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3章 6歳
第二十四話:モリス神父の憂鬱
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僕はモリス。ヴェルキオラ教の神父という事になっている。
本職は偵察がメインの斥候だ。
現在はヴェルキオラ教に潜入しているが、正体は聖王教会の特殊部隊に所属している。
特殊部隊と言っても、実際は一芸に秀でた連中の集まりだったりする。
僕みたいに斥候は得意だけど、戦闘はそこまででもないというタイプだったり、戦闘は得意だけどそれ以外はからっきし等という奴もいる。一部例外で戦闘、斥候、家事全般なんでもござれな異常者もいるが、さすがにこの特殊部隊においても特殊な奴だ。
それなりに修羅場も潜っている。だから並大抵の事では動じたりはしない。
けれども
並大抵じゃない事が昨日起きてしまった。
というか目撃してしまった。
とある貴族令嬢がヴェルキオラ教会の建設現場の視察に来ていた。
いや、視察というより興味津々だから覗きに来たという感じだろう。
まだ小さい少女…… いや、幼女と言っても差支えない人形の様な女の子だった。人前に慣れているのか、堂々としている。
お供のメイドもこれまた小さい女の子。知らない大人に話しかけられたせいかビクビクしている。
所詮は貴族のご令嬢のごっこ遊びか、可愛いもんだなんて思った。
だが、その評価は一瞬で覆すことになる。
雰囲気が…… なんか違うんだ…… なんというか、目の前にいるのは少女のはずなのに歴戦の猛者を目の前にした様な空気がピリついた感覚。
私は唾を飲み込み、原因を探るべく『魔力視』を使用することにした。
――『魔力視』
魔力量に加えて魔力がどれほど制御できているのかを視認するための魔法。
対象を中心に靄の様なものがどれだけ溢れているかで魔力量の推測ができる。
魔力制御に関してどれだけ出来ているかは靄の濃さで判別できる。
生まれつき魔力量の多い子供は稀に見かけたりするけど、小さいうちから魔力制御をさせようなんて家庭は魔法使いの家系くらいしかない。
それでも限度というものはある。だからこの年齢辺りの子供は靄が大きく見えたとしても魔力制御が甘いから薄っぺらく見えるのが当たり前なんだ。
この少女は真逆なんだ。
魔力制御力が異常に高い。もはやベテランの域と言ってもいいかもしれない。
だが、それに比べて魔力量がそこまで高いというわけでもない。もちろん年齢から鑑みれば異常と言っても差支えない量ではある。
まるで元々魔力量は大したことないけど、魔力制御訓練の過程でなんとかここまで増やした様に見受けられる。
そう仮定した場合、年齢がおかしい。
六歳って話じゃないか。生まれたその日から訓練開始しましたとかでもない限り、有り得ない状況なんだよね。
ここに来る前に領主一家について事前に調査済みだ。
父親は領主のサミュエル・グラヴェロット。若い頃は冒険者活動も行っていたそうだが、魔法に秀でた人間ではない。
母親のアニエス・グラヴェロット。元は男爵家の箱入り娘でこれぞ貴族令嬢な生活を送っていたため、魔法とは無縁の生活を送っていた。
この調査に間違いはなかったはず。であれば娘は何をしてこうなった?
魔法専門の家庭教師? いや、そんな情報はなかったはずだ。
となると、なんだ? 一番考えたくないんだけど、まさかの独学か?
