異世界転生チート勇者と“真の英雄”、そしてその物語について 〜本当に『最強』なのは、誰の命も奪わない事。そして赦し受け入れる事〜

Soulja-G

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第一章

最終話 終わりの感覚

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 ゆっくりと意識が覚醒していくのを、レイは感じた。
 微かに自分の周囲で聞こえる音が、周囲の人間のざわめきだと気が付いた。

(俺は…)

 体の感覚からして、レイは自分が仰向けに寝ていることに気が付いた。 
 体に感じる微かな暖かさやクッションの感覚から、どうやら現在は設備が整った施設にいるらしい。
 レイが重い目蓋を静かに開けると、そこは見慣れた天井が映った。
 そして、自分の顔を心配そうに覗き込む女性が目に映った。それはよく見知った顔だった。

「レイ様! 良かった、気が付いたんですね‼︎」
「エレナ…ここは、前線基地…か…」
「はい。あの後全員で突入後、魔王の死亡を確認。
 レイ様や大佐、少尉には命に別状はないことを確認しましたので、ここに搬送しました。
 待っててくださいね、今少尉と大佐を読んできますので」

 そう言って、エレナは駆けていった。
 未だ朦朧とする意識の中で、レイは先ほどまで起こっていた事に思いを巡らせた。

(魔王は…ディミトリ・ラファトは死んだ…俺が殺した…)

 それは即ち、この戦いの終わりを意味していた。
 アズリエル王国は勝利した。レイは勝ちをもぎ取った。
 汚物にまみれ、這い蹲りながら。それを勇者の姿と呼べるのかどうか、些か疑問ではあった。

(本当に…勝ったのか?)

 未だにその感触は、レイの両手に生々しく残っていた。
 握り締めた大剣の無機質な感触、そして拳を染める生暖かい血の温度。
 充足感も達成感も、何もなかった。ただ虚ろな感情だけがレイを支配していた。
 すると、ドアを開けてエレナとライリーとマリアが入ってきた。

「デズモンド! 気が付いたのか‼︎」
「目が覚めたのね!」

 3人ともレイに駆け寄り、心底安堵した様子だった。

「命に別状はないって聞いてたけど…よかった、このまま目が覚めないんじゃないかって」
「大量の魔力消費のせいで、2日は眠ったままだったからな…心配させるな、全く」
「そうでしたか…」

 やはりレイ自身も気がついていた通り、消耗していたようだった。
 少々安堵したものの、レイには気がかりなことがあった。

「大佐、ライリー、エレナ…聞きたいことが…」
「何?」
「奴は…ディミトリは…」

 ゆっくりと上半身を起こし、3人に尋ねた。



 魔族と呼ばれた亜人たち。
 彼らが受けた差別や迫害、そして虐殺。
 ディミトリ共和国、そしてディミトリ・ラファト。
 ミスリル資源のための、今回の戦争。
 そして西側大陸侵攻計画。



 レイは確かめる必要があった。
 彼の発言は真実なのか。
 皆、嘘をついていたのか。



 3人とも皆が一様に俯き、暗い表情になった。

「大体は事実だ…虐殺の歴史はある。大体の人間は見て見ぬ振りだがな…」

 彼女たちは、打ち明けた。それはディミトリが言った事を裏付けた。

「それでもエドワード王は過去の過ちを認め、モンゴメリー法廃止や南方戦線軍縮といった和平路線をとっていったんだ。
 だが我が父…リチャード王が即位してから状況は一変した。
 亜人たちは虐殺の過去や迫害を捏造、或いは誇張して利権を得ようとしていると主張した。
 それに同調した右派市民たちが差別を正当化するような世論を形成し、この戦争にも後押しにもなったんだ」

「実際、王国内でもそうした利権団体は存在はするとききますが…それも一部の人間だけとの事です」

「それでも魔王、ディミトリ・ラファトが数多くのテロを仕掛けてきたことにより、和平を主張していた人間たちも黙らざるを得なくなったのよ」

 やはり、全てはリチャード王から始まっていた。
 ディミトリの言っていたことは正しかったと、これでレイは否が応でも認めざるを得なくなった。

「ディミトリ共和国…彼らはそれを主張しているが、各国は彼らを国家として認めず、魔界という用語を使っている…自身に仇なすもの意味としてな。
 学術的には、魔界はディミトリ自治区と呼ばれている。
 そこを共和国と認める、或いは一つの国家と認定されることを最終目標とする思想を"ディミトリ共和国思想"と呼ぶんだ」

「ディミトリ自治区…それが魔界の正式名称…」

「軍隊では敵味方をはっきりさせるため、魔界や魔族を言う呼び名を使ってるけど…国内では差別的って声もあるわ。
 むしろ亜人という呼称ですら見直すべきって声もあるくらいよ」

「なら、ミスリル資源の話や、大陸侵攻の話も…」

「それは定かではありません…。
 極一部の政治家や識者がそれを主張しましたが、売国的と一蹴されました。
 実際に証拠は何もないんです」

 大体のことは、全て正しかった。
 レイは軍上層部や王室の操り人形だった。
 神輿として担がれてみても、結局は戦争の道具だったのだ。

「てっきり元帥が教えているものかと…何も言わなかったのか?」

「いいえ…都合の悪いことは教えたくなかったんでしょう」

 レイはシーツを握りしめた。
 義父として優しかった元帥が、ただ自分を傀儡としていただけだとは。
 それはレイにとっては残酷な事実だった。

「何はともあれ、終わったんだ。
 2日後にはここを発つ。全員でアズリエルに帰るんだ」
「…そうですね」

 嬉しさが湧かなかった。
 むしろレイの心中では、虚しさばかりが増していく感覚すらある。








 一時間後には全員が飛空挺に乗り込み、今や雲の上であった。
 全員が狭い部屋の中で地べたに座り込み、一様に無口であった。
 誰もが心の中で、問い続けていたに違いない。


 この戦いは、正しかったのか?

 我々は皆、大義のある戦闘をしたのか?


 エレナもライリーもマリアも、ただ俯いて黙り込むだけだった。
 レイは窓の外から見える空を見て、呟いた。



「俺はこれから…どこへ帰るんだ?」



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