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かわいい、めご
何かあったのだろうか。そう疑問に思ったところで気配を感じ、顔を上げる。
「メゴ」
ハッとした。
少し響く低音、柔らかな響き。ほんの少し違うアクセントが、この世界でたった一人だけが呼ぶ俺の名前だ。
「……神子様……?」
さっきまで輿の上に居たはずの、豪奢な衣装を纏った人が目の前にいた。
夢か、真か。それが分からずぼんやりと口を開くと、目の前の人はフフと笑う。
「ミコトだって言ったろ? ワリがったのメゴ。……泣がせでしまったな」
覚えのある指が、目元を拭う。
それが嬉しくて、切なくて、後から後から涙が溢れた。
俺はバカみたいに首を横に振ることしか出来ない。
神子様――ミコト様が幸せならそれでいいんだから。俺の事なんて忘れてても良いと思ってたんだから。
それなのに。
「メゴ。オレのメゴいメゴ。この身が天に還ろうとも、この心臓が朽ちようとも、この魂はお前に捧げる。生涯を全てお前の傍にいると誓う」
目の前の人が、俺の前にそう跪いた。
それは高位の方々が使う婚姻の言葉で。
ミコト様が微笑みながら、オレの手を握った。
「メゴ。オレど結婚してくれねが?」
「――っ」
つんざくような大歓声が、街全体を包んだ。
俺はバカみたいに頷く事しかできなくて、嬉しそうにはしゃぐミコトさまに抱き抱えられ、何故だかそのまま輿に一緒に乗っていた。
結婚おめでとうとか、神子様良かったねとか、そんな声が沿道から投げられるけど、俺はそれどころじゃなかった。
「メゴ……メゴ。なあ、泣ぐな。わり。悪がった」
「う、う……っ、だ、だって……っ、ミコっ、様が急に、いなくな、ひっ、ううっ」
「悪がった。メゴと暮らすなら金もいるだろし、おめぇと暮らすなら悪素とやらも祓っとく必要もあると思ってや。ちゃんと話しなぐって、悪っけ」
ミコト様はそう言って、まるで子供にするように、俺の顔中に小さくキスを落とした。
「後は……押しても駄目なら退いてみろって言葉が、俺の国にはあってだな」
「……? どういう意味です?」
「ん~、いや、やめとく。怒られそうだしの」
はっはっはと笑うミコト様は、俺のよく知ってる人だった。
豆粒のようにしか見えない距離じゃ無くて、今こうして隣にいる。
それが眩しくて嬉しくて、俺はまた涙を深めて、ミコト様に笑われたのだった。
※※※
神子様の歓迎パレードが成婚パレードへと変わり、そしてつつがなく終わったらしい。神殿から始まり神殿に戻ったそれは、俺たちを乗せた輿を下ろした事で終わりを告げた。
民衆に見せつけるようにして俺を抱え上げたミコト様は、一層の歓声を上げて祝福されていた。俺はもういたたまれなくて、彼の首にしがみ付いて顔を隠すことしか出来なかった。
新婚なのですからと、見知らぬ神官に押し込められた一室には、いつ整えられたのか食事や果物が山のように置かれていた。
そしてこれ見よがしに目に入るのは大きな寝台で。
「嫌んだが? メゴ」
室内に入ったまま、呆然と立つ俺たち二人。
繋がれた手から、ミコト様の緊張が伝わる。そんな不安そうな声を出さないで欲しい。
何が嫌だと聞いてるのかと、それを問える程、俺だって初心な訳では無い。
だけどもう会えないと思っていた人と会えて、あんな風に突然結婚してしまって、国中に祝われて。気持ちは未だ急流に飲み込まれたまま落ち着いていないのだ。
そこに初夜だと床を用意されても、頷くには勇気が要る。
チラリと隣を見た。
