144 / 566
異世界転生 8日目
第135話.5 《群体分身》ーミラージュファングー 2
しおりを挟む
御者台で後ろを向いて立って戦況を分析していた俺は、二矢を同時につがえると一気にそれを解き放つ――!
キャウン、キャン、クワン、キャン――!
複数の悲鳴が夜の街道に響いた。
寸分たがわず2体の眉間を射抜いた2本の矢。
それが貫通してさらに別々の2体を串刺しにして射抜いたのだ。
それだけではない。
2矢×2体で射ぬかれたそれらは、さらに近くの1体をそれぞれに巻き込みながらバランスを崩して後方へと転がり消えていった。
「たった一引きで合計6体もの敵を倒すなんて……! セーヤ様、さすがなのですわ!」
荷台後部のサーシャから大きな感嘆の声が上がる。
「数が多いからな。効率的にいかせてもらうぜ? よし、次――っ!」
再び放たれた二矢は先ほどの再現映像のごとく、6体の銀狼を一瞬にして夜の闇へと葬り去る。
「これは、わたくしも負けていられませんわ……はぁっ!!」
気合いとともにサーシャが精緻な速射を見せた。
俺のような派手さはないものの、危険度の高い敵を的確に判断しては地道に確実に撃ち抜いていくのだ。
俺とサーシャの奮闘&クリスさんの巧みなドラテクによって、《シュプリームウルフ》たちは荷馬車に近づくことすら許されない――!
そうしてしばらく攻撃をしのいでいると、《シュプリームウルフ》は攻撃を控えて遠巻きに見守るようにして伴走しはじめる。
「なんだ、諦めたのか?」
……いや、ちがうな。
諦めたのならついてこないで、すぐに離れていくはずだ。
これはおそらく――、
「待っているのか……!」
この先で俺たちが足を止めざるを得ないのが分かっているから、無理をせずに戦力を温存しているんだ……!
牽制の意図があるのだろう。
時々思い出したように近づいてきてはすぐ離れ、というのを繰り返す《シュプリームウルフ》の《群体分身》たち。
完全な膠着状態のまま、荷馬車は街道で最大の難所へと近づいてゆく。
「マナシロ様、間もなく最後の難所である5連ヘアピンに差し掛かります。当初の予定ではここを通るまでにある程度、《群体分身》の数を減らしておく算段でしたが……」
クリスさんはチラリと後方、付かず離れずを保って追いかけてくる白銀の集団を確認する。
「どうやら相手の方が一枚上だったようですね」
「面目ない……」
「いいえ、謝る必要はございません。得てして防衛戦というものは、攻め手に状況をコントロールされるのが常ですので。恐れをなして近づいてこないのは、それだけマナシロ様の強さが本物だということでもありましょう」
おお、なんかクリスさんが優しいぞ……!
さすが皆が憧れるお姉さんメイドさんだな!
俺もそう遠くない未来、大人のステップを優しく手ほどきして貰――
「まぁそれでも、どうにかして欲しかったところではありますけれども」
「あ、はい……そっすね……」
「それでどうされますか? 中途半端に足を止めて相手の意のままに守勢に回るよりは、敢えてこちらから打って出ることで不意の痛打を与え、戦況を有利に進めるのが定石ではないかと。ドラゴンを倒してみせたマナシロ様ほどではありませんが、私もそれなりに戦いの作法というものを学んでおりますので、やりようはあるはずです」
何をやらせても万能なクリスさんは、実際それなり以上に戦えるのだろう。
でもあの数を相手にしてたった3人で、荷馬車を守りながらの戦いをするってのは、やっぱりかなり厳しいものがある。
であるならば、何が何でも止まらずに逃げ切るしかない――!
「……それなんだけさ。確認だけど、ここさえ抜ければもう大丈夫なんだよな?」
「はい、この5連ヘアピンを越えると森を抜けて平原に出ます。すぐに小さな村があって、その先には帝都を防衛する衛星都市の一つがあり、周辺は騎士団が常時警戒網を張っています。ですのでここさえ抜ければその先までは追ってはこないはずです」
「そうか……ふむ」
「なにか策でもあるのですか?」
「うん……あのさ、急にこんなこと言うと、なんなんだけどさ? ちょっと俺に手綱を預けてはもらえないかな?」
キャウン、キャン、クワン、キャン――!
