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ーインタールードー 2

第163話 短編 クリス・ビヤヌエヴァ

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 サターホワイト・マテオ・ド・リス・トラヴィス――サーシャお嬢さまはどこに出しても恥ずかしくない完全無欠の才女にございます。

 由緒正しいトラヴィス家に生まれた血統もさることながら、何事にも真剣に取り組む真面目さ、たゆまぬ努力と向上心に満ちた強い心、目的を成し遂げるための覚悟。

 どれをとっても100点満点の採点なら誰もが98点、99点を付ける、文句なしに素晴らしい乙女でございます。

 強すぎる負けん気と思い込みの激しさ、そして胸がホライゾンなことがたまきずではありますが、それらの欠点すらもアクセントとして魅力に花を添える、まさにパーフェクトなご令嬢にあらせられます。

 女の子としての魅力を競うのであれば、たとえ誰が相手であろうとそう易々とは負けはしないこと、これは明白にございましょう。
 向かうところ敵なしとは、お嬢さまのためにある言葉と言っても過言ではありません。

 しかしながら、こたびの大戦おおいくさ――マナシロ様をめぐる争いは、少々勝手が異なっております。

 なにせ今回お嬢さまが競うライバルたちは、誰もがけた違いにハイスペックな女の子ばかりだからです。

 ・帝国中にその名を知られる現役最強のA級騎士、《聖処女騎士団ジャンヌ・ダルク》団長ナイア・ドラクロワ様。

 ・伝説にその名を刻む破滅の黒竜、SS級『幻想種ファンタズマゴリア』《神焉竜しんえんりゅう》アレキサンドライト様。

 ・座学全教科で猛勉強したお嬢さまを上回る明晰な頭脳を持ち、世代最高峰の驚異的な脅威の胸囲をほこるサクライ・ウヅキ様。

 ・ウヅキ様の妹で、まだあどけないながらも周囲の保護欲をくすぐってやまない、魔性の庇護欲を放つサクライ・ハヅキ様。

 ・《神の御使い》とも呼ばれるSS級の《シュプリームウルフ》シロガネ様。

 100点満点のはずの採点で、平然と1000点、2000点、3000点をとってくる化物のような相手がそろってしまいました。

 ほんと一体なんなんでしょうね、これは?
 SS級が2人に現役最強のA級騎士、頭脳明晰な参謀役までいるとか、もしかして今から創世神話にある神話大戦でも起こすつもりなのでしょうか?

 もし彼女たちがマナシロ様の元に結託して反逆の狼煙のろしでも上げたならば、大陸唯一の超大国とはいえ、しょせん人の国に過ぎないシュヴァインシュタイガー帝国などは、そう遠くない未来に滅亡の憂き目にあうことでしょう。

 これは冗談ではなくマジレスです。

 本当にありえてしまうその未来を考えるだけで、頭痛が痛くて馬から落馬してしまいそうになる今日この頃です。

 はぁ……。
 誉れ高きトラヴィスの「筆頭格」の称号を預かるメイドとは言え、さすがにこれはため息も出てしまうというものでしょう。

 これほどの突出した恋敵ライバルが1人ではなく複数いるなかで、100点満点――常人の取り得る最高点を狙って奮戦するお嬢さまが勝機を見出すことは、トラヴィス商会が総力をもって援護したとしても困難を極めること、これは間違いありません。

 しかしながら。

 幸いなことに今回の一件で、マナシロ様とサーシャお嬢さまの絆は大きく深まりました。
 少なくともマナシロ様との心的つながりという面において、お嬢さまが他の方々の後塵こうじんはいすということはないはずです。

 私クリス・ビヤヌエヴァは、サーシャお嬢さまの専属を申し付けられたトラヴィス家の筆頭格メイドです。

 例えどのような不利な状況にあったとしても、お嬢さまに目に見える形での「勝利」をもたらすのが至上命題にございます。

 で、あれば――。

「やはりここは、マナシロ様の隣というオンリーワンを目指すのではなく、マナシロ様を皆で共有する形に持っていくのが、一番可能性のある勝ち筋でしょうか。言うなればマナシロ・セーヤ・シェアリング。共有経済シェアリングエコノミー、ある種のサプライチェーンと言ってもいいかもしれません」

 私は勝利の形を模索しながら、思考を深化させ思索にふけってゆきます。

「うん、聞かなかった事にしよう――」

 マナシロ様が何事か呟いていましたが、思考に全精力をつぎ込んでいたため、あいにくと聞き取ることはできませんでした。

 そう。

 私、クリス・ビヤヌエヴァはトラヴィスの筆頭格メイド――サーシャお嬢さまのつるぎ
 お嬢さまの勝利を第一とする、お嬢さまの懐刀にございます。

 だから私はマナシロ様への好意を――主が心をよせる殿方への好意を――マナシロ様が笑顔を見せるたびに高鳴る胸の鼓動を――絶対に悟られぬようポーカーフェイスの下にそっと隠し忍ばせて――。

「ただただ、私はお嬢さまの勝利だけを目指して邁進いたしましょう――」

 それが気高き黄金の主サーシャお嬢さまに仕えるトラヴィス筆頭格メイド、クリス・ビヤヌエヴァの矜持と生きざまにございますれば――。
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