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異世界転生 4日目(後編)
第69話 告白
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「もう、やめてくれ――」
「……えっと、セーヤさん?」
こてん、と不思議そうに首をかしげるウヅキ。
あれだけ会いたかったウヅキを前にしながら。
しかしいざ会えた途端に俺の胸中に飛来したのは、こんな惨めな姿を見ないでほしいという、本当に情けない気持ちだった。
「やめてくれ、ウヅキ……もうやめてくれ。そんな期待するような目で俺を見ないでくれ……俺に何かを期待しないでくれ……俺はウヅキが期待するような凄いヤツじゃないんだ……何もできないただの普通の一般人なんだよ……」
「セーヤさん……あの、どうしたんですか……?」
ウヅキが心底不思議そうに俺を見た。
そのキラキラした視線が――辛い。
「俺には物語の英雄みたいに奇跡を起こして大逆転なんて、とてもじゃないけど無理なんだ。俺はニセモノなんだよ……」
だから俺をそんな風に、キラキラした期待に満ちた目で見るのはやめてくれ……。
希望に溢れた言葉で、俺の背中を押そうとしないでくれ……。
だけど、そんな俺の気持ちはまったく伝わらなくて。
相変わらずウヅキは、俺を最上の信頼を込めた視線でもって見つめてくるのだ。
「あの、セーヤさん。今のセーヤさんはなんだかちょっと元気がないみたいです。怪我もいっぱいしてますし……あ、そうです! まずはこれをどうぞ。C級薬草『月華草』を煎じたものです」
言って、ウヅキは竹筒を手渡してきた。
「『月華草』……確か俺とウヅキが初めて会った時に一緒に採りに行った――」
異世界転生の初日、出会ってすぐのことだ。
なんだか懐かしいな。
異世界転生してからこっち一日の密度が濃すぎて、なんかもうだいぶ前のことのように思えてくるよ……。
「はい、あの時に使わなかった分がそっくりそのまま残っていたので、こんなこともあろうかと持ってきたんです。でも持ってきて大正解でした! ささ、どうぞ。前にも説明したと思いますが、『月華草』にはわずかですが滋養・強壮の効果がありますから!」
いつまで経っても受取ろうとしない俺の手に、ウヅキは俺の手ごと優しく包むようにして持たせてきて――、
「いや……いいよ、もう、いいんだよ……」
俺はその手を、その手に込められた想いを――無下に振り払った。
「あ――っ」
転がった竹筒がコン、コロンと無駄にいい音を立てる。
「……セーヤさん?」
何が起こったのかわからずに、不思議そうな顔をするウヅキ。
「さっきも言っただろ……俺はウヅキが思ってるような凄いヤツじゃないんだよ……だから、俺に期待とかそういうのは、もうやめてほしいんだ……」
「そんなことありません、セーヤさんはすっごくすっごくすごいじゃないですか! なんだって解決できて! こう見えてわたし、セーヤさんのことものすごーく信頼してるんですから!」
「違うんだよ、ウヅキ。それは俺の力でもなんでもない。俺が使ってきた力は、全部借り物で偽物の――ただのチートなんだよ」
「ニセモノ? チート? ですか?」
再び可愛らしくこてんと首をかしげたウヅキに――ちょうどいい機会だ――俺は洗いざらいに全てを告白する。
「ああそうさ、俺はこんな分不相応な力を、たまたま偶然ラッキーで手に入れたんだ! それで何でもできるって勘違いして天狗になって!」
「セーヤ……さん?」
「でも本当の俺はどうしようもないほどに、ただの普通の人間で! 越えられない壁が出てきたら立ちすくんで、死にそうになったら怖くて諦めてしまう。俺はウヅキが思っているような、そんなすごい人間じゃないんだ……なんのとりえもない、ニセモノで外側だけ着飾っただけの、ただの普通の一般人なんだよ……」
「セーヤさん……」