なんだそりゃ、馬鹿馬鹿しくて笑えてくるよ。でも、他に理由が考えられない。
そして、もしそれが本当だとしたら…… 何が貴族令嬢だ、とんだ化け物じゃないか。
もう一人の少女…… メイドだったか。あの子は逆の意味で異常なんだよなあ。
はぁ~、僕はもっと平和に生きたいんだよ。異常者とか化け物とか呼んで差支えない連中とはあまり関わり合いたくないんだ。
なのに嫌でも関わってしまうというか引き合ってしまうというか、僕はそんなついてない星の下に生まれたんだろう。
なんで僕の周りはそういう連中ばっかりなんだよ。
異動願い出そうかな。受理されなさそうだけど……。
定時報告に行くのが鬱になるなあ。いやだなあ。でもいかないとなあ。
僕は半ば嫌々諦めモードで報告場所である聖王教会から少し離れた場所にある灯りの消えている古民家のドアを指定回数、指定された間隔で叩く。
「昨日の夕飯は?」
「三軒隣のおばさんがくれたクリームパスタ」
合言葉は定期的に変更する必要があるのだが、考えるのが面倒になって来たのか、内容が大分雑だ。
正しい合言葉を伝えるとドアが開き、同じ部隊に所属している部隊員が入れてくれた。
「入れ」
扉を抜けた先に木製のテーブルを椅子が置かれており、その椅子に一人座っている人物がいる。
「お疲れ様、チェイン。あ、今はモリス神父だっけ。これでも飲んで一息つきなよ」
チェインとは僕の特殊部隊でのコードネーム。部隊長がジェゴフ司祭となるので僕の上司にあたる方だ。
ジェゴフ司祭様の反対側の椅子に座ると温かいお茶を出してくれた。
「お疲れ様です。ジェゴフ司祭様。ありがとうございます、頂きます。」
お茶を飲んで一息つくと、仕事終わったムードになってしまう。
「さて、落ち着いたところで現状報告をしてくれるかな」
一瞬で現実に引き戻されてしまった。あー、鬱になりそう。
「はい、ヴェルキオラ教は五歳から八歳の女児の名前、年齢、住所、本人の特徴となる容姿の情報などを記載したリストを作成していました。ただ、それが何に使用されるのかは現在の所不明です。それと……」
「それと? 言い淀むなんて君らしくないね。言いにくい内容なのか頭の中で整理しきれていないのかはわからないが、言うだけ言ってみなさい」
「は、はい。実は昨日街の視察後のことですが、ヴェルキオラ教の建設現場に戻る最中に領主の娘さんであるマルグリット嬢にお会いしたんですよ。
ヴェルキオラ教の建設現場に来ていたので、退屈しのぎに見に来たご令嬢の気まぐれの様なものだと思っていたんです。
でもそうじゃなかった。あれは化け物ですよ。六歳? 貴族令嬢? 冗談じゃない! 何をどうやって育てたらあんなものが出来上がるんだ!」
しまった、つい荒げてしまった。僕らしくない。何を言っているんだ。
「落ち着きたまえ、チェイン。感情を露わにするなんて君らしくないな。一旦深呼吸したまえ」
そうだ。一旦、落ち着こう。僕は司祭様の言うとおりに大きく深呼吸した。
「すみません。もう大丈夫です」
「君は彼女の事を化け物と呼んだが、本当にそうかな? 例えば、シェリーと彼女が戦ったらどちらが強いかな?」
――シェリー
特殊部隊のエースであり、戦闘から家事全般を容易くこなしてしまうあらゆる分野における専門者
普段からメイド服に身を包み、特殊部隊内でも一目置かれる存在。
彼女の料理を一度口にすると、以降はどんな高級店ですら物足りなく感じてしまうという料理の達人でもある。
これでまだ十五歳だというのだから世の中は本当に謎が多すぎる。
「百回戦ったら百回ともシェリーが勝つでしょうね。場数も能力も違いすぎますからね」
「そうだろう? であれば君が言うほどの化け物とは私は思わないけどね」
今はそうだとしても、五年、十年後はわからない。それだけのものを彼女からは感じたけど……
それになんだろう、この違和感は。それ以外に彼女から何かを感じ取ったから戦慄したはずなのに。
ダメだ。今はピンとこない。
「ただ……うん、一応候補としてマークだけはしておくか」
「候補?」
「すまない、今のは気にしないでくれ。何はともあれ君はちょっと気にしすぎだよ」
何の候補か? 聞いたら余計に寿命が縮む思いをしそうだから聞くのはやめておこう。これこそが長生きの秘訣でもある。
「そうですよね。自分の考えすぎかもしれません。それともう一つ、彼女と一緒にいたメイドについてなのですが……」
「メイド? マルグリット嬢のメイドかな? その子がどうかしたのかい?」
「彼女は魔力がゼロなんです。少ないとかじゃないんです。魔力が全くない存在なんです」
「魔力が全くない? そんなバカな…… この世界で生きる全ての生命体…… 動物にも植物にも大気にすら魔力が存在するというのに? そんな話聞いたこともないよ。君の見間違えなんじゃないのかい?」
司祭様は眉間に皺を寄せて頭を捻っている。そりゃ、そうだよな。僕も同じ感想だし。
