【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

文字の大きさ
42 / 62

ローラが招待状を直接公爵家に持ってきました。

しおりを挟む
私はここ最近すっかり平和な毎日を過ごしていたせいで、若干それの存在を忘れつつあった。

しかし、それは今日、いきなりやって来たのだ。

平和に過ごす私を、許さないとでもいうかのように。



「お初お目にかかります。フォールスト公爵様。

ローラ・フリージアです。」


階下が騒がしかったので部屋からひょっこり顔を出してみると、そこには一瞬で平和な場所から辛い記憶に引き戻されてしまうような存在がいた。

階下にはレインと、対面にもう一人女性が立っている。

金色に輝く髪、歌うような声、そしてピンク色の瞳。


付き人とともに、そこにはローラが立っていた。

ローラは部屋から出た私にすぐに気が付いたようで、ピンク色の瞳が私を捉えた。



「こちらこそ、わざわざご足労いただきありがとう。」

レインがローラに労りの言葉をかける。



「身分の高い方には、こうして直接私が招待状をお持ちしておりますの。」

ローラはそう言ってレインに何かを渡した。

恐らくあれが、婚約パーティーの招待状なのかもしれない。


「でもまさか、姉がここにいるとは思いませんでしたわ。」


ローラは笑顔を崩さずに、私の方に視線を向けて言った。
その瞬間、体が動いてしまう。

婚約パーティーに出向かなければ会えないと思っていた存在が目の前にいるのだから、無意識にそうしてしまったのかもしれない。

とにかく私は、そのままの勢いで階段を降りてローラの所まで行き、ローラの肩をつかんだ。


「・・・ローラ!私、貴女に聞きたいことが・・・!」


聞きたいことがたくさんある。妖精というのは本当か、何故私にひどいことをするのか。

しかしローラの付き人にあっさり引きはがされてしまう。

ローラもローラで、私を汚い物でもみるかのように一瞬侮蔑の視線を送っただけで、すぐにレインの方へ視線を移した。

そして、言った。

「ねえ、ところでレイン様。私の歌を聴いていただけませんか?

自分で言うのもなんですが、私の歌は周りからも評判が良くて。」


だ、だめ・・・!

声にならない言葉を心の中で叫んだ。

やっぱりローラは、私の味方は全て奪う気のようだ。


恐れていたことが、こんなにも早く起こってしまった。


「ぜひ聞かせてもらいたい。美しい歌声なのだと、僕も噂は聞いているからね。」


レインには残念ながら私の意志が通じないようで、心よく了承してしまった。



「ありがとうございます。では、歌いますね。」

目を閉じて、例の歌を歌い始めたローラ。

あの時と同じように綺麗な歌声だ。

ローラの歌声を聞く度、私の心は少しずつ絶望に落ちていく。

幸せとは、長続きしないものなのね。


ローラが歌い終わり、周りは拍手に包まれた。

「噂通り、素晴らしい歌声だね。」

レインも拍手しながらローラを褒めた。


だめ、もうあんな場面を二回も見るなんて耐えられない。

そう思った私は、急いで部屋に戻ろうとした。

しかし、その時。


レインが私の腕を掴み、引き寄せた。



「待ってよ、ユリア。僕を置いていかないでよ。

フリージア嬢、ユリアが部屋に戻るので、僕も失礼するよ。」


私は、開いた口が塞がらなかった。

そういえば前に、ローラの歌声に操られないなんて言っていたけど、本当だったの!?


私と同じく動揺しているのか、ローラがレインの手を掴んだ。



「・・・フォールスト公爵様。私に対してそれだけ、ですか?」

そう言われたレインはきょとんとしている。


「何が?」


焦ったローラが立て続けにレインに聞いた。


「・・・私の事、どう思います?」



「別にどうも思わないけど。」


あっさりローラにそう答えるレイン。


どうやら本人が前に言っていた通り、本当にローラの歌声はレインに効果が無いようだ。


「すまないね、フリージア嬢。ユリアの顔色が少し優れないようだから、

今日はこの辺で失礼するよ。」


そう言って私の肩を抱いたまま、レインは私の部屋へ向かおうとした。

しかし、すぐ後ろからローラが叫んだ。


「お姉様は、男なら誰でもいいのね。男が好きなのね。

一体、公爵様にどんな手を使ったのかしら。」


普段なら、周りに人がいるときは私を罵ったりしないはずのローラが、相当動揺していたのか私を大袈裟に侮辱した。

言い返そうとした私を遮り、レインがローラに近いていく。


「ちょっと待て。聞き捨てならないな、それは。」

レインが今、どんな表情をしているのか分からないが、普段の軽快な様子からは想像もできないほど冷たい声だった。

静かな怒りが伝わってくるような。


そしてレインは、ローラの耳元に顔を近づけ何かを耳打ちした。

流石に何と言ったかは聞こえなかったが、今まで見たことないほどローラの表情が青ざめているので、あまりいい言葉ではないだろう。


「フリージア嬢。賢い君なら、もう今日はこれでお暇してくれるよね?」

レインがそう言うと、ローラは黙って悔しそうに屋敷を出て行った。


「レイン、ローラに一体何を言ったの?」

レインにそう聞いても、優しく頭を撫でるだけだった。


「ユリアは知らなくていい事だよ。」

レインは一体、何者なの?

私がその答えを知るのは、もう少し先のお話。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※コミカライズ企画進行中 なろうさんにも同作品を投稿中です。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

処理中です...