美しく装った男の表情は、手を伸ばして頭を撫でて上げたくなるような、そんな切ない表情で。
「身体を、洗わせて貰えませんか……」
良いとも悪いとも言えなくて。だけど汗にまみれた身体を差し出したくはない。
俺はその大きな身体に腕を巻き付けて、精一杯そう答えた。
「んだな、一緒に入るか」
「はえっ!?」
違う、誘っている訳じゃない。一人で身を清めたいだけなのに。そう必死で訴えても、ミコト様の太い腕に抱えられて、ズルズルと湯殿らしき部屋に連れ込まれてしまう。
小さな室内には大人が一人入れる浴槽が用意されていた。高貴な方々しか入る事はないだろうと思っていたそれを、まさか自分が使う日が来るなんて思わなかった。
さっさと服を脱ぐミコト様から距離を取るようにして、俺は壁際にぺたりと張り付いた。
「なんだァ? 恥ずかしぃなんが? 俺の裸なんか何回も見てっだろ?」
「そ、それは清拭のお手伝いをしていただけですし、その、こういう関係じゃ無かったでしょう……」
よく鍛えられているミコト様と違って、俺はどれだけ働いても貧相だ。
第十宮殿の食材不足のせいで、めっきり胃袋も小さくなり、その上ミコト様と離れて食が細くなったというのもある。
本人に言うつもりはないし、それを情けないとは思っても恥ずかしいとは思った事は無かった。だけど流石に、好きな相手にどう思われるか、不安になるじゃないか。
ギュッと衣を握り締める俺をどう思ったのか、ミコト様はニッコリ笑って俺の頭を撫でた。俺の好きな、太陽みたいな笑顔だ。
「メゴはメゴい。どんなメゴでもメゴい。言ったか? オレの所ではメゴは可愛いって意味だ。メゴい、メンゴい、メゴメゴ……なあ、オレはメゴがオレ付になった時の自己紹介で、なんて名前通りに可愛いんだろうって思ったんだ」
自分は容姿に優れていないし、百人に聞いても俺を可愛いだなんて言う人はいないと思う。痩せてて、背も低いし、愛想も良くない。それに変にお節介な性質で、疎まれる事もしばしばだ。
笑って俺を受け入れてくれたのは、ミコト様だけ。
そうっとその顔が近づいて来る。
何をされるか分かってしまって、それが恥ずかしくて、でも嬉しくて。
ぎゅっとつむった瞼に、静かに小さなキスを落とされた。
「ひゃ……」
「メゴい……。メゴ、好きだ。可愛い、俺だけの奥さん」
顔中に、まるで雨のように唇が降り注ぐ。嬉しさと居たたまれなさで、どんな顔をしたら良いのか分からない。
「メゴ……」
柔らかな声音に促されて、泳がせていた視線を目の前の男に合わせる。
「ん……」
唇を重ねてきた男は、その瞳に欲望を映していた。
「ミコトさ……あ、っ!」
首の後ろを手のひらで引き寄せられる。角度を変えては深く舌を差し込まれ、ざらりとした口蓋を舐められた。
「う、ンっ! ふ、うぅンぁ……」
逃げたい訳じゃ無いけれど、思わず両腕を突っぱねてミコト様の胸を押す。だけどビクリともしないどころか、逆に腰に腕を回されて、きつく引き寄せられた。
「ん、んう、ううう~っ」
熱を持った固いソレが、腹に当たる。それは自分とミコト様、二人のものだ。唇を重ねただけで昂ぶる自分を隠したいのに、ミコト様はグイグイとそれを押しつけてくる。固く反り返ったソレを、どうしたいかなんて聞かなくても分かってる。
「んあ……っ! や、やだ、あの……身体を綺麗にさせてください……」
べろりと首筋まで舐められて、ひょっとしたらこのまま行為に及ばれかねない。顔は涙と汗でぐちゃぐちゃだし、身体も砂埃にまみれてる。
そう提案したのは確かに俺だけど。
「や、あ……っ、あ、う、そんな、とこ……!」