「僕も最初はそう思ったので『魔力視』を何度も行ったんです。結果は変わりませんでした」
「うーん、それが本当だとしたら特殊な事例だね」
「あの…… 調べることは調べ終わったと思うので、そろそろ本部の方に復帰を……」
「やだなあ、今の話を聞かせておいてトンズラさせると思うのかい? むしろ、ヴェルキオラ教以上に彼女等の動向が気になるじゃないか。君は当面今の立場を継続しつつ、グラヴェロット家のマルグリット嬢とメイドの監視任務に当たってくれ」
うおおおおお、やはり逃げられないのか。やっぱり僕は不幸になるために生まれたのではないかと再認識してしまう。
「そんなこの世の終わりの様な絶望した表情はやめてよ。あ、そうそう。不幸ついでにもう一つ情報共有しておくよ。本部から連絡があってね、常闇の森にはしばらく近づかないで欲しい」
常闇の森といえば回復材の元となる薬草の群生地帯じゃないか。しばらく行ってはダメって在庫足りるのか?
「何があったんですか?回復材とか足りなくなったら不味くないですか?」
「そうなんだけど、グランドホーンの異常個体が確認されちゃってね。私たちも勿論早急に対応するために問題対処可能な人間を探している。冒険者ギルドにも協力要請は出している」
グランドホーン? あれって敵意さえ見せなければ比較的おとなしい魔獣なんじゃなかったっけ? 逆に一度でも敵意を見せると執拗に追いかけてくる厄介な魔獣でもある。
にしても異常個体かあ。なんで次から次へと事件が降りかかってくるかなあ。シェリーがいればそんなのすぐ終わるでしょうに。
「シェリーに依頼すればいいんじゃないです? 最近見てませんでしたけど、今何してるんです?」
「シェリーは所要があって本国に戻ってる。他の戦闘チームも別件でこちらには来れない。当面は私たちが対処していくしかない。頑張ろうね!」
やばい、退職したい。
本職は偵察がメインの斥候だ。
現在はヴェルキオラ教に潜入しているが、正体は聖王教会の特殊部隊に所属している。
特殊部隊と言っても、実際は一芸に秀でた連中の集まりだったりする。
僕みたいに斥候は得意だけど、戦闘はそこまででもないというタイプだったり、戦闘は得意だけどそれ以外はからっきし等という奴もいる。一部例外で戦闘、斥候、家事全般なんでもござれな異常者もいるが、さすがにこの特殊部隊においても特殊な奴だ。
それなりに修羅場も潜っている。だから並大抵の事では動じたりはしない。
けれども
並大抵じゃない事が昨日起きてしまった。
というか目撃してしまった。
とある貴族令嬢がヴェルキオラ教会の建設現場の視察に来ていた。
いや、視察というより興味津々だから覗きに来たという感じだろう。
まだ小さい少女…… いや、幼女と言っても差支えない人形の様な女の子だった。人前に慣れているのか、堂々としている。
お供のメイドもこれまた小さい女の子。知らない大人に話しかけられたせいかビクビクしている。
所詮は貴族のご令嬢のごっこ遊びか、可愛いもんだなんて思った。
だが、その評価は一瞬で覆すことになる。
雰囲気が…… なんか違うんだ…… なんというか、目の前にいるのは少女のはずなのに歴戦の猛者を目の前にした様な空気がピリついた感覚。
私は唾を飲み込み、原因を探るべく『魔力視』を使用することにした。
――『魔力視』
魔力量に加えて魔力がどれほど制御できているのかを視認するための魔法。
対象を中心に靄の様なものがどれだけ溢れているかで魔力量の推測ができる。
魔力制御に関してどれだけ出来ているかは靄の濃さで判別できる。
生まれつき魔力量の多い子供は稀に見かけたりするけど、小さいうちから魔力制御をさせようなんて家庭は魔法使いの家系くらいしかない。
それでも限度というものはある。だからこの年齢辺りの子供は靄が大きく見えたとしても魔力制御が甘いから薄っぺらく見えるのが当たり前なんだ。
この少女は真逆なんだ。
魔力制御力が異常に高い。もはやベテランの域と言ってもいいかもしれない。
だが、それに比べて魔力量がそこまで高いというわけでもない。もちろん年齢から鑑みれば異常と言っても差支えない量ではある。
まるで元々魔力量は大したことないけど、魔力制御訓練の過程でなんとかここまで増やした様に見受けられる。
そう仮定した場合、年齢がおかしい。
六歳って話じゃないか。生まれたその日から訓練開始しましたとかでもない限り、有り得ない状況なんだよね。
ここに来る前に領主一家について事前に調査済みだ。
父親は領主のサミュエル・グラヴェロット。若い頃は冒険者活動も行っていたそうだが、魔法に秀でた人間ではない。
母親のアニエス・グラヴェロット。元は男爵家の箱入り娘でこれぞ貴族令嬢な生活を送っていたため、魔法とは無縁の生活を送っていた。
この調査に間違いはなかったはず。であれば娘は何をしてこうなった?
