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私たち結婚しました
私たち結婚しました【7】
ダガンと初めて会った日を、ルナルシオンは生涯思い出し続けるだろう。
(なんて優しい騎士だろう)
これが、ルナルシオンがダガンと初めて会った時の印象だ。
ルナルシオンはダガンが半魔、文献で読んだ魔族と人間の合いの子であると一目で判断した。かなり魔族の特徴が濃く、顔立ちも姿も猛々しい。しかし、その身から溢れる威圧を極限まで消していることも同時に見抜き、その優しさに感動した。
(こんな優しい騎士もいるんだ)
騎士や兵士といった者たちは、大なり小なり自分の力を示したがるものだ。故に最も礼儀を重んじる近衛騎士でさえ、ある種の威圧を伴う空気、いわゆる強者の威圧をまとっている。むしろ常に威圧を発してこそ勤めを果たせると思っている節もあった。否定できない面もあるが、にこやかに接しながらも威圧を抑えきれない彼らが、ルナルシオンは苦手だった。
またそういった者の一部が、内心でルナルシオンを軽んじているのも察していた。
「王族の癖に魔術も武術も使えぬ役たたず」だと、子供だからと油断し、態度に滲ませるのだ。
確かにルナルシオンは、魔術適正もなく闘気を練ることもできない。しかし聡明で、他者の気配や思惑には敏感だ。ゆえに、ダガンの思いやりに気づけたのである。
「お初にお目にかかります。私は、王立騎士団第三師団第一部隊隊長ダガン・シュラハと申します。この度、陛下のご高配により男爵位とシュラハの家名を賜りました」
言葉は固いが声は優しい。眼差しもだ。努力しているのが察せれた。恐らく、ルナルシオンたち八人兄弟姉妹を怯えさせないためだ。だが、それは他の兄弟姉妹には伝わらなかった。
「そ、そなたがダガンか……」
「ひっ!な、なに、怖い……!」
「頭の角?魔族?何故ここに?」
「お前ら下がれ!」
他の兄弟たちは、ダガンの見た目に怯えるか嫌悪した。臆病なところのある第五王女ステラリリスと第四王女フルールリア、血の気の多い第二王子サンライアンと第二王女ラヴィネリッサが怯えたり騒ぐのはまだわかるが、他も嫌悪や恐怖を隠してない。今まで動揺した所を見せた事のない第一王子スカイレッドまで声を震わせている。
そして、その反応を見たダガンは少しだけ表情を変えた。悲しそうに。
ルナルシオンは、気付けば口を開いていた。
「みんな、どうして怖がってるの。こんなに優しい金色の目をしていて、私たちを怖がらせないよう穏やかな声を出してくれているのに。失礼だよ」
ダガンの目が驚きに見開かれ、ルナルシオンだけを見た。なぜかルナルシオンの胸が高鳴る。
(あれ?どうして?)
恐ろしいわけでもないのにと疑問だったが、まずは礼儀を示さねばと笑顔を浮かべた。立派な騎士に向けるに相応しい表情だといいと思いながら。
「君がダガンだね。いつも私たちのために戦ってくれてありがとう。北端砦の攻防も、ランダリオンの戦いも、ワイバーンの大発生も、君のおかげでおさまったと聞いたよ。これからもよろしくね」
ルナルシオンはダガンに微笑みかけ、歩み寄って手を差し出した。自分たち王侯貴族が騎士に忠誠を許し、信頼を表明する際の姿勢だ。第三王子の自分が出過ぎた真似かとも思ったが、素直な感謝と信頼を示したかった。
ダガンは居住まいを正し、ルナルシオンの手に己の手を差し出す。ルナルシオンの背丈が小さいので、自然と手と手が重なった。大きくて分厚い、温かな手だ。意識してまた胸が高鳴った。やはり、嫌な感覚はしない。
手が重なって数瞬後、ダガンの眼差しが変わった。眩しく強い意志の力がこもった目だ。
「身に余るお言葉を賜り恐悦至極に存じます。このダガン・シュラハ。我が剣と魂に誓い、我が命果てるまでローゼラント王家にお仕え申し上げます」
次いで紡がれた声も深く、強い。しかし、ルナルシオンに対する敬意と忠誠に満ちていた。
「ルナルシオン・ローゼラントはそなたの忠誠と献身を許し、それを忘れず報いると誓う」
胸の高鳴りに突き動かされるまま、ルナルシオンは誓いの言葉に返した。
恐らく、あの瞬間からルナルシオンはダガンを好きだったのだ。自覚したのは五年前、旅立つダガンを見送った瞬間だ。以来、ダガンの帰りをずっと待ち、今に至る。
◆◆◆◆◆
「ダガン……好き……」
お花畑である。仕方ない。出会って十四年、想いを自覚して五年。ずっと帰りを待っていた相手と結ばれるのだ。二十二歳の青年には刺激が強い。
