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第四章ガードマン、オークの花嫁になる
ガードマン、オークの花嫁になる【15】
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チュニックの下に大きすぎるズボンを無理矢理はいてから、ザックの先導でリビングから出た。
案内された部屋の中には大きな姿見があった。なんと魔道具で、王城にいるザックの上司と通信出来るらしい。
凄い!ファンタジーって感じだ!
これから『僕の家とザックの家が繋がってしまったことと、僕らが恋に落ちて雄子宮まで出来たこと』を報告する。
異世界かつ異種族同士の恋だ。反対されるかなと思ったのだけど……。
「素敵な花嫁殿ではないか!私たちからも祝いを贈ろう!」
「あ、ありがとうございます?」
「よかったなああ!ザック!本当によかったあああ!」
「す、すみません。ご心配をおかけしました……」
晴れやかに笑う赤髪の美青年さんと、大号泣するゴツくてデカいオークさんに全力でお祝いされたのだった。
赤髪の美青年さんは、緑鉄国魔法局局長シスルさん。騎士っぽい見た目だけど、魔法使いなのだという。
ゴツくてデカいオークさんは、魔法局副局長のオグルさん。オグルさんは魔法使いではなく、シスルさんの補佐と組織運営が主な仕事だそうだ。
オークは魔法が苦手なので、魔法局には人間やエルフが多いんだとか。それはともかく。
「えっ?お二人はご夫夫なんですか!?シスルさんもオークの花嫁!?」
「そうだ。子供もいる。オグルが私を望んで娶り、私はその求愛にこたえて孕んだのだ」
シスルさんは少し頬を染めうっとりと微笑んだ。凛々しい美青年から、匂い立つような色気の人夫といった様子になる。
「私は罪深い男だったというのに、オグルは隅々まで愛してくれて……はあ……思い出すだけで身体が熱くなる……」
うわあ。トロンとした顔が凄く艶っぽい。危ない魅力がある。美形だし女性男性問わずモテるだろうな。人生が変わっちゃった人とかもいそう。
シスルさんに横恋慕して失恋する人たちが耐えず、中にはとんでもなくエッチな末路をたどる人もいると知るのは先の話だ。
この時点では何となく魔性っぽさを感じつつも、幸せそうな様子に憧れと羨望が募った。
「仲がよろしいんですね。うらやましいです」
「ありがとう。オグルは自慢の花婿だよ」
「うう……ザックよかっ……。自慢なのは……ひっく……俺だ……シスル」
「はは!オグル、泣きながら言っても様にならないぞ」
などと言いつつ、シスルさんはハンカチでオグルさんの涙を拭いてあげた。
うわぁー!ラブラブだ!オグルさんにむける表情は柔らかく甘ったるい!オグルさんも熱っぽい眼差しでシスルさんを見てる!
「ちなみに我が国の国王陛下と王配陛下もオークと人間のご夫夫だ。おまけに王配陛下は、おそらく貴方と同じ世界出身だ」
「えええっ!?」
「だから、貴方が異世界人で異種族だからと差別するような者も、二人の仲を反対する者もいない。安心してくれ」
「よ、よかった」
ザックと手を取り合って微笑みあった。
そしてオグルさんは、ザックの近衛騎士時代からの上司らしい。
シスルさんに涙を拭われながら話してくれた。
「ミツバさん、ザックと出会ってくれてありがとう。こいつは思い詰めやすい奴でして、近衛騎士を辞めてからは魔獣討伐に命を捧げようとしました。
何とか拳と言葉で説得して、【魔性の森】の管理人になることを承知させました。しかし、この森には厄介な魔獣が生息しています。他の人員を拒否して籠ったまま、休暇すら取らないので心配していたんです」
フッと、オグルさんの黒っぽい青い目が優しく細められた。
「ザック、顔を見てすぐわかったぞ。立ち直れてよかったな」
「っ!……ご心配を……おかけしました……!」
ザックのまなじりに涙が浮かんだ。僕は大きな背中を叩いて寄り添ったのだった。
これで不安は無くなった。
事前にザックが『王配陛下も異世界出身の人間だから、悪いようにはならない。異世界と繋がった場所も大抵は経過観察で済むから、このまま交流するのもの認められるだろう』と言っていた通りだ。
僕はそう思ったけど……甘かった。
「異世界に通じる【門】を閉じるか否か。これからの調査で決定する。閉じる場合は申し訳ないが、ミツバ殿にはそちらの世界を捨ててもらうことになるだろう」
◆◆◆◆◆
閲覧ありがとうございます。久しぶりのオグルとシスルの登場でした。この二人については【第二章 王太子、オークの花嫁になる】が詳しいです(宣伝)
案内された部屋の中には大きな姿見があった。なんと魔道具で、王城にいるザックの上司と通信出来るらしい。
凄い!ファンタジーって感じだ!
