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第1章 突然のゲーム内転移

第7話「言っただろ、俺は強いってな」

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「よっと!」

 頭の中で回避と判断した瞬間に、どう避ければいいのかがパッと浮かび、さらには身体が自然と最適な動きを取る。

 俺は襲い来る数十本のフレイム・アローを、難なくかわした。

 うおおっ!?
 ずっと運動は苦手だったし、実戦はこれが初めてなのに、まるで戦闘の達人みたいに動けるぞ!

 そのことに俺自身が驚いていた。

 なるほどな。
 これが最高位職の神騎士の、さらにカンストLV99の再現か。

 フレイム・アローは直線的な攻撃とはいえ、かなりのスピードだ。
 しかもアリエッタは1本ではなく、数十本の同時発動ときた。
 もはや線ではなく面で襲ってくる攻撃を、余裕をもって視認して、なんなくかわせてしまう。

 強いな、うん。
 今の一瞬で、改めて自分の強さが分かったぞ。

 神騎士LV99。
 この世界の俺は文句なしに強い!

 あと、実際にやったことがない動きもできちゃうのは、なんともゲーム感があるよな。
 なんてことを思っていると、

「へぇ? 少しはやるみたいだけど、まだまだよ! リバース・アロー!」

 さっき避けたはずのフレイム・アローが、空中で方向を変えると、俺に向かって再び襲い掛かってきた。

「そういやそんな技もあったな!」

 俺は再び回避行動をとるが、

「リバース・アロー!」
「リバース・アロー!」
「リバース・アロー!」

 アリエッタはフレイム・アローを何度もリバースさせて、執拗に俺を追いまわしてくる。
 さらには、

「意外とすばしっこいわね! だったら、フレイム・アロー・デュオ!」

 俺の回避先を狙うように、さらなる数十本のフレイム・アローで襲い掛かってきたのだ。

 Dランク魔法のフレイム・アローも、それをまとめて数十本ともなれば、一気にBランク魔法の難易度になる。
 さらにそれを2つ同時に精密にコントロールするともなれば、もはやAランク魔法のレベルに近い(――的な事をソシャゲでアリエッタが言っていた)。

 さすがは序盤だけは最強のアリエッタ。
 偉そうなことを言うだけあって、入学初期の時点で既に相当強いな。

 2方向から襲い来る無数のフレイム・アローを数度避けてから、俺は回避を諦めた。
 このままかわし続けてアリエッタの魔力の消耗を狙う作戦もなくはないが、いい加減逃げ回るのも面倒だ。

 それに後で文句を言われないためにも、アリエッタに俺の強さをはっきりと分かる形で見せておきたいしな。

 俺は立ち止まると、腰を落として神竜剣レクイエムを構えた。

「いくぞ神竜剣レクイエム! その力を見せつけろ!」

 そして気合一線、両手で大上段から一振りして、まずは向かってくるフレイム・アロー50発をまとめて消し飛ばす。
 続けて返す刀でもう一振りして、2撃目のフレイム・アロー50発もかき消した。

「そんな! あれだけの数のフレイム・アローを、いとも簡単に無効化するなんて!? あの剣は一体!?」

 決闘を承認した決闘立会人として、最前列で俺たちの戦いを見守っていたリューネから、悲鳴のような声があがる。

 種明かしをするとだ。
 俺の持つ神竜剣レクイエムは、神竜リヴァイアサンの討伐イベントの成績上位者のみに限定配布された、SSランクの超レアアイテムだ。

 ゲーム内で最強クラスのスペックを誇るだけでなく、『否定』の概念魔法が付与されているため、フレイム・アロー程度の魔法なら50発でも100発でも、こうして簡単に打ち消すことができるのだ。

 さすがにチート過ぎたのか、近く修正が入るとかいう噂があったけど、修正が入る前に転移したおかげで、チートっぷりは健在だ。

「ふふん! なんだかすごい武器をもっているみたいね。でも、それで勝ったと思ったわけ?」

「――なに?」

「足を止めたわね? 炎獅子咆哮! ライオネル・ストライク!」

 その言葉とともに、荒ぶる巨大な炎の獅子を身にまとったアリエッタが、足を止めて迎撃をした俺を狙って、一直線に突っ込んできた!

「ライオネル・ストライク。敵単体に大ダメージを与える突進系のAランク魔法か!」
「もらったぁっ! 消し炭になりなさい!」

「さすがに消し炭になったら死ぬからな!」
「死なない程度になりなさい!」

「無茶言うな!」
「武器の性能の違いが戦力の決定的差にならないことを、教えてあげるわ!」

 炎の獅子となったアリエッタの猛烈な突進。
 しかし俺は神竜剣レクイエムでもって、その攻撃すら難なく受け止めた。

「無数のフレイム・アローで相手の足を止め、強力な炎属性の中でも有数の打撃力を誇る突進技のライオネル・ストライクで狙い撃つ。シンプルだけど、シンプルなだけに対処が難しい強力な連携攻撃だよな」

 ソシャゲでも、アリエッタ使いがよくセットコンボにしている基本の魔法連携だ。

 威力だけはSランクとタメを張るほどあるが、なにせ命中率が低くてカス当たりが多く、単体だと全く使い物にならない『必殺技(笑)』のライオネル・ストライク。
 
 しかし命中率の高いフレイム・アローとリバース・アローを、ライオネル・ストライクを挟み込むように左右隣接して魔法セット枠にセットすることで、ライオネル・ストライクの命中率を大幅に上げることができるのだ。

(しかし数が限られた魔法セット枠を、低ランクのフレイム・アロー&リバース・アローで2枠消費してしまうため、単体で強い魔法をバンバンセットできる他のキャラと比べると、その時点で著しく不利になってしまう)

 それはこの世界でも同じようだった。

「嘘でしょ!? ライオネル・ストライクを正面から受け止めて打ち消すなんて!? 何が一体、どうなってるのよ!?」

 必殺の連携攻撃をいとも簡単に防がれたアリエッタの顔が、またもや驚愕に染まった。

「言っただろ、俺は強いってな」
「うぐ――っ」

 さてと、これで俺の強さは十二分に示せたはず。
 長引かせていたぶる趣味はないし、ここらで終わりにするか。

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