たまごっ!!

きゃる

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生玲荘のたまごたち

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「紹介するわ。これが、今日から私達の仲間になる美羽みうちゃん。年齢は19歳だから、真鈴まりんと一緒ね?」

 夜――

 星玲荘改め『生玲荘うまれそう』の食堂で、住人達に紹介された。お土産に持ってきた『いきなり団子』はみんなに配られた。ここにいない人の分は冷蔵庫へ。住人への紹介と説明は、大家の真希まさきさんがしてくれた。

 しっかり改装されて綺麗な建物なのに、都会にしては家賃が安いわけ。それは、トイレとお風呂、食堂が別にあるから。あとは、この建物を建てた真希さんの祖父のほし 玲一れいいちさんが『若者の夢を応援したい』という理由からだった。
   ここは元々下宿やで、部屋は全部で八つ。『星玲荘』とは、元々のオーナー玲一さんの名前から付けられたのだという。


【住人その1】 鈴木 美加みか(32)さん、立夏りっかちゃん(6)

 私の住む予定だった201号室の住人。今話題で人気子役の『リッカ』。肩より下の真っ直ぐな黒髪で、色白の小さな顔。つぶらな瞳も可愛くて、当然お肌はプリプリ。お母さんの美加さんも可愛らしい人で、娘さんのマネージャーをしているのだという。シングルマザーで頑張っているとのこと。
 大手芸能事務所と新たに契約したために、このアパートを出て高級マンションに引っ越す予定……らしい。卵から無事にかえった?   例。


【住人その2】 高原たかはら 真鈴まりんさん(19)

 202号室の住人で、歌手の卵。短めの金髪で、小柄で色白。残念ながら今は留守。
 昼はボイストレーニングのレッスンで、時々オーディションも受けているのだとか。夜は居酒屋でバイト。お仕事に行くのか、さっきちょっとだけすれ違った。瞳が薄茶だったのは、コンタクトのせいで外人ではないらしい。悪い子ではなさそうだけど、派手な見た目でとっつきにくそう。同い年だし仲良くなれたらいいのにな。


【住人その3】 後藤田ごとうだ 百合ゆりさん(25)

 203号室の住人で、小説家の卵。
 ライトノベル作家になるのが夢だそう。長い黒髪だけど、前髪も長くて顔が隠れているから、よくわからない。怖い映画に出てくる女の人の髪型に似ているような気もする。ダボっとした服を着ているから、体型もよくわからない。背は私より少し低いくらい。
   執筆にとりかかると部屋から何日も出てこないことがあるらしく、時々声掛けが必要とのこと。


【住人その4】 餡蜜あんみつさん(?)

 204号室の住人で、女優の卵。
 今はお仕事のため不在。
 猫のような目にカールした薄茶の髪のセクシー美人で、スタイル抜群らしい。有名なタレントさんの名前にあやかろうとしたけれど、名前を聞かないしあんまり売れてないみたい。
   夜はスナックで働きながら、オーディションを受けたり売り込みをかけたりしているのだとか。酔って帰ることもあるので、注意が必要だと言われた。


【住人その5】 ほし 慎一しんいちさん(23)

 102号室の住人で、大家である真希さんの弟。「何の卵だか当ててみて?」と言われたけれど、よくわからない。名前だけだと作家さん?   兄の真希さんと同じように背が高く、サラサラの黒髪は顎の高さで切りそろえられていて、端整な顔立ち。
 夜で家の中なのにスーツを着ていて、目つきは鋭い。ま、まさかヤクザさんの卵?


【住人その6】 神崎かんざき 誠也せいやさん(22)
 
 103号室の住人で、こちらも不在。真希さんいわく、柔らかそうな猫っ毛ですこぶるイケメンとのこと。
 あまり詳しく教えてもらえなかったから、もしかして、オネェの真希さんの恋人なのかな?


【住人その7】 及川おいかわ りゅうさん(30)

 104号室の住人で、スタントマンの卵。短い髪で筋肉質の爽やかなイケメン。こういう人を細マッチョって言うのかも。今の仕事はスーツアクター。いわゆる『中の人』。
 戦隊ものだけでなく、今はゆるキャラの中にも入る事があるんだそうだ。
 事務所に所属しているため、卵といってもプロに近いと思う。


【住人その8】 ほし 真希まさきさん(26)

 101号室の住人で大家さん。
 物腰が柔らかな美人さんでオネェ。
 自分は卵ではないそう。
 本業はヒ・ミ・ツとのこと。
   言わなくてもわかるからかな?
 どこのお店のママだろう?
 
 

 そして私、大下おおした 美羽みう(19)
   肩までの茶色い髪はくりんとカールしている。良く言えばゆるふわボブで、悪く言えばただのくせっ毛。体型は細過ぎず太過ぎず……あ、嘘。家でゴロゴロしていたから、ふっくらしてきたような気がする。
 イラストレーターの卵で、渋谷にある専門学校に通うつもり。部屋が空き次第、201号室に入る予定。

   ここ、『生玲荘』は盗難の被害に遭わないようにするためか、男性は1階、女性は2階ときちんと部屋が分けられている。各階にトイレがあるので自然と男女別。お風呂は敷地内の別の建物にあって、こちらも当然男女別。設備の整った食堂は調理自由で火の元には十分気を付けるように、とのことだった。

   イベントや住人が出たり入ったりする時は、こうして食堂に集まって話をするのだとか。都会なのに合宿所みたいで、なんだかとっても楽しそう!

 ところで私、今日はどこに泊まればいいのかなぁ?
 
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