君のために

野宮雪菜

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君のために(3)

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「わ、私が死体で帰ったら、父さまや兄さまが黙ってはいないわよ」
 脅しのつもりで言ったのに、コールマンは優美な微笑みで返した。
「それこそ好都合。独立のためには戦も必要でしょう?」
「せ、戦争する気なの?」
 狂ってる、とクラリベルは思った。何が彼を狂わせているのだろう。
 王族の生まれなのに臣下に甘んじなければならなかったことなのか。それとも、封印されていたマルドラの真実か。
 どちらにしろ、コールマンを止めなければ、ランバートもマルドラもセルモアだって危ない。
「私は、あなたを認めないわ」
 きっぱり言うと、コールマンはため息をついた。

「……そうですか。クラリベル様、それがあなたの答えなのですね」
 彼はそうつぶやくと立ち上がり、クラリベルの腕を引っ張った。そのまま部屋を出る。
 足早に歩くコールマンに、前につんのめりそうになりながら、クラリベルは怒鳴った。
「ちょっと! どこ行くのよ!」
 しかし彼は答えない。
  廊下を抜け、狭い裏口から外へ出ると、小さくて古ぼけた小屋が見えた。
 コールマンは木戸を開けると、中にクラリベルを押しやった。
「残念ですよ、クラリベル様。来世で会えるといいですね」
  木戸は閉められ、外からかんぬきがかけられた。さっきと同じだ。開けようとしても、びくともしない。
 下手に秘密にしないで、シェリスに話しておけばよかったと思った。
  彼女だけではどうにもならなくとも、エヴァレットやランバートに知らせてくれたかもしれないのに。

「う……ん……」
 小屋の奥で男のうめき声がした。クラリベルはびくっとして飛びずさった。
「だ、誰?」
「……クラリベル、か?」
「ランバート?」
 起き上がる人影に近寄った。ランバートの手がクラリベルの頬に触れる。
「あなた、どうしてここにいるの?」
「あんたこそ。……まさか、何かしでかしたのか?」
 失礼な言い草だと思った。しかし怒るよりも前に、彼のかすれた声が気になった。
「怪我でもしているの?」
 尋ねるとランバートは軽く苦笑した。
「いきなり叔父上に斬りつけられたよ。運悪く……というか、わざわざ狙ってきたんだろうな。エヴァレットすら傍にいない時に襲われたから、誰にも気づかれずにここまで連れてこられた」
 クラリベルは手探りでランバートの腕をさわった。肩のあたりに布が置かれている。布は湿っていた。
「幸いにもかすり傷だから、血はあんまり出ていないよ」
「じゃあどうして、そんなに苦しそうなの」
 クラリベルは自分のスカートをひきちぎり、ランバートの肩に包帯代わりに巻いた。彼は息をついた。
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