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第二部「気高き黄金」 異世界転生 5日目

第95話 悔しい! なんで俺がこんな目に!

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「サクライさん、素晴らしい説明をどうもありがとうございました。つまりその男は偽物ということですわね。よく分かりましたわ」

「な、なんでですかっ!?」
 なんでって、そりゃねぇ……。

「おおかたその偽物はあなたの大きな胸でも目当てに、すり寄ってきたのでしょうけれど」

「ち、違います! セーヤさんはわたしやハヅキ……えっと妹や、おじいちゃんの命の恩人で。すっごくすっごく強いんですから! それにすごく誠実で素敵で、胸の大きさで女の子を比べるような、そんな不埒な人じゃありませんから! そうですよね、セーヤさん!」

「ア、ウン。マッタクダヨ」

 あっ、やめて……。
 俺をそんな純粋無垢なキラキラした目で見るのはやめて……。

「それに昨日なんてSSダブルエス級の悪いドラゴンを倒したんですよ!」

「そうですわね、本当のセーヤ様は《王竜を退けし者ドラゴンスレイヤー》ですもの。そこの偽マナシロ・セーヤとは、男としての格からして違いますわ」

「だからセーヤさんは本物なんですってば!」

「まったく、これでは埒が明きませんわね……。ではわたくしから一つ、その男が偽物である証明をさせていただこうかしら? なにせこの男が本物ではないことは、わたくしが誰よりもよく知っておりますもの」

「証明……だと……!?」
 俺が俺でない証明……だと……!?

「お前は、お前は何を言っているんだ……!?」
 いやマジでなに言ってんの!?

「ふふん、証拠とは他でもありません、このわたくし自身ですわ。なにせわたくし、セーヤ様のお姿を直に拝見する栄誉に預かり――それだけでなく女神をも恋の病に煩わせてしまう、魅惑のウインクを贈られたほどなのですから」

「……なにそれ?」
 あの、今って、俺の話をしてるんだよね?
 なのにその話、本気でまったく知らないんだけれど……?

「そう、あれはわたくしが逃げ遅れた人々の避難誘導を終えて、一息ついた時のことでしたわ――」

 突然、夢でも見ているかのような、うっとりとしたほうけた表情で語り始めた金髪美少女。

「さっきも言いましたが、サターホワイトさんは少々思い込みが激しいところがなきにしもあらずと言いますか……」
「ああ、そうみたいだな……」

「――突如、闇夜を神々しく照らす光の柱が立ち上がったのですわ。その光の柱こそ、黒き邪竜を打倒したセーヤ様の神剣――! そしてその黄金に輝く光の剣を振り下ろした時、セーヤ様はわたくしの方を肩越しに振り向いてくださると、ニコッと笑いかけてくださったのです」

「んん……??」

「あの時のセーヤ様ときたら、まるで星の国から舞い降りた王子様のようでしたわ……。そしてあの瞬間ときから、わたくしは恋という名の赤い蜘蛛くもの糸に、絡めとられてしまったのですわ……」

「えぇっと……」
 ……記憶を掘り返してみた。

 《神焉竜しんえんりゅう》と《天地開闢セシ創世ノ黄金剣アマノヌホコ》で撃ち合った時だよな?

 確か肩ごしに振り返って、ウヅキに「カッコいいとこ見逃すなよ」ってやったはずだ。
 そういや視線のさらに奥に、何人か人がいたような気がしなくもないけど……。

「悪いが、それは勘違いだ」
「あなたには聞いておりませんの。セーヤ様のあの素敵な瞳、わたくし生涯忘れることはありませんわ……」

「だからそれは俺だって――! よく見ろよ俺の瞳を。あの時お前を見たのと同じだろ? 生涯忘れないんだよな?」

「お黙りなさい! わたくしとセーヤ様との胸焦がれる思い出に、あなたごときが入り込む余地はなくってよ!」
「いや、まずは俺の顔をよく見てみろって。ほら、そっくりだろ」

「いえ、月とスッポンってくらいに全然違いますわね」
「……なんでやねん」
 思わず関西弁が出てもたがな。

 ……っていうかよくよく考えてみると、この状況って割と凄いよね。
 なにせ俺は今、けちょんけちょんにけなされながら、同時に恥ずかしいくらいにべた褒めされているんだぜ?

「なんだよ、この摩訶不思議な状況はよ……」

 そして、そんな俺の呟きなんてどこ吹く風。
 一人我が道を進むサターホワイト――なんだっけ? ああもう! ほんと長くて覚えられないんだよ!――さんはというと、    

「だいたいあなた、セーヤ様の猿まねをして腰に剣を差しておりますけれど」
「さ、猿まね……」

「それはセーヤ様の愛剣のように、黄金に光り輝く剣なのかしら?」
「ぐぬっ……いや、光らない」

 くっ、なまじっか生で見てただけあって、痛いところを突いてきたぞ……!

「ほら見てごらんなさい。本物のセーヤ様は、黄金に光り輝くそれはそれは美しい剣を持っておられますのよ。あなたの持っている粗末で曲がった剣とは全然違っているのですわ。そんなことも知らないなんて、まだまだ作り込みが甘いですの!」

 ビシィッ!
 振り下ろした指で俺を差して、自信満々のドヤ顔でのたまう金髪ちびっ子。

「今度は作り込みが甘い……だと……!?」
 本物なのに、作り込みもなにもあるかいな!

「そう言えば、さっきはよくも言ってくれましたわね? あなたの方こそ、一度顔を洗って出直してこられては、いかがかしら?」

「ぐぬぬ、こいつ言わせておけば……!」
 だがしかし、どうしても証明することができない!

 《神滅覇王しんめつはおう》も、SS級神剣《草薙くさなぎつるぎ》も、今の俺は使うことができないからだ――!
 危惧していた通りになってしまったじゃあないか!

 悔しい!
 なんで俺がこんな目に!
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