異世界転生チート勇者と“真の英雄”、そしてその物語について 〜本当に『最強』なのは、誰の命も奪わない事。そして赦し受け入れる事〜

Soulja-G

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第三章

第三話 葛藤

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 次第に夜は更けていき、レイとエレナは共に夕食の準備に取り掛かっていた。
 久しぶりにレイが夕食の手伝いが出来るということで、エレナは先程から興奮しきりである。
 というのも、レイが何日も患者を優先して家に帰らない日が続いたりするため、二人揃って夕食をとることも少ないのだ。

「レイ様、刃物を扱う時は猫の手ですよ」
「え、ああ、うん、ごめん…」

 炊事洗濯の類を一切人任せにして来たレイにとって、こうした料理などは戦いの数倍は難しかった。
 しかしこうして行う様々な日常の作業の中には、確かな愛情と幸福があった。
 前世でも現世でも、誰かと共に過ごして心休まるという時間など、レイにとっては皆無に等しかった。

「ふふっ…勇者と呼ばれる人が私の為にお料理してるなんて、すごい贅沢」
「別に、ただ材料切ってるだけだよ…自炊の経験なんてほとんどないからさ」
「それでも、嬉しいですよ」
「…そうか」

 レイは面映いような気持ちになった。



 エレナが目覚めた後、レイと二人で同棲する事となった。
 意外なほど親族が後押ししてくれたこともあったが、それ以外にもマリアの進言もあったからだ。


『きっと、二人が一緒にいた方が一番良い』
『…いいんですか?』
『私に気を遣うな。その方がよほど辛い…生き残った分だけ、幸せになれ。命令だぞ』


 そう言ってくれたマリアに対して、レイは嬉しさと罪悪感の両方を抱えていた。
 それはある種、彼女との関係を半分切るのと一緒だったからである。
 しかしそれでも、自らよりも二人の幸せを優先してくれたのは、レイにとっては嬉しかった。




「さぁ、できましたよ!」

 食卓には料理が湯気を立てて並べられていた。

「しかし料理って疲れるよな…これ毎日やれるのって凄いよ」
「いやー、私よりお姉ちゃんのほうが上手いですよ? 私もお姉ちゃんに教えてもらって料理できるようになりましたから」
「え!? お、お姉ちゃんって…サリーにか?」
「意外かもしれないですけど、ああ見えて家事が私より完璧ですからね」

 意外過ぎる発見であった。
 普段のサリーの原動を見る限り、まさしく『男勝り』という言葉がよく似合う。
 それがエレナの家事炊事の師匠だとは、レイは想像もつかなかった。

「それより早く食べましょ! いただきます!」
「いただきます」

 二人は料理にありついた。
 素朴だが味わい深く、芯まで温まるような味だった。
 出来立てということもあるだろうが、それよりも大切な人と一緒に食卓を囲んでいるという事が大きな要因だろう。
 レイは幸せを感じていた。
 エレナと過ごす時間が、レイの中で大きな安らぎとなっていた。

「…? どうしたんですか? ニヤニヤして」
「いや…なんでもないよ」

 こんな日々が、ずっと続いていけば良い。
 レイはそんな風にも思っていた。





 深夜。
 そしてレイとエレナは同じベッドで眠っていた。
 レイのすぐ横では、エレナがリズミカルに安らかな寝息を立てていた。

(終わらないでいてほしい)

 それはレイの心からの願いであった。
 こんなにも心が安らぐ瞬間を、レイは知らなかった。

(もう誰にも奪わせないし、奪ったりもしない)

 隣で眠るエレナの寝息を聞きながら、レイは思った。

(今度こそ、諦めない)

 その小さな身体を、レイは抱き寄せた。



『今まで、本当にありがとう…さようなら』



 そんな時に決まって表れるのは、最後に見たライリーの顔であった。
 心臓が抉られるような痛みを、レイは感じざるを得なかった。

(ライリー…)

 エレナへの愛を強く感じるとき、レイは決まってライリーのことを思い出す。

(あの時、俺がライリーを選んでいたら…)

 ライリーを嘘でも愛しているといっていれば、彼女は死なずに済んだのではないか。
 レイには、そんな風に思わない時はなかった。

(…どうすればいいんだ)

 自問自答しながら、レイは夜明けを待った。




 突如として、その日常は破られた。
 早朝、レイはサリーからの緊急コールで目が覚めた。
 エレナを助けて以降、急速に親しくなっていったサリーだったが、こんな早朝に緊急コールとは今までになかった。
 ボンヤリとする頭を横に振り、サリーからの着信に応答した。

「サリー?  一体何が…」
『おい、ヤベーぞ! ニュース、最新のニュース見てみろ‼︎』

 現在通話している画面とはまた別に、レイは最新の時事情報が飛び交う画面を術式で開いた。
 するとそこには、"ティアーノ総統 ジェフリー・アベド死去"の文字が所々に踊っていた。

「な…⁉︎」
『こりゃ恐らく…宣戦布告だな』

 それは、新たな戦いの始まりだった。


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