これから『僕の家とザックの家が繋がってしまったことと、僕らが恋に落ちて雄子宮まで出来たこと』を報告する。
異世界かつ異種族同士の恋だ。反対されるかなと思ったのだけど……。
「素敵な花嫁殿ではないか!私たちからも祝いを贈ろう!」
「あ、ありがとうございます?」
「よかったなああ!ザック!本当によかったあああ!」
「す、すみません。ご心配をおかけしました……」
晴れやかに笑う赤髪の美青年さんと、大号泣するゴツくてデカいオークさんに全力でお祝いされたのだった。
赤髪の美青年さんは、緑鉄国魔法局局長シスルさん。騎士っぽい見た目だけど、魔法使いなのだという。
ゴツくてデカいオークさんは、魔法局副局長のオグルさん。オグルさんは魔法使いではなく、シスルさんの補佐と組織運営が主な仕事だそうだ。
オークは魔法が苦手なので、魔法局には人間やエルフが多いんだとか。それはともかく。
「えっ?お二人はご夫夫なんですか!?シスルさんもオークの花嫁!?」
「そうだ。子供もいる。オグルが私を望んで娶り、私はその求愛にこたえて孕んだのだ」
シスルさんは少し頬を染めうっとりと微笑んだ。凛々しい美青年から、匂い立つような色気の人夫といった様子になる。
「私は罪深い男だったというのに、オグルは隅々まで愛してくれて……はあ……思い出すだけで身体が熱くなる……」
うわあ。トロンとした顔が凄く艶っぽい。危ない魅力がある。美形だし女性男性問わずモテるだろうな。人生が変わっちゃった人とかもいそう。
シスルさんに横恋慕して失恋する人たちが耐えず、中にはとんでもなくエッチな末路をたどる人もいると知るのは先の話だ。
この時点では何となく魔性っぽさを感じつつも、幸せそうな様子に憧れと羨望が募った。
「仲がよろしいんですね。うらやましいです」
「ありがとう。オグルは自慢の花婿だよ」
「うう……ザックよかっ……。自慢なのは……ひっく……俺だ……シスル」
「はは!オグル、泣きながら言っても様にならないぞ」
などと言いつつ、シスルさんはハンカチでオグルさんの涙を拭いてあげた。
うわぁー!ラブラブだ!オグルさんにむける表情は柔らかく甘ったるい!オグルさんも熱っぽい眼差しでシスルさんを見てる!
「ちなみに我が国の国王陛下と王配陛下もオークと人間のご夫夫だ。おまけに王配陛下は、おそらく貴方と同じ世界出身だ」
「えええっ!?」
「だから、貴方が異世界人で異種族だからと差別するような者も、二人の仲を反対する者もいない。安心してくれ」
「よ、よかった」
ザックと手を取り合って微笑みあった。
そしてオグルさんは、ザックの近衛騎士時代からの上司らしい。
シスルさんに涙を拭われながら話してくれた。
「ミツバさん、ザックと出会ってくれてありがとう。こいつは思い詰めやすい奴でして、近衛騎士を辞めてからは魔獣討伐に命を捧げようとしました。
何とか拳と言葉で説得して、【魔性の森】の管理人になることを承知させました。しかし、この森には厄介な魔獣が生息しています。他の人員を拒否して籠ったまま、休暇すら取らないので心配していたんです」
フッと、オグルさんの黒っぽい青い目が優しく細められた。
「ザック、顔を見てすぐわかったぞ。立ち直れてよかったな」
「っ!……ご心配を……おかけしました……!」
ザックのまなじりに涙が浮かんだ。僕は大きな背中を叩いて寄り添ったのだった。
これで不安は無くなった。
事前にザックが『王配陛下も異世界出身の人間だから、悪いようにはならない。異世界と繋がった場所も大抵は経過観察で済むから、このまま交流するのもの認められるだろう』と言っていた通りだ。
僕はそう思ったけど……甘かった。
「異世界に通じる【門】を閉じるか否か。これからの調査で決定する。閉じる場合は申し訳ないが、ミツバ殿にはそちらの世界を捨ててもらうことになるだろう」
◆◆◆◆◆
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