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第2章 ブレイビア学園
第32話 推しって概念を説明するのは困難を極めるよね。
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「それで、ルナは俺に質問があるんだよな?」
俺はともすればただの世間話になりそうだった話を、本筋に戻した。
お昼ご飯のお誘いはさりげなくスルーする。
だってアリエッタが露骨にイライラした顔で見てるんだもん。
おいおい、まさかジェラシーか?
なんてな。
おおかた、『お世話係は私なんだからね』みたいなことを思っているんだろう。
アリエッタの責任感の強さは人一倍だから。
(さてと、ルナは何を聞いてくるんだろうか。神龍剣レクイエムのこととか、なんで男なのに姫騎士になれたのか、とかそういうことを聞かれるのかな? アリエッタもエレナ会長も、記憶喪失であっさり納得してくれたけど、この子はどうだろう?)
この状況でいったい何を聞かれるのかと戦々恐々としていたら、
「ねぇねぇ、ユータくんの好きな女の子のタイプは?」
投げかけられたのは日本の転校生にするような、ごくごく普通のプライベートな質問だった。
いやまぁ、日本じゃボッチ陰キャのソシャゲオタだった俺が、女の子から好きな女性のタイプを聞かれることは過去に1度もなかったんだけど。
というか、そもそも女の子と会話する機会自体がなかったんだけども。
クラスで遊びに行くイベントにも誘われたことはなかったし。
クラスラインにも俺の名前は入っていなかったし。
それはそれとして。
俺は少しだけ考えてから、
「何事にも一生懸命で、頑張り屋で、凛々しくてまっすぐな目をした女の子かな」
理想の女の子像を語った。
「ふーん……つまりアリエッタみたいなタイプってこと?」
「そうだな。でも好きって言うよりかは、推しなんだ」
つまりはそう言うことである。
俺が悩んでいたのは『どういう女の子が好きか』ではなく、『推しのアリエッタをどう言葉で表現するか』ということを悩んでいたのだ。
んなもん当たり前だっつーの!
俺がアリエッタ以外の女の子に浮気なんてするかよ!
(さっきはルナのウインクについ見惚れてしまい、リューネのJカップおっぱいやらレベッカ先生の魅惑の谷間に魅入ってしまったりもしたので、説得力に欠けるのが悲しいが……だって俺も男の子だもん)
「推しって、何?」
ルナが可愛らしく小首をかしげた。
「積極的に応援したい、良さを伝えたい、みたいな気持ちのことだよ」
「……? なに言ってるかちょっとよく分からないかも? つまりアリエッタのことが好きなんだよね?」
「まぁ、大雑把に言えばそういう認識だけど、やっぱりちょっと違うって言うか」
文化の最先端だった日本の『推し』という特殊概念を、この世界の人間に正しく理解してもらうのは、まだちょっと早いのかもしれない。
「うわっ、なにそれなにそれ!」
「もうこれ実質、愛の告白じゃん!?」
「優秀な姫騎士の家系からは優秀な姫騎士が生まれやすいし!」
「もし両親が姫騎士だったら、子供はもう最強中の最強なのは確定でしょ?」
「なにせ本来なら存在しないはずの男の姫騎士だもんね」
「お堅いことで有名なローゼンベルク家だって、男の姫騎士なんて超レアキャラならウェルカムよね」
「アリエッタずるーい!」
「わたしと代わって~!」
「カガヤっち~! だったらうちに婿に来て~! うちも結構、血筋はいいんだよ~?」
「アンタは何さらっと抜け駆けしようとしてんのよ! ねーねーカガヤ君、私、結構いい身体してるんだけどなぁ? 素敵な経験とかしたくない?」
「ちょっとみんな! ビッチがいるよ! ここにビッチがいるよ!」
「ビッチ言うなし! さっきルナも言ってたじゃん、恋は先手必勝だって」
「あはは、エローい!」
おおう。
ルナを中心に、クラスメイト達が大いに盛り上がってしまった。
