カメラの中に見える君は僕には届かない

かぼす

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プロローグ

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 「なんでお前は、もっとちゃんとできないんだ」
 そんな言葉を何度聞いただろう。
 正しい答えを言わないと失望される。間違った表情をすると怒られる。沈黙すれば無視され、反論すれば「生意気」だと言われる。
 僕は、いつからか人の顔色を伺ってばかりになった。

 親の期待は重たかった。先生の言葉は一方通行だった。友達の笑顔すらも、どこか演技に見えた。
 でも、カメラだけは違った。
 僕がどんな気持ちでも、どんな目で世界を見ても、レンズは黙って写してくれた。
 うまく話せなくても、うまく笑えなくても、シャッターを切ればそこに僕の見たものが残った。

 それだけでよかった。
 正しさとか、評価とか、全部忘れて。
 僕は、そうやってレンズ越しの世界に逃げ込んだ。
 だから——あの時、ファインダーの中に映った“君”が、あまりにもまっすぐで、あまりにもまぶしくて、僕は一歩も動けなくなったんだ。 
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