「ん? ここだろ? メゴが気持ちいー所な」
大きな湯船の中で、洗うという名目で体中弄られ。
ミコト様が祈るだけでお湯が贅沢にあふれ出す中で、あらぬ所までもぬめりを与えられて。
貫かれたミコト様の陰茎が、身体の内部をじゅぷじゅぷと出入りする。
何もかもが反響する湯殿で、自分の変に甘ったるい声が耳障りだ。男としては高めだけど、女のように可愛い訳でも無い。
揺さぶられる度に湧き上がる、嬌声を堪える事がこんなに難しいなんて。
「んう……っん、ぐ、んぅ……っ、んぁん、……っあぐっ!」
痛みなら耐えられる気がした。
性行のためにある訳じゃ無い場所に、男性自身を抽挿されているのに、あろうことか初手から快感を拾ってしまった。
自分の身体が淫乱なのか、それともミコト様が上手なのか。どちらでも嫌だなと思うものの、腰を突き入れられる度に、身体の興奮は絶頂に向けて高まってしまう。
奥歯を噛みしめて喘ぎ声を殺すと、後ろからミコト様の指が口を割り開いてくる。
ズン……と奥まで剛直が突き刺さった。
「か……、は……っ、あ、あ……! む、りぃ」
もうこれ以上は入らない。大きなミコト様の陰茎が、腹の奥、限界ギリギリまで押し上げてくる。
「メゴ、聞かせてくれちゃや? メゴの声、興奮すっから」
「あああっ、や、あっ、ぅあっ」
そこから更に、奥をトントンと突くようにして軽く叩きつけられる。身体がビクビクと震えて、目の前が真っ白になった。
ミコト様の指を噛むなんて出来ない。ばか見たいな声が反響して、それなのに俺の中心を穿つ男の昂ぶりは萎えることがない。
荒い呼吸と、水音。そこに混じる、ぱちゅぱちゅという粘着質な音。
色んな方向から、体中を犯されているようだ。
「あー、気持良すぎて……イきそ……メゴ、いい? 中さ出しても、いいが?」
「う、あ、……っあ、俺、俺も……っ」
自分は達しているのか、達していないのか。もうそれすらも分からないほど、幾度となく激しい波にのまれている。だけど今はそれを上回る絶頂が、多分もう目の前にあるのだ。
過去にしていたおなざりの自慰は、一体なんだったのか。
「メゴ、言ってくれちゃ?」
同じように興奮した様子のミコト様が、俺にそう言葉を投げかける。
「あ、あ……っ? い、いかせて、くださ……」
背中に唇を落とされながら、解放を求めて俺は素直に懇願した。
それなのにミコト様は吹き出して、クツクツと笑うから。止まった腰の動きに、俺も少し正気になる。恥ずかしい事を言ってしまった。
「ああ、悪がった。違う違う、そっちじゃ無かったんだよな」
「……? っ、あ!」
繋がったまま、グルリと身体を反転させられる。
壁に背中を押しつけられて、正面からミコト様と向き合った。
「好きだって、言って欲しかっただけ。けどよ、言って欲しかったら自分から言えって話だよなあ? メゴ。好きだよ」
その表情は、なかなか反則だと思う。言葉以上に、幸せだで嬉しいって訴えている。いつもの笑顔が何倍にも魅力的に見えてしまう。
「なんて顔……してるんですか」
「ん? 顔?」
はてと自分の頬を擦るミコト様が、妙に幼く見える。
俺を可愛いと言うけれど、ミコト様だって負けてないと思うんだ。
それを彼に伝えたくても、今はもうそれどころじゃ無いから。
「ミコト様……こっち、早く……」
俺ははしたなくも繋がっている所をきゅうと締めて、腰を揺することで続きを催促した。
張り詰めた中心からはトロトロと何かが零れだして、解放を求めて腹の奥で渦を巻く。
「――っ、エッロ……。メゴ、お前は……っ!」
「あ――っ! あ、あ、あ……っ!」