魔法専門の家庭教師? いや、そんな情報はなかったはずだ。
となると、なんだ? 一番考えたくないんだけど、まさかの独学か?
なんだそりゃ、馬鹿馬鹿しくて笑えてくるよ。でも、他に理由が考えられない。
そして、もしそれが本当だとしたら…… 何が貴族令嬢だ、とんだ化け物じゃないか。
もう一人の少女…… メイドだったか。あの子は逆の意味で異常なんだよなあ。
はぁ~、僕はもっと平和に生きたいんだよ。異常者とか化け物とか呼んで差支えない連中とはあまり関わり合いたくないんだ。
なのに嫌でも関わってしまうというか引き合ってしまうというか、僕はそんなついてない星の下に生まれたんだろう。
なんで僕の周りはそういう連中ばっかりなんだよ。
異動願い出そうかな。受理されなさそうだけど……。
定時報告に行くのが鬱になるなあ。いやだなあ。でもいかないとなあ。
僕は半ば嫌々諦めモードで報告場所である聖王教会から少し離れた場所にある灯りの消えている古民家のドアを指定回数、指定された間隔で叩く。
「昨日の夕飯は?」
「三軒隣のおばさんがくれたクリームパスタ」
合言葉は定期的に変更する必要があるのだが、考えるのが面倒になって来たのか、内容が大分雑だ。
正しい合言葉を伝えるとドアが開き、同じ部隊に所属している部隊員が入れてくれた。
「入れ」
扉を抜けた先に木製のテーブルを椅子が置かれており、その椅子に一人座っている人物がいる。
「お疲れ様、チェイン。あ、今はモリス神父だっけ。これでも飲んで一息つきなよ」
チェインとは僕の特殊部隊でのコードネーム。部隊長がジェゴフ司祭となるので僕の上司にあたる方だ。
ジェゴフ司祭様の反対側の椅子に座ると温かいお茶を出してくれた。
「お疲れ様です。ジェゴフ司祭様。ありがとうございます、頂きます。」
お茶を飲んで一息つくと、仕事終わったムードになってしまう。
「さて、落ち着いたところで現状報告をしてくれるかな」
一瞬で現実に引き戻されてしまった。あー、鬱になりそう。
「はい、ヴェルキオラ教は五歳から八歳の女児の名前、年齢、住所、本人の特徴となる容姿の情報などを記載したリストを作成していました。ただ、それが何に使用されるのかは現在の所不明です。それと……」
「それと? 言い淀むなんて君らしくないね。言いにくい内容なのか頭の中で整理しきれていないのかはわからないが、言うだけ言ってみなさい」
「は、はい。実は昨日街の視察後のことですが、ヴェルキオラ教の建設現場に戻る最中に領主の娘さんであるマルグリット嬢にお会いしたんですよ。
ヴェルキオラ教の建設現場に来ていたので、退屈しのぎに見に来たご令嬢の気まぐれの様なものだと思っていたんです。
でもそうじゃなかった。あれは化け物ですよ。六歳? 貴族令嬢? 冗談じゃない! 何をどうやって育てたらあんなものが出来上がるんだ!」
しまった、つい荒げてしまった。僕らしくない。何を言っているんだ。
「落ち着きたまえ、チェイン。感情を露わにするなんて君らしくないな。一旦深呼吸したまえ」
そうだ。一旦、落ち着こう。僕は司祭様の言うとおりに大きく深呼吸した。
「すみません。もう大丈夫です」
「君は彼女の事を化け物と呼んだが、本当にそうかな? 例えば、シェリーと彼女が戦ったらどちらが強いかな?」
――シェリー
特殊部隊のエースであり、戦闘から家事全般を容易くこなしてしまうあらゆる分野における専門者
