79 / 566
異世界転生 4日目(後編)
第75話 《神焉の黒き炎》―ラグナロクー
しおりを挟む
「今から俺が、ドラゴンのプライドごと、そいつを完膚なきまでに捻りつぶしてやるからよ――!」
俺の発した挑発――これは俺の中の《神滅覇王》の心の欠片が言わせたものだった。
《神滅覇王》は目の前のあらゆる敵を叩き伏せ、その全てを己が軌跡=覇道とする常勝無敗の戦闘チートだ。
奥の手を隠したままの相手に小狡く勝つなど、そんな無粋は到底許しはしないのだった。
そしてその傲岸不遜かつ尊大な物言いは、圧倒的な実力に裏打ちされた、神をも滅する覇王が下した勝利宣言なのだ――!
「――まぁ、必殺技の撃ち合いは俺も嫌いじゃないんだけどさ」
ただまぁ、あれだ。
「これだけ派手に啖呵を切ったんだ。万が一にでも負けやがったら俺はキレるからな? ガチギレだからな? 何が何でも被害ゼロ、文句なしの完全勝利で勝ってみせろよ?」
ほんのわずか、一抹の不安を覚えた俺に、
――誰に物を云っている?
そんな不敵に笑う声が、聞こえた気がした――。
そして。
挑発に乗って――、いや乗るしかない《神焉竜》が、怒涛の勢いで闇黒の粒子を蓄え、蔵し、溜め込みはじめた。
《神焉竜》を中心として、その周囲に破滅の粒子が波打ちながら渦を巻きはじめる――!
「昔一度だけ見に行ったことがあるんだけど、あの時見た渦潮を黒く禍々しくしたみたいだな……」
なんてことをふっと思った。
この最終局面ですらそんな他愛もないことを思えてしまえるのが、全てを捻じ伏せ従えてきた《神滅覇王》の《神滅覇王》たる由縁なのだろう。
そして警戒、注意、索敵、防御――、その他もろもろ余計なものを全てオミットして、渦の中心でただただ力を溜めることだけに没入した《神焉竜》は、もはや完全な無防備状態だった。
今なら弱点である逆鱗を打ち抜いて無力化することは、《神滅覇王》と神剣《草薙の剣》の力をもってすれば、赤子の手を捻るよりも簡単なことだ。
「でもま、それじゃ意味がないよな。ああ、意味がない――」
俺の中の《神滅覇王》が、極上の獲物を前に笑みを浮かべながら鎌首をもたげはじめた。
「これがお前の『固有神聖』だな? 実にいいじゃないか、神話を終焉わらせし王竜よ。想像以上だ。最後はお互い、本気と本気の真っ向勝負で、分かりやすく白黒はっきりさせようぜ!」
《神滅覇王》の存在感が、俺の中でぐんぐんと大きくなっていく――。
俺の心が、負けるなんて微塵も考えていない煌々たる黄金色に彩られてゆく――!
「全てを終焉わらせ神をも喰らったお前の《神焉の黒き炎》と、未来を強欲し続ける《神滅覇王》の果てなき未来を望む一刀と――! 終わりと始まり、どちらが上か、力比べと行こうじゃないか――!」
そう高々と宣言すると、俺は神剣《草薙の剣》を立てて顏の右前に構えた。
いわゆる八相の構えだ。
そして――、
「『固有神聖』《天照》、完全開放――!」
俺の中で無限連鎖の黄金の力を生み出す小恒星――《神滅覇王》の根源たる『固有神聖』《天照》。
それを全開放し、その全ての力を余すことなく神剣《草薙の剣》へと集約するように注ぎ込んでゆく――!
「おおおおおぉぉぉぉぉぉ――――――っっ!」
裂帛の気合いとともに、臨界ギリギリまで高まった《天照》から猛然と供給される、果てしない黄金の力。
その全てを注ぎ込まれた神剣《草薙の剣》が、本物の太陽のごとく猛烈な輝きを放ち始めた――!
「『古き世界は鼓動を止め――』」
それは例えるなら、黄金の火柱。
もはや真昼のごとく明々と辺りを照らす神剣《草薙の剣》は、長さ30メートルはあろう金色に輝く長大な光の柱へと姿を変えていた。
「『新なる世界の幕が上がる――』」
同時に《神焉竜》も暗黒粒子のチャージを終えて、発射体勢へと入っていた。
首を大きく一度真上に向けると、叩きつけるように一気に振りおろし――、
「グォォォォォォオオオオオオオオオオ―――――――ッッッッ!!」
溜めに溜めた破滅の力を、大咆哮とともに俺へと向かって解き放った――!
射線上の数十キロを塵も残さず焦土と化すであろう、その破壊の権化たる直射攻撃は、神話の時代に終止符を打った、まさに神をも喰らう《神焉の黒き炎》――!
そんなケタ違いの一撃を前にしても――、しかし今の俺に臆する気持ちは微塵も存在しないのだった。
ただ俺の中にあるのは、未来をし続ける熱病のような強い強い想いだけ。
俺の欲する未来、それはもちろん――!
「可愛い女の子にモテモテの、異世界ハーレムマスターに――、俺は、なる!!」
その強烈な情動に突き動かされるように――、
「我が一刀を受けてみよ、《神焉竜》――!」
俺は極限にまで密度を高めた光り輝く黄金の剣を、振り下ろした――!