抱きしめられて、まるで宙に身体が浮かぶような激しい腰使いに。
要望通り、いや要望以上に、あっという間に絶頂に押し上げられたのだった。
「メゴ」
ハッとした。
少し響く低音、柔らかな響き。ほんの少し違うアクセントが、この世界でたった一人だけが呼ぶ俺の名前だ。
「……神子様……?」
さっきまで輿の上に居たはずの、豪奢な衣装を纏った人が目の前にいた。
夢か、真か。それが分からずぼんやりと口を開くと、目の前の人はフフと笑う。
「ミコトだって言ったろ? ワリがったのメゴ。……泣がせでしまったな」
覚えのある指が、目元を拭う。
それが嬉しくて、切なくて、後から後から涙が溢れた。
俺はバカみたいに首を横に振ることしか出来ない。
神子様――ミコト様が幸せならそれでいいんだから。俺の事なんて忘れてても良いと思ってたんだから。
それなのに。
「メゴ。オレのメゴいメゴ。この身が天に還ろうとも、この心臓が朽ちようとも、この魂はお前に捧げる。生涯を全てお前の傍にいると誓う」
目の前の人が、俺の前にそう跪いた。
それは高位の方々が使う婚姻の言葉で。
ミコト様が微笑みながら、オレの手を握った。
「メゴ。オレど結婚してくれねが?」
「――っ」
つんざくような大歓声が、街全体を包んだ。
俺はバカみたいに頷く事しかできなくて、嬉しそうにはしゃぐミコトさまに抱き抱えられ、何故だかそのまま輿に一緒に乗っていた。
結婚おめでとうとか、神子様良かったねとか、そんな声が沿道から投げられるけど、俺はそれどころじゃなかった。
「メゴ……メゴ。なあ、泣ぐな。わり。悪がった」
「う、う……っ、だ、だって……っ、ミコっ、様が急に、いなくな、ひっ、ううっ」
「悪がった。メゴと暮らすなら金もいるだろし、おめぇと暮らすなら悪素とやらも祓っとく必要もあると思ってや。ちゃんと話しなぐって、悪っけ」
ミコト様はそう言って、まるで子供にするように、俺の顔中に小さくキスを落とした。
「後は……押しても駄目なら退いてみろって言葉が、俺の国にはあってだな」
「……? どういう意味です?」
「ん~、いや、やめとく。怒られそうだしの」
はっはっはと笑うミコト様は、俺のよく知ってる人だった。
豆粒のようにしか見えない距離じゃ無くて、今こうして隣にいる。
それが眩しくて嬉しくて、俺はまた涙を深めて、ミコト様に笑われたのだった。
※※※
神子様の歓迎パレードが成婚パレードへと変わり、そしてつつがなく終わったらしい。神殿から始まり神殿に戻ったそれは、俺たちを乗せた輿を下ろした事で終わりを告げた。
民衆に見せつけるようにして俺を抱え上げたミコト様は、一層の歓声を上げて祝福されていた。俺はもういたたまれなくて、彼の首にしがみ付いて顔を隠すことしか出来なかった。
新婚なのですからと、見知らぬ神官に押し込められた一室には、いつ整えられたのか食事や果物が山のように置かれていた。
そしてこれ見よがしに目に入るのは大きな寝台で。
「嫌んだが? メゴ」
室内に入ったまま、呆然と立つ俺たち二人。
繋がれた手から、ミコト様の緊張が伝わる。そんな不安そうな声を出さないで欲しい。
何が嫌だと聞いてるのかと、それを問える程、俺だって初心な訳では無い。
だけどもう会えないと思っていた人と会えて、あんな風に突然結婚してしまって、国中に祝われて。気持ちは未だ急流に飲み込まれたまま落ち着いていないのだ。
そこに初夜だと床を用意されても、頷くには勇気が要る。
チラリと隣を見た。
美しく装った男の表情は、手を伸ばして頭を撫でて上げたくなるような、そんな切ない表情で。