普段からメイド服に身を包み、特殊部隊内でも一目置かれる存在。
彼女の料理を一度口にすると、以降はどんな高級店ですら物足りなく感じてしまうという料理の達人でもある。
これでまだ十五歳だというのだから世の中は本当に謎が多すぎる。
「百回戦ったら百回ともシェリーが勝つでしょうね。場数も能力も違いすぎますからね」
「そうだろう? であれば君が言うほどの化け物とは私は思わないけどね」
今はそうだとしても、五年、十年後はわからない。それだけのものを彼女からは感じたけど……
それになんだろう、この違和感は。それ以外に彼女から何かを感じ取ったから戦慄したはずなのに。
ダメだ。今はピンとこない。
「ただ……うん、一応候補としてマークだけはしておくか」
「候補?」
「すまない、今のは気にしないでくれ。何はともあれ君はちょっと気にしすぎだよ」
何の候補か? 聞いたら余計に寿命が縮む思いをしそうだから聞くのはやめておこう。これこそが長生きの秘訣でもある。
「そうですよね。自分の考えすぎかもしれません。それともう一つ、彼女と一緒にいたメイドについてなのですが……」
「メイド? マルグリット嬢のメイドかな? その子がどうかしたのかい?」
「彼女は魔力がゼロなんです。少ないとかじゃないんです。魔力が全くない存在なんです」
「魔力が全くない? そんなバカな…… この世界で生きる全ての生命体…… 動物にも植物にも大気にすら魔力が存在するというのに? そんな話聞いたこともないよ。君の見間違えなんじゃないのかい?」
司祭様は眉間に皺を寄せて頭を捻っている。そりゃ、そうだよな。僕も同じ感想だし。
「僕も最初はそう思ったので『魔力視』を何度も行ったんです。結果は変わりませんでした」
「うーん、それが本当だとしたら特殊な事例だね」
「あの…… 調べることは調べ終わったと思うので、そろそろ本部の方に復帰を……」
「やだなあ、今の話を聞かせておいてトンズラさせると思うのかい? むしろ、ヴェルキオラ教以上に彼女等の動向が気になるじゃないか。君は当面今の立場を継続しつつ、グラヴェロット家のマルグリット嬢とメイドの監視任務に当たってくれ」
うおおおおお、やはり逃げられないのか。やっぱり僕は不幸になるために生まれたのではないかと再認識してしまう。
「そんなこの世の終わりの様な絶望した表情はやめてよ。あ、そうそう。不幸ついでにもう一つ情報共有しておくよ。本部から連絡があってね、常闇の森にはしばらく近づかないで欲しい」
常闇の森といえば回復材の元となる薬草の群生地帯じゃないか。しばらく行ってはダメって在庫足りるのか?
「何があったんですか?回復材とか足りなくなったら不味くないですか?」
「そうなんだけど、グランドホーンの異常個体が確認されちゃってね。私たちも勿論早急に対応するために問題対処可能な人間を探している。冒険者ギルドにも協力要請は出している」
グランドホーン? あれって敵意さえ見せなければ比較的おとなしい魔獣なんじゃなかったっけ? 逆に一度でも敵意を見せると執拗に追いかけてくる厄介な魔獣でもある。
にしても異常個体かあ。なんで次から次へと事件が降りかかってくるかなあ。シェリーがいればそんなのすぐ終わるでしょうに。
「シェリーに依頼すればいいんじゃないです? 最近見てませんでしたけど、今何してるんです?」
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