「私を好きじゃなくても好き」
(なんて優しい騎士だろう)
これが、ルナルシオンがダガンと初めて会った時の印象だ。
ルナルシオンはダガンが半魔、文献で読んだ魔族と人間の合いの子であると一目で判断した。かなり魔族の特徴が濃く、顔立ちも姿も猛々しい。しかし、その身から溢れる威圧を極限まで消していることも同時に見抜き、その優しさに感動した。
(こんな優しい騎士もいるんだ)
騎士や兵士といった者たちは、大なり小なり自分の力を示したがるものだ。故に最も礼儀を重んじる近衛騎士でさえ、ある種の威圧を伴う空気、いわゆる強者の威圧をまとっている。むしろ常に威圧を発してこそ勤めを果たせると思っている節もあった。否定できない面もあるが、にこやかに接しながらも威圧を抑えきれない彼らが、ルナルシオンは苦手だった。
またそういった者の一部が、内心でルナルシオンを軽んじているのも察していた。
「王族の癖に魔術も武術も使えぬ役たたず」だと、子供だからと油断し、態度に滲ませるのだ。
確かにルナルシオンは、魔術適正もなく闘気を練ることもできない。しかし聡明で、他者の気配や思惑には敏感だ。ゆえに、ダガンの思いやりに気づけたのである。
「お初にお目にかかります。私は、王立騎士団第三師団第一部隊隊長ダガン・シュラハと申します。この度、陛下のご高配により男爵位とシュラハの家名を賜りました」
言葉は固いが声は優しい。眼差しもだ。努力しているのが察せれた。恐らく、ルナルシオンたち八人兄弟姉妹を怯えさせないためだ。だが、それは他の兄弟姉妹には伝わらなかった。
「そ、そなたがダガンか……」
「ひっ!な、なに、怖い……!」
「頭の角?魔族?何故ここに?」
「お前ら下がれ!」
他の兄弟たちは、ダガンの見た目に怯えるか嫌悪した。臆病なところのある第五王女ステラリリスと第四王女フルールリア、血の気の多い第二王子サンライアンと第二王女ラヴィネリッサが怯えたり騒ぐのはまだわかるが、他も嫌悪や恐怖を隠してない。今まで動揺した所を見せた事のない第一王子スカイレッドまで声を震わせている。
そして、その反応を見たダガンは少しだけ表情を変えた。悲しそうに。
ルナルシオンは、気付けば口を開いていた。
「みんな、どうして怖がってるの。こんなに優しい金色の目をしていて、私たちを怖がらせないよう穏やかな声を出してくれているのに。失礼だよ」
ダガンの目が驚きに見開かれ、ルナルシオンだけを見た。なぜかルナルシオンの胸が高鳴る。
(あれ?どうして?)
恐ろしいわけでもないのにと疑問だったが、まずは礼儀を示さねばと笑顔を浮かべた。立派な騎士に向けるに相応しい表情だといいと思いながら。
「君がダガンだね。いつも私たちのために戦ってくれてありがとう。北端砦の攻防も、ランダリオンの戦いも、ワイバーンの大発生も、君のおかげでおさまったと聞いたよ。これからもよろしくね」
ルナルシオンはダガンに微笑みかけ、歩み寄って手を差し出した。自分たち王侯貴族が騎士に忠誠を許し、信頼を表明する際の姿勢だ。第三王子の自分が出過ぎた真似かとも思ったが、素直な感謝と信頼を示したかった。
ダガンは居住まいを正し、ルナルシオンの手に己の手を差し出す。ルナルシオンの背丈が小さいので、自然と手と手が重なった。大きくて分厚い、温かな手だ。意識してまた胸が高鳴った。やはり、嫌な感覚はしない。
手が重なって数瞬後、ダガンの眼差しが変わった。眩しく強い意志の力がこもった目だ。
「身に余るお言葉を賜り恐悦至極に存じます。このダガン・シュラハ。我が剣と魂に誓い、我が命果てるまでローゼラント王家にお仕え申し上げます」
次いで紡がれた声も深く、強い。しかし、ルナルシオンに対する敬意と忠誠に満ちていた。
「ルナルシオン・ローゼラントはそなたの忠誠と献身を許し、それを忘れず報いると誓う」
胸の高鳴りに突き動かされるまま、ルナルシオンは誓いの言葉に返した。
恐らく、あの瞬間からルナルシオンはダガンを好きだったのだ。自覚したのは五年前、旅立つダガンを見送った瞬間だ。以来、ダガンの帰りをずっと待ち、今に至る。
◆◆◆◆◆
「ダガン……好き……」
お花畑である。仕方ない。出会って十四年、想いを自覚して五年。ずっと帰りを待っていた相手と結ばれるのだ。二十二歳の青年には刺激が強い。
「私を好きじゃなくても好き」
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