【五章完結】サラリーマン、オークの花嫁になる

花房いちご

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第五章 元騎士、オークの花嫁になる

元騎士、オークの花嫁になる【1】

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(スケベすぎる)

 それが、その人間の男を見たオーク……ガルグの率直な感想だった。
 踏み込んだ馬車の中。檻に入れられ膝を抱えて座っていた男が、鉄格子ごしにガルグを見上げた。

「貴方は……オーク?」

 酷くかすれてか細い声だ。

「ああ。俺はオークのガルグという。あんたを助けに来た」

「助けに……」

 言葉の意味がわからないのだろうか?男は首をかしげて、ぼんやりとガルグを見つめた。
 ガルグはその幼気にすら感じる仕草に、再びある感情に襲われた。

(スケベすぎる)

 目の前の男の年齢は40歳くらいだろうか?
 顔立ちは整っており、憂いを帯びた紫色の瞳と顔を隠すように伸ばした金髪が色っぽい。
 肌は青ざめていて不健康そうだし、頬骨が浮くほど痩せている。だが、ボロボロの薄衣をまとった身体は人間にしては体格がいいし、筋肉もしっかりついているようだ。
 おまけに儚げな表情や品がある話し方は、ガルグの好みのど真ん中である。

(そそられる。優しく抱きたい)

 まず、こけた頬を撫でて体温を馴染ませたい。温めてやりたい。
 充分に温まったら、痩せた身体を抱きしめて「もう大丈夫だ」と、言ってやりたい。

(いや、下手に触ったら怖がらせてしまうかもしれない。
 オークである俺は人間より大きくて力が強い。手のひらなんて、この男の顔くらいある。おまけに男がいた赤花国は、オークを嫌う奴が多い。慎重に、優しくしてやらないと……)

 ごくり。ほとんど無意識に唾を飲んだ。股間も張り詰めてきた。
 男が怖がる姿を想像して、さらに優しく触れて恐怖を溶かす想像もして、興奮が高まっていく。

(ゆっくり触れて、青ざめた肌の隅々まで撫でて、唾液を塗り込むように舐めて、気持ちいい場所だけ甘やかして、強く抱きしめて、ぐずぐずになった身体を貫きたい)

 この男はガルグの愛撫に身を任せたら、どんな表情を浮かべるだろうか。
 今はかすれた声は、本当はどんな声でどう喘ぐのだろうか。
 青ざめた身体をくねらせて、頬を染めて、身体の中を濡らして足を開くだろうか。
 ガルグの逸物を受け入れて、快楽に喘いで乱れるだろうか。

(もしそうなったら、孕むまで種付けて離さない。
 ……いや!こんな妄想をしてる場合じゃない!おまけに被害者に対して失礼すぎる!しっかりしろ!恥を知れガルグ!)

 ガルグは大いに自己嫌悪して反省した。
 もちろん妄想を口には出していないし、実行するつもりもないが、この男は人身売買被害者なのだ。こんな風に妄想することすら罪だと思えた。
 そんなガルグに男が話しかける。やや不安そうな顔だ。

「あの……どうされましたか?」

「あ、ああ。なんでもない。少し考えてただけだ。檻をぶち壊すから、少し離れててくれ」

「はい。わかりました」

 素直に言うことをきく男にキュンとしつつ、ガルグは鉄格子を握って引っ張って伸ばした。オークの怪力でしか出来ないわざだ。

「すごい……オークは怪力とはきいてましたが、想像以上です」

 男は目を丸くして驚いている。怯えてはいない様子でホッとした。

(しかしまさか、学校の教師を募集したら性奴隷を売り込まれるなんて想像もしなかった)

 男を売ろうとしたのは、隣国の貴族だ。

『性奴隷をお求めなんですってね?丁度、夫を捨てるところですの。お安くしておきますわよ』などと言っていた。

(あの貴族、なんでこんな儚くて美しい夫を性奴隷として売ろうとしたんだ?いや、はじめから色々とおかしい奴だと思ったが)

 ガルグは当時を振り返った。


 後に、男とラブラブ夫夫になるとは……それこそ想像もしなかった。そんな2人の出会いだった。



 ◆◆◆◆◆◆

閲覧頂きありがとうございます。

本編最終話まで書き溜めましたので、本日(2025/10/30)より連載再開しています。

今年も、いいオークの日(11月9日)と、「第13回BL大賞」に参加できて嬉しいです。
投票、お気に入り登録、エール、感想など、応援よろしくお願いします。

2025/10/09 主人公の名前を変更しました。
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