155 / 566
異世界転生 8日目

第143話《天狼咆哮・群体分身》ライラプス・オーバーロード・ミラージュ・ファング

しおりを挟む
「《天狼咆哮・群体分身》――ライラプス・オーバーロード・ミラージュ・ファングとか、冗談きついぜおい……」

 巨大化した上に、さらに4体に分身した《シュプリームウルフ》を見上げて、俺は思わずひとりごちた。
 あのまま押しこめるか、とも思ったんだけどな。

「やれやれ、俺にS級チート『閉校の危機』って切り札があったように、《シュプリームウルフ》にもとっておきの切り札があったってわけだ」
 おちゃらけて言ってみるものの、正直かなり悪い状況だぞこれは。

 とかなんとか言ってるうちに、
「……あ、やべ」
 見下ろしてくるうちの一体と目が合ってしまい――それが戦いの端緒たんしょとなった。

 4体の15メートル級の巨大狼を相手に、

「なにはともあれ、打開策を見つけるまでは防御と回避に徹するしかないか……!」
 俺は必死のパッチで逃げ回りはじめた。

「サーシャ、頼むからうまいこと隠れていてくれよ……!」
 この状況では、もうサーシャを気にしている余裕は完全にゼロだ。
 戦いに巻き込まれないことを祈るほかない。

 死角からの強襲を知覚系S級チート『龍眼』を信じて、ノールックのサイドステップでかわす――!

「ぐぅ――っ!」
 鮮烈な痛みが左肩に走った――巨大な爪が肩をかすめたのだ。
「このっ、かすっただけでこれかよ……!」

 直後、ほぼ正面からきた突進は――、

「回避系A級チート『闘牛士マタドール』発動!」
 再び発動した対突進の特化チートで、ひょいっとかわして事なきを得る。

「『闘牛士マタドール』はかなり優秀なチートだな」
 こいつがあれば、正面からの突進はほぼ確実に回避できる。

 ただ一つ大きな欠点があるとすれば、だ。
「相手が正面から大きく外れると、効果がほとんどないってことか――!」

 今度は真横から襲いくる突進を、俺は前方への飛び込み前回り受け身によって紙一重で回避した。
 というのも『闘牛士マタドール』の効果範囲外で、チートがまったく無反応だったからだ。

 俺は立ち上がるとすぐに、次なる回避行動へと移行する。
 別の《シュプリームウルフ》による背後からの爪の叩きつけを、『龍眼』が察知していたからだ。

 1対4という圧倒的な数的不利を、チートたちのおかげもあって俺はからくもその猛攻をしのぐことができていた。
 しかしそこはさすがのSS級『幻想種ファンタズマゴリア』、俺が回避した後の隙や着地でバランスを崩したところを的確に狙い出はじめたのだ。

「く――っ!」
 横合いからの爪撃を日本刀クサナギで叩き伏せ、その反動を利用して一旦、敵の攻撃圏からの離脱をはかる。

 ――しかし、
「くっ、挟まれた!? 上手いこと追い込まれたのか……!」

 大きく距離を取って仕切り直そうとした俺をあざ笑うかのように、《シュプリームウルフ》たちは連携して狙いすましたように前後2体によって挟撃してきたのだ。

 前方の1体が牽制――俺の動きを封じるように、微妙な間合いを維持したまま来そうで来ない嫌らしい動きを見せる。
 もし俺が先に動こうとすれば、たちまち後の先で狙い撃ちにされてしまう……!

 そして同時に、背後では猛烈な攻撃の意思が膨れ上がっていた。

「前が牽制して俺の足を止めつつ意識を釘付けにし、後ろにいる本命が死角からズドンってことか……!」
 相手の出かたは読み切っている。
 しかしだからと言って、そうは易々とは対処はできない状況だった。

 後ろを振り向けば、牽制しつつも機をうかがっている一体に対して完全に背を向けてしまう。
 それでは格好の餌食になるだけだ。

 だが後ろからは今にも攻撃が来る――『龍眼』が必死に警告を飛ばしてきてるのだ……!

「こりゃ前門の虎、後門の虎だな……いやこの場合はどちらも狼か。ははは、なんだそれ、上手いこと言ったつもりか」
 ちなみにこの故事成語の「挟みうち」的な使い方は誤用だったりする。
 本来は前門の虎を対処したら、今度は後門から狼が入ってきてしまい「一難去ってまた一難、ぶっちゃけありえない!」という意味である。
 豆知識!

「――なんてセルフツッコミからの、ちょっとプリキュアって&豆しばった現実逃避してる場合じゃねぇ!」
 くっ、どうする――!

 この日一番の大ピンチ。
 絶体絶命の窮地にあって――、

 ピキーン!

 俺の中を雷鳴のごときひらめきが駆け抜けた――!

「これだ――!」
 勝利の方程式が、俺の脳内に鮮やかに浮かび上がる――!

 俺は前方の一体に意識を狙いを定めると、知覚系S級チート『龍眼』を後方の一体に向けて全力で使用した。

 無防備にも背を向けたまま、前方の一体に対峙し続ける俺。
 そこへ、膨れ上がった敵意とともに、後方の一体がここぞとばかりに突進をぶちかましてきた――!
 だがしかし全力稼働の『龍眼』は、死角からのその強烈な攻撃を完璧に捕捉している――!

「スポコン系S級チート『鳥人ちょうじんブブカ』発動!」
 俺は『龍眼』を信じて後ろを全く見ないまま、ノールックで高々と6メートルの高さまで飛び上がった。

 このチートは棒高跳びで世界記録を35回も更新し、畏敬の念を込めて「鳥人」と呼ばれた天才アスリートの力を模した、飛び上がることに特化したS級チートだ――!

 そしてチートの力を借りて高々と飛び上がった俺は、

「ロマン系S級チート『壁走り』、瞬間発動!」
 垂直の壁を走るという男の子の夢とロマンが詰まったS級チートを、ほんの一瞬だけ発動させた。

 その目的は、後方からの突撃に――、

「どっせーい!!」
 空中で、ものすごい勢いで迫りくる《シュプリームウルフ》の額に両足で着地すること!

 身体と地面が平行になる――その重力を無視した状態をチートの力を使うことで保つためだ!

 そして、
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!」

 突進の勢いを丸々利用して、俺は発射された弾丸のように前方へと跳躍した――!

 それはまるで水平に飛ぶ稲妻のごとし――!

「スポコン系S級チート『日の丸飛行隊』発動!」
 空中での姿勢制御に特化したこの補助チートは、時速100キロを超えるスキーのジャンプ競技で表彰台を独占した、空を駆けた英雄たちの再現だ――!

 既に日本刀クサナギは納刀している。
 鞘の中で、剣気が爆発的に高まってゆく――!

 そう、これが俺が閃いた死中に活の打開策。
 最大の危機ピンチを最高の好機チャンスへと変える、起死回生の一発逆転カウンターアタックだ――!

「受けて見ろ、《シュプリームウルフ》!」

 最強チート『剣聖』の奥義である《紫電一閃しでんいっせん》に、強烈な突進のスピード&勢いをそっくりそのまま上乗せした、《紫電一閃おうぎ》を超えた新たなる超奥義を――!

「もはや瞬くことすら許しはしない。世界よ止まれ――、超奥義《紫電・改しでん・かい》!!」
しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...