複数の悲鳴が夜の街道に響いた。
寸分たがわず2体の眉間を射抜いた2本の矢。
それが貫通してさらに別々の2体を串刺しにして射抜いたのだ。
それだけではない。
2矢×2体で射ぬかれたそれらは、さらに近くの1体をそれぞれに巻き込みながらバランスを崩して後方へと転がり消えていった。
「たった一引きで合計6体もの敵を倒すなんて……! セーヤ様、さすがなのですわ!」
荷台後部のサーシャから大きな感嘆の声が上がる。
「数が多いからな。効率的にいかせてもらうぜ? よし、次――っ!」
再び放たれた二矢は先ほどの再現映像のごとく、6体の銀狼を一瞬にして夜の闇へと葬り去る。
「これは、わたくしも負けていられませんわ……はぁっ!!」
気合いとともにサーシャが精緻な速射を見せた。
俺のような派手さはないものの、危険度の高い敵を的確に判断しては地道に確実に撃ち抜いていくのだ。
俺とサーシャの奮闘&クリスさんの巧みなドラテクによって、《シュプリームウルフ》たちは荷馬車に近づくことすら許されない――!
そうしてしばらく攻撃をしのいでいると、《シュプリームウルフ》は攻撃を控えて遠巻きに見守るようにして伴走しはじめる。
「なんだ、諦めたのか?」
……いや、ちがうな。
諦めたのならついてこないで、すぐに離れていくはずだ。
これはおそらく――、
「待っているのか……!」
この先で俺たちが足を止めざるを得ないのが分かっているから、無理をせずに戦力を温存しているんだ……!
牽制の意図があるのだろう。
時々思い出したように近づいてきてはすぐ離れ、というのを繰り返す《シュプリームウルフ》の《群体分身》たち。
完全な膠着状態のまま、荷馬車は街道で最大の難所へと近づいてゆく。
「マナシロ様、間もなく最後の難所である5連ヘアピンに差し掛かります。当初の予定ではここを通るまでにある程度、《群体分身》の数を減らしておく算段でしたが……」
クリスさんはチラリと後方、付かず離れずを保って追いかけてくる白銀の集団を確認する。
「どうやら相手の方が一枚上だったようですね」
「面目ない……」
「いいえ、謝る必要はございません。得てして防衛戦というものは、攻め手に状況をコントロールされるのが常ですので。恐れをなして近づいてこないのは、それだけマナシロ様の強さが本物だということでもありましょう」
おお、なんかクリスさんが優しいぞ……!
さすが皆が憧れるお姉さんメイドさんだな!
俺もそう遠くない未来、大人のステップを優しく手ほどきして貰――
「まぁそれでも、どうにかして欲しかったところではありますけれども」
「あ、はい……そっすね……」
「それでどうされますか? 中途半端に足を止めて相手の意のままに守勢に回るよりは、敢えてこちらから打って出ることで不意の痛打を与え、戦況を有利に進めるのが定石ではないかと。ドラゴンを倒してみせたマナシロ様ほどではありませんが、私もそれなりに戦いの作法というものを学んでおりますので、やりようはあるはずです」
何をやらせても万能なクリスさんは、実際それなり以上に戦えるのだろう。
でもあの数を相手にしてたった3人で、荷馬車を守りながらの戦いをするってのは、やっぱりかなり厳しいものがある。
であるならば、何が何でも止まらずに逃げ切るしかない――!
「……それなんだけさ。確認だけど、ここさえ抜ければもう大丈夫なんだよな?」
「はい、この5連ヘアピンを越えると森を抜けて平原に出ます。すぐに小さな村があって、その先には帝都を防衛する衛星都市の一つがあり、周辺は騎士団が常時警戒網を張っています。ですのでここさえ抜ければその先までは追ってはこないはずです」
「そうか……ふむ」
「なにか策でもあるのですか?」
「うん……あのさ、急にこんなこと言うと、なんなんだけどさ? ちょっと俺に手綱を預けてはもらえないかな?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる