃう。手紙のやり取りはしてたんだけど、実際に会うのでは全然違う。
「お嬢様、どうぞ」
ナナが扉を開けてくれる。この先にいるのだ。いざ、出陣!
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