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永遠の誓い
王都の空は、雲一つないほどに澄み渡っていた。
かつてロクサーヌがカルロスと訪れ、氷のような孤独を感じたあの白亜の教会。今日、そこはアステリア子爵家とロンゲール伯爵家の合体を祝う、色鮮やかな花々と歓喜の拍手に包まれていた。
「……とても綺麗だよ、ロクサーヌ」
控室の鏡の前で、オリビエが背後から彼女の肩を抱き寄せた。
純白のドレスを纏ったロクサーヌの胸元には、あの小さなエメラルドの指輪が、今度は美しいネックレスへと形を変えて輝いている。
ロクサーヌは、鏡越しに愛しい夫となる男を見つめ返した。
かつての「お兄様」は、今や一国の外交を左右する重鎮として、そして何より彼女を心から愛する一人の騎士として、その隣に立っている。
「ありがとうございます、オリビエ様。……あの時、この石を信じて待っていて、本当に良かった」
「ああ。これからは、信じて待つ必要なんてない。僕は常に君の隣にいて、君の手を離さないからね」
オリビエは、彼女の耳元で甘く囁き、指先にそっと唇を落とした。
挙式は、王都の歴史に残るほど華やかなものとなった。
父ノーマンと母ミランダは、娘の幸せそうな姿に目元を拭い、参列した貴族たちは「真実の愛の帰還だ」と口々に称賛した。
一方、その華やかな喧騒の影で。
社交界を追放され、家を勘当されたカルロスとビビアンの姿は、もはやどこにもなかった。
噂によれば、カルロスは莫大な慰謝料を支払うために辺境の開拓地へ送られ、ビビアンは虚偽の診断を共謀した罪で、平民以下の暮らしを余儀なくされているという。
自分を二番目に置き続けた男と、愛を武器に他人を陥れようとした女。
彼らが失ったものの大きさを知る者は、今やこの幸福な二人の前には一人もいなかった。
夕暮れ時。披露宴を終えた二人は、アステリア子爵邸の広い庭園を一望できるバルコニーに立っていた。
「ねえ、オリビエ様。お父様が仰っていましたわ。いずれ産まれる私たちの子供が、アステリアの名を継ぐことを楽しみにしていると」
ロクサーヌが少し頬を染めて告げると、オリビエは満足げに目を細め、彼女を背後から包み込むように抱きしめた。
「ああ、義父上とはそう約束してある。ロンゲール伯爵家とアステリア子爵家……二つの家門を背負うのは大変だろうけれど、僕がすべてを支えてみせるよ。……君には、ただ僕の隣で笑っていてほしいんだ」
「……ふふ、過保護すぎますわ、お兄様」
「おや、まだ『お兄様』と呼ぶのかい?」
オリビエはいたずらっぽく笑うと、ロクサーヌの顎を優しく持ち上げた。
「これからは、『あなた』……あるいは、もっと熱烈な呼び方にしてほしいものだね」
「……善処いたしますわ。私の、愛しい旦那様」
二人の唇が重なる。
かつて「兄妹」という名に隠されていた執着は、今や隠す必要のない、誇り高く深い愛へと姿を変えていた。
七年間の忍耐。五年前の約束。
遠回りをしたけれど、ロクサーヌは今、確信している。
あの不遇な日々さえも、この人の腕の中に辿り着くための、必然のプロローグだったのだと。
夕日に照らされた二人の影は、分かちがたく一つに重なり、永遠の愛を誓い合うようにどこまでも伸びていた。
ハッピーエンド
____________
エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援よろしくお願いします🙇♀️
📢新連載🌹【王太子の賭けに負けた氷の貴公子。クジで選ばれた私への態度は、義務ですか?それとも本気ですか?】
かつてロクサーヌがカルロスと訪れ、氷のような孤独を感じたあの白亜の教会。今日、そこはアステリア子爵家とロンゲール伯爵家の合体を祝う、色鮮やかな花々と歓喜の拍手に包まれていた。
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純白のドレスを纏ったロクサーヌの胸元には、あの小さなエメラルドの指輪が、今度は美しいネックレスへと形を変えて輝いている。
ロクサーヌは、鏡越しに愛しい夫となる男を見つめ返した。
かつての「お兄様」は、今や一国の外交を左右する重鎮として、そして何より彼女を心から愛する一人の騎士として、その隣に立っている。
「ありがとうございます、オリビエ様。……あの時、この石を信じて待っていて、本当に良かった」
「ああ。これからは、信じて待つ必要なんてない。僕は常に君の隣にいて、君の手を離さないからね」
オリビエは、彼女の耳元で甘く囁き、指先にそっと唇を落とした。
挙式は、王都の歴史に残るほど華やかなものとなった。
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一方、その華やかな喧騒の影で。
社交界を追放され、家を勘当されたカルロスとビビアンの姿は、もはやどこにもなかった。
噂によれば、カルロスは莫大な慰謝料を支払うために辺境の開拓地へ送られ、ビビアンは虚偽の診断を共謀した罪で、平民以下の暮らしを余儀なくされているという。
自分を二番目に置き続けた男と、愛を武器に他人を陥れようとした女。
彼らが失ったものの大きさを知る者は、今やこの幸福な二人の前には一人もいなかった。
夕暮れ時。披露宴を終えた二人は、アステリア子爵邸の広い庭園を一望できるバルコニーに立っていた。
「ねえ、オリビエ様。お父様が仰っていましたわ。いずれ産まれる私たちの子供が、アステリアの名を継ぐことを楽しみにしていると」
ロクサーヌが少し頬を染めて告げると、オリビエは満足げに目を細め、彼女を背後から包み込むように抱きしめた。
「ああ、義父上とはそう約束してある。ロンゲール伯爵家とアステリア子爵家……二つの家門を背負うのは大変だろうけれど、僕がすべてを支えてみせるよ。……君には、ただ僕の隣で笑っていてほしいんだ」
「……ふふ、過保護すぎますわ、お兄様」
「おや、まだ『お兄様』と呼ぶのかい?」
オリビエはいたずらっぽく笑うと、ロクサーヌの顎を優しく持ち上げた。
「これからは、『あなた』……あるいは、もっと熱烈な呼び方にしてほしいものだね」
「……善処いたしますわ。私の、愛しい旦那様」
二人の唇が重なる。
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あの不遇な日々さえも、この人の腕の中に辿り着くための、必然のプロローグだったのだと。
夕日に照らされた二人の影は、分かちがたく一つに重なり、永遠の愛を誓い合うようにどこまでも伸びていた。
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