「『光、あれ――、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!!』」
俺の発した挑発――これは俺の中の《神滅覇王》の心の欠片が言わせたものだった。
《神滅覇王》は目の前のあらゆる敵を叩き伏せ、その全てを己が軌跡=覇道とする常勝無敗の戦闘チートだ。
奥の手を隠したままの相手に小狡く勝つなど、そんな無粋は到底許しはしないのだった。
そしてその傲岸不遜かつ尊大な物言いは、圧倒的な実力に裏打ちされた、神をも滅する覇王が下した勝利宣言なのだ――!
「――まぁ、必殺技の撃ち合いは俺も嫌いじゃないんだけどさ」
ただまぁ、あれだ。
「これだけ派手に啖呵を切ったんだ。万が一にでも負けやがったら俺はキレるからな? ガチギレだからな? 何が何でも被害ゼロ、文句なしの完全勝利で勝ってみせろよ?」
ほんのわずか、一抹の不安を覚えた俺に、
――誰に物を云っている?
そんな不敵に笑う声が、聞こえた気がした――。
そして。
挑発に乗って――、いや乗るしかない《神焉竜》が、怒涛の勢いで闇黒の粒子を蓄え、蔵し、溜め込みはじめた。
《神焉竜》を中心として、その周囲に破滅の粒子が波打ちながら渦を巻きはじめる――!
「昔一度だけ見に行ったことがあるんだけど、あの時見た渦潮を黒く禍々しくしたみたいだな……」
なんてことをふっと思った。
この最終局面ですらそんな他愛もないことを思えてしまえるのが、全てを捻じ伏せ従えてきた《神滅覇王》の《神滅覇王》たる由縁なのだろう。
そして警戒、注意、索敵、防御――、その他もろもろ余計なものを全てオミットして、渦の中心でただただ力を溜めることだけに没入した《神焉竜》は、もはや完全な無防備状態だった。
今なら弱点である逆鱗を打ち抜いて無力化することは、《神滅覇王》と神剣《草薙の剣》の力をもってすれば、赤子の手を捻るよりも簡単なことだ。
「でもま、それじゃ意味がないよな。ああ、意味がない――」
俺の中の《神滅覇王》が、極上の獲物を前に笑みを浮かべながら鎌首をもたげはじめた。
「これがお前の『固有神聖』だな? 実にいいじゃないか、神話を終焉わらせし王竜よ。想像以上だ。最後はお互い、本気と本気の真っ向勝負で、分かりやすく白黒はっきりさせようぜ!」
《神滅覇王》の存在感が、俺の中でぐんぐんと大きくなっていく――。
俺の心が、負けるなんて微塵も考えていない煌々たる黄金色に彩られてゆく――!
「全てを終焉わらせ神をも喰らったお前の《神焉の黒き炎》と、未来を強欲し続ける《神滅覇王》の果てなき未来を望む一刀と――! 終わりと始まり、どちらが上か、力比べと行こうじゃないか――!」
そう高々と宣言すると、俺は神剣《草薙の剣》を立てて顏の右前に構えた。
いわゆる八相の構えだ。
そして――、
「『固有神聖』《天照》、完全開放――!」
俺の中で無限連鎖の黄金の力を生み出す小恒星――《神滅覇王》の根源たる『固有神聖』《天照》。
それを全開放し、その全ての力を余すことなく神剣《草薙の剣》へと集約するように注ぎ込んでゆく――!
「おおおおおぉぉぉぉぉぉ――――――っっ!」
裂帛の気合いとともに、臨界ギリギリまで高まった《天照》から猛然と供給される、果てしない黄金の力。
その全てを注ぎ込まれた神剣《草薙の剣》が、本物の太陽のごとく猛烈な輝きを放ち始めた――!
「『古き世界は鼓動を止め――』」
それは例えるなら、黄金の火柱。
もはや真昼のごとく明々と辺りを照らす神剣《草薙の剣》は、長さ30メートルはあろう金色に輝く長大な光の柱へと姿を変えていた。
「『新なる世界の幕が上がる――』」
同時に《神焉竜》も暗黒粒子のチャージを終えて、発射体勢へと入っていた。
首を大きく一度真上に向けると、叩きつけるように一気に振りおろし――、
「グォォォォォォオオオオオオオオオオ―――――――ッッッッ!!」
溜めに溜めた破滅の力を、大咆哮とともに俺へと向かって解き放った――!
射線上の数十キロを塵も残さず焦土と化すであろう、その破壊の権化たる直射攻撃は、神話の時代に終止符を打った、まさに神をも喰らう《神焉の黒き炎》――!
そんなケタ違いの一撃を前にしても――、しかし今の俺に臆する気持ちは微塵も存在しないのだった。
ただ俺の中にあるのは、未来をし続ける熱病のような強い強い想いだけ。
俺の欲する未来、それはもちろん――!
「可愛い女の子にモテモテの、異世界ハーレムマスターに――、俺は、なる!!」
その強烈な情動に突き動かされるように――、
「我が一刀を受けてみよ、《神焉竜》――!」
俺は極限にまで密度を高めた光り輝く黄金の剣を、振り下ろした――!
「『光、あれ――、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!!』」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,938
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる