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第三章エルフ、オークの花嫁になる
エルフ、オークの花嫁になる【6】
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「では、せめてお土産だけでも……」
オズマ様は、背負い子いっぱいに野菜と薬草を分けて下さった。かなり珍しい物や、エルフの私でも知らない物まであって驚く。オズマ様は、丁寧にそれぞれの野菜と薬草の効能と使い方を教えて下さった。
本当に理知的で善良な方だ。野外であれほど激しく営んでいたとは思えない。いやいや、きっと何か深淵な理由があったに違いない。たぶん。きっと。
そうだったらいいなあと思いつつ、別れの挨拶を交わした。
「セリオリス様、オズマ様、お二人にお会いできてよかったです。これからもお幸せに」
お二人は嬉しそうに笑ってくれた。
「おう!また来いよ!なんなら移住しに来い!」
「はい。村の方にも親切にして頂きました。移住するかどうかはともかく、成人したら必ず来ますね」
今回、ここまで来れたのは氏族長からの命令だったからだ。
我が氏族の決まりで、未成年者は氏族長の許可が無ければ国外に出れない。この時の私の年齢は百八十歳。成人の二百歳まであと二十年だった。
「もうすぐだな。その頃には俺たちの子も産まれてるから、遊んでやってくれよな。やっと雄子宮が成熟したから……ムグッ!」
「レグレース様、お気をつけてお帰りくださいませ。末永いご多幸をお祈り申し上げます」
「は、はい。ありがとうございます」
このお二人の子か。きっと、その子も有能かつ我が道を行く子になりそうだな。私はそう思った。
余談だが、お二人の第一子クオーン様は後に緑鉄国国王となる。クオーン国王は文武両道の明君であり、異世界から召喚された人間を王配に選ぶという正に唯一無二の存在となった。私はそれを聞いた時、深く納得したのだった。
◆◆◆◆◆
私は村から出る前に、あのオークの子供を訪ねた。
お世話になったお礼に、私が作った魔石を渡したかったのだ。
「なっ!こ、こんな凄い宝石もらえねえよ!」
彼は驚いて突っ返そうとした。私は、その手を両手で包む。
小さいけれど、良く使っていそうなしっかりした手だなあ。おや?顔が赤いがどうしたんだろう?勝手に触ったのが嫌だったのかな?うーん?振り払われないからいいかな。
「宝石じゃなくて、私が作った魔石だよ。魔石は、魔力を固めて結晶させたものだ。魔道具を動かすのに使えるし、武器につければ威力を底上げする。要らなかったら売っていいよ。それなりの値になるはずだから」
「ませっ!?ただの宝石以上に貴重だって俺でも知ってるぞ!もらえな……」
私は手をギュッと握った。この手の中にある魔石を思いながら。
それは、とても美しい金色をしている。
「君にとっては些細なことだったかもしれないけど、私は君の優しさと言葉が嬉しかった。……私はあまり、周りと上手くいってないから」
「お兄さん……」
「それに、この魔石は君の目と同じ金色をしている。君にもらって欲しい」
彼は真っ赤になって頷いてくれた。私は手を離し、彼の緑色の手に祝福のキスをした。儀礼的な、ただ触れるだけのものだ。
「君のこれからに祝福があらんことを……。っ!」
顔を上げて金の目と目が合った瞬間、重くて甘い香りを嗅いだ。急速に身体が熱くなり、心音が速まる。ジュンと、下腹がうずいた。
え?子供の前で、私……。
トンッと、身体を軽く押されて我に返る。
「わ、わかったから!さっさと帰れ!ゴブリンどもと魔獣に気をつけて行けよ!あとコレ!ゴブリン避けの匂い袋!持ってけ!」
「は、はい。ありがとう。いつかまた、ここに来るね」
ぶっきらぼうだが、私を気づかう言動に笑みを返す。先ほどの異変は気のせいだと言い聞かせながら。
「これ、あの子が作ったのかな」
道すがら、大雑把な縫い目の匂い袋を眺める。首から下げられるよう紐がついていたり、刺繍らしき縫い目があったりと、苦心して作られていた。
あの小さくて、でも頼もしい手が縫ったと思うと、何よりの宝物に見える。握りしめて匂いを嗅ぐと、胸が温かくなった。
こんな気持ちは初めてだ。
「あの子の名前を聞いておけばよかったなあ」
私が成人したら、必ず会いに行こう。
