上 下
17 / 88

第17話 ぎゃくえろ

しおりを挟む
 吾輩はネコである。
 名前はちび太。


「うーん、日本語って知れば知るほど難しいな……」

 深夜。
 ご主人様が執筆のためのパソコンを打つ手を止めて、なにやらうんうんうなっては思索にふけっていた。

 こう見えてご主人様は作家を目指しているだけあって、言葉には繊細な人なのだ。

 「液体って、逆にして体液ってするとなんとなくいかがわしくなるよな。例えばニュースで使われる体液という言葉の9割が精液を指すんだそうだ。つまり体液≒精液なんだ」

 そういえばご主人様はアホ……いや特殊な感性の持ち主なのだった。

「よし! こういう前後を入れ替えることでなんとなく卑猥になる言葉を『逆エロ』と名付けよう! 着エロみたいで響きもなかなかグッド……!」

 謎にハイテンションなご主人様から視線を外した吾輩は、そっと目を閉じ眠りにつくことにした。

 今日もご主人様はいつも通り、特筆すべきことのない一日だった。
しおりを挟む

処理中です...