「身体を、洗わせて貰えませんか……」
良いとも悪いとも言えなくて。だけど汗にまみれた身体を差し出したくはない。
俺はその大きな身体に腕を巻き付けて、精一杯そう答えた。
「んだな、一緒に入るか」
「はえっ!?」
違う、誘っている訳じゃない。一人で身を清めたいだけなのに。そう必死で訴えても、ミコト様の太い腕に抱えられて、ズルズルと湯殿らしき部屋に連れ込まれてしまう。
小さな室内には大人が一人入れる浴槽が用意されていた。高貴な方々しか入る事はないだろうと思っていたそれを、まさか自分が使う日が来るなんて思わなかった。
さっさと服を脱ぐミコト様から距離を取るようにして、俺は壁際にぺたりと張り付いた。
「なんだァ? 恥ずかしぃなんが? 俺の裸なんか何回も見てっだろ?」
「そ、それは清拭のお手伝いをしていただけですし、その、こういう関係じゃ無かったでしょう……」
よく鍛えられているミコト様と違って、俺はどれだけ働いても貧相だ。
第十宮殿の食材不足のせいで、めっきり胃袋も小さくなり、その上ミコト様と離れて食が細くなったというのもある。
本人に言うつもりはないし、それを情けないとは思っても恥ずかしいとは思った事は無かった。だけど流石に、好きな相手にどう思われるか、不安になるじゃないか。
ギュッと衣を握り締める俺をどう思ったのか、ミコト様はニッコリ笑って俺の頭を撫でた。俺の好きな、太陽みたいな笑顔だ。
「メゴはメゴい。どんなメゴでもメゴい。言ったか? オレの所ではメゴは可愛いって意味だ。メゴい、メンゴい、メゴメゴ……なあ、オレはメゴがオレ付になった時の自己紹介で、なんて名前通りに可愛いんだろうって思ったんだ」
自分は容姿に優れていないし、百人に聞いても俺を可愛いだなんて言う人はいないと思う。痩せてて、背も低いし、愛想も良くない。それに変にお節介な性質で、疎まれる事もしばしばだ。
笑って俺を受け入れてくれたのは、ミコト様だけ。
そうっとその顔が近づいて来る。
何をされるか分かってしまって、それが恥ずかしくて、でも嬉しくて。
ぎゅっとつむった瞼に、静かに小さなキスを落とされた。
「ひゃ……」
「メゴい……。メゴ、好きだ。可愛い、俺だけの奥さん」
顔中に、まるで雨のように唇が降り注ぐ。嬉しさと居たたまれなさで、どんな顔をしたら良いのか分からない。
「メゴ……」
柔らかな声音に促されて、泳がせていた視線を目の前の男に合わせる。
「ん……」
唇を重ねてきた男は、その瞳に欲望を映していた。
「ミコトさ……あ、っ!」
首の後ろを手のひらで引き寄せられる。角度を変えては深く舌を差し込まれ、ざらりとした口蓋を舐められた。
「う、ンっ! ふ、うぅンぁ……」
逃げたい訳じゃ無いけれど、思わず両腕を突っぱねてミコト様の胸を押す。だけどビクリともしないどころか、逆に腰に腕を回されて、きつく引き寄せられた。
「ん、んう、ううう~っ」
熱を持った固いソレが、腹に当たる。それは自分とミコト様、二人のものだ。唇を重ねただけで昂ぶる自分を隠したいのに、ミコト様はグイグイとそれを押しつけてくる。固く反り返ったソレを、どうしたいかなんて聞かなくても分かってる。
「んあ……っ! や、やだ、あの……身体を綺麗にさせてください……」
べろりと首筋まで舐められて、ひょっとしたらこのまま行為に及ばれかねない。顔は涙と汗でぐちゃぐちゃだし、身体も砂埃にまみれてる。
そう提案したのは確かに俺だけど。
「や、あ……っ、あ、う、そんな、とこ……!」
「ん? ここだろ? メゴが気持ちいー所な」
大きな湯船の中で、洗うという名目で体中弄られ。