こうして私は、たった二十年を待ち遠しく思いながら緑鉄国を去り、青星国に帰ったのだった。
オズマ様は、背負い子いっぱいに野菜と薬草を分けて下さった。かなり珍しい物や、エルフの私でも知らない物まであって驚く。オズマ様は、丁寧にそれぞれの野菜と薬草の効能と使い方を教えて下さった。
本当に理知的で善良な方だ。野外であれほど激しく営んでいたとは思えない。いやいや、きっと何か深淵な理由があったに違いない。たぶん。きっと。
そうだったらいいなあと思いつつ、別れの挨拶を交わした。
「セリオリス様、オズマ様、お二人にお会いできてよかったです。これからもお幸せに」
お二人は嬉しそうに笑ってくれた。
「おう!また来いよ!なんなら移住しに来い!」
「はい。村の方にも親切にして頂きました。移住するかどうかはともかく、成人したら必ず来ますね」
今回、ここまで来れたのは氏族長からの命令だったからだ。
我が氏族の決まりで、未成年者は氏族長の許可が無ければ国外に出れない。この時の私の年齢は百八十歳。成人の二百歳まであと二十年だった。
「もうすぐだな。その頃には俺たちの子も産まれてるから、遊んでやってくれよな。やっと雄子宮が成熟したから……ムグッ!」
「レグレース様、お気をつけてお帰りくださいませ。末永いご多幸をお祈り申し上げます」
「は、はい。ありがとうございます」
このお二人の子か。きっと、その子も有能かつ我が道を行く子になりそうだな。私はそう思った。
余談だが、お二人の第一子クオーン様は後に緑鉄国国王となる。クオーン国王は文武両道の明君であり、異世界から召喚された人間を王配に選ぶという正に唯一無二の存在となった。私はそれを聞いた時、深く納得したのだった。
◆◆◆◆◆
私は村から出る前に、あのオークの子供を訪ねた。
お世話になったお礼に、私が作った魔石を渡したかったのだ。
「なっ!こ、こんな凄い宝石もらえねえよ!」
彼は驚いて突っ返そうとした。私は、その手を両手で包む。
小さいけれど、良く使っていそうなしっかりした手だなあ。おや?顔が赤いがどうしたんだろう?勝手に触ったのが嫌だったのかな?うーん?振り払われないからいいかな。
「宝石じゃなくて、私が作った魔石だよ。魔石は、魔力を固めて結晶させたものだ。魔道具を動かすのに使えるし、武器につければ威力を底上げする。要らなかったら売っていいよ。それなりの値になるはずだから」
「ませっ!?ただの宝石以上に貴重だって俺でも知ってるぞ!もらえな……」
私は手をギュッと握った。この手の中にある魔石を思いながら。
それは、とても美しい金色をしている。
「君にとっては些細なことだったかもしれないけど、私は君の優しさと言葉が嬉しかった。……私はあまり、周りと上手くいってないから」
「お兄さん……」
「それに、この魔石は君の目と同じ金色をしている。君にもらって欲しい」
彼は真っ赤になって頷いてくれた。私は手を離し、彼の緑色の手に祝福のキスをした。儀礼的な、ただ触れるだけのものだ。
「君のこれからに祝福があらんことを……。っ!」
顔を上げて金の目と目が合った瞬間、重くて甘い香りを嗅いだ。急速に身体が熱くなり、心音が速まる。ジュンと、下腹がうずいた。
え?子供の前で、私……。
トンッと、身体を軽く押されて我に返る。
「わ、わかったから!さっさと帰れ!ゴブリンどもと魔獣に気をつけて行けよ!あとコレ!ゴブリン避けの匂い袋!持ってけ!」
「は、はい。ありがとう。いつかまた、ここに来るね」
ぶっきらぼうだが、私を気づかう言動に笑みを返す。先ほどの異変は気のせいだと言い聞かせながら。
「これ、あの子が作ったのかな」
道すがら、大雑把な縫い目の匂い袋を眺める。首から下げられるよう紐がついていたり、刺繍らしき縫い目があったりと、苦心して作られていた。
あの小さくて、でも頼もしい手が縫ったと思うと、何よりの宝物に見える。握りしめて匂いを嗅ぐと、胸が温かくなった。
こんな気持ちは初めてだ。
「あの子の名前を聞いておけばよかったなあ」
私が成人したら、必ず会いに行こう。
こうして私は、たった二十年を待ち遠しく思いながら緑鉄国を去り、青星国に帰ったのだった。
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