「そうさ。ウヅキが知ってる俺は本当の俺じゃない。借り物と偽物で塗りたくった、見せかけの俺なんだよ……」
「……えっと、セーヤさん?」
こてん、と不思議そうに首をかしげるウヅキ。
あれだけ会いたかったウヅキを前にしながら。
しかしいざ会えた途端に俺の胸中に飛来したのは、こんな惨めな姿を見ないでほしいという、本当に情けない気持ちだった。
「やめてくれ、ウヅキ……もうやめてくれ。そんな期待するような目で俺を見ないでくれ……俺に何かを期待しないでくれ……俺はウヅキが期待するような凄いヤツじゃないんだ……何もできないただの普通の一般人なんだよ……」
「セーヤさん……あの、どうしたんですか……?」
ウヅキが心底不思議そうに俺を見た。
そのキラキラした視線が――辛い。
「俺には物語の英雄みたいに奇跡を起こして大逆転なんて、とてもじゃないけど無理なんだ。俺はニセモノなんだよ……」
だから俺をそんな風に、キラキラした期待に満ちた目で見るのはやめてくれ……。
希望に溢れた言葉で、俺の背中を押そうとしないでくれ……。
だけど、そんな俺の気持ちはまったく伝わらなくて。
相変わらずウヅキは、俺を最上の信頼を込めた視線でもって見つめてくるのだ。
「あの、セーヤさん。今のセーヤさんはなんだかちょっと元気がないみたいです。怪我もいっぱいしてますし……あ、そうです! まずはこれをどうぞ。C級薬草『月華草』を煎じたものです」
言って、ウヅキは竹筒を手渡してきた。
「『月華草』……確か俺とウヅキが初めて会った時に一緒に採りに行った――」
異世界転生の初日、出会ってすぐのことだ。
なんだか懐かしいな。
異世界転生してからこっち一日の密度が濃すぎて、なんかもうだいぶ前のことのように思えてくるよ……。
「はい、あの時に使わなかった分がそっくりそのまま残っていたので、こんなこともあろうかと持ってきたんです。でも持ってきて大正解でした! ささ、どうぞ。前にも説明したと思いますが、『月華草』にはわずかですが滋養・強壮の効果がありますから!」
いつまで経っても受取ろうとしない俺の手に、ウヅキは俺の手ごと優しく包むようにして持たせてきて――、
「いや……いいよ、もう、いいんだよ……」
俺はその手を、その手に込められた想いを――無下に振り払った。
「あ――っ」
転がった竹筒がコン、コロンと無駄にいい音を立てる。
「……セーヤさん?」
何が起こったのかわからずに、不思議そうな顔をするウヅキ。
「さっきも言っただろ……俺はウヅキが思ってるような凄いヤツじゃないんだよ……だから、俺に期待とかそういうのは、もうやめてほしいんだ……」
「そんなことありません、セーヤさんはすっごくすっごくすごいじゃないですか! なんだって解決できて! こう見えてわたし、セーヤさんのことものすごーく信頼してるんですから!」
「違うんだよ、ウヅキ。それは俺の力でもなんでもない。俺が使ってきた力は、全部借り物で偽物の――ただのチートなんだよ」
「ニセモノ? チート? ですか?」
再び可愛らしくこてんと首をかしげたウヅキに――ちょうどいい機会だ――俺は洗いざらいに全てを告白する。
「ああそうさ、俺はこんな分不相応な力を、たまたま偶然ラッキーで手に入れたんだ! それで何でもできるって勘違いして天狗になって!」
「セーヤ……さん?」
「でも本当の俺はどうしようもないほどに、ただの普通の人間で! 越えられない壁が出てきたら立ちすくんで、死にそうになったら怖くて諦めてしまう。俺はウヅキが思っているような、そんなすごい人間じゃないんだ……なんのとりえもない、ニセモノで外側だけ着飾っただけの、ただの普通の一般人なんだよ……」
「セーヤさん……」
「そうさ。ウヅキが知ってる俺は本当の俺じゃない。借り物と偽物で塗りたくった、見せかけの俺なんだよ……」
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