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CHAPTER3
7
午後五時二十分を少し回った頃、可南子は新宿区河田町のT大女子医大病院に着いた。
望月絵里奈がまだ病院内にいるかどうか分からないが、一応中に入ってみることにした。
受付で刑事であることを告げ、問題の女医が勤務中か確かめる。
「あの、精神科……の」
「心療内科ですね」
と女性事務員は言葉を改める。
頷きつつ可南子は、
「その心療内科にお勤めの望月絵里奈さんはまだ――」
ここまでいうと、事務員は申し訳なさそうに顔を顰めた。
「望月ドクターは、四時過ぎに退勤されました」
「そうですか……、分かりました」
可南子は幾分残念に思いつつ諦めたように頷いた。
「帰宅したのか……、じゃあ仕方ないですね警部補」
「お邪魔しました」
事務員に礼の言葉を述べ、二人はT大女子医大病院を離れる。
病院の敷地外へ出ると、可南子は窪塚を見やった。
「どうしようか次」
「望月さんの自宅行ってみます?」
「これから?」
可南子は窪塚に尋ね返した。
時刻は午後五時四十分だ。
「じゃあどうするんですか」
「新宿まで戻って来たんだから、このまま帳場に戻りましょっ、何か進展があるかも知れないし」
「はい、分かりました」
窪塚が同意し頷くのを確認すると、可南子は都営大江戸線若松河田駅に向かった。新宿西口駅で下車し、そのまま新宿中央署へ戻った。
捜査本部がある講堂に上がる。
講堂内には、十数人の捜査員がいた。
「どうだった?」
可南子は部下の宮地を見つけ尋ねる。
「駄目です、片っ端か交友関係洗ってみたんですが、被疑者特定に繋がる人物はゼロです」
敷鑑捜査で、水城涼子の同僚を調べていた宮地は面目なさ気に首を振りながら答えた。
「そう。こっちも同じかな」
可南子は宮地にそう告げると、自分の席に座った。
チラリと前方のひな壇に目をやる。角田管理官と小泉係長が何やらヒソヒソ話をしている。先ほどから統括主任の富樫の姿が見当たらないのが気になっていた。
「ねえ、宮地、統括は?」
「それが自分にも分からないんですよ、何でも二時間ほど前に、ちょっと出掛けるといってここを離れたそうです」
「そう」
素っ気なくいうと、可南子は立ち上がり奥に設置されたコーヒーメーカーに向かって歩き出した。
紙コップを設置していると、革ジャンの内ポケットの中のスマホが振動した。
「ちぇっ、誰だよ一体、人がこれからコーヒー淹れようかと思ってる時に」
愚痴を吐きながら可南子はスマホを取り出した。電話の相手は統括主任の富樫だった。
仕方なく一旦コーヒーを淹れるのを止め、可南子は液晶画面を指先でタップした。
「はい比嘉です」
《お嬢、お手柄だ。午前中お前さんが送信して来た写真の男性だが、麻布の帳場で追ってるコロシのマル害男性だった》
「えっ!?」
思わず声が裏返ってしまい、可南子は恥ずかしく思い辺りを見やった。
《おい、聞いているのか、お嬢。お前が水城涼子の部屋で見つけた写真の男は、川尻秀幸。個人投資家だ》
「今日昼過ぎ、この男性の自宅マンションに行って来ました」
《川尻の自宅に?》
「はい」
可南子は電話越しに頷いた。
《そっか、行って来たのか?》
「何か問題でも?」
訝しく思い可南子は問い掛けてみた。
《なるほどな、それであの野郎が俺に噛み付いて来たのか》
スマホのスピーカーから聞こえる富樫の声は、半音上がっていた。
「あの野郎ってまさか勝俣のことですかっ!?」
思わず可南子は唸ってしまった。
帳場にいた捜査員たちがこっちを見ている。可南子は愛想笑いを浮かべ一礼した。
望月絵里奈がまだ病院内にいるかどうか分からないが、一応中に入ってみることにした。
受付で刑事であることを告げ、問題の女医が勤務中か確かめる。
「あの、精神科……の」
「心療内科ですね」
と女性事務員は言葉を改める。
頷きつつ可南子は、
「その心療内科にお勤めの望月絵里奈さんはまだ――」
ここまでいうと、事務員は申し訳なさそうに顔を顰めた。
「望月ドクターは、四時過ぎに退勤されました」
「そうですか……、分かりました」
可南子は幾分残念に思いつつ諦めたように頷いた。
「帰宅したのか……、じゃあ仕方ないですね警部補」
「お邪魔しました」
事務員に礼の言葉を述べ、二人はT大女子医大病院を離れる。
病院の敷地外へ出ると、可南子は窪塚を見やった。
「どうしようか次」
「望月さんの自宅行ってみます?」
「これから?」
可南子は窪塚に尋ね返した。
時刻は午後五時四十分だ。
「じゃあどうするんですか」
「新宿まで戻って来たんだから、このまま帳場に戻りましょっ、何か進展があるかも知れないし」
「はい、分かりました」
窪塚が同意し頷くのを確認すると、可南子は都営大江戸線若松河田駅に向かった。新宿西口駅で下車し、そのまま新宿中央署へ戻った。
捜査本部がある講堂に上がる。
講堂内には、十数人の捜査員がいた。
「どうだった?」
可南子は部下の宮地を見つけ尋ねる。
「駄目です、片っ端か交友関係洗ってみたんですが、被疑者特定に繋がる人物はゼロです」
敷鑑捜査で、水城涼子の同僚を調べていた宮地は面目なさ気に首を振りながら答えた。
「そう。こっちも同じかな」
可南子は宮地にそう告げると、自分の席に座った。
チラリと前方のひな壇に目をやる。角田管理官と小泉係長が何やらヒソヒソ話をしている。先ほどから統括主任の富樫の姿が見当たらないのが気になっていた。
「ねえ、宮地、統括は?」
「それが自分にも分からないんですよ、何でも二時間ほど前に、ちょっと出掛けるといってここを離れたそうです」
「そう」
素っ気なくいうと、可南子は立ち上がり奥に設置されたコーヒーメーカーに向かって歩き出した。
紙コップを設置していると、革ジャンの内ポケットの中のスマホが振動した。
「ちぇっ、誰だよ一体、人がこれからコーヒー淹れようかと思ってる時に」
愚痴を吐きながら可南子はスマホを取り出した。電話の相手は統括主任の富樫だった。
仕方なく一旦コーヒーを淹れるのを止め、可南子は液晶画面を指先でタップした。
「はい比嘉です」
《お嬢、お手柄だ。午前中お前さんが送信して来た写真の男性だが、麻布の帳場で追ってるコロシのマル害男性だった》
「えっ!?」
思わず声が裏返ってしまい、可南子は恥ずかしく思い辺りを見やった。
《おい、聞いているのか、お嬢。お前が水城涼子の部屋で見つけた写真の男は、川尻秀幸。個人投資家だ》
「今日昼過ぎ、この男性の自宅マンションに行って来ました」
《川尻の自宅に?》
「はい」
可南子は電話越しに頷いた。
《そっか、行って来たのか?》
「何か問題でも?」
訝しく思い可南子は問い掛けてみた。
《なるほどな、それであの野郎が俺に噛み付いて来たのか》
スマホのスピーカーから聞こえる富樫の声は、半音上がっていた。
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