やれやれまったく。
女の子ってどこの世界でも色恋話が好きだよなぁ。
転移前の世界でも、教室で1人でスマホを弄っていると、色んな恋バナが聞こえてきたものだ。
誰それが別れたとか、後輩と付き合い始めたとか、先輩にアタック中だとか。
もちろんそこで俺の名前が挙がることは一度もなかったが。
「一応、好きじゃなくて推しなんだけどな」
「だから好きなんでしょ?」
「うーん、まぁそうなんだけどさ」
やはり正しくは理解してもらえなかったようだ。
俺が苦笑しながらアリエッタに視線を向けると、羞恥心と怒りに満ちた瞳が俺を見つめていた。
「なに怒ってるんだよ?」
自己紹介は終わりかな、と判断して元の席に座った俺が小声で問いかけると、
「学園であんまり変なこと言わないでよね、このアンポンタン!」
アリエッタはなんともお怒りモードだった。
「学園じゃなければいいのか?」
「そう言う意味じゃないし! あとお昼は私が一緒に食べるから」
「マジで!? サンキュー」
うーむ。
最近の日本では、推しへの素直な想いを言葉にするのが一般的だ。
『好き』は言えなくても『推し』なら言える。
その流れで俺は素直な気持ちを発表したんだが、この世界ではあまり言わない方がいいのかもしれない。
だが俺はアリエッタ推しなのだ。
推していることを伝えて何が悪い!
俺はこれからもアリエッタを推し続けたい!
アリエッタの良いところをみんなに広めたいんだ!
しかしその反面、推しの嫌がることをするのは推し活最大の邪悪である。
邪悪オブ邪悪。
もはやそれは推し活ではなく、醜悪で一方的な感情の押し付けに他ならない。
今まで俺の推しは、画面の中のアリエッタへの極めて一方的なものだった。
俺がどんな行動をとろうがアリエッタには影響はない。
しかしここではリアルなアリエッタが存在している。
俺の推し活は、独りよがりになってはいけなかった。
どこまでが独りよがりなのか、そうでないのか。
これからの推し活で、俺は気を付けていかないといけないのかもしれない。
うーむ、実に悩ましいな。
俺はこの世界に来て一番の難題にぶち当たってしまったのかもしれないぞ……。
俺はともすればただの世間話になりそうだった話を、本筋に戻した。
お昼ご飯のお誘いはさりげなくスルーする。
だってアリエッタが露骨にイライラした顔で見てるんだもん。
おいおい、まさかジェラシーか?
なんてな。
おおかた、『お世話係は私なんだからね』みたいなことを思っているんだろう。
アリエッタの責任感の強さは人一倍だから。
(さてと、ルナは何を聞いてくるんだろうか。神龍剣レクイエムのこととか、なんで男なのに姫騎士になれたのか、とかそういうことを聞かれるのかな? アリエッタもエレナ会長も、記憶喪失であっさり納得してくれたけど、この子はどうだろう?)
この状況でいったい何を聞かれるのかと戦々恐々としていたら、
「ねぇねぇ、ユータくんの好きな女の子のタイプは?」
投げかけられたのは日本の転校生にするような、ごくごく普通のプライベートな質問だった。
いやまぁ、日本じゃボッチ陰キャのソシャゲオタだった俺が、女の子から好きな女性のタイプを聞かれることは過去に1度もなかったんだけど。
というか、そもそも女の子と会話する機会自体がなかったんだけども。
クラスで遊びに行くイベントにも誘われたことはなかったし。
クラスラインにも俺の名前は入っていなかったし。
それはそれとして。
俺は少しだけ考えてから、
「何事にも一生懸命で、頑張り屋で、凛々しくてまっすぐな目をした女の子かな」
理想の女の子像を語った。
「ふーん……つまりアリエッタみたいなタイプってこと?」
「そうだな。でも好きって言うよりかは、推しなんだ」
つまりはそう言うことである。
俺が悩んでいたのは『どういう女の子が好きか』ではなく、『推しのアリエッタをどう言葉で表現するか』ということを悩んでいたのだ。
んなもん当たり前だっつーの!
俺がアリエッタ以外の女の子に浮気なんてするかよ!
