【完結】王太子が「恋がしたい」と言い出したので、公爵令嬢は捨て身の復讐を始めます──みなさままとめて地獄へどうぞ

恋せよ恋

文字の大きさ
22 / 93

生徒会、再始動

しおりを挟む
 アナスタシアの華々しい登校に、多くの生徒が歓喜した。
 現在の生徒会の横暴に対しては、不満や批判の声が広がっていたのだ。

「ルース、無能の小物の相手は大変だったでしょう。つらい役目を、本当にご苦労様」
 アナスタシアは、批判の対象となっている現生徒会役員のひとり、ルース・フォーク子爵令息に労いの言葉をかけた。

「本当ですよぉ! あいつら無能なクズで、俺、めちゃくちゃキツかったんですからね!」
 先ほど校門前で他の三人の役員と並んでいたときは無表情で寡黙だった青年が、今は戯けた明るい表情で声を張り上げる。

「ふふ、ルースが大変だったことは、さっきの校門前の様子でよくわかったわ。できるだけ早急に対処するから、待っていて」
 気安い雰囲気で労うアナスタシア。

 広く知られてはいないが、ルースの母フォーク子爵夫人はアナスタシアの乳母である。つまりルースとは乳兄弟。ゆえに、周囲の目さえなければ砕けた関係なのだ。

「それで、早速なんだけど……。現在の生徒会役員の解任は決定よ。本題は、次の生徒会役員を誰にするか」

 アナスタシアが真面目で厳しい口調に変わる。
 長年の付き合いで、ルースも自然と真剣な表情に戻った。

「わたしの人選は――」

◇◇◇

「ねえ! あれって、どういうことよ! いくら公爵令嬢でも、態度が大きすぎるでしょう!」
 ドリス子爵令嬢は、今朝のアナスタシアの尊大な態度に苛立ち、荒れていた。

「まあな。確かに、偉そうだったよな」
 生徒会長のライオネル伯爵令息も、婚約者であるドリスに同意する。

「そうそう。公爵令嬢様は凄い迫力だったよな。でも、さすがに綺麗だったなあ」
 ニヤついたダニエル伯爵令息は、ヘラヘラ笑いながら相槌を打つ。

 ルースは無表情のまま、三人の会話に耳を傾け、情報収集に集中する。

「アナスタシア様って、邪魔じゃない?」
 ドリスがライオネルに囁く。

「ああ、確かにな。成績は文句なしだし、エドワード殿下たちと同じく卒業扱いでいいのにな」
 ライオネルの答えに、他の二人も頷く。話はさらに続く。

「じゃあ、学長に伝えておくよ。あと、事務長と学年主任にも頼んでおこう」

「そうね! おじ様たちにお願いすれば、うまくいくわね!」
 ドリスは手を打ち、納得した様子で笑った。


 翌日の全校集会

 いつもと違って、学長の姿は見当たらず、中央には見知らぬ年配の紳士が鎮座していた。
 教師陣も、いつもの顔ぶれと違い、新任なのか見たこともない者ばかりだった。

 生徒たちがざわつく。
 生徒会役員は、自分たちの叔父たちの突然の不在に戸惑っていた。

「それでは、全校集会を行います! これより、学長ならびに新任の先生方の紹介と挨拶をお願いします!」

 会場のざわつきに構わず、教頭が続ける。

「では、新学長のローワン前ローザリア大学名誉教授よりご挨拶をお願いします」
 生徒たちはどよめいた。

「おいっ! ローワン卿って言ったら、賢者の称号を持つ有名人じゃないか!」
「すごい! 伝説級の偉人に会えた!」
「なんか、うちの学園ってすごくないか!」

 ローワン卿が挨拶に立つと、会場は興奮に包まれた。

「(おっほん) 諸君、はじめまして。わしはローワン・ベルジックじゃ。この度、我がローザリア王国の青少年の育成にお誘いいただいた。身分にこだわらず、学びの場を広く与えたいというわしの夢を実現すべく、学長職を受けた。諸君がこの国の未来を作る。わしは、その手伝いをするだけじゃ。よろしく頼む」

 そう言ってローワン卿は、ある一点を見つめて頷いた。
 その視線の先には、アナスタシアが微笑んでいた。

「続いて、新任の先生方五名の紹介に移ります」
 次々と名前を読み上げていくが、二人目から会場がざわついた。

「あれ、爵位の紹介が省略されてる?」
「ああ、そうだな。家名を省略してるね」
「まさか......平民ってことはないよな?」

 そこで生徒会長ライオネルが声をかける。

「先生! 学長は? ノーマン学長はどうされたんですか?」

「前学長ノーマン卿は、健康状態の悪化により依願退職された。事務長と三年の学年主任も依願退職された」

「えっ!? そんな! なんで……」
 生徒会役員三人の顔が青ざめる。

 アナスタシアが挙手すると、自然と周囲の生徒が離れ、円ができた。

「よろしいでしょうか」
 小さな声なのに、隅々まで届く。

「生徒会役員のリコールを宣言します。
 生徒会長にセルジオ・アースキン子爵令息を。次に、副会長にはルース・フォーク子爵令息。書記には特待生のビアンカ嬢とテリー様を推薦いたします。」

