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第3章 1年生タッグトーナメント

第45話 推しとの感想会

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「完璧な試合運びだったなアリエッタ」
「優勝を狙ってるんだからこれくらいは当然よ」

 俺が剣を持っていない左手でガッツポーズを送ると、アリエッタが勝気な表情で自慢げに微笑む。

 やばっ!
 推しが最高の笑顔で、俺に微笑んでくれたぞ。
 推しにリアルで認知されるって、マジ幸せだなぁ!

 なんてことを内心で思ってウキウキなのは、もちろんおくびにも出さない。

「炎属性のミラーマッチで、フレイム・アローの撃ち合いで有利を取ってジリジリとプレッシャーをかけて、フレイに苦し紛れの暴れライオネル・ストライクを撃たせて回避。撃ち終わりをこっちのライオネル・ストライクで狙い撃つ。文句なしに完璧だ」

 しかし推しのアリエッタにいい笑顔を向けて貰えたのもあって、俺の口は実に軽やかだ。
 もしかしたら必死に抑えている内心のウキウキが、外に漏れだしてしまっているかもしれない。

「フレイも我慢強く粘りながらカウンターを狙ってて、なかなか暴れてくれなかったんだけど。最後はやっぱり我慢しきれなかった感じかな。ありがとねユータ。ユータには感謝してるんだから」

「急にどうしたんだよ?」

「精度の悪かったライオネル・ストライクの命中率をここまで向上させられたのは、ユータとの模擬戦闘訓練でいろんな状況を経験できたおかげだもの。当て勘が身についてきたって言うのかな? 狙いどころのバリエーションがかなり増えてきたから。だから感謝」

「俺は少し手助けをしただけださ。アリエッタに才能があったんだ」

「お世辞はいらないわ。私がお姉さまやユータと違う凡才だってことは、自分が一番よく分かっているから」

 アリエッタはそんな風に苦笑するが。

「本当だっての。あまりの成長っぷりに、こっちが怖いくらだぞ」

 これは俺の嘘偽りない本音だった。
 既にアリエッタの戦闘レベルは、ソシャゲの序盤=入学初期レベルを大きく逸脱している。

 最初はノールックガードを試したりと余裕だったはずの模擬戦闘訓練も、楽に勝てることは減ってきたし、魔法の精度も威力もどんどん上がっているし、今のアリエッタはレベルでいうと入学当初は5くらいだったのが、40とか50あたりまで急激に成長しているように思えた。

 ああくそ。
 アリエッタのステータス、なんとかして見ることができないかな?
 そうしたら成長度合いを数字として把握しつつ、目に見えて理解できるのにな。

 どこかに設定とかないのかな?
 もしくは特殊なアイテムとか。

 自分のステータスが存在するんだから、他の姫騎士にもステータスがあってもおかしくないはずだし、見れなくないと思うんだよなぁ。

 そんな風に俺はアリエッタの成長が嬉しく思いつつも、しかし同時に、明らかに能力の伸び方がおかしいことに、小さな違和感を覚えていた。
 どう考えても成長が早すぎる。

 LV99神騎士の俺が、毎日のように付きっきりで戦闘訓練をしているからだろうか?
 それとも何か別の要因があるのだろうか?

 例えば俺というイレギュラーがこの世界に来てしまったことで、世界の進む速度が変わってしまった、とか。
 何か強大な悪が生まれようとしているとか。

 実際に、ソシャゲでは魔王相対性理論と呼ばれるものがあった。
 魔王や魔竜といった強大な悪が出現する時代は、それに比例して強大な姫騎士が生まれやすいのだという。

 それが少しだけ気になったものの、どれだけ気にしていても答えが出るものでもない。
 答えが出ないものは考えてもしょうがないよな。

 不遇ヒロインだったアリエッタが強くなることは、俺にとっては願ったりかなったりなのだから、今は素直にいいことだと思っていよう。
 なにかあったらその時に考えればいい。

 だからアリエッタ。
 これからも俺は、お前を不遇ヒロインだったソシャゲとは違った、誰もがうらやむ最強の姫騎士にするために、全力で推し活サポートをするからな!

「実を言うとね。自分の成長は結構、実感してるのよね。ユータはかわすのも上手だし、神龍剣レクイエムをなんとか避けながら攻撃を当てようって頑張ってたら、当て勘とか、魔法と魔法の滑らかな繋ぎとか、大技の狙いどころとか、いろんな感覚がすごく研ぎ澄まされてきたから」

「ってことは、ほら。やっぱりアリエッタの才能だろ?」

「だからユータのおかげだってば。自分のことはそっちのけで、根気強く私との模擬戦に付き合ってくれたんだし。正直ちょっと申し訳ないくらいよ?」

「それは俺が好きでやってることだから気にしないでくれ。アリエッタが強くなると俺も嬉しいんだ」
「ふふっ、私が強くなるのが嬉しいだなんて、ほんと変なの」

「変とか言うな変とか。俺は至ってまともだ」
「もしかして人に教えたがり屋さん? でもこれだけ成長が実感できるんだから、ユータは人に物を教える才能があるのかもね」

「アリエッタに褒められて悪い気はしないな」

 なにせ推しの子にべた褒めされちゃっているのだ。
 これで嬉しくないはずがなかった。
 いいぞアリエッタ!
 もっと俺を褒めてくれ!

「あとはやっぱり、炎魔法の名門たるローゼンベルクの姫騎士として、炎属性同士の戦いで負けるにはいかないからね。このデュエルは特別に気合が入っちゃたかも」

「相変わらずの負けず嫌いだなぁ」
「だからユータが私の何を知ってるってのよ!」

「最近は知ってるだろ? 毎日同じ部屋で生活して、毎日模擬戦をしているんだからさ」
「あ、たしかに?」

「だろ? ま、それはそれとして。これでまずは初戦突破、ベスト8だ。次もがんばろうぜ」
「もちろんよ。目指すは優勝なんだから、初戦を突破したくらいで浮かれてなんかいられないわ」
「おうよ、その意気だ」

 俺とアリエッタは、次の試合もなんなく勝ってベスト4に残り。
 そして準決勝の相手は、5人しかいない1年生Aランクの1人でもあるルナのタッグとの対戦となった。
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