(さっきはルナのウインクについ見惚れてしまい、リューネのJカップおっぱいやらレベッカ先生の魅惑の谷間に魅入ってしまったりもしたので、説得力に欠けるのが悲しいが……だって俺も男の子だもん)
「推しって、何?」
ルナが可愛らしく小首をかしげた。
「積極的に応援したい、良さを伝えたい、みたいな気持ちのことだよ」
「……? なに言ってるかちょっとよく分からないかも? つまりアリエッタのことが好きなんだよね?」
「まぁ、大雑把に言えばそういう認識だけど、やっぱりちょっと違うって言うか」
文化の最先端だった日本の『推し』という特殊概念を、この世界の人間に正しく理解してもらうのは、まだちょっと早いのかもしれない。
「うわっ、なにそれなにそれ!」
「もうこれ実質、愛の告白じゃん!?」
「優秀な姫騎士の家系からは優秀な姫騎士が生まれやすいし!」
「もし両親が姫騎士だったら、子供はもう最強中の最強なのは確定でしょ?」
「なにせ本来なら存在しないはずの男の姫騎士だもんね」
「お堅いことで有名なローゼンベルク家だって、男の姫騎士なんて超レアキャラならウェルカムよね」
「アリエッタずるーい!」
「わたしと代わって~!」
「カガヤっち~! だったらうちに婿に来て~! うちも結構、血筋はいいんだよ~?」
「アンタは何さらっと抜け駆けしようとしてんのよ! ねーねーカガヤ君、私、結構いい身体してるんだけどなぁ? 素敵な経験とかしたくない?」
「ちょっとみんな! ビッチがいるよ! ここにビッチがいるよ!」
「ビッチ言うなし! さっきルナも言ってたじゃん、恋は先手必勝だって」
「あはは、エローい!」
おおう。
ルナを中心に、クラスメイト達が大いに盛り上がってしまった。
やれやれまったく。
女の子ってどこの世界でも色恋話が好きだよなぁ。
転移前の世界でも、教室で1人でスマホを弄っていると、色んな恋バナが聞こえてきたものだ。
誰それが別れたとか、後輩と付き合い始めたとか、先輩にアタック中だとか。
もちろんそこで俺の名前が挙がることは一度もなかったが。
「一応、好きじゃなくて推しなんだけどな」
「だから好きなんでしょ?」
「うーん、まぁそうなんだけどさ」
やはり正しくは理解してもらえなかったようだ。
俺が苦笑しながらアリエッタに視線を向けると、羞恥心と怒りに満ちた瞳が俺を見つめていた。
「なに怒ってるんだよ?」
自己紹介は終わりかな、と判断して元の席に座った俺が小声で問いかけると、
「学園であんまり変なこと言わないでよね、このアンポンタン!」
アリエッタはなんともお怒りモードだった。
「学園じゃなければいいのか?」
「そう言う意味じゃないし! あとお昼は私が一緒に食べるから」
「マジで!? サンキュー」
うーむ。
最近の日本では、推しへの素直な想いを言葉にするのが一般的だ。
『好き』は言えなくても『推し』なら言える。
その流れで俺は素直な気持ちを発表したんだが、この世界ではあまり言わない方がいいのかもしれない。
だが俺はアリエッタ推しなのだ。
推していることを伝えて何が悪い!
俺はこれからもアリエッタを推し続けたい!
アリエッタの良いところをみんなに広めたいんだ!
しかしその反面、推しの嫌がることをするのは推し活最大の邪悪である。
邪悪オブ邪悪。
もはやそれは推し活ではなく、醜悪で一方的な感情の押し付けに他ならない。
今まで俺の推しは、画面の中のアリエッタへの極めて一方的なものだった。
俺がどんな行動をとろうがアリエッタには影響はない。
しかしここではリアルなアリエッタが存在している。
俺の推し活は、独りよがりになってはいけなかった。
どこまでが独りよがりなのか、そうでないのか。
これからの推し活で、俺は気を付けていかないといけないのかもしれない。
うーむ、実に悩ましいな。
俺はこの世界に来て一番の難題にぶち当たってしまったのかもしれないぞ……。
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