 アナスタシアの声に、周囲の生徒たちが大きくざわつく。

「おい、特待生って平民だろう?」
「生徒会長が子爵令息って、ありか?」
「アナスタシア様は、生徒会に入らないのか?」

 指名された四人のうち三人は驚き、目を見開き固まった。
 ルースだけは、大きく天を仰ぐ。

「学長に要望がございます。特待生の二人は、成績が落ちれば学費免除に影響します。生徒会業務による負担を考慮してはいただけないでしょうか?」

 アナスタシアの言葉に、ビアンカとテリーは心を打たれ、瞳を潤ませた。

「ふむ。次の職員会議で話し合った後、閣議に提案しよう。これからは優秀な生徒が増えるだろうよ。ホッホッホ」
 ローワン卿は楽しそうに笑った。

 それまで呆然としていた現在の生徒会役員三人が異議を唱え、大声で叫ぶ。

「そんなのおかしいわ! いくら公爵令嬢でも、そんな横暴は認められないわ!」
 ドリス子爵令嬢がアナスタシアを睨みつける。

「そうだ! 勝手に決めるなんてありえない暴挙だ!」
 ライオネルが大声で叫ぶ。

 アナスタシアは三人を見つめ、冷笑を浮かべる。
「あら? お三方は、新規役員候補者よりも優秀でいらっしゃるの?」

 会場の生徒たちは、アナスタシアの威圧的な雰囲気に圧倒されていた。

「そもそも、成績――。あなた方はSクラスでもないでしょう。よくも恥ずかしげもなく生徒会役員に就任できましたわね。わたくしだったら、“あんな成績なんて”恥ずかしくて外も歩けませんわ」

 三人は顔を赤らめ、羞恥に耐える。周囲も気まずく見つめる。

「それと、人間性――。あなた方に信頼を寄せる生徒はおりますの? わたくし、あなた方に嘆願するくらいなら、庭先の小鳥に相談する方がまだマシですわ」

 三人は人格を否定され、落ち込む。周囲も直球の指摘に顔を引き攣らせた。

「あとは……生徒会運営費の流用。十七歳の青年貴族が汚職だなんて……人として終わってますわね。
 わたくし、許せない相手は木っ端微塵にしないと夜もぐっすり眠れませんの。
 就任後からの資金の流れは、きっちりと調べ上げましたから、ごめんあそばせ」

 三人の顔が真っ白になり、膝をつき震えだす。

「あら? そんなところで座り込まないで。あなた方には、“大人の皆さん”がじっくり話を聞くためにお待ちですのよ。もう、お目にかかる機会はないでしょうから、お元気でね」

 なんでもないことのように淡々と語るアナスタシアの威厳に、ローワン卿でさえ畏敬の念を抱いた。

 その後、会場の生徒から新生徒会役員の承認が得られ、全校集会は終了した。

つづく

________________

エール📣いいね❤️励みになります🥰応援ありがとうございます💫







 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

【完結】婚約破棄に祝砲を。あら、殿下ったらもうご結婚なさるのね? では、祝辞代わりに花嫁ごと吹き飛ばしに伺いますわ。

猫屋敷むぎ
恋愛
王都最古の大聖堂。 ついに幸せいっぱいの結婚式を迎えた、公女リシェル・クレイモア。 しかし、一年前。同じ場所での結婚式では―― 見知らぬ女を連れて現れたセドリック王子が、高らかに宣言した。 「俺は――愛を選ぶ! お前との婚約は……破棄だ!」 確かに愛のない政略結婚だったけれど。 ――やがて、仮面の執事クラウスと共に踏み込む、想像もできなかった真実。 「お嬢様、祝砲は芝居の終幕でと、相場は決まっております――」 仮面が落ちるとき、空を裂いて祝砲が鳴り響く。 シリアスもラブも笑いもまとめて撃ち抜く、“婚約破棄から始まる、公女と執事の逆転ロマンス劇場”、ここに開幕! ――ミステリ仕立ての愛と逆転の物語です。スッキリ逆転、ハピエン保証。 ※「小説家になろう」にも掲載。 ※ アルファポリス完結恋愛13位。応援ありがとうございます。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

処理中です...