異世界転生チート勇者と“真の英雄”、そしてその物語について 〜本当に『最強』なのは、誰の命も奪わない事。そして赦し受け入れる事〜

Soulja-G

文字の大きさ
92 / 147
第三章

第二十九話 突撃

しおりを挟む



「ぐはっ…‼︎」

 口元から血を吐きながら、マリアは床に倒れ込んだ。

「口程にもない…元王国軍近衛騎士団と言っても、所詮はこの程度か」

 既にマリアは体の半分以上に火傷を負い、辺り一面に肉の焼け焦げるような悪臭が漂っていた。

(つ、強い…これが、モナドの実力という事か…)

 事実、マリアはここまで実力差のある相手と戦った事は無かった。マリア自身が相当に強い事もあり、多少相性が悪くても根本的な格闘技術や魔法攻撃のテクニックでなんとかなった。
 しかし目の前の相手は違う。マリアと同等以上の魔力や戦闘技術を有している上、魔法研究所から強奪した強力な術式まで駆使してくるのだ。

「しかし…だからと言って、負けられん‼︎」

 決死の力を振り絞りサーベルを握り直すと、マリアは立ち上がった。そのまま一気に間合いを詰め、イリーナに向かっまて斬りかかった。

「遅い」

 しかしイリーナはその刀身を片手で、しかも掌で受け止めた。

「鉄屑で私を切れると思ってる辺り、甘いという事を思い知らせないとね」

 イリーナがそう言うと、掌の周囲の空間が歪み始めた。すると握りしめたサーベルの刀身が、まるで溶けた飴細工の様に融解し、床に滴り落ちた。
 そして空いている方の手で、マリアの腹部に思い切りボディブローを喰らわせた。

「ぐふっ…‼︎」

 辛抱堪らず、マリアはくの字に倒れ込んだ。

「しぶとさだけは認めてあげるわ。だから貴女はすぐに殺さない。私の同族も、貴女の指揮の下で随分と殺されたわ。その報いを受けさせてあげる…心も身体もたっぷりと痛ぶって殺してあげるわ」






 レイとサリーは甲板上で風を受けながら、落下のタイミングを計っていた。
 目標の要塞は後少し、肉眼で確認できるタイミングで落下し、一気に突入する作戦であった。

「よし、見えてきたぞ! 」

 サリーが指差した先には、防護術式に包まれた要塞があった。低空飛行で飛んでいるせいか、その要塞が猛スピードでこちらに向かってきている様にも見えた。

「隊長、ご武運を!」

 部下がサリーに向かって敬礼した。

「ありがとよ! さぁ、行くぜ、レイ‼︎」
「ああ‼︎」

 レイは目の前の要塞を見据えながら、甲板から空中に飛び出した。強烈な空気抵抗をその肌にヒシヒシと感じながら、そして横にサリーを抱きかかえたまま、体勢を整えた。

「振り落とされるなよ!」
「わかってるよ! 私の腕力を甘く見んじゃねえ‼︎」
「なら安心だ…行くぜっ‼︎」

 両足に魔力を込めて、レイは空を思い切り蹴った。ゴッという音が響き、マッハのスピードでレイは基地に突っ込んだ。

「うおおおおおおおっ‼︎」

 大剣の切っ先にありったけの魔力を込めて、防護術式に突き立てた。ガリガリという嫌な音を立てながら、火花を散らして防護術式は少しずつだが削れていった。
 サリーもレイの体にしがみつきながらも、その脇に挿した剣を抜き、魔力を込めて障壁の上に突き立てた。

「壊れろおおおおおっ‼︎」
「いけええええええっ‼︎」

 絶叫しながらその障壁を削っていくと、徐々に割れ目の様なものが出来てきた。それは少しずつ広がっていき、最終的には人一人くらいが通れるくらいの大きさになった。

「これで…最後だ‼︎」

 思い切り剣をねじ込むと、防護障壁は音を立てて割れ、レイとサリーは障壁の内部、基地の上空に雪崩れ込んだ。すぐさま待機していた敵兵からの銃撃が飛んできた。恐らくレイの強大な魔力反応を感知しての事だろう。すぐさま防護術式を張り、銃弾の雨を凌いだ。

「くそっ、息つく暇も無さそうだ!」
「まかせな、雑魚は引き受けるぜ」

 サリーは掌を地面に付け、術式を展開した。

「はあああっ!」

 蜘蛛の巣上に電流が広がり、周りを取り囲む敵兵を一網打尽にした。

「ぐぁぁっ!」
「ぐおお‼︎」

 周囲の敵は一気に感電し、気絶した様だった。
 そしておそらくそれは、彼女と一騎討ちしたハリーの技でもあった。

「この私が、殺さねぇ様に手加減するとはな…お前の甘ちゃんぶりが移っちまったよ」
「ふっ…それは嬉しいばかりだな」

 二人はお互いに笑い合った。
 しかしその間にも、新手はゾロゾロと増えていくばかりである。
 それらにレイとサリーは背中合わせで相対した。

「二手にわかれよう。
 俺はモナドの方へ行く。
 サリーは閣下やエレナを助けだしてくれ」
「はいよ。
 強い奴はお任せするぜ。
 その代わり、絶対にとめるんだぞ!」









「き、緊急事態です! 侵入者が…防護障壁を突破しました‼︎」
「何⁉︎ 人数は?」
「ふ、二人です…レイ・デズモンドとサリー・コーヴィック、たった二人だけです‼︎」
「…‼︎」

 イリーナも驚きを隠せない様子だった。各国の軍が全力を出しても傷一つ付かなかった防護術式が、レイのチート能力により破られたのだ。焦るのも至極当然のこととも言えた。

「…全員、奴をここに誘き寄せつつ後退。その後は撤退なさい」
「司令官⁉︎」
「どうせ彼には私以外歯が立たないわ。なら、隙を見て逃げなさい。無駄死にする事はないわ」
「…司令官、ご武運を」

 敬礼したのち、男は駆け出していった。
 イリーナは下唇を噛んだ。

(やはり貴方と…闘わなくてはいけないの?)





 エレナとニコラスの魔力反応を頼りに、サリーは要塞内部へを歩みを進めていった。
 施設内での戦闘は激しいものを予想していたが、それは外れた様だった。

「ハァァっ!」

 彼女の得意とする炎の術式と、ハリーが得意とした雷の術式を組み合わせ、サリーは可能な限り犠牲を抑えながら進んでいった。

「ったく、殺さずに抵抗不能にするってのが、一番難しいぜ!」

 そしてすぐに、エレナの魔力反応が一番高い部屋を見つけた。
 すぐさまドアを蹴破ると、そこには見慣れた顔があった。

「お姉ちゃん!」
「エレナ! それに…陛下‼︎」

 拘束魔法に縛られている二人を発見し、すぐさまサリーは駆け寄った。
 解除術式ですぐに溶けるかと思いきや、予想を裏切り外れる気配が無い。

「くそっ、ハズレねぇ!」
「だめよ、お姉ちゃん…恐らくこれは秘匿魔法の一種。
 通常の人間の魔法では解けないものよ」
「ああ、その通りだ。
 僕も何度か解除を試みたが、うまくいかない。
 レイデズモンドに頼るしか…」
「チッ…結局最後までアイツ頼みか…!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

処理中です...