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第三部 先史の調べ ―パーティクル・カノン―

第172話 異世界温泉~九日目、ウヅキとハヅキとサーシャと《神焉竜》と~ 2

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 サーシャを引き上げた流れで身体を洗うことになった俺たち――だったんだけど――、

「えっと、その……」

 今、俺はなぜかウヅキ、サーシャ、ハヅキから3人同時に身体を洗ってもらっていた。

 なんでだろうね?
 なんとなく流れでそうなったというか?

 《神焉竜しんえんりゅう》はよほどこの温泉が気に入ったのか、

「もうしばらく浸かっておるのじゃ」
 と言って洗いっこには不参加だった。

「いや残念に思ってるとかそういうんじゃないんだよ……? ほんとだよ?」
 っていうかいつの間にか酒を用意して、温泉につかりながら一杯やりはじめてるし……。

 というわけで。
 俺は今、女の子達3人から身体を洗ってもらっていたんだけれど、

「えへへ、えいっ! セーヤさんの大好きなおっぱい洗体です」
「ぶ――っ!?」

 せ、背中に――!
 背中に『むにゅむにゅっ』というやわやわな感触がダイレクトアタックしている……だとっ!?

 異世界転生初日にウヅキと温泉に入って以来のおっぱい洗体……だと!?

 背中に『むにゅむにゅっ』が……!
 いやそんな陳腐な擬音語オノマトペで表現するのは、もはやウヅキおっぱい神に対して不敬が過ぎるというもの……!

 適切な表現を次回までの宿題として持ち帰って検討いたしますので、ぜひ次の機会にもよろしくお願いしますねっ!

「『入浴は七病を除き、七福が得られる』とは、つまりこのことか……うむうむ」
 小さいころに祖父ちゃんから聞いた言葉を思い出しながら、おっぱい福にご満悦の俺だった。

 そして後方担当のウヅキに対して、前方担当のサーシャは――、

「ううっ、こんなのわたくしには逆立ちしたってできませんの……! ああ、神よ! あなたはどうしてこのような理不尽な試練を、わたくしに与えたもうたのでしょうか……?」

 艱難辛苦かんなんしんくに立ち向かう悲劇のヒロインと化していた。

「申し訳ありませんセーヤ様。セーヤ様を手で洗うしかできないわたくしを、どうぞ好きなだけお笑いになって……」
「いや、それいたって普通だからね……?」

「そんなことを言って、セーヤ様も内心ではこのスイカとそら豆のごとき格差を嘲笑わらっているのですわ……。どうせわたくしのおっぱいは海抜ゼロのゼロっぱい……。いいえ、ウヅキという人という種族の最高到達点と並んでしまった今、相対的には完全にマイナス軸の虚数世界……! 虚ろなる深淵の無にとらわれた虚数世界のマイナスっぱい、笑いたければどうぞなのですわ!」

「いや笑わないよ……ほんと……」
 というか笑えない。

 だってさ、そら豆って小さいだけでなく凹んでるんだぜ……?
 ここで笑う奴は人として終わりだよ……。

「大丈夫ですよサーシャ! セーヤさんは女の子をおっぱいの大きさで優劣をつけるような人じゃありませんから!」
 さっきのハヅキに続いて、今度はウヅキがサーシャを励ましにかかる。

 うん、女の子同士の美しい友情だね!
 でも励ますウヅキのおっぱいを、励まされたサーシャが涙目で凝視しているのを横から見ているのが、とても辛いです……。

 そして、

「セーヤ様、ほんとですの……?」
 不安に揺れるサーシャの青い瞳と、

「そうですよね、セーヤさん!」
 信頼に満ち溢れたウヅキの黒い瞳に見つめられた俺は、

「ア、ハイ。ソウデスネ、ソウデストモヨ」
 大きいおっぱいの方が好きですとは、口が裂けても言えなかったのだった……。

 ついでに付け加えるならば。
「ちんちんは、ハヅキに、まかせる」

 そう言われた俺は、ハヅキの可愛いおててでもって、大事なところを洗ってもらっていたのだった。

 だってほら、仕方なかったんだよ。
 がんばってお手伝いをね、しようとしている小さな子をさ?

 「ふんす!」って感じてやる気を見せてるハヅキのやる気スイッチを、無下に断ってスイッチオフにしちゃうってのは、教育として良くないと思うんだよね?

 思いませんか?
 思いませんね、ごめんなさい。

 小さなおててで優しく洗ってもらって、とても気持ち良かったです。

 ちなみに回復系S級チート『姉妹とお嬢さまと竜と混浴』が発動していて、回復系B級チート『実家は檜風呂』、同A級チート『姉妹と混浴』よりも大きく回復をしてくれていた。

 っていうか、
「どんな先読みしたチートだよ……。もしかして異世界転生局はその辺の組み合わせを全部、網羅的に作ってたりするわけ? 馬鹿なの?」
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