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異世界転生 4日目(前編)

第58話 幻想種 ―ファンタズマゴリア―

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「《聖処女の御旗よグアル・ディオラ》――ッ!」

 さながらそれは、天空そらを翔ける流れ星のごとく。
 一条の白銀の輝きは、猛烈な勢いと力をまき散らしながら一直線に辺境伯の元へと駆け抜けた――!

 ギャリ! ガリガギャギギャギン――ッ!!

 激突によって、硬い金属の塊と塊が正面衝突して互いに削り合うような耳障りな音が鳴りひびくとともに、激しく火花が舞い飛び散った。
 ドラゴンに激しく衝突した白銀の流星は、目の前にある全ての敵を粉砕せんとする、まさに必殺技と呼ぶにふさわしい渾身の一撃――!

 しかし――、

「ふ、ふふっ、ふはーっはっはっはっはは!」
 またもや広場には辺境伯の高笑いが響き渡ったのだった。

 全てを撃ち払うその鮮烈なる光輝の一撃は、なんとドラゴンの強大な左腕一本だけで難なく受け止められていたのだ。

「現役最強の騎士といえど、ドラゴンの前ではしょせんこの程度か……ふん! 弾き飛ばせ――!」

 命令を受けたドラゴンが無造作に腕を払った。
 たったそれだけで、不意を打ったはずの乱入者は、跳ね飛ばされるように虚空へと投げ出されてしまう。

 中空に舞い上がった乱入者――白銀の乙女はしかし、空気抵抗を利用して器用に体勢を立て直すと、俺のすぐ脇へと華麗に着地をしてみせた。
 弾き飛ばされる直前に、自分からドラゴンの腕を足場にジャンプしていたのだ。

 瞬時の判断能力と、ドラゴン相手にも臆さず冷静に最適な行動を選択してみせる肝の据わりよう。
 その二つを兼ね備えた眩いばかりの白銀の騎士こそ――、

「これが伝説のドラゴンか。いやー、さすがに硬い硬い」
「ナイア、お前――」

「よっ、セーヤ。ついさっきぶりだね」
 ――《聖処女騎士団ジャンヌ・ダルク》団長――ナイア・ドラクロワだった。 

 白銀のビキニアーマーと健康的な肌が見目麗しいナイアは、今までの態度となんら変わらないように見えた。
 しかしだ。

 他の騎士団員たちが必死に避難誘導をしている中での、まるで狙いすましたかのようなタイミングでの強烈な突貫攻撃チャージングだ。
 さては――、

「ナイア、最初からこうなることを予想していたな?」
「たはは、ばれたか……」

 ナイアがペロッと舌を出した。
 てへぺろ(ただし可愛いに限る)である。

「く……っ!」
 普段の姉御肌な言動とのギャップが、妙に可愛いくて困るんだけど!?

 そういやさっきも「この前の意趣返しさ」とかなんとか言って、子供っぽく張り合ってきたよな。
 ハタチくらいに見えるけど、実際のところナイアは何歳くらいなのだろうか。

 ドラゴンを前にした危機的な状況にも関わらず無性に気になってしまったあたり、相当に今の『てへぺろ』は俺の心にきゅんきゅんと突き刺さったようだった。
 いやまぁ真面目な話、本気でそんな場合じゃないんだけどさ。

「ま、今更隠すことでもないしね。セーヤが言った通りだよ。すまないけど、ちょっとばかしセーヤのことを利用させてもらったんだ」

「……だからあんなに簡単に俺を壁の中に入れてくれたんだな」
 ああもう、全部納得したぞ。

「いやね、前々から辺境伯には怪しい動きがあってさ。東の辺境の警備がてら、アタイら《聖処女騎士団ジャンヌ・ダルク》が内偵に来てたんだけど、こいつときたら警戒心だけは異常に強くてね。なかなか尻尾をださないときたもんだ」

「で、ていよく現れた俺を利用したと」

「台風の目ってやつさ。セーヤほどの凄腕が相手ならボロを出すかも、って思ったんだけど……でもまさかボロが出るどころかドラゴンが出てくるとはね」
 いや困った困った――と、大仰おおぎょうに肩をすくめる姿も、実に絵になっている。

「でもさすがのナイアもドラゴンには驚いたんだな。確かにこれは今まで見た妖魔とは格が2つも3つも違うものな」
 俺が一刀のもとに切って捨てたA級妖魔ヤツザキトロールなんざ、この漆黒のドラゴンの前には月とスッポン。
 ミジンコみたいなもんだ。

 そんな俺の言葉に対して、

「おいおい、セーヤ、なにを言ってるんだ?」
 苦笑をもって返すナイア。

「いや、それくらい強いだろって話じゃないのか?」
 ナイアの反応に俺は首をかしげる。
 今の会話の流れに、何かおかしなところがあっただろうか……?

「そっか、セーヤはその辺は詳しくないみたいだね。ドラゴンはさ、妖魔じゃあないんだよ」
「妖魔じゃない? なら、なんなんだ?」

「ドラゴンは神に近い存在――『幻想種ファンタズマゴリア』と呼ばれる高位の種族さ」
「神に近い『幻想種ファンタズマゴリア』――だって?」

 なんだよそりゃ!?

「そしてドラゴンはその『幻想種ファンタズマゴリア』の中でも断トツの最強。生まれながらにS級にして、個体によってはSSダブルエス級にまで到達する、誰もが認める地上最強の種族なのさ――」
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