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異世界転生 12日目(後編)

第243話 聖母マリア=セレシア

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「ま、アタシだって鬼じゃないわ? 精霊だからね。……ってちょっと! ちゃんとツッコミなさいよ、ボケてるんだから」

「いや今そんな雰囲気じゃないだろ、空気読めよ……」

「まぁいいわ! つまりね、優しい精霊さんは出題範囲を絞ってあげるって言ってるの。聖母マリア=セレシアに関する問題に絞ってあげるわ!」

 胸を張って言う精霊さん――なんだけど、
「聖母マリア……って誰?」

「なんでアンタは聖母マリアも知らないのよ!? 未就学児童だって名前くらいは知ってるわよ!?」
「ふっ、俺は人とは違う男、麻奈志漏まなしろ誠也さ」

「なにバカを自慢してんの?」
「くっ、こいつめ……自分も大概のくせに……!」

 こんなおバカ精霊さんに素でバカとか言われちゃうと、地味にショックなんだけど。

「えっとですね、聖母マリア=セレシアは帝国臣民の8割が信仰するマリア=セレシア教会の初代にして唯一の聖女で、本当にすごい人なんですよ。セーヤさんも知ったらびっくりしちゃうんじゃないかと思います」

 そんなおバカな俺に救いの知識を差し伸べてくれたのは、またしても頼れる知恵袋ことウヅキだった。

「そこまで言われると興味が沸いてくるな。例えばどんなことをしたんだ?」

「そうですね、聖母マリアの一番有名なエピソードはやっぱりこれでしょうか。貧しい農村を訪れて、一夜にして油田を発掘してあげました」

「え? なんだって?」
 俺の言葉に反応して、因果を断絶してやり直すディスペル系S級チート『え? なんだって?』が発動した。

 いやでもこれ仕方ないでしょ?

「貧しい農村を訪れて、一夜にして油田を発掘してあげました」
 うん、2回聞いてももう一回聞き返しそうになるな……。

「なんていうかその、いきなりぶっ飛んでるな……文脈が明らかにおかしいぞ? っていうかさすがにそれは嘘話だろ?」

「あはは、そう思っちゃうのも分かりますけど、これ史実なんです。歴史書なんかでは『マリアの奇跡』『マリアの一夜油田』って呼ばれてます」

「マリアすげー!」

「他にも新薬の開発に名を残したり、子供の衛生改善に大きく貢献したり、貧困問題を痛烈に社会に問いかけたり。あ、友人の留学条件を満たすために、全教科満点をとれたのに最後の教科だけ、わざと0点をとった、なんて友達思いのエピソードもあるんです」

「なんなのマリアさん。もはや多方面に凄すぎて理解不能なレベルだよ……」

「そ! つまり聖母マリアは帝国史に残る有名人ってわけ! そのマリアに関する問題なら、公明正大で公平な歴史問題でしょ?」

「ま、まぁ確かに……」

 この世界の聖母マリアなる人物は、日本史でいえば織田信長とか坂本竜馬とか、そう言うレベルの有名人なんだろう。
 そこからの問題となれば、歴史資料集がどうのは確かに関係ない気もする。

「じゃあ、そういうことで。いい加減そろそろ問題にいくわよ? 準備はいーい?」
「どうぞ!」

「こほん。では問題です。聖母マリアが貧困問題を解決するために、あえて孤児院で高級菓子を食べるという社会風刺をしました。その時に食べたお菓子はなんでしょう?」

 …………はい?

「おいこら、そんなもん知るわけねーだろ! つーかそんなことが歴史資料集には載ってんのかよ!?」
 思わずツッコんだわ。

「さすがに直接は載ってないわね? でも絵には描かれてるんだよね! そしてその絵は資料集にカラーで掲載されているってわけ! それを出してなにか問題でも?」

「ありまくりだ! ただでさえ使わない歴史資料集の、誰がそんな細かいとこまで見てんだよ!? どこが『公明正大で公平な歴史問題』だ!」

「勝負事ってのは戦う前から始まっている――ううん! 戦う前に、情報戦の段階で勝負は既に決しているのよ!」

 さっきトワに正論を言われて論破されたのが悔しかったのか、めっちゃドヤ顔で言ってのける精霊さん。

 くっ、こんな重箱の隅をつつくようなセコい、いやセコすぎる問題、さすがのウヅキだって――、

「チョコですね」
「そうそう、チョコよ――って、はいぃぃぃぃぃぃっっっっっっ!?」

 精霊さんが目をひん剥いて驚きの声を叫び放った――。
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