ミコト様が祈るだけでお湯が贅沢にあふれ出す中で、あらぬ所までもぬめりを与えられて。
貫かれたミコト様の陰茎が、身体の内部をじゅぷじゅぷと出入りする。
何もかもが反響する湯殿で、自分の変に甘ったるい声が耳障りだ。男としては高めだけど、女のように可愛い訳でも無い。
揺さぶられる度に湧き上がる、嬌声を堪える事がこんなに難しいなんて。
「んう……っん、ぐ、んぅ……っ、んぁん、……っあぐっ!」
痛みなら耐えられる気がした。
性行のためにある訳じゃ無い場所に、男性自身を抽挿されているのに、あろうことか初手から快感を拾ってしまった。
自分の身体が淫乱なのか、それともミコト様が上手なのか。どちらでも嫌だなと思うものの、腰を突き入れられる度に、身体の興奮は絶頂に向けて高まってしまう。
奥歯を噛みしめて喘ぎ声を殺すと、後ろからミコト様の指が口を割り開いてくる。
ズン……と奥まで剛直が突き刺さった。
「か……、は……っ、あ、あ……! む、りぃ」
もうこれ以上は入らない。大きなミコト様の陰茎が、腹の奥、限界ギリギリまで押し上げてくる。
「メゴ、聞かせてくれちゃや? メゴの声、興奮すっから」
「あああっ、や、あっ、ぅあっ」
そこから更に、奥をトントンと突くようにして軽く叩きつけられる。身体がビクビクと震えて、目の前が真っ白になった。
ミコト様の指を噛むなんて出来ない。ばか見たいな声が反響して、それなのに俺の中心を穿つ男の昂ぶりは萎えることがない。
荒い呼吸と、水音。そこに混じる、ぱちゅぱちゅという粘着質な音。
色んな方向から、体中を犯されているようだ。
「あー、気持良すぎて……イきそ……メゴ、いい? 中さ出しても、いいが?」
「う、あ、……っあ、俺、俺も……っ」
自分は達しているのか、達していないのか。もうそれすらも分からないほど、幾度となく激しい波にのまれている。だけど今はそれを上回る絶頂が、多分もう目の前にあるのだ。
過去にしていたおなざりの自慰は、一体なんだったのか。
「メゴ、言ってくれちゃ?」
同じように興奮した様子のミコト様が、俺にそう言葉を投げかける。
「あ、あ……っ? い、いかせて、くださ……」
背中に唇を落とされながら、解放を求めて俺は素直に懇願した。
それなのにミコト様は吹き出して、クツクツと笑うから。止まった腰の動きに、俺も少し正気になる。恥ずかしい事を言ってしまった。
「ああ、悪がった。違う違う、そっちじゃ無かったんだよな」
「……? っ、あ!」
繋がったまま、グルリと身体を反転させられる。
壁に背中を押しつけられて、正面からミコト様と向き合った。
「好きだって、言って欲しかっただけ。けどよ、言って欲しかったら自分から言えって話だよなあ? メゴ。好きだよ」
その表情は、なかなか反則だと思う。言葉以上に、幸せだで嬉しいって訴えている。いつもの笑顔が何倍にも魅力的に見えてしまう。
「なんて顔……してるんですか」
「ん? 顔?」
はてと自分の頬を擦るミコト様が、妙に幼く見える。
俺を可愛いと言うけれど、ミコト様だって負けてないと思うんだ。
それを彼に伝えたくても、今はもうそれどころじゃ無いから。
「ミコト様……こっち、早く……」
俺ははしたなくも繋がっている所をきゅうと締めて、腰を揺することで続きを催促した。
張り詰めた中心からはトロトロと何かが零れだして、解放を求めて腹の奥で渦を巻く。
「――っ、エッロ……。メゴ、お前は……っ!」
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